大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

懺悔と感謝  

去年の今ごろのことです。
次の大河ドラマが新選組を扱うと知って大喜びしたものの、脚本がコメディがお得意の三谷幸喜氏と聞いて、大丈夫かぁ?ととても不安に思っていたことを、ここに懺悔します。
さらに、主人公近藤勇がSMAPの香取慎吾くんと聞いて、ジャニタレかよ〜〜(長野くんだってジャニタレなのを忘れて)と、ぶつぶつ言っていたことを、ここに懺悔します。
さらにさらに、大好きな土方歳三役を山本耕史くんがやると聞いて、えっ?文也が?とはらはらドキドキしていたことを、ここに懺悔します。

1年間の放送が終わった今、「新選組!」は「燃えよ剣」と並んで、一番大好きな、映像化された新選組になりました。こんなに夢中になったドラマは、「ウルトラマンティガ」以来・・・というか、「ティガ」を越えたかもしれません。これほど素敵な新選組を書いてくれた三谷さんに、心から感謝します。
慎吾くんの近藤は、いつまでも悩める誠実な青年で、何度「鬼になれよ!」と思ったかしれないけれど、気づけばいつのまにか貫禄が備わり、大きな父性まで感じられて、最後は本当に近藤局長にしか見えなかった。こんな近藤さんは初めて。魅力的な近藤さんを、慎吾くん、どうもありがとう。
そして山本くんは、最初はやけにヤンキーな土方さんだなぁと思ったけれど、そのひたむきさと揺れる感情に、みるみるうちに引き込まれていきました。今は、土方歳三といったら、山本くんしか考えられないほど。もともと大好きだった土方さんだけど、もはや底なし沼状態。役と同化するまでに熱演してくれた山本くんに感謝・・・というより、どうしてくれる?責任取ってよ!っていう感じです。(爆)

もちろん放映中には、文句をつけていたところもいろいろありました。
ご多分に洩れず、近藤勇と坂本龍馬がお友だちになる設定には、う〜んと唸りもしたし、近藤さんがあまりにも善人過ぎて、自分だけいい子ちゃんかよ〜と苛つきもしたし、沖田総司が思春期真っ只中で、芹沢鴨にくっついていっちゃうのにはびっくりしたし、多摩編があまりにも長くて、早く京へ上れよ〜とずっと悪態ついてたし、鴨編も長くて、早く暗殺しちまえ〜とか叫んでたし、捨助うざい、捨助うざいって毎週唱えてたし・・・。って、ずいぶん文句言ってたなぁ。(苦笑)
でも、近藤さんと龍馬が顔見知りではなかったという史実もない訳で、三谷さんは龍馬を使って、毎回上手く時勢を説明してくれたと思います。近藤さんの誠実さはありえないほどだったけど、それが勝沼へ行き、流山で投降するという流れにみごとに繋がって、素晴らしい近藤勇像に成長したのではないでしょうか。
総司は最初は確かにあまりにもお子ちゃまだったけど、その分、1年間で大きく成長し、病に倒れる天才剣士を藤原くんがみごとに演じてくれました。
多摩編・鴨編が長かった分、落日編が恐ろしいまでに駆け足だったけれど、それでかえって、新選組が時代の波に飲み込まれ、崖から転がり落ちるように消えていく感じが、悲しいまでによく伝わってきたような気がします。特に最後の3回など、45分の放送の中によくあれだけのエピソードを入れられたと驚くほどで、それなのにバタバタすることなく一つ一つのシーンで泣かせてくれて、三谷さんの腕とスタッフの編集に本当に感動しました。
捨助の存在はとてつもなくうざかったけれど、その一途さに泣かされたこともあったし、あのわからんちんぶりには何度も癒されたなぁ。あれを演じられる獅童くんってすごい。
とにもかくにも、なにかすべて三谷さんの策略に嵌まってしまったような気がするんですよねぇ。だけどそれが嬉しかったりもして、今はもう、ありがとうという言葉しか出てきません。

役者さんたちも素敵な方たちばかりで、演劇の素晴らしさというものを初めて知ったような気がします。今、演劇雑誌を整理していると、「新選組!」に出演していた役者さんたちがいっぱい載っていて、新しい世界が開けたようですごく楽しい。そんな役者さんたちが役に嵌まり込んで、楽屋裏でも
試衛館してたりするのも嬉しかったし、スタッフのこだわりが画面のあちこちに見られて、小道具さんの遊びを発見するのも面白かった。とにかく、録画した放送を何度見ても飽きなかったんですよね。今は、早くも発売が決定した、DVD完全版と、総集編DVDがとても待ち遠しいです。

私が夢中になっているのに釣られて、ちょうど歴史に興味を持ち始めた息子が一緒に嵌まり、そのうち日本史は苦手だったというダンナまで嵌まって見ていました。毎週日曜日夜8時には、テレビの前に座るのが習慣になりました。
8時から総合テレビで「新選組!」を見て、見終わると歴史検証会が始まります。(笑) 今日のこの事件は本当にあったのかから始まり、この隊士は本当にこういう人物だったのかとか、幕府は本当にこういう風に考えていたのかとか、新選組は実際にこういう存在だったのかとか・・・。ダンナが専ら質問してくるのに、私が答える形。間違ったことは教えられないから、知識が不十分なところはその都度調べて答えるので、一段と詳しくなりました。時には3人で、三谷さんの解釈や役者さんの演技についての感想を述べ合うことも・・・。で、一頻り盛り上がった後、さらに10時からBSでまた見直す訳ですね。(爆)
「新選組!」のおかげで、毎週毎週、本当に有意義な日曜日の夜を過ごさせていただきました。家族でこんな時間が持てるなんてすごく嬉しかったです。

1年間積み重ねられてきた様々なエピソードが、終わりに近づくにつれてギューッと集約されてきて、さらに役者さんたちの緊張感が極度に高まって、奇跡的なくらいに完成された最後の2話だったと思います。本当におみごとでした。
改めて、三谷さん、出演者とスタッフの皆さん、素敵な新選組!を心からありがとう。そして1年間(実質1年半?)本当にお疲れ様でした。皆さんのこれからのご活躍を期待しています。


<追記>
最終回の3日後に、「その時 歴史が動いた」 それからの新選組〜土方歳三 箱館に死す〜を見ました。
最終回を見た時には、近藤の思いや仲間たちの夢を全部背負って、ただ一人新選組とともに戦い続ける土方が、熱くて潔くて切なくて、すごく良かった。どこまでも戦い続けていく土方さんを描いてくれて、「三谷さん、ありがとう。」って思いました。

でも「その時〜」で、戦い続けた果てに、最北の地で散っていった土方さんを見た時に、「三谷さん、やっぱり土方さんも、死なせてあげて!」って思っちゃったんですよね。
「新選組!」の土方さんは、最後の突撃シーンがそのまま私の中に焼き付いて残ってしまっていて、これからずっと戦い続けていくんですよ。戦い続けていかないといけないんですよ。たった一人で。
それは素敵なことではあるんだけど、すごく苦しくてやるせなくて・・・。
だから、死なせてあげてほしい。「新選組!」外伝として、各3時間の前後編でいい。
会津から箱館までの土方さんが見たい。仲間との別れ、近藤の死を越えて、厳しくも優しい将となっていった土方さんが見たい。三谷さんが書き、山本くんが演じるあの土方が、どのような最期を迎えるのかが見たい。できたら、あの美しい会津の地を、厳しいけれど優しいあの北の大地を舞台にして、土方の終焉を見てみたい。切実にそう願うようになってしまったんです。

雑誌などで、三谷さんも、その後の土方を書いてみたいと言ってるし、山本くんも、自分の中でまだ終わっていないみたいなことを言ってるし、どうでしょう。続編、できないでしょうか。NHKにお願いしてみようかな。

 

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