モーツァルトの手紙




 21    1780/12/16 ミュンヘンより 父宛
更新日時:
2009/08/01
「・・・いわゆる大衆性については、ご心配なく。だって、ぼくのオペラにはあらゆる種類の人たちのための音楽がありますから。ただし、耳の長い連中は別です。
ところで《大司教》の件はどうですか?今度の月曜日で、僕がザルツブルクを発ってから6週間になります。
最愛のお父さん、あなたは御存知でしょうが、僕はあなたを愛するがゆえにのみ・・・・にいるのです。なぜって神にかけていいますが、もし僕だけの問題だったら、今回僕が旅立つ前に、今度の辞令でお尻を拭いていたでしょう。
僕の名誉にかけていいますが、ザルツブルクではなくて、あの君主が、尊大な貴族たちが日ごとに僕には耐え難くなっているからです。だから、やつが僕に、《もうおまえが必要ではない、》と手紙をよこすのを、僕はどんなにうれしく待ちわびることでしょう。
目下、僕が当地で受けている現在および未来の境遇に対する大いなる庇護のおかげで、充分に保証されることでしょう。あの世に行ったら別ですが。
死に対しては誰であろうと責任は負えません。でもそれは才能のある独身の人間には、何の障害にもなりません。でも、この世の何事もあなたに喜んでもらうためです。
とはいえ、ときどきでも、ほんの少しの間、故郷を離れ、ひと息つくことができたら、僕の気持ちも少しは軽くなるでしょう。今回の旅立ちを押し通すのが、どんなに難しかったかは、御存知の通りです。
どんな考えにだって、さし迫った理由はあるものです。そのことを考えると泣きたくなります。だから、もうこれについてはよします。・・・」
 
 


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