カヌーでユーコン パート3

フータリンカの廃船
 テスリン川とユーコン川の合流地点、フータリンカには昔の蒸気船が残ってて、ちょっとした観光ポイントだ。
「観光ポイントと言っても、気軽に見に行かれへんがな」って話してた。そうしたら昼食中に、突然、水上飛行機が舞い降りてきて、目の前に着水した。
 中から、親父さんと若いべっぴんの娘2人が下りてきた。ホワイトホースの人らしい。自家用水上飛行機で廃船の観光に来たと言ってた。うーん!やっぱユーコンはスケールがでかい!

 でも帰るとき、滑走?滑水?しようとしたら、浅瀬に座礁して動かなくなってしまった。かっちょ悪りー。仕方ないので、ジョーと一緒に水に浸かりながら押したり引いたりしてあげて、やっと離陸?離水?できた。親父さんは娘の前で失敗して、しかも観光客の日本人に助けられて、かなり恥ずかしそうだった。

 廃船は昔の蒸気船で外輪船なんだけど、船体の両側ではなく、後方だけにアレがついていた。アレは何て言うんかな、ハムスターがくるくる回す、かごみたいなアレ。
 船は結構でかい。こんなでかいのが航行できるくらい昔は水深があったんだろうか。

フータリンカの廃船


ユーコンの静寂
 ユーコンを下っていると人工物はほとんどない。400q下って、二つ、三つ廃村が見えるくらい。
人工音ももちろん聞こえない。風の音、スプルースの葉の音、時折起こるオオカミの遠吠え、鳥の鳴く声、静かに流れる水の音しか聞こえない。

 ある夜、皆が寝静まっても1人、河原でフライロッドを振っていた。その夜は、無風で全くの無音。何の音も聞こえない。大自然の静寂に圧倒されかけた時、その音は聞こえてきた。
 かすかなシューッという音だ。目をこらしても見えない。遠方の空から聞こえるようだ。だんだん近づいてくる。何の音か全く見当が付かない。やや不安になってきたとき、その音は最大になり、ドップラー効果を伴いながら頭上を越えていった。

 音の正体が判明した。V字型に編隊を組んで飛ぶカナダガンの群れの羽音だったのだ。半信半疑だったが、また音が聞こえ始め、次のカナダガンの群れが飛び去って行ったとき確信した。バサバサとかバタバタではなく、風切り羽根が大気を切り裂くシューッという音だったのだ。
 日本では、こんな音は聞こえないだろう。みんな寝てしまい、聞いたのは私1人だけである。
 すごいスピードで飛び去っていく、シューッというカナダガンの羽音。感動した。

ビッグサーモンビレッジの廃村
野田さんや椎名さん、獏さんのサインがあった。

カヌーな日々
 向こうでは、ずーっとカヌーを漕いでいて、アウトドアな日々で幸せだった。参考までに日課を書いてみると
 朝7時頃起床、まず2,3匹釣る、朝飯食って出発。4時間ぐらい漕ぐ。その間、いいポイントがあればロッドを振る。昼食をとると、またロッドを振る。次のキャンプ地目指して出発、3〜4時間くらい漕ぐ。隙を見てロッドを振る。キャンプ地までに観光ポイントがあれば寄り道して、ロッドを振る。6時くらいにはキャンプの準備をしてロッドを振る。なーんだ結局、漕いで釣りしてただけやん。

 ひろは楽しくて全然疲れなかったけど、Kは最後の方はきつかったみたい。なんだか進まないなあと思ってKを見ると、漕いでいるんやけど、なんとKのパドルのブレードは縦になっていて全然水をキャッチしていない!
「K、おまえ全然ブレードが水をかいてないやん!」「あっ、ほんまや」本人も無意識のうちにさぼっていて大笑い。
 
 まあ疲れてきたんやろ。Kはよく座ったままで、こっくりこっくりと船の上で船を漕いでいた。でも、1日に8時間くらい漕ぐので交代で舟の上で昼寝はする。なんとか横になるので眠りやすい。船の揺れがなんとも心地よい。

 ビールは個人持ち。350を1ケースしか持ってきてない。1日3缶までと決めていたので、昼食後は揺られながら1本だけ飲んだ。これが美味い!ひろはその後必ず昼寝だ。起きると皆から5,6百mは離されているので、ちょっとだけ急いで追いつく。
 あ〜幸せな日々だったなあ、ホントに。
 
ずーっと居たいなあ
 感動しているうちに帰りたくなくなってきた。帰国した後も、また行ってみたい。そこで、唐突であるが、移住の可能性を探ってみた。
 ポイントは語学、お金、学歴と仕事である。カナダ大使館で語学の試験がある。それにパスしなければならない。

 まずは英語。TOEFLで600点後半は必要らしい。英語の単位を(しかも二つ)落としたことのあるひろにとっては、難問だ。しかし、死ぬ気で頑張れば数年後にはいけるかも。

 次にお金、預貯金が一人当たり200〜250万円は必要とのこと。これは、金額の大小はあるが、各国どこでも共通で、移住していきなりホームレスになられては困るということらしい。まあ、これはなんとかなるか。

 最後に、学歴と仕事。やはり高学歴が優遇されるようだ。大卒は最低ラインか。これもなんとかクリアかな。しか〜し、一番重要なのは、学歴と仕事が一致していることらしい。つまり、商学部卒で貿易関係の仕事とか、工学部卒でエンジニアとかであるのがよいようだ。

 仕事にも厳然たるランクがあり、いわゆるプロフェッショナルが求められているようである。IT革命のこの時代、理数系学部卒でプログラマー、SEが理想みたい。
 当然、移住後の仕事も関連性がないとダメダメ。私みたいに法学部卒で事務屋、移住後はカヌーのガイド、アウトフィッターをしたいってのは、な〜に言ってんだかって感じかな。

 失業率が高いので、むこうも簡単には移住させてくれないようだ。要は是非とも我が国へ来て欲しいと思わせる人ならいいんだろうな。
 まあ、本気で考えている人はカナダ大使館に問い合わせてください。

 

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