大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第49回  愛しき友よ  

ついにこの日が来てしまいました。
近藤勇斬首、そして「新選組!」最終回です。(涙)


板橋宿平尾の脇本陣・豊田家に、近藤が幽閉されています。
灯りも無く暗い部屋に、端座している近藤。
すぱんと引き戸が開けられ、逆光の中に浮かび上がった新政府軍の兵士が、
「近藤、取り調べの時間じゃ。」
と居丈高に告げます。
差し込む光に照らし出され、兵士に一礼して立ち上がる近藤。
豊田家の人たちが、見送りのため、座敷に並んで座っています。
黙って一礼する近藤と、礼を返す豊田家の人々。その中に、ちょうどたまちゃんと同じくらいの年頃の女の子が、鞠を持ってお母さんの膝の上に座っていました。


新政府軍・本陣で、土佐藩士谷守部、薩摩藩士有馬藤太の尋問を受ける近藤。
既に新選組局長近藤勇と暴かれてしまった今、近藤は庭の莚の上に座らせられています。
 谷 「京、河原町の近江屋において、坂本龍馬を殺したがは新選組かよ。」
 近藤「一切の係わりはございません。」
 谷 「もうじき、死ぬがやき。洗いざらい吐いて、楽になりや。」
 近藤「やっていないものをやったとは申せませぬ。」
坂本龍馬暗殺を新選組の仕業と信じていた土佐藩は、強硬に厳罰論を主張していました。薩摩藩に反対されて実際には行なわれませんでしたが、近藤を拷問にかけても白状させようとしていたそうです。
 有馬「甲陽鎮撫隊について、お聞きしもす。そもそも甲州に兵を差し向けたとは、誰の差し金ごわす
  か。」
 近藤「一人で私が考えたことです。」
 谷 「調べはついちょる。おまんに甲州で官軍を迎え撃てと命じたがは、勝安房守ぜよ。」
 近藤「全て私の考えでございます。」
江戸から追い払われるように出陣させられた、甲陽鎮撫隊。しかし、近藤は勝の意思を汲み取って、すべての罪を自分で被ろうとするのですね。(涙)


オープニング。“最終回”の3文字が、とても寂しく感じられます。
本当に今日で終わっちゃうのか・・・。


豊田家の幽閉されている部屋で、近藤は有馬の面会を受けます。
「土佐の連中は、坂本さんのこつもあって、新選組を心から憎んでおるようじゃ。」
「あの方を斬ったのは、新選組ではありません。坂本さんは、この国にはなくてはならないお人でし
 た。坂本さんを我らが斬る謂れがありません。」
近藤の言葉に有馬は頷くと、香川に願い出て、近藤の身柄について徳川家に尋ねてみようと思っていることを、話します。正式な返答が来れば、土佐といえども無闇に罰することはできないだろうと言う有馬に、遠慮する近藤。
「おいは、戦った相手に対してこそ、正々堂々とありたかとごわす。おいどんたちは、兵の命を預かる
 身。人の道に外れた行いは、慎むべきごわす。敵方の将を、一時の感情で勝手に罰するなんど、
 もってのほか。おまんさぁは京に送られ、しかるべき場所で、しかと吟味されるべきでごわす。」
と、自分の考えを述べる有馬。
立ち上がって、さらに
「京に行けば、生き延びる芽も出てきもす。」
と励ましますが、近藤は、
「有馬様、私の心は決まっております。」
と申し出を断ってしまいます。思わず、
「生きることを、恥ち思うたらいかん!」
近藤を一喝する有馬。
それでも何も言わずに有馬を見つめ返している近藤に、有馬は溜め息をつくと、
「強情なお方じゃ。お気持ちが変わったら、いつでもこの有馬を呼んでたもんせ。」
と言い置きます。
西郷や大久保といった薩摩藩に、かなり腹黒い役割をさせているこのドラマですが、有馬には善の部分を見せていますね。
実際、有馬は近藤に好意的で、進軍の合い間に板橋本陣へ出頭した時など、近藤の幽閉先を訪れ、酒を酌み交わし、近藤を慰めたりしていたそうです。


ここは、流山の近くでしょうか。
土方たち、残された新選組が待機しているところへ、情報を探りに行っていた島田が戻ってきました。
「申し上げます。局長は板橋の本陣に移されたようです。」
それを聞いて、
「今すぐ、助けに行こうぜ。」
と提案する捨助。しかし、誰も反応しません。
「なんだよ。かっちゃん、奴らに殺されちまうぞ。」
と訴える捨助に、土方が
「近藤さんは、俺たちを助けるために降参したんだ。」
と答えます。
「だから?」
「我々の人数では、局長の奪還は難しいでしょう。」
と、尾形も説明します。
それでも納得できない捨助は、
「そんな事ねぇよ。官軍何するものぞ!だ。なぁ、斎藤!」
と斎藤に同意を求めますが、斎藤も俯いたまま、首を横に振ります。
「てめぇら!かっちゃんを見殺しにするつもりか!!俺は一人でも助けに行くぞ。ちっくしょう。見損な
 ったぜ!」
罵りの言葉を投げつけて、出て行く捨助。
途中、鍬次郎が止めようと前に立ち塞がりますが、それをも押し退けて、
「てめぇら、腰抜けだ!」
と怒鳴り散らしながら、去っていきました。

「俺は江戸に潜り込み、勝海舟に会ってくる。」
土方が告げます。
「江戸は危ないです。」
と島田が反対しますが、土方はそれには答えず、
「島田、尾関、一緒に来てくれ。」
と頼みます。そして斎藤には、
「お前は隊士を連れて、会津へ向かえ。一刻も早く容保公に局長のことをお伝えして、お力添いをい
 ただくんだ。」
と指示を出します。黙って頷く斉藤。
その時尾形が、
「私はここで失礼したいのですが。」
と言い出しました。
「土方さん、法度はまだ残ってるんでしょうか。」
確認する尾形に、
「行きたきゃ、勝手に行きな。」
と、顔も見ずに答える土方。
「ありがとうございます。ここまででしょう。落ち着いて考えれば、新選組に再起の道は無い。私として
 も残念だが。局長がご無事であること、お祈りしています。ここで、結構です。」
勝手に淡々と喋って、尾形は出て行きました。
尾形の言葉を、複雑な表情で聞いていた土方。
悔しそうな、残された面々。
「最後まで、なじめない人だった。」
と島田が呟きます。
(ちなみに、実際には尾形は、会津まで新選組に残っており、会津での戦いの中で離隊したのか、行
 方不明になっています。)


♪いちもんめのいーすけさん、芋買いにはーしった、芋ちょーだい♪
江戸の試衛館では、庭でたまが、手まり唄を唄いながら遊んでいます。
座敷の中には、ふでさん、つねさん、勇の兄の音五郎。
音五郎さんが、近藤の消息を伝えに来てくれたようです。
「それは、間違いのないことですか。」
「鹿之助さんが、方々当って、調べてくれました。」
「それで、今はどちらに。」
「板橋の民家に、幽閉されているようです。」
♪にーもんめのにーすけさん、人参買いにはーしった、人参ちょーだい♪
「納得いきません。勇は、天子様をお守りするために、京で頑張っていたのではありませんか!」
「はい。」
「それがなぜ、逆賊の汚名を着せられるんです。捕らえられなければならないんですか!」
憤慨するあまり、音五郎さんに掴み掛かるふでさん。


♪さんもんめのさんすけさん、山椒買いにはーしった♪
幽閉されている近藤。部屋の外からは、この家の娘とみの唄う手まり唄が聞こえてきます。
途中で急に唄が途切れると、欄間の間からでしょうか。鞠が部屋に飛び込んできました。
近藤が目を開けると、引き戸がそっと開いて、とみちゃんが顔を出します。
思わず、頬がゆるむ近藤。きっと、たまちゃんのことを思い出したのでしょうね。
近藤は思いついて、口を大きく開けると、右の握り拳を口の中に入れてみせます。
嬉しそうに、部屋の中に走りこんでくる、とみちゃん。
「とみ!何をしているのです。」
慌てて母親が、とみを連れ戻しに来ました。
「ご無礼を致しました。」
母親は、近藤に頭を下げると、とみを抱いて出ていきます。
目の前に転がっている、とみの鞠。近藤の脳裏に、可愛い娘の姿が浮かびます。
「すいません。」
と家人を呼ぶ近藤。
「有馬様を呼んでいただけますか。」

一人の男として、武士として、死の覚悟のできていた近藤が、一人の親であることを思い出した時、生への執着を見せる。なにか、胸の奥底を揺さぶられます。


呆れたような、迷惑そうな、仕草を見せる勝海舟。
「助命嘆願書でも何でもお前、書けと言われりゃ書くけどさぁ。」
という勝に、
「どうか、よろしくお願いします。」
土方は必死な面持ちで、深々と頭を下げます。
けれども、
「言っとくけど、無駄だぜ。」
と、あっさり否定する勝。
「薩長の恨み考えても見なよ。奴らは是が非でも、近藤の首を刎ねるつもりだよ。まぁ、今更俺が
 動いてどうなるもんでもねぇだろう、お前。」
と、投げ遣りです。
「しかし、勝先生ならば。」
と、それでもすがる土方に、
「あのね、勝先生でも、無理なもんは無理でぇ。」
断言する勝。
土方の表情が変わります。
「近藤が今まで、どれだけ徳川幕府の為に尽くしてきたか、おわかりですか!」
「そんなことは、わかってんだい!わかって言ってんだい、こちとら!」
埒の明かない勝に、
「あんたに頼んだのが間違いだった。」
捨て台詞を吐いて、立ち上がる土方。
「おい、どうする気だ。」
「あんたの知った事じゃない。」
土方が突き放すと、
「近藤を助けになんか、行くんじゃねぇぞ。」
と、勝は土方を諭します。
「言っとくけど、近藤の死は無駄死になんかじゃねぇんだ。奴は、薩摩と長州と土佐の恨みを、一身に
 受けようとしてるんだ。徳川に対する憎しみの一切を、一人で受け止めようとしてるんだ。近藤が死
 ぬことで、大勢の命が助かる。そんな事が、新選組の近藤勇の他に、誰が出来るんだ。本望じゃ
 ねぇのかい?」
最後は声を詰まらせて、土方に説く勝海舟。
第三者の立場の勝から、初めて“近藤の死”を突き付けられて、土方は言葉を失います。
鼻の奥がつんとしてくるような、込み上げてくるものを堪えているような表情で、黙って勝のもとを去ろうとする土方。
その背中へ、
「土方!」
と勝が声を掛けます。
「どうせ死ぬ気でいるんなら、俺の頼み聞いてくれねぇか。」
泣きそうな表情のまま、振り向いた土方に、
「北へ行ってくれねぇか。」
と頼む勝。
「北?」
「榎本武揚を知ってるか?」
「あぁ。」
「薩長のやり方に納得しない連中が、一矢報いようと画策してる。まぁ、恭順を貫いた慶喜公にも、
 皆様ご不満のようだ。遅かれ早かれ、また戦になる。お前、それに加われ。まぁ、言っとくけど、
 徳川の時代は終わった。もう一度ひっくり返すことなんて、出来やしねぇさ。でもなぁ、幕府にも
 骨のある奴がいたってことを、ちったぁ歴史に残しておきてぇじゃねぇか。行ってやれよ。なんた
 って、泣く子も黙る新選組の鬼副長だ。みんなも喜ぶと思うぜ。」
勝海舟の言葉を、土方は黙って聞いています。

女性コーラスの旋律が綺麗で、土方に説く勝の表情が思いがけず優しくて、勝の言葉に絶望の淵から引き上げられていく土方の表情が凛々しくて、あぁ、これでまた土方は走っていけると思いました。勝先生、土方さんの背中を押してくれて、ありがとう。

実際に土方は勝の屋敷を訪れており、おそらく助命嘆願の書状を書いてもらったのだと思われるのは、翌日新選組隊士相馬主計が板橋の本陣に書状を届けているからです。しかし、時既に遅く、助命嘆願書は功を奏さず、相馬は捕らえられてしまいました。
また、勝はこの時確かに、土方に何かを申し含めたようで、旧幕臣津田真一郎の勝への手紙に、「歳三へ御申し含めの旨、いかが御座候や」という一文が書かれています。新選組副長として、当然すぐに斎藤たちの後を追うであろうはずの土方が、旧幕軍とともに北関東を北上していったのは、勝との約束が関係していたのではないかと思われます。


新緑の楓の葉の間から、降り注ぐ日の光。
植木屋平五郎宅の沖田のところへ、土方が見舞いに来ています。
「甲陽鎮撫隊は、負け戦だったみたいですね。」
「あれは、名前が良くなかったな。」
ぷっ・・・。思わず吹き出してしまった。
あれはねぇ、名付け親からして馬鹿にしてましたから。(笑)

「私が離れてから、一度も勝ってないじゃないですか。」
「俺たちはこれから、下総の鴻ノ台ってところに行く。徳川の家臣が集まって兵を挙げるそうだから、
 それに加わる。」
「みんな、一緒ですか。」
「俺も局長も、永倉も原田も斉藤も一緒だ。お前も良くなって早く追いつけ。」
なんとなく、視線の定まらない土方。総司の顔も、なかなか見られないで・・・。
総司もなんとなく腑に落ちない様子で、それでも頷いてみせます。
土方は次の話題を探して、
「お孝ちゃんとはどうなんだ。」
と総司に訊ねます。
「何がですか。」
総司が訊き返すと、土方はお孝の赤い鼻緒の下駄を手に取って、言います。
「あれはいい女だぞ。前歯がでかい女は、情が深い。」
有り難いお言葉が出たぞ!!(近藤さんがいないから代わりに突っ込み・爆)
「大きかったっけ?」
と総司。
「見とけよ、そういうの。姉さんも大きかったが・・・。」
土方はもう片方の下駄も拾い上げて、
「妹もでかい。」
と並べて見せます。もぉ〜〜!土方さんってば!!
変わってない・・・。(近藤さんがいないから〜・笑) 

お孝がお茶を持ってきました。
土方は慌てて下駄を元の場所に戻して、
「さてと。」
と立ち上がります。
 土方「じゃぁな。」
 お孝「もうお帰りですか。」
 土方「先を急ぐんだ。」
 沖田「皆さんによろしく。」
 土方「おぅ。元気でな。」
じっと見つめる総司に少しだけ視線を返して、お孝にもちょっと微笑んで、去って行く土方。
「せっかく淹れたのに・・・。」
と、がっかり肩を落として、お孝は持って来たお茶を自分で飲み始めます。
その横で、
「みんな、私に会いに来る。別れを言いに・・・。」
と呟く総司。
「別れやなんて・・・。」
「それに、土方さん、嘘ついた。」
「へっ?」
「顔に出るんだ。あんな素直な人、いないから。」
「何の嘘?」
「たぶん、もうみんな、一緒じゃないんだ。」
総司は遠く、空を見つめます。

自分がついていけないのはもちろんのこと、みんながバラバラになってしまったことも、寂しいでしょうね。
これが土方と総司の今生の別れとなってしまう訳ですが、近藤や斎藤の時と比べてすごくさりげなかったからこそ、なにかとても寂しさの残る別れでした。


板橋の新政府軍本陣では、今日も近藤が取り調べを受けています。
 香川「徳川の目付から、返事が来た。近藤勇は、既に徳川の家臣ではなく、何の係わりも無いそう
  だ。近藤の罪は天下が周知するところ。速やかに、そちらで罰していただきたいとの事である。」
 谷 「つまり近藤。おんしは徳川からも見捨てられたという訳じゃき。」
微かに近藤の瞳が揺れるのが、切ないです。
 谷 「刑の期日は、追って伝えるぜよ。」
わずかに口元をゆがめるも、近藤は毅然とした表情を崩さず、頭を下げます。
去って行く香川と谷。
その場に残った有馬が、壇の上から下りてきます。
「力になれんち、申し訳なか。」
と、頭を下げる有馬。
「こちらこそ、無理を言って。」
頭を下げたまま、近藤が答えます。
「この上は、江戸の西郷先生に、訴えてみようち、思うておりもす。」
「有馬様。」
首を振って断ろうとする近藤に、
「おいに、任かせやったもんせ。」
有馬は静かに、でも力強く請け負います。


しかし残念ながら、江戸の薩摩藩邸で有馬の手紙を読んだ西郷は、
「慶喜は生き延び、おかげで兵士達の徳川に対する恨みのはけ口が無くなった。そん役目、近藤さ
 んにお願いしもんそ。幾千の志士達の無念と、残されたもん達の恨みを、あん人に、受け止めて
 もらいもんそ。」
静かに、そして厳かに、有馬の訴えを拒絶するのです。


板橋の新政府軍本陣。
有馬が香川から、宇都宮に行くように命じられています。
「徳川の残党が、挙兵したという噂だ。様子を見て来い。」
「かしこまりました。」
とまどいながら、命令に服する有馬。
「それから、この文だが、先ほど、薩摩屋敷から突き返されてきた。」
と香川が有馬の前に差し出したのは、有馬が西郷に宛てた書状でした。
有馬の表情が変わります。
「西郷先生もお困りのご様子ぜよ。これは、受け取らざった事にすると、仰せである。」
嫌味を言う谷と、
「余計な事をしてくれたな。」
と怒る香川。
有馬は黙したまま、悔しさを必死で堪えます。


いよいよ、香川と谷から、近藤に刑が言い渡されます。
「近藤勇を、斬首の刑に処す。期日は、4月25日。」
「承りました。」
「首は京に送り、三条河原に晒す事とする。」
香川が執行文を読み上げ、さらに谷が言葉を重ねます。
「おまんが悪行を重ねた京の町に、おまんの首が晒されるがじゃき。京の町のもんは、どのような
 思いで、その首を見るろうかのう。」
どんなに嘲りを受けようとも、もはや近藤は表情一つ変えません。
近藤が乱れないことで、見ている私たちの胸の中に、憤りや悔しさが激しく噴き上げてきます。(涙)


「行かせてくれぇ!」
甲冑を身に付けた佐藤彦五郎が、小島鹿之助に羽交い絞めにされて叫んでいます。
「なりませぬ!」
両腕を広げて彦五郎の前に立ちはだかる、妻のおのぶ。
「わからないのか!官軍に刃向かった罪で、あなた自身も追われる身。捕まって、首を刎ねられるの
 が落ちだ!!」
鹿之助さんに諭されて、泣き崩れる彦五郎さん。
「勇が何をしたって言うんだよぉ。なぜ罪人扱いされないといけないんだ!せめてさぁ、武士らしく切
 腹させてやってもいいじゃないかぁ。」
おのぶさんも泣きながら、彦五郎さんを慰めます。
「情けを持たない者に、人は付いてこない。薩長の時代も、そう長くは続かないと私は見ています。
 いずれ、近藤さんの後に続く者が必ずこの多摩から生まれる!私は、そう信じている!」
自分に言い聞かせるように、熱く語る鹿之助さん。おのぶさんが、はいと頷きます。慟哭の止まない彦五郎さん。

やがて多摩では、激しい自由民権運動が起こったそうですね。それが、近藤の遺志を継いだと言えるかどうかはわかりませんが、己の身を投げ打って、国のため人々のために尽くす熱い思いは、確かに受け継がれていったのかもしれません。


夜になって、土方は実家の長兄為次郎を訪れていました。
「では、鳥羽と伏見の戦いの折りに近藤さんは、大坂城で上様に、あくまで戦うべきだと、直々に申し
 上げたんだな。」
「ええ。」
「いやぁ、近藤さんも、大した出世だ。はははは・・・。」
嬉しそうに笑う為次郎。しかし、その前に座る歳三は、憔悴しきっています。
為次郎さんは目が見えませんが、見えないからこそ、弟の傷心は手に取るようにわかるのかもしれません。
「歳三。よくここまで近藤さんを盛り立て、新選組を引っ張って来たな。」
労わりの言葉とともに、歳三に酒を注いでやる為次郎さん。

その昔、為次郎さんは、“二人の力でこの時代と切り結べ”と、勇と歳三に進むべき道を示唆してくれたのですよね。“勇の剣が求められる時が必ずやってくる。そしてその時、勇の横には歳三がいる。お前の知恵で近藤さんを支えろ。”・・・と。(第2回「多摩の誇りとは」) その時代は、一瞬にして過ぎてしまったけれど。

「しかし最後は、土方家の名に、泥を塗るようなことになってしまいました。」
そんなことまで気にしてしまっているのか・・・。(涙) まぁ確かにこの時期は、実家の人たちも新政府軍の目を気にしながらの日々だったとは思いますが。
強引に前へ前へと進んで行くように見えて、実は繊細で、周囲の状況を細かく気にしながら歩いていく男なんですよね。
自分を責めて落ち込む歳三に、
「馬鹿を言え。誠の旗の下、京の町でお前達は、時代と戦ったのだ。これほど痛快な事があるか。
 お前達は、多摩の誇りだ。」
その頑張ってきた日々を称え、強く励ましてくれる為次郎さん。たちまち歳三の目には涙が溢れ、ぽろぽろと零れていきます。
「何が正しくて、何が間違っていたかなんてことは、百年後、二百年後の者たちが決めればいい。」
兄の言葉に、ただ静かに涙を流す歳三。
「君にすすむ〜。さらに尽くせ〜。」
為次郎さんが、朗々と漢詩を吟じはじめます。
静かな多摩の夜更け。澄んだ空に浮かぶ月が、やがて薄雲に覆われていきます。

山南切腹の後のグダ泣き、源さんが死んだ時の号泣など、この土方はいろいろな泣き方を見せてくれましたが、こんなに綺麗な泣き方ができるなんて・・・。子供でもなければ、なかなかこうは泣けないと思うのですが、自然に涙が膨れ上がってくるのを溢れるがままにしていて、本当に素直に涙を零していましたね。
目が見えず、長男でありながら家督を継ぐことができなかった為次郎さん。でも剛毅な性格で、風流人で、土方はたぶんかなりの影響をこのお兄さんから受けていたんじゃないかと思います。お兄さんの前でだけは、こんな風に素直になれたのかもしれない。
山本くん、この撮影では、リハーサルの時からうるうるだったと聞きますが、本当に目が真っ赤で、自然に涙を流して、それだけ土方という役に入り込んでいるんだなぁと嬉しく思いました。そして、多摩編に続いて出演してくださった栗塚旭さん。為次郎の言葉には、栗塚さんご自身の土方への愛情が溢れているように感じられて、この新旧土方の共演、とても印象に残りました。


飲み屋さんで、一人酒を飲んでいる永倉。その永倉に、
「永倉さんじゃ、ございませんか。」
と、渡世人風の男が声を掛けます。
「私ですよ。浪士組の時、お世話になった、大村達尾です。」
永倉の前に座り込み、前髪を上げて眉を撫でてみせる大村。
仇討ちのために浪士組に入った若い男でしたね。永倉が、その仇討ちを気に掛けてやっていた・・・。
「あの後、江戸に戻って、ようやく親の仇の祐天仙之助を討つことができました。」
「そうですか。」
「今じゃ、しがない渡世人でございますよ。」
そこへ、やくざ者が3人、店に乱入してきました。
「この野郎、こんな所にいやがった!」「親分の仇だ、覚悟しやがれ!」
次々と刀を抜く3人。
「縁があったら、また会いましょう!」
と永倉に告げると、大村は逃げていきます。その後を追っていくやくざ者。
仇討ちの機会を狙っていた大村が、今度は仇討ちのために追われる。
憎しみが憎しみを呼び、延々と続いていくというのは、大村たち、やくざ者の世界でも、新政府と旧幕府という国を動かすレベルでも、同じなのかもしれませんね。だから、近藤はその憎しみを一身に背負って逝かなければならないということでしょうか。
しかし、浪士組の時未解決だったエピソードを、しっかりここで完結させ、生かしてくる三谷さん、すごいなぁ。

宇八郎改め、芳賀宜道がやってきました。
「近藤勇が、流山で捕まったそうだ。間もなく、打ち首になるらしい。」
芳賀の言葉に、愕然とする永倉。
「新選組もいよいよ終わりだ。一足先に抜けておいて、良かったな。残ってたら、今頃お縄だぞ。調子
 に乗って、人斬り三昧するような奴だから、罰が当たったんだよ。打ち首が丁度いいんだ、あんな
 野郎は。」
近藤のやり方に不満を持って、袂を分かってきたこと、芳賀は永倉から聞いていたのでしょうね。当然のように近藤を批判しますが、
「お前に何がわかる!」
と永倉に怒鳴りつけられてしまいます。驚く芳賀。
「俺の前で、二度とあの人の悪口を言うな。近藤さんを悪く言えるのは、苦楽を共にしてきた者だけ
 だ。俺だけだ!」
やるせない表情で、酒を呷る新八さん。
この台詞で、今までの永倉の言動が、すっとお腹に落ちたような気がしました。
何かにつけて、文句ばかり言ってきた永倉。だけどそれは、多摩で一緒に盗賊を退治し、ヒュースケンを巡って対立し、一緒に京に上って壬生浪士組を立ち上げ、新選組として幕府のために尽くしてきた。何度も共鳴し合い、何度もぶつかってきた。そんな自分だからこそ、敢えて意見してきたというのですね。無骨なまでに真っ直ぐな永倉という人物が、そしてそんな永倉なりの近藤や新選組に対する愛情が、ようやく私の中できちんと形になったような気がしました。


京へ向かう街道を、
「おまさ〜、茂〜、待ってろよ〜!」
と叫びながら、走っていく左之助。(笑)
とその時、急に、左之助のお腹が鳴ります。
「大声出したら、腹減っちゃった。」
おいおい・・・。(苦笑)

おまさに抱かれている可愛い赤ちゃん。やっぱり男の子だったんですね。
泣きやまない茂に、
「茂、またお腹減ったん?朝から飲みっぱなしやないの?」
と話しかけるおまさちゃん。
「ほんまに、ようお腹減らす子や。誰に似たんか、知らんけど。」
「今、あげますからね。」
と、おまさちゃんは茂に乳を含ませます。

で、街道の道端で握り飯を頬張っている左之助。
「あ〜、俺も欲しい。」
って、何が?(笑)
そこへ、
「近藤勇が?」
という旅人の声が聞こえて、はっとする左之助。
「あぁ。今は板橋のどこかに、幽閉されているそうだ。」
「京で散々、ひどい事をしてきたんだ。捕まって当然だろう。」
「あぁ。」
目の前を旅人二人が、話しながら通り過ぎていきます。
「えー。」
呆然とする左之助。

「近藤さん・・・。」
農家の蔵の前に寝転がって、青い空を見上げながら呟く左之助。
起き上がって、その蔵を見上げて、見覚えのあることに気が付きます。
蔵の横の壁には、「永倉新八参上」の文字が!そしてその横には、「原田左之助」「土方歳三」「沖田総司」「井上源三郎」「藤堂平助」と彫ってあります。その上を見上げると、白壁に墨で書かれた「山南敬助」と「近藤勇」の名。

ここは、中仙道本庄宿の少し手前だったのですね。
浪士組の一員として京へ上る途中、近藤さんの宿割りの手助けをするためにみんなで話し合っていた場所。昔、ここを通った時に彫ったという永倉の名前を、みんなでわいわい眺めてましたっけ。真面目に相談している土方・山南たちをほったらかしにして・・・。
あの後、みんな各々、自分の名前を書いていたんだぁ。苦い顔をしていたW副長も。
希望に胸をいっぱい膨らませて、京へ向かっていた仲間たち。宿割りが難渋して困り果てていた近藤さんを、みんなで助けようと走り回ったあの日・・・。
泣かせるなぁ、三谷さん。こんな懐かしい思い出を引っ張り出してくるなんて・・・。(涙)

近藤の名前をじっと見つめていた左之助は、決心します。
「局長、待ってろ。今、助けに行くぞ!わぁー!!」
再び江戸への道を全速力で駆けていきます。


会津・鶴ヶ城では、斎藤が容保公に拝謁していました。
「斉藤。会津まで、よう来てくれた。」
と歓迎してくださる容保様。
斎藤は深く平伏したまま、
「殿に、お願いしたき儀がございます。」
と述べます。
「近藤のことなら、もはや手遅れじゃ。予には、どうすることもできん。」
江戸から追放された容保様には、今や近藤を救う力も伝もないのですね。何もできないことが一番悔しいのは、たぶん容保様ご自身でしょう。
「無念じゃ。近藤は真の武士であった。予はあの者たちを許さん。近藤の仇は必ず討つ。」
そう告げた後、容保様は錦の袋に入った一振りの刀を手にします。
「この刀は、近藤に会ったら渡そうと思っていた。斎藤、代わりに受け取ってくれ。」
容保様の言葉に、
「できません。」
と首を振る斎藤。
「お前に受け取って欲しいのだ。近藤の意思を継ぎ、これからも徳川家のために働いてくれ。虎徹
 じゃ。」
「虎徹?」
最初は、近藤の代わりになどと畏れ多いと固辞した斎藤ですが、刀の銘を聞いて心を動かされたようです。
それは、近藤が兄音五郎に贈られた偽の虎徹を大切に差していたのを、思い出したからでしょうか。それとも、刀の目利きが得意だったという斎藤のエピソードを意識して描かれたものでしょうか。

自ら虎徹を受け取った斎藤は、
「斉藤一、身命を賭してお仕え致します。」
と誓います。満足そうに頷く容保様。
まさに斎藤は、この後会津戦争の途中で、土方や新選組本隊と分かれて会津に残り、奮戦の末、会津藩士とともに降伏。会津の人として残りの人生を生きるのです。
「早速だが、仕事を頼みたい。」
「はっ。」
「京へ向かってくれ。」
「首は三条河原に晒されると聞いた。奪い返せ。」
「かしこまりました。」
「近藤の首は、この会津で丁重に葬る。今、予に出来ることは、それだけだ。」
実際には、斎藤は新選組の隊長代理の任に着いており、容保公に首奪還を命じられることも、京に向かうこともなかったはずです。しかし、この後、会津に到着した土方が、容保公の許可を得て建てた、東山天寧寺の近藤の墓の中には、近藤の首が納められているという言い伝えが残っており、それを意識したエピソードとして描いたのでしょう。


江戸の勝海舟の屋敷です。
「近藤も、無念でしょう。せめて、武士らしく切腹させてやりたかった。」
訪れていた山岡鉄舟が、悔しそうに呟きます。
すると、山岡に背を向けて、書き物をしていた勝の右手が震えだします。
「武士らしくって、なんだよ!」
と叫ぶ勝。
それから、山岡の方を振り返って、
「大事なのは、どう死んだかじゃねぇ。どう生きたかだ。」
と言います。
涙に瞳を潤ませ、頷く山岡。
勝は筆を置くと、遠くを見つめて呟きます。
「あれ武士だよ。紛れもない。そして、最後のな。」



慶応4年(1868)4月25日。
ついに、刑執行の日がやってきました。


♪いちもんめのいーすけさん、芋買いにはーしった、芋ちょーだい♪
豊田家の庭で、手まり唄を唄いながら遊んでいる、とみ。
その無邪気な声が、幽閉されている近藤の耳にも聞こえています。
♪にーもんめのにーすけさん、人参買いにはーしった、人参ちょーだい♪
そして手まり唄に重なるように、刑執行の用意のため刑場で杭を打つ槌音が、コーンコーンと響いてきます。
端座する近藤の顔は無精ひげで覆われ、髪もほつれて乱れています。無表情な中に見える、疲れと諦め。
♪さんもんめのさんすけさん、山椒買いにはーしった♪
近藤は今、生と死の狭間で、静かに時を過ごしているのですね。


刑場では、首を落とす穴が掘られ、見物人を囲う竹矢来が組まれ、検死役の席が設けられています。
その作業の様子を見に来ている音五郎さん。


刑場の近くの寺では、ふでとつねがお参りしています。無言のまま、手を合わせる二人。
境内に並んでいるのは、首無し地蔵さん。刑場で斬首された人たちを供養するために建てられたのでしょうね。
二人がお参りを終えたところへ、音五郎さんが戻ってきました。
「人が集まりはじめました。くれぐれも、取り乱さないようにお願いします。勇の身内であることが知ら
 れたら、まずい。」
と注意する音五郎さんに、
「取り乱すくらいなら、ここへは来ておりません。」
と気丈に答えるつねさん。ふでさんは、
「良く言いました。」
とつねさんを褒めると、
「心配はご無用です。」
と音五郎さんに答えます。
二人の様子に、安心して頷く音五郎さん。
ちょうどその時、寺の門の向こうを捨助が通り掛かりました。
「あれは・・・。」
つねさんが気づくと、大きなくしゃみをする捨助。
「捨助・・・。」
3人は門を出て、刑場の方へ向かう捨助を見送ります。


植木屋平五郎宅では、枕元の刀架けから刀がなくなっていて、総司が顔色を変えています。
「お孝さん!お孝さん!!」
布団から飛び起きて、お孝の姿を探す総司のところへ、布巾で手を拭きながら、お孝が飛んできました。
「はい?」
「私の刀は?」
「あぁ、あれはしもときました。」
慌てる総司に対して、笑顔であっさり答えるお孝さん。
「なんで、そんなことを・・・。」
「そうかて、邪魔になるから。」
「刀は侍の魂なんだぞ!」
総司は声を震わせて怒りますが、
「また、こっそり剣術の稽古始めたでしょ。うちが、気ぃ付いてへんと思てた?」
とお孝さんに切り返されて、
「近頃、調子も良くなったから・・・。」
と言い訳する総司。さらに、
「良うなったからやないでしょう! そういう時こそ、もっと養生せなあかんでしょ! つ・み・か・さ・ね
 でしょ!」
と非難されて、総司はしゅんとしてしまいます。涙目で俯いている総司が可愛い。
「刀はしばらく、平五郎さんに預かっていただきました。」

悲しそうにお孝さんを見つめていた総司が、ふと何かに気づきました。
「あー。」
と呟きながら、お孝さんの口元に顔を近づけていきます。
「なに?」
とまどいながら、後ずさるお孝。
「本当だ・・・。」
「なに?」
「前歯が・・・。」
「・・・?」
「可愛い・・・。」
お孝は嬉しさと恥じらいで、慌てて口を閉じてしまいます。
見つけたのが嬉しくて、
「ねぇ、ね、もう一回見せて!“いーっ”って、して!」
とおねだりする総司。
口をぎゅっと結んで、首を横に振るお孝。
「ねぇ、もう一回見せてくれよ!」
「いやや!」
「なんでだよ!一回くらい見せて・・。じゃぁ、こうだ!」
お孝がなかなか口を開けてくれないので、今度はくすぐろうとする総司。
「きゃぁー!いやや、いやや!」
お孝は慌てて逃げ出します。
「ちょっと、待って。土方さんも言ってたんだから。ね。」
追いかける総司。なんか急に元気になっちゃってますけど。(笑)
「もう一回見せてくれ。」
「いやや。」
二人が仲良く追いかけっこをしていたら、ちょうど庭に平五郎さんがやってきました。
二人の様子に、にっこり微笑む平五郎さん。
慌てて立ち止まった二人は、
「そ、そういうのじゃないですから。」
「違いますから。」
必死に否定しますが、平五郎さん、まだ何も言ってませんけど・・・。(爆)
ますます怪しい・・・と思いつつ、平五郎さんは楽しそうに笑い出します。
土方さんの置き土産ってところかな?(笑)
たとえ長くは続かぬにせよ、総司に穏やかで幸せな日常が戻ってきて良かったけれど・・・。


洋皿の上に盛り付けられているのは、オムレツとソテーしたお肉かな?その横には、パンとコーヒー。ナイフとフォークを構えているのは、桂小五郎改め、木戸孝允です。
板の間には絨毯と畳。幾松が開けているのは、カーテンと障子戸。そして木戸は、着流し姿で畳の上に正座して、ブレックファストを食べようとしている訳ですね。和洋入り乱れた、ちぐはぐな空間ですが、まさにこの頃の生活は、こんな感じだったのかもしれませんね。
「せんせ、どないしはったんどす? 新政府も、ようよう動き出したというのに、なんや、浮かんお顔や
 なぁ。」
「近藤勇が、打ち首になる。」
「近藤はんが?」
「私は、あの男が嫌いではなかった・・・。」
「けど、新選組には散々苦しめられてきたやおへんか。」
「確かにそうなのだが、徳川家の家臣で、最後まで忠義を貫いたのは、あの男だった。」
遠い目で懐かしそうに語り出す木戸。
「新政府の中に、近藤勇に並ぶ忠節の士がいるだろうか。所詮我らは寄せ集めだ。そういう意味で
 は新選組と変わらぬ。彼らのように固い結束で、新政府がこれからの時代を切り抜けていけるの
 か。それを考えると、ますます憂鬱になる。」
そして、慣れないコーヒーに木戸は、
「苦い。」
と、顔をしかめるのです。


「新選組の隊士を名乗るもんが、刑場に忍び込んじょった。」
と、新政府軍の兵士が、近藤の部屋に捨助を連れてきました。
近藤の顔を見て、
「呼ばれもしねぇのに現れるのが、捨助だ。」
と、嬉しそうにいつもの台詞で挨拶する捨助。
しかしそんな捨助を近藤は、無表情で見上げています。
「見覚えは、あっか。」
と兵士が近藤に訊ねます。
捨助は、
「かっちゃん、俺は最後まで、お前の傍にいてやるぞ。」
と言いながら、近藤の前に座り込みますが、
「知りません。」
と、感情を抑えた声で、兵士に答える近藤。
その言葉に、捨助が驚きます。
「新選組の隊士では、なかとか?」
「初めて見る顔です。」
「何言ってんだよ、かっちゃん。」
「新選組にこのような者はおりません。」
「今更、何言ってんだよ!仲間にしてくれたじゃねえか!」
憤慨した捨助が近藤に掴み掛かろうとして、兵士たちに押さえられます。
「魂胆は何だ。新選組の名を騙るなど、不届き千万!」
捨助を睨み、怒鳴りつける近藤。
「甲州にだって一緒に行ったじゃねぇか。」
と捨助は泣きつきますが、
「知らーん!!」
さらに激しく怒鳴る近藤。捨助を巻き添えにしないようにとの、近藤の必死の演技が辛い・・・。(涙)


刑場の作業はほとんど終わり、見物人が集まりはじめました。


下野・宇都宮。
旧幕府軍が、寺の境内で休息を取っています。
遠くではまだ、激しい砲声や銃声が間断なく響いています。
土方は、鐘楼のところに腰掛けて、負傷した左足を尾関に手当てしてもらっていました。
そこへ、島田が戻ってきて、
「申し上げます。宇都宮城は、敵の手に落ちました。」
と報告します。
「畜生!」
悔しそうに吐き捨てる土方。
「お怪我の具合は?」
心配する島田に、
「こんなの、怪我のうちには入らねぇ。くそっ。また総司の奴に、馬鹿にされちまう。」
やっぱり、あの一言に傷ついていたのね?(苦笑)
白い鉢巻の端を後ろに払う仕草が、土方さんらしくていい。

土方は左足を引きずりながら、鐘楼へ上がります。
「土方さんは知っているんだろうか。今日があの日だってことを・・・。」
沈痛な面持ちでそっと尋ねる島田に、
「あえて、触れないようにしているんじゃないですか。」
と答える尾関。


このドラマでは、この時点で既に、近藤が斬首されることを土方は知っているみたいですね。
敢えてここに史実を記すなら、土方は伝習第一大隊・回天隊・桑名藩隊など約千名を秋月登之助とともに率いて、19日宇都宮城を攻略、落城させました。しかし、23日には新政府軍の反撃を受け、その激戦の中、足を被弾して負傷。今市へと戦線を離脱します。宇都宮城は新政府軍に奪還されました。土方は24日には旧幕軍本隊と分かれ、島田たち新選組隊士6名や、同じく負傷した秋月らとともに、今市宿を発って会津へ向かいます。ですから実際には、近藤が斬首された25日には、土方は会津へ搬送されている途中・・・ということになりますが、でもその辺を多少変えてでも、戦い続ける土方さんにしてくれてありがとう・・・と、三谷さんに言いたいです。


余談が長くなりました。宇都宮の戦場に戻って・・・。
兵士たちが島田と尾関のところにやってきました。
「皆とも話したのですが、ここは一旦引きましょう。」
と言われて、
「おい、何、言ってんだ!」
と立ち上がる島田。
「勝ち目はありません。」
「そんなこと、分からん!」
「無理ですよ、これは!」
激しい言い争いになったところへ、鐘楼の向こうから、
「勝手に戦場を離れることは許さん。」
と、土方が背を向けたまま告げます。
兵士は土方の下へ歩み寄って、意見します。
「しかし、このままここにいても埒が明きません。おめおめと敵の...。」
と言いかけた兵士にいきなり抜刀し、その首筋に刀を当てる土方。
硝煙に汚れた白い鉢巻、乱れた髪が凛々しくて素敵です。
「桑名藩は、いつから腰抜けになったんだ。戦はまだ終わった訳じゃない。宇都宮が駄目でも会津が
 ある。会津が陥ちても蝦夷地がある!先に死んでいった者たちの為にも、俺たちは、最後の最後
 まで、戦わねぇとならねぇんだ!!」
血走った目、悲壮感さえ漂う表情。その迫力に気圧されて、
「わ、わかりました・・・。」
と桑名藩士が答えます。
土方の言葉に呼応するように、
「薩長の奴らに、世の中そんなに甘くねぇってこと、教えてやろうぜ!」
と檄を飛ばす島田。それに答えて、
「おーっ!!」
と、拳を突き上げる新選組隊士たち。
バックに流れる曲が切ないです。


総司が布団の中から半身を起こして、庭で平五郎さんが植木の手入れをしているのを、ぼんやり眺めています。
庭を箒で掃いているお孝。ちょうど総司から平五郎さんを隠すような位置に立って、ちょっと意地悪。
「そこ、どいてくれる?庭を見たいんだよ。」
「らしゅうない。」
「いいだろう?私だって、そういうものに触れたいと思うこともあるんだから。平五郎さんが心を込めて
 手入れしている庭を。」
一生懸命総司が説明してるのに、わざと邪魔になるように靴脱ぎ石の上に飛び乗って、べーっと舌を出すお孝。
「むかつくんだよなぁ。」
と呟く総司と、嬉しそうなお孝さん。

そこへ、門から3人の浪士たちが走り込んできました。
慌てて縁側へ駆け上がるお孝と、母屋へ駆けていく平五郎さん。
浪士たちは、
「沖田総司だな。」
と言うと、一斉に刀を抜きます。
総司の刀架けに、刀はありません。
「お孝、逃げろ!」
と総司が叫び、浪士たちにも
「どけ!」
と言われますが、逆に両手を広げて、浪士たちの前に立ちはだかるお孝さん。
「この人は病なんです。三人掛かりで病人を斬ったら、男がすたりますよ!」
と啖呵を切ります。
「残念だったな。それが新選組の沖田なら、すたらんのだ!」
「お孝!」
一刀で斬り倒されるお孝さん。
浪士たちは、容赦なく部屋に駆け込んできます。
刀架けや枕を投げつけて応戦し、相手が怯んだ隙に庭へ逃げる総司。
咳き込んで地面に膝を着き、浪士たちに追い詰められたところへ、
「沖田さん!」
母屋の二階から平五郎さんが、総司の白鞘の刀を落とします。
まるで旧沖田から新沖田へ、バトンが渡されるような感覚。
総司はそれを受け止めて、立ち上がり、ゆっくりと刀を抜きます。その目は、まぎれもなく剣士の目。
あっという間に三人を斬り捨てる総司。
振り向くと、縁側にお孝が倒れています。
「お孝・・・。」
歩いていこうとして、大量の血を吐き、崩れ落ちる総司。
「沖田さん!」
平五郎さんが、慌てて二階から駆け下ります。
倒れた総司の目の前に転がっているのは、お孝の赤い鼻緒の下駄。
なんか、無茶苦茶悲しいんですけど。(涙)>三谷さん


「結局、最後まで俺は仲間はずれだ。」
捨助が刑場の近くの寺で、風車を回しながらしょげています。
「あの人の優しさだと思います。」
と、つねが説明してやるも、
「優しくなんか、ねぇやー!」
と、逆につねに怒鳴り返す捨助。
そんな捨助の頭をパシンと叩いて、
「人の気持ちのわかんない人だね、この人は!」
と叱りつけるふで。
「何すんだよ〜。」
「勇があんたのことを新選組の隊士だって認めたら、今頃あんたも一緒に打ち首だよ!」
「弟は、あんたを救ってくれたんだよ。」
音五郎も、言い聞かせます。
「ほら、みんなわかってるじゃないか。」
「かっちゃん・・・。」
みんなに言われて、ようやく近藤の真意を理解し、涙ぐむ捨助。
その時、処刑の刻限を知らせる太鼓の音が響き渡ります。
それぞれの思いで、太鼓の音に耳を傾ける4人。
「参りましょう。」
音五郎に促されて、刑場に向かうふでとつね。
捨助はその場に佇んだまま、
「かっちゃん・・・。」
と涙を流しています。


近藤が薄暗い部屋の中で、袋からコルクの栓を取り出しています。夢と希望のいっぱい詰まった、
土方との思い出のコルク・・・。
じっと見つめていると、戸が開いて明るい光が差し込んできました。
「そいは、何じゃ。」
入ってきた兵士が見咎めて、近藤の手からコルクと袋を取り上げます。
「それを持っていてはいけませんか。」
と兵士を見上げて尋ねる近藤。
しかし兵士は、コルクを床に投げ捨ててしまいます。あんまりだ・・・。(号泣)
「立てい!」
と命じる兵士。
まぁ、いい・・・と、近藤は思ったでしょうか。コルクの栓は、象徴に過ぎないですものね。
あの時の夢も希望も土方との友情も、みんな近藤さんの胸に詰まってる。
近藤は黙って兵士に従い、部屋を出て行きます。
閉められる部屋の戸。後に残ったのは、静寂と、床に転がるコルクの栓・・・。(涙)

「お世話になりました。」
近藤は、見送る豊田家の人たちに挨拶します。
いつものように、黙って頭を下げる豊田家の人々。
今日は、とみちゃんがお母さんの膝の上にいない・・・と思ったら、植え込みの陰からひょっこり顔を出しました。
思わず、とみに笑いかける近藤。とみも笑い返します。
そのまま立ち去る近藤を、無邪気な表情で見送るとみ。


その頃、戦場では、土方もコルクの栓を取り出していました。
手の中にそっと握り締め、優しく穏やかな表情で見つめている土方。
近藤のコルクが兵士に投げ捨てられた後だけに、この流れは見ていて辛い・・・。(さらに号泣)
隣りで、島田と尾関が見ているのに気が付いて、
「お守りだ。」
と、土方は説明します。
コルクを袋の中にしまって、戦場を見つめる土方。
その表情は既に引き締まり、目には厳しい輝きが戻っています。

見ていて辛かったけど、土方さんの表情は良かったですね。
この土方なら、これから先もずっと戦っていける。かっちゃんとの思い出を胸に、最後まで戦っていける、と確信することができました。


原田が刑場の近くの木によじ登り、刑場の様子を見つめています。


近藤が、前後を兵士たちに囲まれて、刑場に入ってきました。
どよめく大勢の見物人。その中に、心配そうに見守る音五郎・ふで・つね・の3人もいます。
近藤の姿を見つけて、息を呑む3人。
目の前を歩いていく夫を、泣きそうな表情で必死に見つめるつね。つねに気がついた近藤が、一瞬視線を合わせ、目立たないように会釈をして通り過ぎます。
胸に込み上げる思いを我慢できなくなったふでが、
「近藤勇!よく、戦いました!」
と叫びました。
釣られるように、
「お前は、多摩の、誇りだー!」
と叫ぶ音五郎。二人の笑顔が、涙を誘います。
兵士たちが慌てて駆けつけて、
「だいじゃ、今、声を掛けたとは!」
と糾しますが、見物人の間から一斉に、
「そうだ、近藤、よくやったぞ!」「あんたは、本当の侍だ!」「よくやった!」「そうだ!そうだ!」
と声が上がります。
その声に、思わず涙ぐむつね。
賞賛の大歓声の中を、近藤は歩いていきます。
つねの目から、涙が零れます。


草履を脱いで、莚の上に正座する近藤。
木の上から見ていた原田は、「よっ。」と飛び降りると、
「くそ〜、待ってろよ〜!」
と刑場に向かって駆け出します。
その左之助を、
「おやめなさい!」
と引き止める声が。
立ち止まって振り返ると、そこにいたのは尾形でした。
「尾形!みんな来てるのか?」
「土方さんたちは、宇都宮へ、斉藤さんたちは、会津へ向かわれました。私は、新選組を辞めたもの
 ですから。」
尾形の説明に、左之助は嘲笑を浮かべながら、
「辞めた奴が、何でここにいんだよ。」
と尋ねます。
「山南さんに言われた言葉を、思い出したんです。新選組の行く末を見届けるのが、私の仕事。」
との尾形の答えに、
「じゃぁ、俺の行く末も、良く見届けておけ。」
と言い置いて、駆けて行こうとする左之助。
尾形は、
「ここであなたが死んでも、局長は喜びはしない!」
と左之助に向かって叫びます。
尾形は左之助に歩み寄ると、
「生き延びるんです。生き延びて、官軍に一泡吹かせてやるんです。それが残された者の勤め。」
涙を堪えて、左之助を諭します。
「くそっ!」
涙ぐみながら、刑場への突入を思い止まる左之助。


刑場では、3人の検死役が、近藤の向かい側の席に着きました。
近藤のやや後ろには、太刀取り役が控えています。
首を落とす穴の前に、端座している近藤。
ぽちゃんという水音が聞こえました。
近藤が音の方に目をやると、検死役の席との間に、小さな小川が流れています。その澄んだ流れの中を、悠々と泳いでいく一匹の蛙。蛙は石の上に上がると、クェックェックェックェックェッと鳴き始めます。小川の向こうには、日に輝く満開の紫陽花の花。きらきら光る水の中には、めだかの群れ。耳を澄ませば、頭上には鳥のさえずりが聞こえます。見上げると、初夏の高く広がる空に、つばめが気持ちよく羽ばたいています。
生まれ育った多摩と同じ、優しく美しい自然。その自然の中で精一杯生きている、小さな生命。次第に晴れ晴れと明るくなっていくその表情から、近藤の気持ちが開放されていくのがわかります。
「すみません。見苦しい首を晒したくないので、髭を剃りたいのですが。」


刑場の近くの寺では、捨助が身支度をしています。新選組の羽織を着て、襷には寺の鈴の紐を掛け、紫の鉢巻の横には2本の風車。
草鞋の紐をきつく結んで立ち上がると、風が吹いて勢いよく風車が回り始めます。
ふーっと息を吐いて、覚悟を決める捨助。


刑場には、床屋が来てくれています。伸びた無精ひげを、剃刀で剃ってもらっている近藤。
ちなみに近藤が首穴の前で月代と髭を剃らせたという話は、音五郎次男の勇五郎談として、「新選組始末記」に書かれています。


空には、初夏の輝く太陽。
なぜかそこだけ(笑)吹きすさぶ風に、勢いよく風車を回らせて、刀を抜いた捨助が、
「いやーーーっ!」
と叫びながら、斬り込んでいきます。
二人の門番を倒し、門のところに組まれた竹矢来を切り崩し、
「新選組!滝本捨助!参上ーっ!!」
と大声で名乗ると、警備の侍が3人、飛び出してきました。
「かっちゃーん!待ってろー!!」
と叫び、3人に斬り掛かっていく捨助。しかし、無残にも斬られ、捨助は倒れてしまいます。
それでもなお立ち上がり、捨助は脇差を抜きます。脇差を振り回し、向かっていく捨助を、侍たちが何度も斬ります。やがては力尽き、仰向けに倒れる捨助。
苦しい息の下で微笑みながら、
「かっちゃん、待ってろよ。」
と呟いて、捨助は息を引き取ります。
「待ってろよ。」じゃねーだろー。自分が先に逝って待ってて、どうすんだよ、捨助ぇ〜〜!!(泣)

捨助に関しては、この日、近藤の他にもう一人処刑者の記録があって、それが新選組隊士とも伝えられていて、そこからこの人物像を膨らませていったと、三谷幸喜氏は話していますね。


外の騒ぎが嘘のように、刑場の中は静まりかえっています。
床屋が髭を剃った近藤の顔を丁寧に拭き終わると、近藤は
「助かりました。」
と言って、ゆっくりと一礼します。
床屋も黙って頭を下げると、道具箱を持って立ち去ります。
立ち上がった太刀取り役に、
「長々と失礼致しました。」
と詫びる近藤。
それには答えず、太刀取り役は腰の刀を抜いて、水を掛けて清めます。
「お願いします。」
固唾を飲んで、見守る見物人たち。音五郎もつねもいます。ふでの頬には涙が伝います。
いよいよ太刀取り役が刀を振り上げたその時・・・。

「尽忠報国の士、あっぱれなりー!」
静寂の中に響き渡る声。
「だいじゃー?!」
兵士たちが辺りを見回すと、刑場の外の木に登っている左之助がいました。
「新選組は、不滅だー!!ほーっほーっ!」
手を振って叫ぶ左之助。木の下では、尾形がおろおろしています。
振り返った近藤が、左之助を見て、思わず微笑みます。
そんな近藤に頷きながら、嬉しそうに笑う左之助。
「あん男を捕まえろ!」
兵士たちがやってくるのに気がついて、慌てて木から飛び下りた左之助は、
「後の事はよろしくな。」
と尾形に託し、祠の前のお供え物をちゃっかり頂戴して、
「俺も不滅だー!」
と叫びながら、走り去ります。
その後ろ姿を見ながら、
「ははははは。」
尾形も声に出して笑うと、自分も兵士たちから逃げるように立ち去りました。

ここは左之助らしい、近藤への気持ちの表わし方でしたね。
最後までなじめない人だった尾形さんが、近藤に対して、新選組に対して、もう一度気持ちを向けてくれたのも嬉しかった。
ちなみに、さっきから待ちぼうけをくわされている太刀取りの男は、美濃岡田家家臣・横倉喜三次という武士です。岡田家の武術指南役を務めるほどの剣の遣い手だった横倉は、立場を超えて近藤と心を通わせました。処刑後、郷里に戻った横倉は、毎年近藤の命日に、その首を落とした近藤の佩刀に香華を手向け、冥福を祈り続けたそうです。
先日、なんと、その法要記録が岐阜県で見つかったんですよね。絶妙なタイミング!
なんとか武士らしい最期をと願ってくれた有馬の奔走といい、この横倉の話といい、近藤の人柄を表わすエピソードです。


山あいの街道。関所で斎藤が、新政府軍の兵士4人に囲まれています。
「会津藩主、松平容保様の命により、近藤勇の御首、取り戻しに参る。」
厳かに告げる斎藤さん。背中には、容保様からいただいた、錦の袋に包まれた虎徹が・・・。
「何者だ?!」
厳しい調子で問い質す兵士に、
「会津藩御預り、新選組三番組長、斉藤一。」
斎藤は淡々と名乗ります。
「取り押さえろ!!」
しかし兵士が銃を構えるよりも先に、4人を瞬く間に斬り捨てる斎藤さん。
血を拭って懐紙を投げ捨てると、刀を納め、また歩きだします。
斎藤さん、かっこいい〜〜!!


浪士に襲われた植木屋平五郎宅。
浪士たちの死体とお孝の亡骸は運び出されているものの、庭や縁側の血溜まりはそのまま。竹箒もお孝の下駄も転がったままです。口元に血をつけたまま、総司は布団に寝かされています。布団の横にある血溜まりは、あの後また喀血したのでしょうか。
その血溜まりの中で、蟻が1匹もがいているのを、総司は見つけました。
手を伸ばし、蟻を摘み上げ、しばらく見つめると、蟻を乾いた畳の上に放してやります。
あちこちと這っていく蟻を、無表情で見つめる総司。ついに一人ぼっちになってしまいましたね。
大切な人を失って初めて、総司は命を生かすということを知ったのかもしれません。
総司は恐いほどの静寂の中に、一人横になっています。


戦場では、敵の銃弾が激しく襲い掛かります。
木の陰に身を隠して、それをやり過ごす土方と新選組隊士たち。
「行くぞ!島田!尾関!」
「おーぅ!」
高々と誠の隊旗が掲げられます。
土方は、島田とともに刀を抜くと、
「掛かれーっ!!」
先頭に立って敵陣へと突っ込んでいきます。その後に続く隊士たち。
飛んでくる銃弾の中、刀を振り上げて駆けていく・・・。


近藤は、静かに首を前に差し出して、きらきら光る水面を見つめています。
刀を振りかざす太刀取り役。
水面に映っているのは、風に翻る誠の隊旗です。
「トシ。」
近藤は最後に、笑顔で友の名を呼びました。
そして、一閃する刀・・・。


「完」



テーマ曲が流れ始めます。
勇壮な曲に乗って、流れ始める懐かしい映像。
このシーンも、あのシーンも、みんな覚えてる。
生き生きと甦る、近藤、土方、試衛館のみんな、多摩の人たち、新選組隊士たち、敵対していたあの人たち、お世話になったこの人たち。
またドラマが始まったかのように、次々と映像は流れていきます。
もう一度試衛館の仲間たちが順に映された後、テーマ曲のラストは第2話の近藤と土方のシーン。
一緒にでかいことやろうぜ?と言われて、「考えとく。」と答える土方。大きく手を振る、近藤の笑顔・・・。
これが、三谷さんが考えた、全49回のドラマのアンコール。


そしてさらにダブルアンコールは・・・
「楽しみですね、京都。」
聞こえてきたのは総司の声。画面に現れるのは、京へ向かう時の試衛館の面々。
「向こうじゃ、何が待ってんだろうな、俺たちを。」
期待に満ち溢れた土方の言葉。
近藤が刀を抜いて空にかざします。
その先を見つめる、仲間たちの輝く表情。
まるで、これからまた、彼らのドラマが始まるかのように・・・。

 

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