特急はまかぜ1号 キロ180形グリーン車 R28形リクライニングシート 2009327 2009516日公開)

「鉄道旅行記 2009年春」 からのシングルカット

 関西へ帰省した際に、大阪から姫路まで「特急はまかぜ1号」のグリーン車に乗車した。

 

今回のテーマは、

1. R27系統(R28形)リクライニングシートへの熱い想い

2. 特急はまかぜ1号 グリーン車でいく

  

  

1. R27系統(R28形)リクライニングシートへの熱い想い

 はじめに、「R27系統」という呼び方をお許しいただこう。キロ180形グリーン車に用いられている原形の座席はR28形リクライニングシートである。ナロ20形車両のR16形やモハ20系(後に151系に改称)のR17形から基本的な意匠が受け継がれており、国鉄終焉期に各地でグレードアップグリーン車が登場するまでは在来線特急形グリーン車の座席はほとんどがR27形であった。細かな仕様の違いはあったが、1980年代の特急・急行のグリーン車は、一部の例外と新幹線を除けば日本全国ほとんど同じR27系統の座席であったと言っても差し支えないほどであった。

 

 「特急はまかぜ号」のキロ180形グリーン車のR28形リクライニングシートが大好きだ。この形の座席こそが私のグリーン車趣味の原点なのである。関西に行くたびに乗る機会を得たいと考えていたのだが、なかなか機会が無かった。なんと言っても実家と姫路以遠との間には結構な距離があるので、実家と大阪駅との間の距離や時間だけを考えればいいわけではないのである。また、「特急はまかぜ号」は1日に3往復しかないので、都合良い旅程を組みやすいというわけでもないのだ。

 今回、関西まで帰省するにあたって、大好きなR28形リクライニングシートに乗る為に「特急はまかぜ号」に乗る旅程を組み込んだ。距離だけで見ると、神戸→生野間(営業キロ98.4km)で乗っても良さそうだが、実家での滞在時間も長く取りたいので大阪→姫路間(営業キロ87.9km)の乗車にした。

 この「特急はまかぜ号」は、現在では古豪キハ181系で運転される唯一の定期特急列車である。R27系統の国鉄優等グリーン車の伝統的な形状の座席が残る現役車両は、ここで見られるキロ180形グリーン車だけなのである。なお、背もたれの形が大きく変わってしまった座席ならば他の地区でも少数ながら残っている。そのような大好きなキロ180形グリーン車なのだが、「特急はまかぜ号」は2011年に新型車両に置き換えられる予定である。私が子供の頃にスターだった車両がどんどん消えて行く。この形状の座席が近い将来消え去るのかと思うだけで、ものすごい喪失感に打ちのめされそうである。

 

 

 なんて美しいんだ…。背もたれ、座面、肘掛、フットレスト…総じて美しい意匠を生み出している。着目すべきは肘掛のカバーである。昔は回転クロスシートの在来線特急の普通車でさえも肘掛に真っ白なリネンのカバーが掛けられていたのだが、近年では、新幹線グリーン車も含めてリネンのカバーの着かない肘掛がほとんどになってきた。もちろん、新しいグリーン車の座席にはよく研究された立派なものが多く、それに比べるとメカニカルロック式の座席は古めかしいものかもしれない。しかし、私は、白いカバーが掛けられた座席が好きである。昔のグリーン車の座席には大きなカバーが掛けられていた。肘掛にカバーが無くなった近年の座席は、省力化を感じてしまい、特別車両らしさが弱まった気がしてならない。座席には、人間工学的な優秀さの他に視覚的な素晴らしさも大切だと思う。座席の意匠の好みは人それぞれだろうが、私はこの形状が好きでたまらない。

 

 

 テーブルと白いひじ掛けカバー。

 

 

 

2. 特急はまかぜ1号 グリーン車でいく

大阪9:36→姫路1040 東海道本線・山陽本線1D 「特急はまかぜ1号」 キハ181系気動車4連 キロ180-13

1D 運転区間:大阪9:36→浜坂13:17

 

 列車番号に着目してほしい。「特急はまかぜ号」の定期列車は1号から6号まであり、1Dから6Dまでの堂々たる列車番号が割り当てられている。陰陽連絡特急および近畿山陰連絡特急の真の重鎮かもしれない。さすが古豪キハ181系…。

 

 大阪駅は大規模工事中である。9時半頃であるが、34番乗り場は結構な人の流れがある。4番乗り場から924に丹波路快速が発車するのだが、その時にはすでに駅構内の東側に「特急はまかぜ1号」となるキハ181系編成の姿が見えていた。

 普通車指定席は1号車だけであり、そこへ小学生の団体が乗り込んでいた。春休み中であり、姫路よりももっと遠くへ行くのだろう。

 2号車グリーン車の乗客は私一人のまま、「特急はまかぜ1号」は大阪駅を発車した。ヤッター、「R28形リクライニングシートの国鉄型グリーン車、一人だけのグリーン車内」、まるで夢のような旅路が始まった。

 

 

 20058月に乗ったキロ180-12とは異なり、通路は絨毯張りである。フットレストの土足側も通常の素材でできている。

 

 

 淀川を渡ってから本格的な案内放送が入った。この段階で乗務している車掌は姫路までの乗務であり、車内販売は姫路からとの事である。

 

 車掌氏は後ろの3号車普通車自由席から順に検札を行っていた。グリーン車の乗客は私一人だけなので先に済ませてくれても良さそうに思った。検札について尋ねたところ、人によってやり方があるらしい。

 

 キハ181系は今となっては旧性能の車両であるが、高速電車に挟まれた大阪⇔姫路間においても余力のある走りを見せる。エンジン音が絶え間なく響き続けるほどの厳しいスジではないのだ。内側線を走る電車とのギリギリの競走劇を見たかったのだが、いずれも圧倒的な速度差で「特急はまかぜ1号」の方が速かった。さすが往年の韋駄天特急車だ。

 

 「特急はまかぜ号」は、現行ダイヤにおいて神戸駅に停車する唯一の定期特急列車である。午前10時の神戸駅、なんと停車する2本の特急列車が並ぶ。2番乗り場には「特急はまかぜ2号」、5番乗り場には「特急はまかぜ1号」の姿がある。しかも、間の3番と4番の乗り場には他の列車がいないようなので、まさに「午前10時の はまかぜショー」といった様相である。

 

 グリーン車の乗客の増減を記しておこう。三ノ宮で4人乗ってきた。神戸で3人乗ってきた。明石で1人乗ってきた。姫路では大量に乗ってきた。

 

 山陽本線内では後ろの車両の小さな子供が「この電車がいやだ」と言って大泣きし、その保護者がその子をグリーン車に連れてきてなだめていた。いくらこちらのグリーン車の方が人が少ないとは言え・・・。グリーン車客室の後ろ寄りの乗客は私一人だけだったのだ。

 

 下りの「特急はまかぜ号」は姫路駅では山陽本線ホームに着発する。ここで進行方向を変えて播但線に入るのである。到着前には車掌が替わる旨と進行方向が変わる旨が案内された。また、国宝姫路城の案内もなされた。

 姫路からグリーン車に大量の乗客が乗り込んできた。1両しかない普通車指定席が混んでいたからグリーン車も混んでしまったのか、あるいは本当にグリーン車の需要があったから混んだのか理由はわからないが、グリーン車は姫路から大盛況であった。私は大阪から乗って正解であったと言える。

 さて、車内があまりにきれいなので姫路下車後に見てみると、「後藤総20-3」になっていた。また、姫路駅はすっかり高架化されていて、旧施設の撤去工事が進められていた。

 

 

3. あとがき

 1994年、智頭急行線の開業とともに「特急スーパーはくと号」が登場したことにより、「特急はまかぜ号」は大阪と鳥取を結ぶという重要な使命を失った。また、大阪と城崎あたりを結ぶにしても福知山線経由の「特急北近畿号」などにはかなわない。現在の「特急はまかぜ号」は兵庫県内の旅客輸送に重点が置かれていると言えなくもないが、実にあいまいな状態に置かれているのである。長年放置されてきた感のある「特急はまかぜ号」であるが、2011年に新型車両に置き換えられる事になった。古豪キハ181系が現役の特急列車として活躍できる時間もそう長くは残されていない。キロ180形グリーン車については、関西に行くたびになるべく乗る機会を得たいものである。

 

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