2009.Apr.19

鴨川ホルモー(映画)

 初日に観に行ってしまいました。

 内容的には満足です。よくできていると思う。
 あまり聞いたことがない監督だったのでどうかな… と思ってたけど、この映画の場合、監督が変に色気を持っていないのが逆によかったです。原作のイメージ通りの役者を揃えて、(多少の省略はあるが)忠実なストーリーをやってくれれば、原作ファンとしては満足です。

 それでは芸がない、という批判もありそうですけどね。でも、絵にした時点で初めて笑えたシーンもあったんですよ。テンポも悪くなかったし、もう少し長くしてもよかったと思えたぐらい。

 この話はひと言でいえば、「大学生がバカをやる話」ですから。ああ、大学生活っていいな、懐かしいなと思わせることができれば、それで成功なんだと思う。噂には聞いていた「京都大学吉田寮」の内部も見ることができましたし(←今回の映画で、初めてロケが許可されたのだそうです)。

 ひとつ希望を言えば、クライマックスのシーンで、オ○を映さずに主人公たちの動作だけを撮る、というカットが見てみたかったです(ネタバレになるので、はっきり書けませんが…)。

 写真は、会社帰りに見た東京タワーが、変な光り方をしていたので撮ってみました。
 本文とは関係ありません(笑)。

kaji

投稿者 TEH Editors : 01:18 | 映画&TV&演劇

2009.Jan.2

怪人二十面相・伝 観ました

本来ならこの映画は、
私のように乱歩の全集を持っていて、
北村想の原作も続編まで読んでいるマニアにとっては、
酷評すべき脚本だったのだろうが…

や、十分に楽しかったですよ、私は。
むしろマニアのほうが、大目に見られます。

一般の映画ファンは『ルパン三世』や『バットマン』との類似点が気になって、
それで減点してしまうのかもしれないけど。
乱歩マニアが求めているのは「斬新な映画」よりも、
「二十面相を現代に成立させること」ですから、
いいアイデアはありがたく頂いておけばいいんです(笑)。

そもそも九十年代に入ってからの乱歩映画はテンションが低すぎた。
乱歩生誕100周年の時なんて、
二十面相映画には絶好のチャンスだったのに、何をどう間違って、
『RAMPO』なんてつまらないものを撮ってしまったんだか。

その点こちらは、
『二十面相』や『黄金仮面』は、テンション高くてナンボでしょ、
という気合いがみなぎってるのがよい。

前半の泥棒修行のシーンが、爽快感あって良かったです。
難をいえば、最後のオチはなくても良かったかな。
それと、映画自体をもう少し短くしたほうが、テンポはよかったかも。

あとは「ヘリコプターで逃走する二十面相の高笑い」に
萌えられるか否かポイントだと思われます(笑)。

文章は映画のことですが、画像は原作の初版です、すんません(笑)。
ではみなさま、今年もよい年でありますように。

kaji

投稿者 TEH Editors : 16:10 | 映画&TV&演劇

2008.Jan.27

『明日のアトム』

 昨年10月のブログで告知しておりました、友人の公演に行ってきました。

 友人からメールをもらったとき、題材のT先生というのはあの大先生をモデルとした架空の作家かと思っていたのですが、行ってみると、手塚治虫大先生その人であることを隠そうとしてはいない内容でした。この大先生の歴史を、仕事場の隣で原稿を待っている編集者たちの会話で描く。思いつきそうで意外と出てこないアイデアだし、漫画に対する愛情も感じられて、いい脚本だったと思います。

 私はアトムにはあまり愛着のない世代ですが、ブラックジャックは大好きでした。「軍艦島」の存在も、ブラックジャックに出てくる「要塞島」のモデルになった島として子供の頃に知った。(島の建物について知ったのはもっと後ですが)。『ブラックジャック』が虫プロの倒産と、『COM(主宰していた雑誌)』の廃刊でどん底だったころ、起死回生の作品として登場したという話もなんとなく知っていたので、話がブラックジャックの頃になると「さあ、来るぞ来るぞ」と待ちかまえて、見事ブラックジャックの話題に突入するあたり快感でした。

 話は先生の学生時代から始まり、亡くなる直前で終わるので、スタートが昭和26年ごろ、ブラックジャックの頃が昭和48年ごろ、亡くなる前が平成元年ごろ… になるんでしょうか。登場人物たちの衣装や小道具に、もっと意識的に時代色を出しても面白かったかもしれないですね。初期の頃はみんな帽子をかぶってたりとかね。再演がありましたら、ご検討ください m(__)m。

kaji

投稿者 TEH Editors : 18:51 | 映画&TV&演劇

2008.Jan.19

『キサラギ』

 最近ミステリネタの書き込みばかりしていますが(笑)。
 今回も、それ系の映画の話です。

 もともと密室の会話劇というのが大好きで、古くは『12人の怒れる男』から、『12人の優しい日本人』、岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』など、その手のものにはすぐ食いつきます。なのにこの映画は見るのが遅れた。苦手な役者が出ていたとか、そういう訳ではないんですけどね。

 このシチュエーションで最も難しいのは「数人を一室に閉じこめる」ことと「そこで事件の話を始める」ことだと思いますが、フィクション設定を作ったり、地震で倒壊したマンションの地下に閉じこめたりと(古処誠二『少年たちの密室』)、過去の作品が苦労してきたことを「アイドル・オタクのオフ会」という設定であっさり通過してしまったのはすごい。ミステリ劇を書きたい人にとっては、憧れのシチュエーションだもんねえ… よく思いついたもんだ。

 評判に違わぬ出来だったと思います。中盤を過ぎると先読みできる部分もあるんだけど、それも伏線をしっかり張っているからこそ。だいたいがミステリ・オタクというものは、気づいたor気づかないを評価の基準にしてしまうと、ほとんどの作品がNGになってしまう。それよりむしろ伏線が収束していく楽しさのほうが大事。その点では『…優しい日本人』より高得点を付けたい。後半の伏線となる台詞をそうと気づかせない、前半のやりとりは見事だったかも。

「××××に気づかないわけはないだろ」というツッコミどころもこの際OKだ(笑)。この手の映画はどうしても、多少強引に話を進めなきゃならないところはあるもので、この映画も初対面の五人が、わずか半日で「アイドル自殺の真相」にたどりつくまで話を進めなきゃならない。その負担の大きい部分を、主役の小栗旬が一人で担当することになったのがちょっと気になった。場を盛り上げる役と話を進行させる役を、両方背負ったという意味で。

 むしろ、ここにこそベテラン役者を起用すべきだったかも。や、別に芝居がまずかったと言ってるわけじゃないですよ。ただ「仕事は真面目にやってるが、アイドルのファンだなんて恥ずかしくて言えない。だけどオタク同士ならはしゃげる」というキャラは、もっと年齢が上のほうが説得力あったかも。もっとも、それでは興行的にキツかったでしょうが(笑)。この手のマイナー・ミステリ映画にしては珍しく、客席の半分以上が女性で、一瞬「なんで?」と思ったくらいでしたから。

 あと、エピローグ部分がちょっと長かったかな。あの結末にたどりついたら、あとはサラッと終わってよかった気がします。

kaji

投稿者 TEH Editors : 00:37 | 映画&TV&演劇

2008.Jan.5

映画『魍魎の匣』

 ※今回の文章には、京極夏彦『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』のちょっとだけネタバレがあります。未読の方はご注意ください。

 お見事でした。

 前作『姑獲鳥の夏』で気になったのは、大詰めで京極堂が現場に踏み込んだ際、ぽつりともらす「妙な結界が張ってあるな…」という台詞。これは原作では、事件関係者に見せたいものがあるのに、その手前に衝立が置かれている。この衝立を皮肉って「妙な結界」と称するわけですが、映画では衝立を見るよりも先に言ってしまい、意味のある台詞が単なるオカルト台詞になってしまった。

 全体的に『姑獲鳥の夏』は上記のようなミスが多く、原作のストーリーを忠実になぞり、台詞もほぼ同一のものを使用しながらピントがずれまくった印象があるのですが、今回は原作のストーリーを大幅に改変しながら軸は外さず、役者の見せ場もちゃんと作った。どちらに軍配が上がるかは一目瞭然。
 おそらくこの監督は、あの長大な原作のダイジェストをやっても失敗する、ということに最初から自覚があり、細かい部分のつじつま合わせは原作を無視して突っ走った。舞台は昭和二十年代であっても、「レトロの皮を被った現代劇」といわれる小説。『犬神家』と同じ方法論では苦しい。それを見抜いている監督にめぐり遭えたことが好結果を生んだ。

 いくつものエピソードを同時進行し、台詞のやりとりのテンポも速いので、原作を未読の人に分かるのかなという気もしたけれど、ある意味それこそが『魍魎の匣』。そもそも京極堂自体が、事件を解決するために出てくる探偵じゃないしね。状況を解体し、整理するまでが京極堂の仕事で、整理されてみれば誰が何をやろうとしていたかは、最初から明確だったじゃないか、というオチがこのシリーズには多い。原作『魍魎の匣』はまさにこのパターンで、未読の観客が終盤に至って状況を把握できるとしたら、原作に非常に忠実な脚本と言えるのかもしれない。
 
 昭和二十年代の街並みは中国で撮影されたようですが、それをまったく隠そうとしていないのが面白い。無国籍で奇妙な街が出来上がった。メインの三人(堤、阿部、椎名)の力関係も分かりやすいし、何より三人とも楽しそうだ。キャラクターも少しずつデフォルメされてきて、次回作への橋渡しも果たした。これだけの実績を残すと、次の『狂骨の夢』も同じ監督になるのかな? いっそエイリアン・シリーズのように、一作ごとに違う監督で見てみたい気もしますけどね。

 いや、それ以前に『狂骨の夢』があるかどうかですね(笑)。今回のは出来はいいと思いますが、大ヒットという雰囲気はないし。シリーズが立ち消えになる前に、地味な『狂骨の夢』よりも『鉄鼠の檻』や『 絡新婦の理』をやって欲しいのが正直なところです。

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 PLAYBOYの一月号で、日本の歴代ミステリベスト100なんて企画をやってたんですね、知らなかった。しかも『マイナス・ゼロ』が第三位にランクインしててビックリ。近年スポットライトが当たらない作品だから、当ててあげたいという人が多いのかな。
 しかし『獄門島』『点と線』『虚無への供物』などが上位に来ないリストを作ることに意義がある、という編集方針は分かるんですけど… やりすぎでは(笑)。『マイナス・ゼロ』は確かに傑作だけど、『虚無』より上に置かれるとちょっと違和感ありました。あ、あと『猿丸幻視行』入れるなら『写楽殺人事件』も入れようよぉ… ってキリがないですね、はい(笑)。

kaji

投稿者 TEH Editors : 06:50 | 映画&TV&演劇

2007.Dec.24

グミ・チョコレート・パイン

大槻ケンヂの同名原作小説の映画化である。
実は大槻ケンヂって私と同い年であり、その世代のサブカル体験者にとっては欠かせない生き証人(?)なのである。
過去ビックリハウサーであったところなんかもあって、同じようなサブカル体験をしている数少ない著名人である。
その彼自身の体験に基づいた青春小説の映画化であり、監督が何とかのナゴムレコード創設者のケラ(現ケラリーノ・サンドロヴィッチ)!長編映画としては3作目らしい。最近はテレビの時効警察などの脚本、監督にも絡んでいたようである。
そして、音楽が電気グルーヴと来れば、観ないわけには行くまい!

主人公とその仲間は周囲の凡庸な輩と自分は違うんだ!と強烈に思い込み、その拠り所が文芸地下でやってる映画だったり、マニアックなノイズミュージックだったりという按配で、熱狂的にサブカル(当時そんな言葉はなかったが)に傾倒して行くわけであるが、これは正に私自身がそうであったことを思い出させるものであった。
一生懸命自分と周囲の差異を求めつつ、実は何の変哲もない極普通の人間であることを思い知らされ、それがまたより一層自分を惨めにしてしまう。
さりとて、ポパイやホットドッグプレスに出ているような格好良さには意地でも背を向け、スポーツに熱中する連中にはこの筋肉野郎め!と軽蔑の視線を送る、そんなどうしようもない嫌な人種のくせに、一丁前に女にはもてたいと思っており、しかし、一般的な話題しか話せない女子にもあからさまに軽蔑の視線を送る。
そんな風に、青春の王道から外れて、しかもアウトサイダーを気取れるような格好の良いものとも程遠い若者たちの青春を描いた作品に喝采を送りたい。
こういう屈折の仕方の描き方を待っていた!

この映画は同世代、サブカル体験者をピンポイントでクスグリまくるのだが、そういった体験を持たない若い人、年配の人が観てどう思うか?に興味があると思った。

Sakabomb

投稿者 TEH Editors : 11:26 | 映画&TV&演劇

2007.Oct.12

演劇と演芸

うちの近所の篠原演芸場では、↑写真の作品を上演予定… らしい。
誰か一緒に行きませんか。

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それはそうと、芝居仲間の旭丘弥生さん(ロング・グッドバイ=マイラ役)の次回公演が決まりましたので、ここで紹介させていただきます。

Last Brand 第13回公演『明日のアトム』
漫画界に燦然とその名を残すT先生。
幾つもの連載を抱える巨匠と
彼の原稿を待つ編集者達の争奪戦を描く
シチュエーションコメディ。

日程:2008年1月24日〜27日
   24日7時/25日7時/26日2時・7時/27日1時・6時
場所:アイピット目白

詳しくは、Last Brand ホームページにて、続報をお待ちください。
どうぞカン違いされませんように。弥生さんが出演するのは『通天閣』ではありません(笑)。

by kaji

投稿者 TEH Editors : 02:06 | 映画&TV&演劇

2007.Sept.9

アヒルと鴨のコインロッカー

 ずっと忙しくて見られなかった映画を、やっと見てきました。

 あれほど特異な文体を持っている人なのに、伊坂幸太郎の映画化は、不思議と成功するなぁ、と思いました。『陽気なギャングが地球を回す』もそれなりの出来だったし。
 こちらも、あの登場人物たちを演じられる役者がいるんだろうか、と心配したけれど、全体的にみな好演で、唯一、不満があるとしたら「琴美ちゃん」があまり魅力的に撮られていなかったことかな。まあ、文章と違って生身の役者が演じると、事件が起こっているにもかかわらず、あんなに淡々としてはいられないのでしょうが。

 冒頭、映画のロケ地が、自分のイメージとあまりに違うのに驚きました。主人公のアパートは床がフローリングの小綺麗なとこだし、本屋は広い駐車場のある、郊外型の書店だし。でも原作を見直してみると、やはりどちらも、映画よりは古い感じの描写ですね。自分の勝手な思いこみではなかったようです。
 あと、映画で絶対に採用されると思った「自転車倒し」のエピソードがありませんでした。これはちょっと意外でした。

 私が特に気になっていたのは、原作の「問題の部分」をどう映像化するのか、ってことですが、いや〜 いとも簡単に「ミステリ界の不文律」を破ってくれています。
 いわゆる「作者は読者に対して、大事なことを隠すのはいいが、嘘をついてはいけない」というアレです。
 でも、あれで正解だったと思います。下手にあの部分に神経質になると、腫れ物に触るような脚本になっただろうしね。

 わざわざ劇場まで見に行ったかいがありました。

 来年は『死神の精度』と『重力ピエロ』の映画化が控えているそうですが… 『死神』はともかく、『重力ピエロ』はどうだろう? 不安が半分、といったところです。

kaji

投稿者 TEH Editors : 00:09 | 映画&TV&演劇

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