「ぷらっとこだまグリーン車エコノミープラン」利用感想  2007810日乗車 200799日 公開)

 

「新幹線特急こだま551号」 319-60 東京1656→新大阪2056

 

★★★ぷらっとこだまグリーン車エコノミープラン…利用に至った判断や規則など★★★

 

 「ぷらっとこだま」を初めて使った。「ぷらっとこだま」とは、特定区間において「新幹線特急こだま号」に格安で乗れる旅行券の事である。これはJR東海ツアーズが売り出している旅行券であり、きっぷではない。「こだま乗車票」の他に「1ドリンク引換券」もついてくる。

 「ぷらっとこだま」だと東京-新大阪間を11,500円で「こだま」のグリーン車に乗れるのである。これは新幹線自由席の通常の運賃料金よりも安い。

「ぷらっとこだま」における通常期と繁忙期の日付の区分は、通常のきっぷの場合とは異なる。

 見てのとおり、「ぷらっとこだま」におけるグリーン車と普通車の差額はわずか1,500円である。グリーン車用がいかに激安なのかお分かりいただけよう。

 

 

 私はグリーン車の安売りを快く思っていない。「グリーン車、なのに、エコノミー」という意味がよくわからない。そうは言うものの、せっかく安く乗れるのだから機会があれば「ぷらっとこだま」を使ってみたいと思っていた。

 「ぷらっとこだま」は、2007年においては810日までは通常期価格であり、翌11日からは繁忙期価格となる。私は10日から夏休みなので、都合よく通常期料金で乗れるので利用する事にしたのである。さすがに1,500円も高くなる繁忙期料金を出したいとまでは思わない。

 

 「ぷらっとこだま」は、理由がどうであれ指定の列車に乗り遅れたら原則として完全に無効になってしまう。通常の特急券とは異なって後続列車の普通車自由席にさえ乗れないのである。絶対に乗り遅れてはならない。

 私は多忙で休日出勤になる事も多い。夏休みの初日ももしかすると仕事で半日ぐらいつぶれるかもしれないので、実家に帰り着ける最も遅い時間帯の「こだま551号」にした。

 

 「ぷらっとこだま」は販売店が限られている。また、当日販売は無く、予約の取り消しは購入した店でしか受け付けてくれない。そのようなわけで当初は、「ぷらっとこだま」は往路専用とすべきだろうと思っていた。しかしよく考えると、復路の日程が確実であると言い切れるならば、復路を「ぷらっとこだま」にしてもよさそうである。

 

 近年の私は、東海道区間の新幹線を利用する場合は、「のぞみ」の普通車自由席に乗る事が多い。東京駅や新大阪駅で、適当な時間に乗れそうな列車に乗り込めばいいからである。何時間も前から発車時刻を気にするのがどうも気忙しいのだ。

 新幹線に乗っている時間自体は「のぞみ」の約2時間半に比べて「こだま」の4時間なわけだが、「ぷらっとこだま」の場合は乗り遅れてはならないからじゅうぶんな余裕を見込んで自宅を出発する事になる。それゆえに、「のぞみ自由席」と「ぷらっとこだま」との精神的な所要時間の違いは2倍ではきかないぐらいであろう。

 

 

 「ぷらっとこだま」は何と比較するかによっても大きく価値が変わってくると思う。普通車用の「ぷらっとこだま」には何の利点も感じないので、グリーン車用を基準に記す事にする。

 

 

 ところで、「こだま」は500km以上の東京-新大阪間を所要4時間で走り抜けるわけだ。在来線の俊足特急でも絶対にまねのできない芸当ではないか。「のぞみ」と比べられてしまうとかなり見劣る感のある「こだま」であるが、純然たる「Super Express」である事に変わりはないのである。ちなみに、昭和39年に新幹線が開業した当初の「超特急ひかり号」の同区間における所要時間も4時間であった。

 実在しないが、仮に在来線の東京-大阪間に東海道座席急行があるとしよう。その場合、運賃8,510円、急行料金1,260円、指定席料金510円の組み合わせだけで「ぷらっとこだま(普通車通常期)」の10,000円を超えている。「ぷらっとこだま」にはさらに飲料まで付くのである。競合交通機関があるとさすがの新幹線特急でさえもこんなに安売りされてしまうのだ…。なんだか往年の名列車からの流れを受け継ぐ「Super Express こだま」がかわいそうに思えてくる。

 

  

 

★★★乗車記録★★★

 かなりの込み具合で東京、品川、新横浜を出発した。後日談だが、この日のJR東海下りの新幹線利用客は過去最高の約23万人であったらしい。810日なだけに、「10日移動新幹線」と言ったところか…。

 それにしても、小田原などの途中駅では5分や6分の長い停車を繰り返して後続列車を先に通す。多くの駅に長く停車しながらも東京-新大阪間を4時間で走り抜くのだからたいしたものである。

 

 詳述は避けるが、近隣の乗客が悪臭を放っていた。私は嗅覚が敏感であり、悪臭は耐え難い。車掌さんに申し出て席を替えてもらった。指定席でこのような目に遭うのは初めてだ。しかもせっかくのグリーン車なのに。

 私は格安券の乗客なので座席変更を遠慮がちに申し出たのだが、快く調整席に案内してもらえた。よく考えれば、近年はJR東海の新幹線グリーン車は安く乗れる方法がいくつか用意されているので、座席限定販売の激安券である「ぷらっとこだま」だからといってとりわけ卑屈になる必要もないのであろう。

 

 西へと向かうほど席が空いてくる。車内が空いてくればよくわかるのだが、「ぷらっとこだま」の乗客は客室内の一角に集中している。ガラガラの車内といえども隣に人がいるような状況だ。隣が若い女の子ならばうれしいが、その場合は途中から別の席へと避難されたらかえってショックであろう。「ぷらっとこだま」は気心が知れた者同士で2席を予約して利用するのが良いと思った。せっかくなので客層を記しておこう。やや高齢の夫婦の他に20歳代ぐらいの人が男性1人と女性2人が確認できた。

 

 

 「ぷらっとこだま」ならば破格の激安価格で新幹線グリーン車に乗れる。そうは言うものの、近年の東海道区間の新幹線グリーン車は、配色や座席カバーの有無などでも普通車との決定的な違いは無く、座席が大きいだけの普通の車両という感じがしてならない。

 車体構造面においても重厚さが感じられない。一例だが、各号車ともにデッキから扉一枚隔てたところから客室になっている。かつての国鉄特急形優等車では、デッキから扉二枚隔てたところから客室になっている物が主流であった。

 また、照明が暗いグリーン車が多いのも私にとっては減点要素である。とりあえず300系グリーン車の照明に不満は無いが、新幹線においては100系よりも後の系列から“グリーン車へのこだわり”というのが急激に低下してきたように記憶している。

 

 

 私がグリーン車らしさを最も感じる設備であるフットレストにも目を転じてみる。300系には当たりハズレがあり、今回乗車した物は“当たり”であるが、上下に動かない型の“ハズレ”も存在する。“当たり”といえども、高さを変えた場合に角度が連動するようには造られていない。なんとなく省力化を感じてしまう。

 余談だが、私は靴を脱いでフットレストを使うのにはちょっとした抵抗がある。少なくともフットレストに直接接した靴下のままで自宅に上がろうとは思えない。たいてい毛布を借りるのだが、その毛布を包んでいた袋をフットレストにかけて使っている。

 

 

 新大阪駅では上りホームとなる25番のりばに到着である。同じホームの反対側26番のりばには500系「のぞみ50号」が停車中であった。主役の座から短期間で引きずり落ろされた者同士が並ぶのである。

 ちなみに、24番のりばに停車中の300系編成のグリーン車はフットレストが“ハズレ”の物であった。あれもまだ残っていたのか。あれに当たる可能性もあるわけだ。

 

★★★あとがき…グリーン車への思いと「ぷらっとこだまグリーン車エコノミープラン」の価値★★★

 修学旅行臨時などの団体列車においてグリーン車に乗客がいる事がある。同じ学校内で普通車とグリーン車に分かれている事例もあるので、ああいうのを見るたびに料金設定が気になっていた。他にも一部の地域で見られるようなグリーン車開放にも憤りを持っていた。なんだかみみっちい発言と思われるかもしれないが、私はグリーン車が普通車と同様に扱われる事が気に入らないのである。しかし今回、普通車の通常価格よりも安くグリーン車に乗れた事で今までの憤りがいくぶん収まったように思う。なんだか憤りの分をキャッシュバックしてもらったような気分だ。それにしても、座席に大きな白いカバーがかけられた高額な特別車両が復活しないものかといつも思っているぐらいである。

 

 さて、「ぷらっとこだまグリーン車エコノミープラン」は、通常の運賃料金との差においてはかなりお得感がある。しかし、車両の魅力や出発前の精神的拘束等も含めて総合的に考慮すると、なんとも言えない。可となるか不可となるかは時と場合によると思う。かつて私は、東海道区間において「こだま」のグリーン車を通常の料金で何度も愛用していた。「ぷらっとこだま」の安い価格で往年の0162000番台車のR32形リクライニングシートだったら死ぬほどうれしいのだが、さすがに無い物はねだれない。

トップページ 乗車体験記 鉄道雑感 メール