翌日はプールではしゃぐ子供の声で目が覚めた。

 ぼんやりした頭のままで朝食をとる。バイキング形式でさまざまな人種のリクエストに応えられるメニュー。せっかくだからと朝からチャーハン(カオ・パット)と焼きそばに挑戦するも、昨日の長旅で疲れた胃袋には少しヘヴィーだ。
部屋に戻り新しいTシャツに着替えるとホテルの周りを散策する。

 ビーチ沿いにはものすごい数の店。マッサージ、海賊盤CDショップ、レストランにタクシー、トゥクトゥクがずらりと並ぶ。
歩いていると呼び込みがすごい。とりあえず無視し歩く。しかし暑い。まずはショートパンツといかしたTシャツを買いたい。適当に入ったお土産やの兄ちゃんに「ディスカウントしろよ、おなじアジア人なんだから」といってTシャツ4枚、ショートパンツ1枚で1000バーツ(約2800円)。

 さらに炎天下を歩く。と、そこには吹き抜けの小屋がある。中はたたみのようなものが敷いてあり、トドのような白人女性とその亭主と思われる男性がタイ人のおばちゃんにマッサージされている。
それもかなりアクロバチックなカッコをさせられているぞ、うん、これがうわさに聞く「タイ式マッサージ」というヤツか。
俺もやってもらおう!てんで入店。
1時間で250バーツ(約700円)、激安!おばちゃんは英語が話せないのでマネージャーみたいな人に60分オーケーといい、さっそくマッサージ開始。

 天井にはおおきな扇風機の羽がゆ〜っくり回っている。小屋は吹き抜けのためゆるゆると程よく風が顔をなでてくれる。
むかし、夏休みにおばあちゃんの家で遊んだあとに昼寝したときってこんなだったよなぁ〜、と思いながらウトウトする。

 う〜ん、リフレッシュできたな。またしてもビーチの周りをほっつき歩くと、オープンエアーでイイ感じのスタンドバーがある。白人のデブが一人でビールをちびちびやっていた。おれもさっそくカウンターに腰掛け、まだ正午前なのに今日最初のシンハービールを注文した。60バーツ。

 女性が二人で切り盛りしているようだ。一人はタレントの原サチエ(スイマセン、漢字知りません)似の美人。
もう一人はカウンターでコーラにストローを突っ込みちゅーちゅー吸っている。それでも勤務中なのね。

 炎天下ではどんなに暑く感じても、日陰の中にもぐりこむと心地よい風が体に張り付いたTシャツをほどいてくれる。
エアコンの暴力的な冷やし方とはまるで違うな。

 で、ビールを傾けながら本を読んでいると、女主人に屋台のオッサンが昼飯を持ってきた。
ガラスケースの中には何かにつるされた肉や黄色くて縮れたメンなんかが置いてある。女主人の本日の昼食は日本でいうところのラーメン、といったところだろうか?タッパの低いプラスティックのどんぶりにちょっと少な目のメンがスープに浮かんでいる。スープは半透明程度のにごりで、トッピングには魚肉のだんごと韮のような青い茎ものともやしが入っている。それにさまざまな調味料をふりかけ味を調節して食べるらしい。

 遠慮もせずそのメンをしげしげと眺めていると、原サチエが「屋台で買ってここで食べてもいいよ」と言ってくれる。で、さっそく注文。具の肉の種類を確認され、「ヌードル」と告げると親父はメンをお湯の中に放り込んだ。

 そんなに待たされることなくありつくことが出来る。40バーツ。原サチエじゃないほうの女性が「スパイスを入れると、もっとウマイよ」とアドバイスをくれる。これが辛くて、これがすっぱくて、と説明を聞いてもよくわからないんでとりあえず適当に入れて食べる。
感動するほどうまくはないけれど、日本円で120円という値段を念頭に置くと十分「アリ」と思える分、箸がさくさく進んだ。

 そんなこんなでだらだらと過ごした後、またビーチ周辺をうろうろ。
すると「床屋&マッサージ」と描いてるところが目に付く。店の前にはテーブルといすが置いてあり、そこに女性が5人ほど、物憂げにマニキュアを塗ったり、おしゃべりをしている。店のガラスケースに書いてある足の裏と体の各反射区を示す絵に誘われて一人に「1時間何バーツ?」と聴くと300バーツとのこと。まあいいか、足の裏をマッサージしてもらうのは気持ちいいしね、とすんなり決めて案内してもらう。
マッサージしてくれるのは宮里藍を凶暴にしたカンジのタイ人女性。足を洗面器につけ洗ったあと足裏と足首をマッサージしてくれる。
「あんまりうまくねぇ〜なぁ〜」と思いながら目を閉じていると宮里藍が「あと30分は全身マッサージをしてはいかが?」という。

 まあ、それも悪くないかと思い承諾すると2階へ案内される。カーテンで仕切られた2畳ほどのスペースに寝かされ背中をマッサージされる。あ〜やっぱり下手だなコイツ、と思っていると仰向けになれ、とのこと。
言われたとおりに仰向けになると藍ちゃん曰く「(俺の愚息を指して)ココ、マッサージ、2000バーツ、キモチ、イイネ」といいヤがる。
なるほど、そういうことか。いわゆるピンサロなのだ、ここは。

 しかしハンドジョブのみで日本円にして6000円とは、「ノー」と断るがしつこい。「じゃあもういい」といってもそこから出してくれない模様。押し問答もメンドくさくなったのでじゃあ1000バーツで、と告げるとしぶしぶサービスを始めた。が、いたいのなんの。値切ったとしてもこれはないんじゃないかと思うがそれにしてもいたい。さらに一応、流れの一部として欠かせないものなのかみずからオッパイをべろ〜んと開陳。しかしサイズ、形ともまったく自慢できない代物でしかも、ナツメの様な先端部にすっかりげんなりした俺は「もうけっこぅ」といってそそくさとその場をあとにする。

 こんな店二度とくるかとおもい金を払っていると横のソファに寝そべっている同じようなコスチュームを着た女がすんごい目で俺を見ながら宮里藍にタイ語で何か問いかけている。「こいつからいくらボったの?」「1000よ、1000」「げぇ〜、まじありえなぁ〜い」と言うような会話がそこで交わされていたと思うがいかんせんタイ語はよくわからないので腹も立たない。

 店を出ると運悪く、雨がふってきた。そそくさとホテルに戻ることにした。

モドル
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