2008.Jan.19

『キサラギ』

 最近ミステリネタの書き込みばかりしていますが(笑)。
 今回も、それ系の映画の話です。

 もともと密室の会話劇というのが大好きで、古くは『12人の怒れる男』から、『12人の優しい日本人』、岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』など、その手のものにはすぐ食いつきます。なのにこの映画は見るのが遅れた。苦手な役者が出ていたとか、そういう訳ではないんですけどね。

 このシチュエーションで最も難しいのは「数人を一室に閉じこめる」ことと「そこで事件の話を始める」ことだと思いますが、フィクション設定を作ったり、地震で倒壊したマンションの地下に閉じこめたりと(古処誠二『少年たちの密室』)、過去の作品が苦労してきたことを「アイドル・オタクのオフ会」という設定であっさり通過してしまったのはすごい。ミステリ劇を書きたい人にとっては、憧れのシチュエーションだもんねえ… よく思いついたもんだ。

 評判に違わぬ出来だったと思います。中盤を過ぎると先読みできる部分もあるんだけど、それも伏線をしっかり張っているからこそ。だいたいがミステリ・オタクというものは、気づいたor気づかないを評価の基準にしてしまうと、ほとんどの作品がNGになってしまう。それよりむしろ伏線が収束していく楽しさのほうが大事。その点では『…優しい日本人』より高得点を付けたい。後半の伏線となる台詞をそうと気づかせない、前半のやりとりは見事だったかも。

「××××に気づかないわけはないだろ」というツッコミどころもこの際OKだ(笑)。この手の映画はどうしても、多少強引に話を進めなきゃならないところはあるもので、この映画も初対面の五人が、わずか半日で「アイドル自殺の真相」にたどりつくまで話を進めなきゃならない。その負担の大きい部分を、主役の小栗旬が一人で担当することになったのがちょっと気になった。場を盛り上げる役と話を進行させる役を、両方背負ったという意味で。

 むしろ、ここにこそベテラン役者を起用すべきだったかも。や、別に芝居がまずかったと言ってるわけじゃないですよ。ただ「仕事は真面目にやってるが、アイドルのファンだなんて恥ずかしくて言えない。だけどオタク同士ならはしゃげる」というキャラは、もっと年齢が上のほうが説得力あったかも。もっとも、それでは興行的にキツかったでしょうが(笑)。この手のマイナー・ミステリ映画にしては珍しく、客席の半分以上が女性で、一瞬「なんで?」と思ったくらいでしたから。

 あと、エピローグ部分がちょっと長かったかな。あの結末にたどりついたら、あとはサラッと終わってよかった気がします。

kaji

投稿者 TEH Editors : 00:37 | 映画&TV&演劇

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