静岡県 川根路 200346日(日) 2003/4/7月 公開)

 

郷愁のSL列車に乗って、桜が満開の川根路を訪れた。

今回のテーマは、

1. 春旅行

2. 大井川鐵道「SL急行かわね路号」

3. 大井川鐵道大井川本線家山駅…「映画/学校の怪談2」のロケ地

4. 旅程 他

 

 

1. 春旅行

 私は毎年、桜の咲く頃には気分が沈む。当然、どこにも行きたくない。しかし、今春は職場環境の激変などもあり、例年よりは少しだけ暖かい春を迎える事ができた。そのようなわけで今回の旅行が実現した。

 桜が咲き、新入生や新社会人などの存在を意識すると世の中が進み行く事を実感する。ろくでもない人生を送ってきた私は、そのように春を意識してしまうと、ますます世の中から取り残されたような惨めな気持ちになるのである。もう十年以上もそのような気持ちが続いている。ニュースなどで桜の美しさが報じられると、その華やかさとは対極にある我が身を振り返って更に気分が沈むのである。「桜咲く」という言葉があるが、人生において一度も花を咲かせた事のない私は、桜を心から美しいと思えた事がなかった。しかし、今年は桜の美しさを素直に称えられる気分になった。

 さて、この季節は朝晩と昼の寒暖差が激しい。朝晩に必要となる大量の防寒着は日中には大きな荷物になるので、公共交通機関を利用する旅はけっこう辛いものがある。

 

 

2. 大井川鐵道「SL急行かわね路号」

 近年、全国的にSL(蒸気機関車)の復活運転が見られる。それらの多くは近代的な客車により運行され、イベント性の強いものが主流となる。しかし、大井川鐵道のSL運転は本質的に違う。時折イベント塗装の機関車を走らせることもあるが、基本的に旧国鉄の蒸気機関車や旧型客車をなるべくその当時の姿で、しかも毎日走らせているのである。まさしく“郷愁のSL列車”である。

 旧型客車に初めて乗った。さて、世の中では“懐かしいもの”が時折ブームとなる。旧型客車もその範疇に入るようだが、これらの旧型客車が現役の当時に私は乗ったことが無い。つまり、知識として“懐かしいものである”という事は知っているが、自分にとって本当に懐かしいものというわけではない。

 

 オハフ33の客室内である。本物の網棚にもお目にかかれる。一つひとつの部品を列記しだすときりがないのでやめておく。しかし、初体験となる手動の乗降扉はさすがに走行中に開けてみたくなった。もちろん、それは禁止されている。

 私が乗った列車は、金谷11:50発の千頭行きである。指定券は売り切れており、「立席承知」のSL急行券を発券してもらう。それでもなお、SL急行券売り場には長い列ができている。

 JR東海道本線と乗換えとなる金谷駅の大井川鐵道線は、短いホームのある1面1線の構造になっている。後補機となる電気機関車を先頭に客車7両のSL列車が入線してくる。なお、ホームが短いので、このホームから先頭の蒸気機関車を見ることはできない。

 私は大井川鐵道に乗るのは初めてだが、SL列車に乗るのは3回目である。今回もSLの息づかいを録音するつもりである。今回は窓が開き、かつ客車のディーゼル発電機の音も無いので機関車の次位となる7号車オハフ33に乗り込む。ちなみに、この列車の先頭は、名タンク機の“C11-227”である。

 金谷発車時点では空席がかなり多かった。しかし、大井川鐵道の本拠地となる隣の新金谷からはバスで訪れた団体さんなどが多数乗り込み大盛況になった。「立席承知」の場合でも空席があれば座っても良いとの事である。私は次の停車駅の家山で降りるので、空いているボックスを使う事にした。

 蒸気機関車の次位に連結されている窓の開く車両に乗るのは初めてである。汽笛を鳴らすたびに水滴が飛んでくる事を初めて知った。

 私は地域特有の車内放送は好きな方である。しかし、ベテランのおばさんには申し訳ないが、昔の汽車旅を期待していた私としては、イベントに特化した車内放送が絶え間無く延々と続くのはあまりいただけなかった。

 SLが汽笛を鳴らすたびに車内では歓声が上がる。まるで、SLをスターと見立てたコンサート会場の様相である。しかし、いくらなんでも終点まで1時間以上もこんな光景が続く事は無いだろう。

 

家山で下車し、ようやくSLの雄姿を撮影する事ができた。

 

 

3. 大井川鐵道大井川本線家山駅…「映画/学校の怪談2」のロケ地

 この家山駅は映画「学校の怪談2」を撮影した現場である。この駅は“桜の季節”、“郷愁のSL列車”と並ぶ今回の旅の目的の一つである。私は、この「映画/学校の怪談2」が大好きである。物語がとってもえーがー

 「映画/学校の怪談2」ではハルエの「帰れるよ。」というセリフのところからいくつかの別れの場面が展開される。この駅もその重要な舞台となる。

 さすがに大型機材が無いので、「映画/学校の怪談2」と同じ角度からの撮影はできなかった。この映画では、手前に写っている上り本線の上の高い位置よりホームを見下ろした角度から駅の場面が始まる。

 

 走り去る列車に向かってツカサが「二度と来んなよー。」と叫ぶ場面が印象的である。「また来いよ」と、とりわけ異性に対して素直に振舞えない少年の頃を思い起こさせるには十分すぎる演出である。

 見てのとおり桜が満開である。どちらを向いても人がたくさんいる。この写真にも人が写ってしまった。

 それにしても、とても絵になる駅である。この駅は中間駅であるが、留置線もあり、終着駅の雰囲気も持ち合わせている。実際に、「映画/学校の怪談2」で列車に乗り込む間合いなどの様子を見ていると、終着駅として描かれている事が分かる。なお、この映画では下り本線から上り列車を発車させている。この場合、ホームから見た列車の右左が入れ代わらないからそのようにしたのかもしれない。しかし、“直進で”発車させる事により、ローカル私鉄の終着駅を発車していく情景が極めてよく表現されていると私は思う。

 実は、先ほど乗ってきたSL列車がこの駅で行き違った列車は、映画に登場する列車と同じ形の車両である。上掲のSL写真の左端に少しだけ写っている。せっかくなので映画と同じ場面を撮影しようと試みたのだが、見てのとおり駅は人がいっぱいなので、ホームの反対側まで走って行って撮影する事は困難であった。一応撮影はできたが、電車が小さくなってしまったのでその写真は公開しない。

 

 「映画/学校の怪談2」において走り去る列車の後部から撮影された場面を想定して撮影した。なお、下り本線の1本隣の留置線にはスハフ43などの姿が見られるが、これも映画と同様である。

 実は、復路にこの駅を去る時にもこのような写真を撮ろうとしたのだが、その車両の構造と他の乗客の位置が理由できれいに撮影する事ができなかった。

 

 「映画/学校の怪談2」でこの駅が登場するのは45日という設定である(注)。これほどの桜の名所ならば劇中に花見客がたくさん登場していてもおかしくないわけだが、映画では登場人物以外はほとんど排除されている。そこで、この映画の撮影について駅員さんに尋ねてみる事にした。しかし、この駅は委託駅であり、この駅に長く居続けている人はいないという事であった。従って、撮影秘話などを得る事はできなかった。

(注)肝試しが行われる44日のナナコのセリフ…「ねぇねぇ、明日も一緒に帰ろうね。」

 なお、この駅は、「映画/鉄道員」において集団就職列車を送り出す場面にも登場している。他にも、昭和を描いたドラマなどでもSLと一緒によく登場している。

 

 

4. 旅程 他

 沼津からは島田行きの113系に乗り込む。島田は目的の駅である金谷の一つ手前である。東海道本線にはさまざまな乗換パターンがあるが、今回はこれが好都合である。もう一本後の列車だと乗り換えなしで同じ時刻の1121に金谷に到着できるのだが、不測の事態に備えてなるべく早めに進む事にする。東海道本線は日中に乗ったことも多いので、沼津から島田までは日頃の疲れもあり眠っておいた。

 大井川鐵道にはいろんな鉄道会社から移って来て第二の人生を歩んでいる車両が多い。多くの種類の動力車を取り扱う事は非常に大変な事である。蒸気機関車の運転も積極的に行う大井川鐵道には敬意を表したい。とりわけSL列車の運転は貴重な文化財を後世に伝えるものである。これは経済的にも大変だと思うが、少なくとも蒸気機関車に本気で郷愁を感じる世代の多くが生きている間は是非がんばって続けていただきたいものである。

 大井川鐵道には旧国鉄の蒸気機関車や旧型客車の他、大手私鉄の往年の名車も現役で多く活躍している。それゆえにマニアの為の観光専用鉄道だと勘違いしているバカも多いようである。沿線住民の生活も乗せて走っているのである。撮影に来る人も多いようだが、列車往来妨害や沿線の田畑を踏み荒らすなどの問題行動もあるようだ。愚民どもは迷惑だから出かけるな!

 

 

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