マダラチョウ科
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石垣島 6.24,2013
雄:石垣島 10.12.2017
石垣島 6.24.2013
沖縄県石垣島 Nov 20 2006
沖縄県石垣島 Nov 20 2006
海外編
カバマダラの食草もガガイモ科のトウワタやフウセントウワタである。マダラチョウ亜科は殆どが熱帯から亜熱帯に棲息する蝶で、カバマダラも奄美大島以南の琉球列島に分布している。
そんななかで、渡りの習性を持つアサギマダラだけが唯一武蔵野でも観察される。
渡りといえば代表的なのがグランドモナーク(帝王蝶)と呼ばれるオオカバマダラで、名前のとおりカバマダラをふた周り大きくしたような蝶だ。毎年メキシコのシェラマドレ山脈とアメリカの五大湖周辺との実に3800キロメートルに及ぶ長旅を往復する。1950から60年代には、迷蝶として東京、奈良、沖縄などで確認された記録があるそうだ。
湯の丸・烏帽子 7.27.2018
沖縄県石垣島 Nov 21 2006
アサギマダラ(浅黄斑)はその名が示すように浅黄(浅葱)色の美しい大型のマダラチョウだ。マダラチョウの仲間では唯一本土にも生息し、しかも九州から北海道まで広く採取記録がある。渡りをする習性があり、気流にのって長距離を移動することができるので、このように広範囲にわたって観察される。成虫での寿命は20日から70日といわれるが、その間に千キロメートルを超える渡りの記録もある。このあたりが、アサギマダラのミステリアスな一面で、渡りの習性を研究している団体があるくらいだ。翅の半透明な部分は鱗粉がないので捕獲した個体に特殊なペンでマーカーを付けて放蝶し、マーカーの付いたアサギマダラを捕獲したら連絡を取りあって移動距離とルートを探索するわけである。
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石垣島 10.12..2017
石垣島 6.24.2013
最初にマダラチョウ族の選択蓄積が実証されたのはガガイモ科のトウワタを食草とするオオカバマダラで、実験的に鳥にトウワタに含まれるカルデノライドを蓄積したオオカバマダラを食べさせると、鳥は中毒を起こして激しい嘔気、嘔吐に襲われる。ところでカルデノライドは和名では強心配糖体と総称される。代表としてジキタリスがあり強心剤として処方されるが、ヒトの体内で蓄積されることはなく代謝・排泄される。つまり体内に蓄積されるというのは特異的な現象である。選択蓄積はマダラチョウ族の多くに認められる。面白いのは、アサギマダラもトウワタに産卵することは知られているが、トウワタの葉は毒性が強すぎて幼虫が死んでしまうことである。アサギマダラの食草のキジョランやカモメズルにカルデノライドが含まれているか明らかではないが、このことから同じマダラチョウ族でもアサギマダラはカルデノライドの毒性を克服していない可能性が示唆される。
和名:? Limenitis archippus
(英名:Viceroy)
海外編
幼虫の食草はガガイモ科のキジョラン、カモメズル、イケマなどである。ガガイモ科は種々のアルカロイドやカルデノライドを含む有毒植物で、アサギマダラは幼虫時代に有毒物質を体内に蓄積する。有毒物質は成虫になっても体内に蓄積され続けるので、天敵である鳥から忌避される。このように有毒物質が体内に蓄積されることを選択蓄積と呼ぶ。
フェロモンというのは同種内で情報伝達を担う化学物質のことで、danaidoneやhydroxydanaidalのように性的誘引作用があり配偶行動に関係する物質を性フェロモンという。一方、種間で化学物質を介して情報伝達を行うことを他感作用(アレロパシー)と呼び、情報伝達に関与する物質を他感作物質(allelochemicals)という。ガガイモ科のカルデノライドやヒヨドリバナ属のピロリチジンアルカロイドはもともと昆虫などの食害から身を護るために体内で作られるようになった毒物であると考えられている。このように発信者に有利に働き受信者に不利に働く他感作物質をアロモン(allomone)という。アサギマダラはガガイモ科、ヒヨドリバナ属という2種の異なるアロモンの毒、すなわち異なるアルカロイドをそれぞれ幼生時代及び成虫時代と異なる段階で克服し、天敵から身を護ること及び配偶行動のための性フェロモンの原料とこれまた異なる用途で利用していることになる。このあたりにも自然の神秘が感じられる。
本邦にも毒蝶なるものがいる。代表的なのがマダラチョウ亜科の仲間だ。食餌植物はキョウチクトウ科、ガガイモ科、トウダイグサ科、コショウ科、クワ科、ウマノスズクサ科、イイギリ科などが主で、その多くはアルカロイドなどの有毒植物を含む。仲間に毒蝶が多いのはそのためで、鳥などの天敵から嫌われている。
雌:沖縄県石垣島 Nov 20 2006
雌:沖縄県石垣島 Nov 20 2006
雌:小宇利島 9.27.2019
小宇利島 9.27.2019
石垣島 6.24.2013
沖縄県西表島 Jul 16 2004
沖縄県石垣島 Nov 21 2006
沖縄県石垣島 Nov 21 2006
沖縄県西表島 Jul 17 2004
日本で一番大きな蝶は沖縄本島以南に棲息するオオゴマダラだ。マダラチョウ亜科の仲間だから勿論毒蝶である。海岸近くの岩場に自生するキョウチクトウ科のホウライカガミが今までに確認されている唯一の食草だ。前翅の長さが約75ミリメートルあり、沖縄では「アンマーウーヤー」とか「ゴエンチョウチョ」あるいは「オオガミダラ」などと呼ばれ、古くから人々に親しまれている。
モントリオール(カナダ) Jun 15 2008
さて、アサギマダラの雄はなぜフジバカマの花蜜を好むのだろうか。フジバカマはキク科のヒヨドリバナ属で、この仲間はピロリチジン骨格[I]を有するアルカロイドを含む有毒植物である。ピロリチジンアルカロイドは強い肝毒性を有し(A.S. Prakash et al., Mutation Res., 443, 53, 1999)、花蜜にも含まれることから健康被害をもたらす食品としても重要視されている(J.A. Edgar et al., J. Agric. Food Chem., 50, 2719, 2002)。アサギマダラの雄はフジバカマの花蜜からピロリチジンアルカロイドを体内に取り込んで代謝し、揮発性のdanaidone [II]及びhydroxydanaidal [III]という2種の代謝物を生成し性フェロモンとしてヘアーペンシルと呼ばれる腹部末端の器官から分泌する。ヘアーペンシルは後翅にある性斑と呼ばれるパッチ型の器官(写真の後翅下部にある黒い器官で、雌にはないことから容易に雌雄を見分けられる)に接触してこれらの性フェロモンを移す。雄のヘアーペンシルと性斑はアサギマダラの配偶行動に重要な役割を担い、ヘアーペンシルを除去した雄では、交尾率が極端に低下することが実験的に確認されている(古前恒:化学生態学への招待、三共出版、1996)。このようにフジバカマは性フェロモンの原料となるピロリチジンアルカロイドを供給する大切な植物なので、開花前でもアサギマダラにフジバカマと分かるような化学物質がフジバカマから発散さているのかも知れない。
2005年6月5日、埼玉県比企郡嵐山町の『蝶の里』で偶然にもフジバカマの群落の上を優雅に飛翔するマーカーの付いた雄のアサギマダラにであった。フジバカマの花はアサギマダラの雄が好んで吸蜜に訪れるが、秋の七草の一つで開花するのはまだまだ先のことである。花が咲いていないのに何故アサギマダラがひらひらという疑問は後に回すとして、早速心当たりの団体に連絡したところ、5月20日に大分県の姫島村で放蝶されていることが分かった。何と16日間で744キロメートルを旅したことになる。この連絡は当該団体にとって二つの成果をもたらした。一つは姫島でマーキングしたアサギマダラが島外で再捕獲された第一号となったこと、二つ目は近畿から北陸圏への移動は予想できるが埼玉県への移動が確認されたのは過去に例がなかったことである。そういえばこの季節、関東でアサギマダラを観ることは珍しい。
沖縄県石垣島 Nov 21 2006
沖縄県石垣島 Nov 20 2006
沖縄県石垣島 Nov 21 2006
沖縄県石垣島 Nov 21 2006
湯の丸・烏帽子 7.27.2018
姫島でマーキングされた雄:埼玉県比企郡
嵐山町 JUN 5 2005
雄、後翅下部の黒いところが性斑(左)で雌(右)にはない:湯の丸・烏帽子 7.27.2018
石垣島 10.12.2017
雄:沖縄県石垣島 May 24 2008
雄:沖縄県石垣島 May 24 2008
沖縄県石垣島 6.25.2013
沖縄県西表島 Jul 17 2004
沖縄 May 19 2010
沖縄県石垣島 Nov 21 2006
沖縄県西表島 Jul 17 2004
沖縄 May 19 2010
長野県池の平 (雌) Aug 11 2009
石垣島 10.12.2017
群馬県軽井沢 (雄) Aug 12 2009
マルバネルリマダラ Euploea leucostictos
(英名:?)
長野県池の平 Aug 11 2009
ツマムラサキマダラ Euploea mulciber
(英名:Striped Blue Crow
大きさに似合わず薄い翅とスマートなボディを持ち、何となく頼りなげな動きで風を頼りにフワフワと舞うように飛翔する。一見弱々しくみえるが、実は成虫で数ヶ月も生きることができる。蝶の仲間では長生きである。
ちなみに本邦で一番小さい蝶が2003年10月更新された。与那国島で世界最小級の蝶が確認されたのである。ヒメシジミ属のタイワンヒメシジミで、前翅長7ミリメートル程しかなく、台湾から飛来した迷蝶らしい。食草のヒメノアズキが与那国島に自生しており幼虫や蛹も確認されていることから、繁殖の可能性があるかもしれない。
湯の丸・烏帽子 7.27.2018
石垣島 10.12.2017