感動!カヌーでユーコン川 パート1

 突然だが、夏にユーコン川に行くことに決めた。カヌーで下るのだ。以前から、野田知佑さんの世界に憧れて、日本の川をちょこちょこっと下っていたので、いつかは行ってみたかったのだ。足かけ十数年の思いだ。

 本当は新婚旅行で、ユーコンに行くつもりだったが(私の希望)、結婚したのが11月なので、ユーコン川はもうすっかりカチンコチンに凍っていた。それで、新婚旅行は2月に真冬のニューヨークでCATS観劇(Kの希望)になったのだ。
 てなわけで今回は新婚旅行パート2、ユーコン川下り!となったのである。パチパチ!

 行くと決めれば早い。二人の休みを調整し、個人ではちょっと不安があるのでツアーを探し、申し込む。誰もが絶対知っている会社だが旅行部門があるとは知らなんだ。友人は「宅配で送られるんちゃうか?」とか言ってたけど。

ユーコンってこんなところ
 そういうわけで、初めてのカナダです。といっても、なんやらの滝とか有名な観光ポイントへは全〜然行かず、北西部の辺境の地ユーコンテリトリー(ユーコン準州)だけです。人口が少なすぎて、州に昇格できないような地の果てでした。
 そんな僻地のそのまたハズレを流れているテスリン川とユーコン川をカナディアンカヌーで下りました。

 たぶん370qくらい。「たぶんなんて、いい加減な」と思われるかもしれませんが、ガイドブックによって350q〜400qまで差があるんです。人も住んでいないんで、ちゃんと測っていないのではないか?と私はにらんでいます。
 スタートすると泣こうが喚こうがゴールしないと帰れません。だって流域に人家も道も無いんだもん。

 調べてみるとユーコンは気候が激しいようだ。この時期にさすがに雪は降らないが、気温7℃〜20数℃、水温5℃ぐらいで、秋冬装備が基本らしい。しかもツーリングを始めると全泊キャンプである。

 テント、シュラフは持っているけど、3シーズン用なので、少し寒いかもしれない。夜寒いと寝られなくて辛いのでエアマットの購入を検討する。
 北海道の釧路川を下ったときは、銀マットだけで、地面からの冷えをヒシヒシと感じ、寒くて熟睡できなかった苦い経験があるのだ。
 超有名なサーマレストは性能が良いのだが、値段も良い...うーん却下。モンベルのアウトレットの店でサーマレストの半額近い価格でゲット。型落ちでも性能が良ければそれで良い。これは広げていれば勝手に膨らむスグレモノなのだ。

 現地は北極圏に近いので白夜でした。太陽が完全に沈まないので一日中遊べます。ひろは倒れるギリギリまで遊んでました。
 真夜中になっても日本の夕方感覚、早朝3時になると明るくなってきます。夜にならないのでオーロラは観られなかったけどね。
 釣りで言う、「まずめ時」が長くて嬉しかったなあ。「夕まずめ」と「朝まずめ」がくっついてるんだもんな。

 気象の変化が激しく、気温7℃〜32℃、水温5℃〜7℃でした。雨が降り10℃だったのが、太陽が見えた途端に30℃になった。着たり脱いだり忙しかったですね〜。
 水に手を浸けると冷たいのを通り越して痛い!長靴を履いていても水に入っているとキンキンと足が冷えてくるのがわかる。川の真ん中で転覆すると、岸にたどり着く間に溺れるのではなく、低体温症になってしまうそうです。もちろん、ノー沈で無事生還しましたが。

 旅程は大阪伊丹から羽田、羽田からバスで成田、成田から空路カナダのバンクーバー、乗り換えてやっとホワイトホースへ到着。もうフラフラ。帰りもこれを逆にたどるのかと思うと、かなりうんざり。
 ホワイトホースの空港はちっちゃくて可愛かったな。日本でいうと女満別空港くらいかな。宮古島空港には負けている。

 現地ではホワイトホースのユーコンで一番有名なアウトフィッターのカヌーピープルにお世話になりました。
 ホワイトホースからでもユーコン川を下ることはできるんだけど、スタート直後に大きな湖を縦断しなければならず、これがかなり辛いらしい。ひろ&Kは湖等の静水を漕ぐのが大嫌いなのだ。
 今回はホワイトホースからではなく、テスリン川からスタートし、フータリンカでユーコン川に合流するという、一粒で二度美味しいグリコのキャラメルのような川下なのだ。

使用したカヌー
 カヌーは18フィートのカナディアン。Kがバウ(前)で右漕ぎ、ひろがスターン(後ろ)で左漕ぎ。普段はタンデムのフォールディングカヤックをダブルパドルでやってるけど、今回はシングルパドルだ。でも実は最初にカナディアンで始めたのでシングルの方が得意なんです。
 しかし告白すると私はJストロークが得意でない…昔の手首の故障でJストロークのフィニッシュが‥。でもプライストローク(ラダーストローク)ができるので大丈夫。

「しっかり漕いでや〜」

 このカヌーに自分達で使うテント、シュラフ等のキャンプ道具一式と折りたたみ椅子×2、テーブル、共通で使用する荷物をコンテナ×2、斧、予備のパドルを積み込んだ。共通で使用する荷物とは、食材、調味料、鍋等の調理器具などなどだ。

 出発するときにみんなで自分たちのカヌーを決める。ガイドのジョーに
「なあなあ、どれが一番軽くて使いやすいんかな?」と聞くと
「そやな、これが一番ええんちゃうか」と言うので、これに決めさせてもらった。

 カヌー1隻に共通の荷物のコンテナを二つ積み込むのがノルマである。これもみんなで決める。
「カヌー決めるのにな、楽なやつにさせてもらったんで、重いやつ積むわ。どれが一番重いん?」と聞くとジョーが
「これやけどな、むっちゃ重いで、ええんか」「かまへん、かまへん」
こんな感じで舟と荷物を決めた。

川の様子
 川の流れは意外と速く、歩くスピードでは追いつけない。小走りというかジョギングしてやっと一緒に流れる感じ。とすると時速にして8〜10qくらいかな。日本の川だと洪水時のスピードだ。テスリン川よりユーコン川の方がちょっと速く思えた。

 テスリン川はけっこう山が近い。渓谷とまではいかないけれど、上流部って感じかな。幅は100〜200mくらいか。ユーコン川に合流すると景色は雄大になってくる。広いところでは、どれくらいあるかなあ?うーんわからん。中州や島がたくさんあるので見当が付かない。数百mはあるな、1qくらいあるのかなあ。

 テスリン川の水はきれいだけど、微妙に色が付いている。透明な超薄茶色って感じ。それに比べてユーコン川は嘘みたいにきれいだ。エメラルドグリーンというかアクアブルーというか、誰かがバスクリンでも入れているようだ。
 テスリン川とユーコン川の合流地点のフータリンカでは、なかなか水が混じり合わず、長い間、薄茶色とバスクリンブルーが平行に流れていて面白かった。

 ユーコン川を漕いでいると、小さいシャラシャラという音が聞こえてくる。耳を澄ましてみると、どうやら船底から聞こえてくる。上流の氷河が削った細かいシルト(粒子)が船底に当たって音を立てているようだ。テスリン川では聞こえなかったので不思議だ。
 Kが昼寝をしていて、ひろだけが漕いでいるとき、パドリングの手を休めて、よくその音に聞き入っていた。まるでユーコン川のささやきのようだった。

 場所によっては大きな渦巻とボイル(底から水が沸き上がっているところ)がすごい。そんな渦巻きとボイルが連続していて、見ているだけで怖く、やや緊張する。実際に巻き込まれると沈こそしないが、どんなに力一杯ラダーを入れても、クルッと回転してしまう。流れの力は強大なのだ。

 だが、水深が深いので瀬が無い。恐がりのくせに瀬が好きなKは
「瀬が無いんで、ちょっと物足りないね。」だって。よーし今度、四万十川でイヤっていうほど瀬を攻めさせてあげよう。

 川岸は20mくらいあるスプルース(針葉樹の「とうひ」・唐桧ってこんな字やったかな)の森で、たまに川に向かって倒れ込んでいる。倒木と流木にさえ気を付ければ、パドリングは難しくない。昼寝してても、初心者でも、酔っぱらっていても行けると思う。

ビールを飲んで日向ぼっこしながら昼寝するひろ「落ちんなよ!」

 

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