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酷暑の四万十川 1日目

「すんませ〜ん。カヌー、通りま〜す!」
「おぉ、今日は水が太いけん。気ぃー付けてなぁあ。」
「は〜い。どうもすんませんでした〜。」

これは四万十川で地元の鮎釣り師との会話である。地元の方は大抵、舟に乗って釣っている。
声が交わせないほどの距離でも会釈をすれば必ず返してくれる。服装は99%が作業着である。
それに比べて、県外からの方は
「すんませ〜ん。カヌー、通りま〜す!」
「......」99%が無言である。
「通りますよ、本当に通りますよ、通っちゃうもんね。」
とこうなってしまう。

挨拶をして返事があったことは、まあない。大抵、流れの中に腰くらいまで立ちこんで釣っている。服装も派手で、いかにもアングラーです、といった感じがする。
本当にもう!っじゃなくて、四万十川にツーリングに行った話だった。

今年はGWにツーリングに行けず悶々としていた。こうなればいつもは避けているが、釣り人とのトラブルも覚悟しつつ、鮎シーズンにでも出かけるしかない!7月に3連休があるので、休みを前に1日くっ付けてツーリング決定。

場所は高知、四万十川。コースは土佐昭和のふるさと交流センターから江川崎までの毎度おなじみのいつものコース。

大阪南港からのフェリーが新調されていてビックリ。新しいのは、いいんだけど、二等船室が狭くなったように感じる。それに、歩いて乗るお客さんにとって乗り込みにくい構造になったようだ。二等船室に行くまで階段が多いのだ。その分、車のスペースが広いような気がする。少し残念。

予土線のワンマン列車の窓から川の流れをチェックする。僕らが行く前の週にちょっとした量の雨が流域に降ったようで、この時期にしては水量が多い。いっつも渇水で、隠れ岩に苦しめられているので、かなり嬉しい。

そうそう、今回は郵パックでカヌーを送ることができるか、郵便局の本局へ持って行ってみた。しかし、フォールディングカヤックは梱包してもちゃんとした直方体にはならない。長さと重さが微妙に上限を超えたので、ダメだった。
ク○ネ○ヤマトにも問い合わせてみたが、ダメだということ。やはり、いつも使っているペリカン便が最後に頼りになった。
「郵便局でも、ク○ネ○ヤマトでも微妙に上限を超えると言われて受け取ってくれなかったんですよ。」
「そうでしょ、そうでしょ。その点、うちは違いますよぉ。しっかり運びまっせぇ!。」とペリカン便の担当の人は妙に張り切るのだった。

土佐昭和に着き、荷物を受け取りにふるさと交流センターへ向かう。いつも快く荷物を受け取っていただいて、ふるさと交流センターさんありがとうございます。
交流センターに隣接している、食堂で恒例のにんにくラーメンと生ビールで昼飯にした。相変わらず美味い。
その後、いつもの桟橋で組み立てる。陽射しが暑く、汗が滴り落ちた。

今日のキャンプ地の予定は広瀬だ。でも、たぶん下広瀬までは行けなくて、上広瀬までなんだろうな、きっと、と思いながら昼頃出発。
私が押さえるカヌーにKが先に乗り込み、後から私が乗り込む。
パドルで最初の一かき、すっーと水面を滑っていくカヌー。この心地よさに全ての苦労が報われる気がする。あー苦労して来た甲斐があったもんだ。

途中、何人もの釣り人がいた。冒頭部分参照。鮎釣りにもやはりポイントがあって、釣り人が集中している区間と見かけない区間とがある。平均したら1キロに2,3人ってところか。
鮎釣りのポイントはカヌーでも面白いところであって、かぶってしまうのが困る。

最初の難所にさしかかり、ライニングダウンをした。ここは200mにわたってホワイトウォーターになっている。もし途中で沈すると厄介なところなのだ。
Kは自分のパドルだけ持ち、私は5mのロープでカヌーを引っ張りながら、というか流れに引っ張られながら岸を歩く。ロープを引かれるので、大きな犬に散歩されているといった感じかな。
難所の半分くらい来た所で、私だけカヌーに乗り、チャレンジした。カヌーに乗り込み、岩を蹴ると、すぐに強い波が襲ってくる。Kが降りているのでバウが軽く、船を操作しにくかったが、何とかクリア。この写真はクリア直後のもの。

この後は、のんびり下っていった。通常はバウ(前)のKが岩などの障害物を見つけると、「隠れ岩発見!」とスターン(後ろ)の私に声を掛け、主に私の舵取りで避けて行く。今回は水量が多く隠れ岩も少なくなっているので安心ではある。
だが、その安心からかKがぼーっとしていたのか、隠れ岩にぶつかってしまった。しかも激しく。沈をするほどでもないが、どこかに穴が空いたのか、水がじわじわと入ってくる。こんな時のためにと排水ポンプを持参してきたが、フル稼働だった。

十川の難所もクリアし、上広瀬の手前の瀬まで来た。この瀬をクリアすると今日のキャンプ地だ。
この瀬はクランクになっていて、流れの方向が左に曲がり岩壁にぶつかって、直角に右に流れている。以前、ここで沈してパドルをなくしたこともある。緊張しながらだったが、今回はすんなりクリアできた。

上広瀬でキャンプを張るために上陸。早速、ビールを買いに行く。しか〜し、なんと酒屋さんが店じまいしているではないか。そ、そんなあ、真夏にビールなしでキャンプしろと言うのかあぁ。

がっくし、肩を落としてとぼとぼと歩いていると、農作業している方がいたので尋ねてみた。
「すみません、ここの酒屋さんは店じまいしたんですか?」
「あ〜そうじゃのう、半年ぐらい前じゃったかのう。」
「こ、この近くに酒屋は無いですかねえ?」
「この村にはもう無いのう。4キロほど上流まで行けば、あるがや。」
「よ、4キロ!ですか。。。」

気落ちする私達の格好を見て、川下りかと尋ねられ、そうです、十和村から来たと言うと、
「これを使ったら、ええがや」と軽トラを指差している。
まじっすか?!と小躍りして軽トラをお借りし、上流に向かった。十川まで4キロ、戻ると酒屋があった。酒屋が輝いて見えたね。

軽トラの御礼おんちゃんにもと500の缶ビールを買って帰り、御礼を言った。気を遣わなくてもいいのにと逆に恐縮され、これを食べなさいとトマトとシシトウを正に山ほどもらってしまった。
なんでも等級に外れると出荷できないらしい。味は変わらないのだがと仰ってた。トマトもシシトウも大好きなので美味しくいただきました。ツーリング中は野菜が不足しがちなのでありがたい。
こうして無事に冷たいビールと大量の野菜を手に入れ、この夜の食卓は賑わったのだった。おんちゃん、本当にありがとうございます。

 

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