ユーコン川で爆釣!グレイリング編

 graylingは日本名を川ヒメマスといい、きれいな魚です。背ビレが帆船の帆のように大きく、美しいのが特徴だ。この背ビレは体長の三分の一ほどもあり、すごく優雅なんだけど、なぜこんなに大きいのか謎ですねぇ。
 いい香りがするので茴魚とも呼ばれるそうです。しかし、いくら匂いをかいでも私にはわかりませんでした。
 グレイリングは水の流れに変化のあるところにしかいません。本流でも大きな障害物があって、流れがよれているところや、支流の流れ込みに多いです。

「背ビレの優雅なグレイリング」

 グレイリングは口が小さいので、ルアーでは難しいようですねえ。よほど大きいグレイリングならスピナーで釣れるようですけど、私はフライフィッシングでしか釣れませんでした。
 ドライには全く反応がなく、最初は苦戦したなあ。フライはドライしか持っていなかったので
「ウエットはないし、どーしよー?」と焦った。しかし、本流は笹濁りなので、ドライでは見えないのかも知れない、とひらめく。カディスに小さいガンダマを噛ませスプリットショットにして沈め、チョンチョンと誘うと良く釣れるようになった。

 ボズウェルリバーの流れ込みでこのことに気づき、後は爆釣です。Kも含めみんなは1匹も釣れなかったので、
「ほーっ、ほーっっ、ほーっ、ほー」と1人悦に入っていた。しかし、このままだと嫌なヤツになってしまうので、フライをみんなに分けてあげました。

 ある川の流れ込みでキャンプとなり、国際親善に花が咲き、疲れてもう寝ようかと思った頃、Kがボソっと

「私、まだグレイリング釣れてないねん…」
「えっ、ひょっとして今から?」

 すでに周りは天候の加減もあって薄暗く、時間的には深夜だ。しかもここのポイントはみんなのテントからかなり離れているのを私はチェック済だったのだ。ポイントまでの足場も悪い。
 そこは、いかにも出そうな雰囲気で、あっ、幽霊とかじゃなくてクマがね。そっちの方が怖いけど。

「もう遅くて、ちょっと暗いし、明日にせーへん?」
「暗い方が釣れるんやろ!1匹だけでも釣りたいねん…」
「うーん、しゃーないなあ。ちゃんと後ろについといでや。」「うん!」
倒木の山を越えて、ベアスプレーを片手に釣ることになりました。

 Kがどうしても釣れないので特訓です。まずはお手本を見せます。ロッドを振り、ラインがループを描きポイントに着水。誘いをかけ、たちまち1匹釣り上げます。
「なーんや、簡単やん。」しかし、Kがするとそうはいきません。
「なんでやのー!」

 フライはキャスティングが難しいからなあ。初心者はまず、ラインを飛ばされへん。ましてやポイントにフライを持っていくなんて…。
 そこで、Kの後ろから、おおいかぶさるようにして、一緒にロッドを持ち、ポイントまでキャストし、あとはKに任せます。

「流れの中に、沈み岩があるやろ、そこで、誘ってみ。川底に変化のない所には、魚もおれへんで。」
 2、3投目に来ました。針に掛かるとKはにぎやか。

「きゃー、どうしたらええの?!」
「ラインをたぐり寄せるんや。」
計測すると、30pオーバー。こいつ初めてで、いきなり尺物かよーっ。

「これって大きいん?」
「日本、特に関西では、滅多にないな。渓流やってるおっさん達に初めて釣ったのが尺物って言うたら、泣くで。」
「やったー!」と大はしゃぎのK。
 でも、ここではアベレージサイズなんだよー、とひろは心の中でつぶやいていたのだった。

 地形の関係か、蛇行している部分の川幅が急に狭くなっているところがあった。当然流れも急になっていて、変化に富んでいる。
 ここで釣り大会になり、Kは4匹、ひろは5、6匹の釣果を上げ、松ちゃんがインカヌーという魚をルアーで釣りました。場所が離れていて足場も悪く、近くによれませんでしたが、遠目にはニゴイにそっくりです。

 釣り上げたグレイリングを2匹だけキープし、夕食のおかずの一品に加えた。私がさばき、ムニエルにしてみた。結論から言うと、むっちゃ美味いっす!みんなからも大好評だ。日本でも食べられないかしらと悔しがるほど美味い。

 ゴール地点で水中をのぞき込むとグレイリングの素早い魚影が幾つか見えた。釣りたいところだが、土手の上まで、カヌーを始め大量の荷物を運び上げなくてはならない。

 迎えの車はまだ到着していないので我慢して運びましたよ。それも率先して!早く運び終えるとその分、釣る時間ができるかも知れないのだ。迎えの車よまだ来るなあ!念じながら運んだ。

 あんまり我慢して涙がこぼれそうになる頃、やっと運び終えた。
「お茶でもする?」
ジョーが聞いてきたが、私はKに
「釣ってる。って言うといて。」と言い、岸までマジで走った。これを逃すとグレイリングを釣ることは一生の中でもう無いのかも知れないのだ!

 焦りながらキャスティング開始。2、3投目にHIT!ランディングするとまあまあ。30オーバーだ。よしよし、リリースしてもう一度だ。遠くにキャスティング。カウントをし、やや深目の所をリトリーブ。すーっ、すーってかんじで引いていく。ガツンというあたりが来た。走り回る、これはでかい。うん、40近い。よしよし、もう一度だけ。もう一度だけ…。
 何回目かのもう一度だけの時に、Kがやってきた。
「迎えの車が来たよ。」これが最後のグレイリングか。涙が出そうになった。結局ここで7、8匹釣りあげた。
 釣り味良し、姿は美しい、食べても美味しい。グレイリングって本当に素晴らしいっすよ。ユーコンよ、さようなら。グレイリングよ、さようなら。

 絶対もう一回グレイリング釣りに行ったんねん。

Kのひとりごと…を聞きに行く