政府、団体訴訟制度を閣議了承し国会上程

 
  3月3日、懸案であった消費者団体訴訟の制度化に関する法案が消費者契約法改正案として閣議議決定され、国
会上程された。政府では、内閣総理大臣の諮問機関である国民生活審議会において制度の具体的内容を検討してい
た。それをもとに内閣府では、消費者契約法に消費者団体訴訟制度を導入するための法律案を今通常国会に提出
するため、作業を進めてきたものである。
 
  消費者契約法は平成12年に成立、同13年に施行され、消費者・事業者間の契約(消費者契約)に関し、事業者の
不当行為(不当な勧誘行為、不当な契約条項の使用)があった場合、消費者が契約の取消しや条項の無効を主張で
きる旨規定した法律である。製造物責任法とともに本格的な民事消費者法とされる。

  しかし、問題もあった。消費者契約に関連した被害は、同種の被害が多数発生する。被害を受けた消費者について
は消費者契約法により個別的・事後的に救済することはできるが、同種の被害の広がりを防止することは困難なことで
ある。そこで、消費者被害の発生・拡大を防止するため、事業者の不当行為自体を抑止する方策が必要となる。その
方策として注目されてきたのが、消費者全体の利益を守るため、一定の消費者団体に、事業者の不当な行為に対す
る差止請求権を認める制度、すなわち、消費者団体訴訟制度であった。

  法案では、「適格消費者団体は、事業者等が不特定かつ多数の消費者に対して、消費者契約法第4条に規定する
勧誘行為又は同法第8条から第10 条までに規定する契約条項を含む契約の締結の意思表示を現に行い又は行うお
それがあるときは、当該行為の差止請求をすることができる」と規定している。

  団体訴訟制度では、事業者の違法行為の差止とともに、違法行為によってすでに被害を受けた消費者に代わって
消費者団体が違法行為を働いた事業者に損害賠償請求訴訟をすることも考えられるが、後者の訴権については導
入を見送られた形である。消費者団体や民主党等の野党は損害賠償請求権も規定すべきと主張してきたが、本政府
案では入っていない。差止制度の創設は消費者保護分野における大きな進展であるが、多数小額被害を特徴とする
消費者被害の救済は現行法では不十分であり、損害賠償請求権も実現すべきである。また、差止請求権だけでは、
消費者団体にとって、そのための訴訟費用を自腹で調達しなければならず、消費者団体の財政面での支援も必要とな
るが、本法案では何もふれていない。そのほか、政府法案はいくつかの問題を抱えており、同日、消費者機構日本は
声明を発表している。
                                                               細川幸一


 政府提出法案の概要
 
 消費者機構日本声明文
 
 参考:アメリカの被害救済制度(父権訴訟)


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