2007.Aug.2

京極夏彦『旧怪談』

 忙しいといいつつ、とりあえず本は読む。

『新耳袋』のほうが有名になっちゃいましたが、こちらは本家・根岸鎮衛の『耳嚢』の中から、怪談話に近いものを抜き出し、現代語訳したもので、雑誌掲載当時は『旧耳袋』というタイトルだったとか。
 なかなか面白かったです。さすが京極、『新耳袋』っぽい文体も心得ているし。『新耳袋』のほうは全十巻が完結し、もう新作は出ない状況ですから、これを新作と思って読むのもいいかも。
 同時収録されている原文と比較すると、かなり意訳されているようではありますが、「翻訳」というより「翻案」という解釈でいいんじゃないかと。実は原典の『耳嚢』も、部分的に読んでみたことはあるのですが、怪談話と普通の話が同じノリで書かれているので、こうでもしてくれないと見分けがつかないんですよ、ホントに(笑)。
 
 ただ…
 本文中に時おり登場する横文字! あれはどうにかならなかったのでしょうか。
 
ミーティングのあとすぐにお世話になる家に行きまして」
「家人が起居しているエリアからはかなり離れていたらしい」

 これはちょっと… 引きました(笑)。「座頭でないなら」という話からの抜粋ですが。この話自体はすごくよかった(怖かった)のに。横文字で現実に引き戻された気がしました。日本語でやって欲しかったなあ…

 京極作品としては久々のヒットでした。なにせ昨年の『邪魅の雫』を読んだ時には、トリックがどうの、ストーリーがどうの言う前に、あまりのテンションの低さに驚いて、もう小説は書きたくないのではと思ったほどでしたから。次はぜひ京極堂シリーズで一発カマして欲しいです。

kaji

投稿者 TEH Editors : 10:37 | 読書(ミステリ)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~kajihiro/cgi-bin/tt_cgi/tt_tb.cgi/207

コメント

コメントしてください




保存しますか? はいいいえ