| ２００８年８月１７日（日） 大山街道餐歩第６回目 |
【歩行起点】 （相鉄線相模大塚駅→）(大和市)大和斎場入口信号 ８：１０発 【歩行終点】 小田急＆相鉄線・海老名駅 【歩行距離】 ９．４ｋｍ 【歩行行程】 相鉄線相模大塚駅～大和斎場入口信号～西鶴寺～大塚跡～富士塚～望地～伊勢山自然公園～温故館～相模国分寺跡～国分寺～七重の塔～海老名駅 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 今日は、前回同様村谷氏との同行に加え、地元海老名市の清水氏を交えての３人旅である。８：１５相模鉄道「相模大塚駅」集合の約束だったが、８：０５に着くともう２人とも先着済みで、早速資料を基に今日のコース打ち合わせを行い、８：１０にスタートする。 前回の道間違いの後を受けて、大山街道の「大和斎場入口」信号へ行き、その二股を右斜め前への正しい進路に入ると、すぐ右手に日蓮宗の「西鶴寺」があり、本日の旅の無事を祈願する。入口脇にはもう何度も見慣れた「矢倉沢往還」の真新しい石標がある。本シリーズ初参加の清水氏から「矢倉沢往還って何ですか？」と訊かれ、かくかくしかじかで、大山街道のことだと答える。 400m程歩くと国道246号(以下R246という)に斜めにぶつかるが、信号が無く、柵で遮断されていて右手の「ひばりが丘高校前」信号まで迂回させられる。柵があっては、いかな我らもショートカットは不可能だ。 ８：４５、「さがみ野二丁目」信号の手前右手で「大山街道」の道標を見る。先ほど、「大和斎場入口」信号で分岐して以来、この先の大塚本町交差点までの約2kmは、ほぼ一直線の街道である。街道右手が座間市、左手が海老名市だが、大塚本町信号の先からは左手が綾瀬市、右手が海老名市となり、市境が入り組んでいる。相鉄線の踏切を越えると県道42号線と交わる大塚本町信号があるが、ここが昔「大塚」のあった場所だというが、今は何もない。この辺りは、大塚宿の西南端に当たるそうで、鎌倉期の初め、早川村と上今泉村がここで戦った際の多勢の戦死者を葬った大きな円墳があった場所で、「大塚」と今も呼称している所である。 今は閉鎖された元・スーパー東急を過ぎると道は緩やかな下りになる。歩道のない直線道路を延々と歩くが、今日は信じられないほど涼しく、適度な微風もあって殆ど汗をかかず、快適に歩ける。やがて左手の「赤坂」バス停傍に銀杏の古木や「道標」と右手に剣を持った「不動明王坐像」がある。道標の上部に不動明王の坐像をくっつけたような外観だ。 ここで、「富士塚と庚申塔は何処だろう」と街道右手を少し戻り、動物病院脇から延々300m程奥に入っていく。両脇が「パプコ」の敷地で、金網塀の中側にナンバープレートの付いていないトラックなどがぎっしりと並んでいる。町内一斉の清掃日らしく、近くのマンションほかの若き住民親子が総出で働いている脇を通り、道標と庚申塔を発見。道標には、「西 阿つぎ 大山道 東 江戸」とあり、居合わせた小学１年生くらいの男児に訊くと、「あっちにもあるよ」と案内して貰ったら、「馬頭観音」の石造物も見つかったが、富士塚は開発の進んだせいか見つからなかった・・・と思いこんで、帰宅後案内書をよく読むと、その文化13(1816)年に柏ヶ谷の講中が立てたという庚申塔のある小さな塚が、実は付近に積もった富士山の火山灰を積み上げて造った「富士塚」だった。 街道に戻って、すぐ先の左手で｢崋山ゆかりの道｣解説板を見る。清水氏に、渡辺崋山と大山街道の関係について持参の資料に基づいて概説してあげる。解説板には、 ｢ここから右手に向かう道は、古東海道との言い伝えがあります。天保２年（1831）渡辺崋山は、絵の弟子高木梧庵（ごあん）を伴って江戸から大山街道を下り、この古道から小園村に入り少年期に世話になった「あこがれのお銀さま」を訪ねたのでした。崋山は本名を登といい、政治家として画家として、また幕末の先覚者として有名な人です。｣ と書かれている。看板の右手(街道左手)に斜めに上がって行く道があり、これが古東海道で、この細い道の奥に「お銀さま」ゆかりの地(家の跡や墓)があるが、遠いのでパスして先へ進むことにする。この｢崋山ゆかりの道｣の解説板の立っている場所がちょうどサミットになっていて、そこから先は下り坂になる。左角のマンション敷地の金網の中の隅に古い石の道標があり、厄介者扱いされている感がある。身長ほどの高さの敷地内でしかも金網の向こう側なので字は全く読み取れなかったが、文献によれば、前面に、「国分・厚木、左大塚・原町田」、側面には、「向ニ小園・早川・綾瀬村小園」と記されているそうだ。「綾瀬村小園」とは、現・綾瀬市の一部で「お銀さま」ゆかりの地の名でもある。 渡辺崋山は、田原藩主三宅康友に寵愛された侍女「お銀」が生んだ友信を15代藩主に推挙したものの、藩財政再建のため姫路藩から後継を迎えることとなり、崋山は隠居した友信の側用人として仕え、友信の実母お銀を捜しての旅がこの大山道を通っての旅日記が「遊相日記」という訳だ。 文教堂という書店の先の「望地(ﾓｳﾁ)」信号で、旧R246即ち県道40号線(横浜厚木線)を越え、坂を登ると公民館前に「馬頭観音」がある。逆コの字型に曲がって、天保14(1843)年の銘がある「道祖神」を見、再び旧R246に出て目久尻川に架かる目久尻橋を渡って川沿いに右折すると、金網の向こう側に「石橋供養塔」がある。これは、洪水の度に流されていた目久尻橋(木橋)を宝暦7(1757)年頃、石橋にて架け替えた地元篤志家の功績を讃えて建てられたものだそうだ。 やがて、「伊勢山自然公園」前に達し、清水・村谷両氏の写真をパチリ。園内には伊勢山大神社がある由だが素通りし、再び旧R246に出ると、大きな「史跡逆川(ｻｶｻｶﾞﾜ)碑」がある。巨大な石版碑には地図入りで逆川の由来が印されている。 逆川の由来 逆川（さかさがわ）は大化の改新が行われたころ条里制による海老名耕地のかんがい用と運送用に掘られた川といわれています その全長は約二．五キロメートル、ここから凡そ一キロ上流で目久尻川を堰止めて分水し、この地点で相模横山をよこぎり、西北方に流れをとり、今泉境で耕地に注ぎ出ました このような逆の流れ方をしていたので「逆川」の名が生まれたのでしょう。 なお、舟着場と呼ばれたところから下流は、日本最古の運河として、平安中期まで利用されていたようで、その遺構は今なお地下に眠っています。 後世、流れの向きを変えて「新堀」といい、昭和十五年ごろまで国分、大谷、今里、杉久保、上河内、中河内、本郷、門沢橋、倉見、宮山などの田をうるおしていました。 現在この地点より先は埋め立てられ舟着場付近のみわずかにむかしの面影を残しています 昭和五十七年三月二十七日 海老名市教育委員会 直ぐまた右手の道に入り、八王子道と交差した先に嘉永年間(1848～54)の道標がある。「東江戸つる間、南藤沢かま倉、西大山あつ木、北八王子ほしのやと」と刻されている。この辺りは曾ての「国分宿」で、宿場の中程に「温故館」がある。大正7年建築の元海老名村役場の建物で、昭和57(1982)年以降は「相模国分寺」関連史料展示・保存のための「海老名市郷土資料館」になったが、耐震上の理由で現在は長期閉鎖中になっており、外観だけしか見られないのは誠に残念だ。 その奥に見える国指定史蹟相模国分寺跡へ行こうと一旦街道に出たら、我らの姿を見た一人の老紳士が近寄って来て、国分寺跡への道を入口まで同行してくれた。ガイドをやっておられる方に偶然お逢いできて助かった。相模国分寺は、相模国分尼寺と共に天平13(741)年2月に聖武天皇の詔により建てられた。巨大な回廊に囲まれ、東に金堂、西に七重の塔、その北に講堂が配される伽藍配置で、全国の国分寺の中でも最大級の規模らしいが、建物は相次ぐ火災等で焼失し、現在は巨大な礎石が残っているだけである。七重の塔だけは、三分の一の大きさでの精巧な模型が復元され、後ほど訪れた「海老名中央公園」に建っていた。 礎石の石段に腰掛け、清水氏差し入れの大福を馳走になりつつ小休止し、現「国分寺」へ向かう。途中、国分坂を少し下った所に県の天然記念物に指定されている「大欅」がある。推定樹齢560年。この付近が海だった頃、漁師が船を繋ぐために打ち込んだケヤキの逆さ杭が根付いたという伝説があるそうで、奥秩父でさえ曾ては海の底だった時代があることを秩父３４観音霊場参歩時に知った身としては驚くほどのことではないが、科学や人力の到底及ばざるものをあらためて感ずる。 その先の石段を登ると、四国遍路体験者としては「真言宗」の寺院故に素通り出来ないですねと村谷氏も言う「国分寺」に参拝する。 （高野山真言宗 相模國分寺ホームページより） 相模国分寺は西に大山、丹沢系を望み、南北にのびた丘陵の県央のこの地に建立された当寺は、聖徳太子の17条憲法第２条、「篤し三宝を敬へ、三宝とは仏法僧なり。即ち四生の終帰、万国の極崇、何れの世、何れの人かこの法を尊ばざる。人甚だ悪しきもの鮮し、能く教あるをもて之に従ふ。それ三宝に帰せずんば、何を以って枉れるを直さん。との理想を、聖武天皇によって実現されたお寺です。 この東光山国分寺は、相模国分寺が建立された後、その薬師堂として背後の高台に建てられたが、その後現在地に建て替えられた旨、説明板に記されている。また、境内には、国指定の重要文化財である「梵鐘」や「六地蔵」・「尼の泣き水坐像」等がある。 今日の餐歩は、地元の清水氏がいろいろと解説してくれ、涼やかな天気にも恵まれ、久しぶりに楽々旅で賑やかな海老名駅に近づいてきた。先述の「七重の塔」のモニュメントを見せて貰い、相談。一時間ぐらい前から全く気にならない程度の霧雨が降り始めており、天候の先行き不明や、この後の残り距離などを勘案して、本日は海老名駅をもって歩き止めと決定。清水氏の案内で、前回満員の行列で入店できなかった店に入って打ち上げることにした。喉はあまり乾いておらず、麦酒はお湿り程度で焼酎ロックと新鮮海の幸などで歓談・談笑しつつ次回の日程を話し合って散会した。帰路は村谷氏と小田急線の快速急行に乗れ、座席も確保できたが、小生は町田駅で急行に乗り換え、登戸経由で最寄り駅に着き、出迎えてくれた孫に土産代わりの菓子を買ってやっての帰宅となった。 |