さっきの峠越えからまともに休んでいない。
それに腹も空いてきた。ここは開陽台であったかいものでも食べよう。
駐車場にオートバイを泊め、食堂へ。味噌ラーメンをすする。
一杯のラーメンがこんなにありがたいのか、としみじみ思う。
そうだ、オートバイの旅は、普段惰性で行っている「食べる」「眠る」という行動がとてつもなくありがたく感じることができるんだ、とそのとき気付いた。そして、そういうことをないがしろにしていたらおおきな事故につながる危険性だってあるのだ(寝不足で無理な計画を実践しようとして夜間走行、なんてもってのほか。食べることも同様)。
旅に出る前からずっと天気情報をチェックすることだってそうだ。普段だったら「あ、雨が降ったら車で行こうかな」ですむものが、どれくらいの降水確率でどの地域が確率が低い、などの情報を総合的に判断して予定を組む。それはどこか「生き延びる」という行為につながっている気がする。情報を判断し、予定を組み、食べ、眠る。日常の生活では決して味わうことの出来ない緊張だ。
オートバイの旅のときは、もし何かあった場合のための携行食も持っている。
体温が下がらないように着る物にも工夫を凝らす。
そして、自分のもてる力をつくして旅を続ける。
それでも、自然の力には勝てない、ということをいやというほど思い知らされる。
冷たい雨に打たれ、避けては通れない峠を越える。山間部の冷気ですっかり冷え切った体に、珈琲やラーメンのありがたさがじんわりとこころを打つ。
普段の生活での、時間が来れば惰性で食べる食事より、思いっきり自然の洗礼を受けて補給する食べ物の、なんとありがたいことか
そんなことを考えながら食後の珈琲をぼんやりと飲んだ。
上)開陽台で食べた味噌ラーメン。いももち付で8百円。ここではとなりのキャンプ場で寝泊りしているライダーのために「ライダー定食」なるものも出している。お値段320円。メニューは未確認ですが、おかずよりもどんぶり飯のボリュームで勝負!ってカンジでしたよ。