ユーコン川で爆釣!パイク編その1

ユーコン準州の釣りに関しての規則はマジ厳しい!

 ユーコンでは釣りに関して厳し〜い規制があります。まずビジター用のフィッシングライセンスを購入し携帯しなければいけません。サーモンフィッシングには別のライセンス(超高い)が必要です。

 餌釣りは禁止、っていうか向こうでは釣りはスポーツなので、いかにしてゲームフィッシュとファイトするかに力点が置かれているんですよ。餌釣りは釣れて当たり前、「魚に対してアンフェアだ。」と、軽蔑の対象なんですね。釣った魚も魚種、体長によって規制があり、キープせずにリリースって決まってます。

 釣りをしていると目の前に突然、水上飛行機が着水し、係官にライセンスの提示を求められる、ということはよくある話だそうです。ライセンスを所持していなかったり、餌釣りしていたり、キープサイズ以外の魚をキープしていたら、目ん玉飛び出るほどの罰金と釣り道具と魚を没収され、その後とてもややこしい事になるそうです。
 そのややこしい事についてはひろ&Kのつたない英語力では解りませんでした。

パイクについて
 pikeは日本名を川カマスといい、獰猛かつ凶暴。ヨーロッパ北部や中国の北東部の山間部にも生息しており、犬のように貪欲に食べるので中国では狗魚と呼ばれてるらしいです。水の流れの緩やかなところやよどんだところにいるので、入江や浸水した草原、所々にある湾がポイントですね。

 見た目はかなりグロテスク!濃緑色と白、グレーのまだら模様で、体は全体的に細長く、くねくねする姿はまるでアナコンダ。
 口がカモノハシのように細長く突き出ていて、口腔内にビッシリと内向きに歯が生えている。歯は針状でとても鋭く、皮のグローブごしに歯が貫通し、指に刺さりました。この口にくわえられた獲物が逃げるのは、まあ不可能やろね。
 釣り上げたときの第一印象は「ワ、ワニが釣れた!」。魚、水鳥のヒナ、ネズミなど、口に入るものは何でも餌にしているようです。

 ルアーは何でもいいみたいですね。バス釣りではあんまり使えへんけどスプーンに良くきたなあ。赤と白のメップスの代表的なやつです。
 ユーコンのパイクが見たこともないような日本の精巧なサスペンドのバイブレーションは抜群に反応が良かった。1個しかなく途中でロストしてしまったのが本当に悔やまれた。

初めてのパイク!
 初日のキャンプ地は入江でした。水が淀んでいるので蚊の猛攻もすごいが、パイクポイントでもあるので、ひろの顔はニンマリ。はやる気持ちを抑えて、まずはテント設営。年間に7〜10泊キャンプしているのでお手の物、2人ですればあっという間です。
 続いて食事、ジョーからクマに対する対処方法等の諸注意。あとは自由時間です。白夜なので夕まずめが長く続くのが嬉しいっす。

 この時期は雪解け水で増水しているのが引きつつあるころです。入江は草原が浸水して形成されているようで、そんなに深くないようでした。
 バイブレーションでキャスト開始。ラインは4号相当のもの。立ち位置がここしかないので扇状に端からキャストしていった。水深の半分くらいまで沈んだ草のすぐ上をルアーが泳ぐようにイメージします。

 長靴を通して冷たさに足がしびれてきた頃(といっても10分ぐらい)、激しいアタリが!よっしゃ!HIT!ガッチリ会わせて、フッキングはバッチリのようだ。 底の方へただ引っ張るだけのようだが、水面近くになると途端に激しく暴れ出した。ジーッと糸が引き出され、バシャバシャと大きい音を立てて暴れる。
 足下へ引き寄せ、ランディングの方法が解らないのでごぼう抜きにした。後でジョーに聞いたけど、歯が鋭いので決してバスのように口を持ってはいけないそうだ。しなくて良かった。
 計測すると62p。初めてにしては上出来だ。ペンチを使って苦労してフックをはずす。そーっと、リリースするとゆっくりと深みへ消えていった。

「午後11時ごろ白夜のパイク」

 「ほんまに嬉しそうな、にやけたな笑顔やなあ」と言われながら再びキャスト開始。このあとしばらくして、なんとすぐ足下で別のパイクがHIT!どうも沈んだ草むらに潜って餌を待ち伏せしているようだ。
 遠方へキャストしたルアーを巻終わり、ピックアップしようとしたら食いついてきた。突然だったので動揺したが、すぐさまセットし(あわせてフッキングすること)、巻いていく。
 さっきのより小さい。やはり、水面に出ると暴れ出すようだ。これも引っこ抜く。50p程度か。それにしてもバイブレーションは良く釣れるなあ。持ってきて良かった。松ちゃんはプラグでやってるようだが、反応がないと言っていた。こいつもリリース。
「今日はこれくらいで勘弁しといたろ。」と、蚊に食われた跡をボリボリ書きながら、この日は納竿とした。

痛恨のバラシ!幻のメーターオーバーのモンスター
 川を下っているうちに、ジョーが言い出した
「俺なあ、ワイルドストロベリーが自生しているところを知ってんねん。ちょっと登らなあかんけど行ってみいひん?」
 たぶんこんな意味だったと思う。
「行くー!」とみんなで答え。「Let's Go!」となった。
 その場所は本流からそれた入江の奥の奥にあった。ひろの目がキラリン!接岸してKを上陸させジョーに言った。
「俺、ここで釣ってるからみんなで行ってきてや。」
「そうか、ほんなら絶対本流へ行ったらあかんで。この入江だけやで。それからベアスプレーは持っときや。」
「よっしゃわかった。」

 樹に隠れて姿は見えないが、みんなの話し声は良く聞こえる。話し声がだんだん上の方に上っていくのがわかる。その声を聞きながら、カヌーの上からキャスト開始。

 この入江は二股になっていて、みんなが上陸したのと反対の方へ行く。すると、すんごい捕食音、ライズ音が聞こえた。これまでと音が違う、バシャッ、ではなくて、子どもがはまったようなドボンって感じだ。
 あわててそっちの方へキャスト。2回、3回と繰り返す。ライズの先を読んでキャストしたのがドンピシャリ!

 これには興奮しましたねー。だって水面近くをリーリングしていたら、ルアーの後ろから、水が徐々に盛り上がってきて、まるで潜水艦の浮上シーンを見ているようだったんだもん。レッドオクトーバーも真っ青。水が盛り上がったまま、ルアーを追ってくる。潜水艦なら浮上したって時に、そいつはルアーに食いついた。

 ここで私は一生の教訓を得ることになる。リールのドラグが締まりすぎていたのだあ!!
 
直前にKがキャスティングし、水草に引っかけてしまったので、ドラグを目一杯締めて引っ張り、ルアーを回収したのだが、その後ドラグを緩めるのをうっかり忘れていたのだ。

 食いついたモンスターは一瞬全身を晒した。目測1メートル20p、胴回りは成人男子の太股ほどもあったと思う。私を乗せたカヌーをそのモンスターは引っ張りだしたのだ。
 結構なスピードだ。リールが全然巻けない。
「このままではあかん、何でラインが出ーへんねん。」と思った瞬間、モンスターが首を横に振った。その時、4号のラインがパンという破裂音とともに切れた。モンスターは口にバイブレーションをくわえて水底へ消えていった。
「4号が切れるなんて。」と呆然としているひろを残したまま。

 3分間は放心状態だったであろうか。気を取り直し、震える手でメップスの赤と白のスプーンを結び、モンスターが消えていった方角にキャスティングを繰り返す。
 だが、またしてもとんでもない事態が!そうなんです。ビーバーが泳ぎだしたんです。ビーバーがこんなにでかいとは知らなんだ。柴犬よりも大きい。ラブラドールに匹敵する大きさだ。
 どうもこの奥に家があるらしい。不意の乱入者が気に入らないようで、ウロウロと泳いでいる。釣りにくいことこの上ない。
「もしひっかかたらどうしよう。」と悩んでいるうちにK達が下りてきたので釣りをやめKの回収に向かった。

 興奮した口調でジョーに説明すると、ひろのリールを見ながら、
「良くあることや。俺のリールを見てみ。」と渡されたリールをみて絶句。そこには極細のワイヤーが巻かれていた。参りました。
「ユーコンじゃこれくらいせーへんかったらな。そんなヤワなラインじゃアカンで。」恐れ入りました。

 帰国後にこの話を親父にすると
「ドラグの調整を忘れたあ!初心者じゃあるまいし。」と嬉しそうにのたまったのだった。これからは、ドラグの調整は絶対忘れずにその都度、調整しようと心に誓ったひろであった。

パイク編その2