大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第47回  再会  

慶応4年(1868)2月12日
“徳川慶喜は謹慎のため江戸城を出て、上野の寛永寺に移った。そして近藤勇ら新選組は、その寛
 永寺の警護を任されることになる。”

江戸城を出る慶喜公を、他の家臣たちと見送る、近藤・土方。
土方さん、裃姿って初めてじゃなかったっけ? バストアップで横からのショットだけなのが残念〜。
でも、美しい横顔がさらに凛々しいですぅ。(爆)


鍛冶橋門内、新選組仮屯所。
 近藤「俺はこのまま終わるつもりはない。」
 沖田「薩長と戦うんですか。」
 近藤「この江戸で迎え討つ。」
 土方「俺も賛成だな。ここで引き下がったら、薩長の思うつぼだ。」
 近藤「俺はこの際...。」

なぜか不自然に声だけ聞こえて、フレームの中に入ってこない土方。
近藤と総司の微妙な視線もおかしいし・・・。もしかして、もしかして・・・。(どきどき)

 近藤「トシ、やはりその格好はどうかと思うんだ。」
カメラが切り替わったと思ったら、足元から上へと舐めるように映していく。
来るぞ、来るぞ。やったぁ!土方さんの断髪洋装〜〜っ!!おめでとう〜〜。(めでたいのか?笑)
今夜のオープニングは、“土方歳三ファッションショー”ですか?(いや、それはないはず)
土方歳三に洋装は外せないですもんね。だから、すごく楽しみだったんですよ。
山本くん、なかなか似合ってるって噂には聞いてたし、あのネタバレ大好きNHKが、土方の洋装だけは頑なにネタバレを封印していたので、期待ばかりがどんどん高まっちゃって・・・。
でも、高まり過ぎた期待にも十二分に応えてくれる、麗しい山本土方の断髪洋装姿でした。

 近藤「どうしても馴染まないんだ。」
 土方「俺はもう馴染んだぜ。」
自信たっぷりに微笑むと、庭に向かって振り返り、障子の桟に手をついて、めちゃくちゃ格好つけて佇んでみせる土方。い、いや、そんなにかっこつけんでも、十分かっこいいと思うのですが・・・。(爆)
 沖田「なんだか、見てられないんですけど・・・。」
はい、私もです、総司くん。(笑)
 土方「刀の時代は終わった。俺は、姿形から入るんだ。」
そう言いながら、さらに格好つけて、両手で髪を撫で付けてみせる。
ぷ〜っ、それじゃぁ、サタデー・ナイト・フィーバーだよ!ジョン・トラボルタだよ!!
そこで、近藤さんが素朴な質問。
「小便はどこからするんだ?」
訊かれたとたん、にっこり嬉しそうな土方さん。よくぞ訊いてくれましたって感じ? 
勇んで近藤の前に立つと、
「いいか、ここ見てみろ。」
と、得意そうにズボンの前を見せます。
「ほら、これ。この丸い留め具が付いてるだろう? これ、ボタンっていうんだ。」
「なんだか花みたいな名前だな。」
ちょっと興味を示し始める総司。もともと好奇心旺盛な子だものね。
「こう外すだろう? そうすると、ほら、どうだ。」
どうだ?!って、何見せてるんですか?土方さん!!(爆)
カメラは土方を後ろから撮っているので、画面の前の私たちにはわかりませんが、近藤さん、露骨に顔を背けて、嫌そうにしているんですけど・・・。(苦笑)

もう、きゃ〜っ!!と思ったら、そのあと、爆笑させていただきました。土方さん、あんた面白過ぎ!
最後、呆れた近藤さんに睨まれてるし・・・。
土方さん、先週からすっかりお笑いキャラと化してませんか?(笑)
最後にまた、うぐいすが一声鳴いてます。>豊玉宗匠


伝通院のお堂の階に、近藤と総司の姉おみつが座って話しています。
新徴組にいるご主人に付いて、もうすぐ庄内へ行くというおみつさん。
残していく総司のことが気になる・・・と話します。
「いまだに、なんとか先生のところにいるんでしょ?」
「おみつさんのところで、ゆくゆくは面倒を見てもらえればと思っていたのですが。」
そう言って俯いてしまった近藤を見て、
「そんなに悪いの?」
とおみつは尋ねます。
小さく頷いて、
「総司は労咳のようです。」
と答える近藤。おみつは言葉をなくします。
山門に走り込んできた夫の林太郎さんの、何も知らない明るさが悲しい。

「総司に一度会いに行ってやって下さい。」
近藤の言葉にこくりと頷くおみつ。
それから、表情を変えて夫のところに駆け寄ると、買ってきてくれた包みを受け取ります。
「ここのお饅頭、本当に美味しいんだから。」
明るく笑って、近藤に掲げて見せるおみつさんと、隣りに寄り添う林太郎さん。

伝通院・・・。懐かしいですね。
ちょうど5年前、近藤たちは浪士組に参加して、京へ上りました。あの時、集合場所となったのがここ伝通院だったんですよね。すべてが始まった、あの日、この場所。5年前、浪士たちで溢れかえっていた境内も、今は穏やかな静寂に満ちて、桜がひそやかに咲いているばかりです。

「これから戦になるの? どうしても戦わないといけないの?」
尋ねるおみつに、
「今戦わなければ、薩長の世の中になってしまう。」
と答える近藤。
でも、さらに畳み掛けるように、
「それではいけないの? みんなは幸せになれないの?」
とおみつは尋ねます。
「薩長は義の無い戦を起こし、この国を意のままに動かそうとしている。人々の幸せを、考えてのこと
 ではないのです。そんな奴らに、思うままにさせてはいかんのです。」
熱く語る近藤。
二人の横で饅頭を食べながら、林太郎さんが、
「戦は、いやだなぁ。」
と呟きます。
おみつと林太郎の言葉は、一般庶民の感覚ですよね。だけど近藤さんは、象山先生や竜馬と出会って、京に上って世の中の動きを肌で感じて、世の中はこうあるべきという思想を持ってしまったから。身近な小さな幸せより、大きな志が大切になってしまったから。二人の言葉は近藤には届かないんでしょうね。


近藤は、勝海舟の屋敷を訪れます。
同席しているのは、あら懐かしや、山岡鉄舟(鉄太郎)です。上京する浪士組の世話役をしてらっしゃいました。確か、清河八郎のお友だちでもあったような・・・。
 勝 「いやー、ずいぶんと立派になったもんだなぁ。」
 近藤「覚えておいでですか。」
 勝 「坂本が連れてきたのは、ありゃ、何年前になんだ?」
 近藤「あれは5年前になります。」
 勝 「生まれのせいでよ、講武所をはじかれた男が、今じゃ旗本だ。大した出世じゃねえか。」
懐かしいですね。5年前、坂本に連れられて勝の屋敷に来た時、確か平助も一緒ではなかったでしたっけ? それから、佐久間象山先生もいたような。
その象山先生も坂本も平助も、みんなもう、この世にはいないんですね。

「いや、近藤さんさぁ、もう、新選組が来てくれたおかげで、百万の味方を得た思いだって、もう、城の
 奴らは奮い立ってるよ。今じゃあれだな、新選組と近藤勇の名は、徳川の守り神みてぇなもんだ
 な。」
畳の上に置かれた近藤のグラスにワインを注ぎながら、勝は近藤を大層持ち上げます。それには答えず、
「1万の兵を我らにお貸しいただけたら、薩長を見事追い払ってお目にかけます。この戦、勝ちま
 す。」
と、決意の程を見せる近藤。さらに、
「上野に陣を敷きます。薩長軍を江戸市中に引き入れて、迎え討ちます。町中での戦では、攻める方
 が不利。勝機は我らにあります。勢いに乗って寛永寺より上様をお連れし、御自ら御出陣いただき
 ます。兵の士気も高まり、大勝利間違いなしと。」
と語りますが、熱心に聞く山岡に対して、まともに聞く気のない勝先生。
さらに近藤の言葉を一切無視して、
「あのさ、甲府へ行ってくんねぇか?」
と勝は言い出します。
「はい?」
「あんたには、甲府に行ってもらいたい。」
「甲府に?」
「甲府城は、徳川家の西の守りの要だ。新選組には、そこで薩長軍を迎え討ってもらう。」
いや〜、いいですね〜、野田さん。一筋縄ではいかない勝先生の感じがよく出ています。
あまりに唐突な勝の言葉に、
「お言葉を返すようですが、今兵を分かつのは、いかがなものかと思われます。」
と近藤が反論すると、
「陸軍総裁がそう言ってるんだ。従ってもらおうじゃねえか。」
急に有無を言わせない口調で、命令する勝先生。
それから今度はにっこり笑うと、
「軍資金はさ、好きなだけやるよ。あぁ、お前そうだ。あの〜、大砲も貸そう。派手に暴れて来い。
 お前、勝った暁にはな、やるよ、甲府城。好きに使っていいぞ。ここは黙って、甲府へ行ってくれ。
 頼む、近藤さん。」
あの手この手で、近藤を口説き落とそうとします。
勝としばらく見詰め合っていた近藤は、勝の真意を理解したのでしょう。
「かしこまりました。」
と答えます。ほっとした表情の勝先生。
「名前も、ついでに改めてもらう。新選組はこれより、甲陽鎮撫隊とする。」
「甲陽鎮撫隊。」
「この戦は、世の乱れを鎮めんがための、正義の戦。よって、鎮撫隊。よろしくな。」

近藤は、勝の言葉をすべて受け入れて、帰っていきました。
「甲府城を任されて、近藤もおそらく身が引き締まる思いでしょう。いや、正直、勝先生がそこまで近
 藤勇を買っていたとは、思いませんでした。」
と感心する山岡に、
「何を間の抜けたこと、言ってんだろうね、こいつはもう。」
と返す勝先生。
「この戦は、もう決着が着いてんだよ、鳥羽伏見でさ。今更、甲府が何だってんだよ。近藤が乗り込ん
 だところで、敵には勢いってもんがあらぁ。勝てる見込みは一つもねえよ。」
「では、勝先生は、近藤勇に死に場所を与えたのですか。」
「体よく追っ払ってやったんだよ。お江戸を守んのが、おいらの仕事だ。この町で戦はさせねぇ。お
 前、俺が何で新選組の名前を変えさせたと思う?」
「さぁ。」
「新選組と聞いてよ、集まってきやがる馬鹿野郎どもが、まだいやがんだ。これ以上、近藤に力を持
 たれちゃ困るんだ。何しろよ、あいつには、甲府で死んでもらわねぇと困るからさ。」
近藤に話していた時と、声色からして全然違うんですけど。>勝先生。
勝の本心を聞いて、山岡さえも言葉が出ません。
「こ、甲陽鎮撫隊だぜ。甲陽・・・。いかにもよぅ、急ごしらえの名前だろう? そんな部隊にゃよ、誰も
 寄りつきゃしねえって。」
「恐れ入りました。」
笑ってみせる勝先生。政治家としての勝の冷酷さが、乾いた笑いによく表れています。
けれど、それから急に声の調子を落として、勝は言います。
「ただよ。近藤、ありゃぁ、見抜いてたな。俺があいつに望んでることを、あいつは全てわかってた。
 あんなに悲しい目した男、俺は初めて見たぜ。」
うっすらと瞳を潤ませ、唇を震わせて呟く勝。わ〜、こんな演技をされたら、勝のことを恨めないじゃないか!!(涙)


西洋医学所へ、おみつが総司の見舞いにやってきました。
「なんだ、案外元気そうじゃない。かっちゃんから病だって聞いてたから心配してたのに、顔色もいい
 わ。大丈夫、大丈夫。」
どう見ても、痩せ細り、顔色も透きとおるようになっている弟に、おみつはいつものように明るく声をかけます。
それから縁側にぼんやり座っている総司の横に、座り込むおみつさん。
「平助のこと聞いたわよ。可哀相だったね。」
「ええ。」
「あと源さんも。一緒に帰ってきたかったでしょうにね。」
「まだ、源さんのことは信じられないな。」
「お幸さん、亡くなったんですってね。」
「・・・。(こくり)」
一人ずつ、その死を悼むおみつさん。
それから急に明るい調子で、総司に尋ねます。
「あの人は元気? こういうの掛けた、風変わりな人。」
「武田さんも死にました。」
「じゃぁ、あの人は? 勘定方のひょろっとした・・・。」
「河合さんも死にました。」
「じゃぁ、あの体はでかいけど、目は小さい・・・。」
「島田さんは生きてますよ。」
「そうか。みんな元気にしてるんだ。」
いや、だから、島田さんの他は、みんな死んだんだって。>おみつさん(苦笑)
でも、なんとか総司を明るく励まそうとして、一生懸命なおみつさんの気持ちは買いたいな。

再び俯いてしまった総司は、やがて顔を上げると、
「申し訳ありませんでした。労咳なんかになってしまって・・・。」
と姉に謝ります。
「たぶん、来年の正月は私はいません。」
悟りきったように告げる弟に、
「誰も決めてない、そんなこと。」
と否定するおみつ。
「自分の体のことぐらい、自分でわかります。」
「あなたはそんなに簡単には死にません。父上と母上が見守ってくれています。」
両親を亡くした後、その両親に代わって、おみつは総司を一生懸命育ててきたんですよね。その大切な弟が死病に罹ってしまって、自分は来年の正月にはいないと言う。おみつの心の中はどんなに切ないことでしょう。
「私は、京で多くのことを学びました。いろんな人に出会いました。大勢、人も斬りました。剣を抜くの
 が楽しくてしょうがない時もあった。でも今は、人を斬ることの辛さも知っています。病に罹ったこと
 すら、私には得るところが大きかった。臥して初めて、人の命の重みというものを学びました。」
淡々と自分の半生を振り返る総司。京に上ってからの総司の、あんな場面やこんな場面が次々と思い出されて、総司の言葉の一つ一つに思わず頷いてしまいます。
「だから悔しいんです。ようやくこれからなのに、近藤さんのために、新選組のために、世のために、
 自分の力を生かせるという時に・・・。」
涙を堪える総司の表情。
本当に、今の総司ならきっと、自分を生かす剣・人を生かす剣が使えることでしょうに・・・。

「まるで、もうすぐ死ぬ人の言い分ね。」
怒ったようにおみつが言います。
「だから私は・・・。」
「そうやって一人で、かっこつけてなさい。」
「かっこなんか、つけてない。」
「偉そうに血なんか吐いちゃって、馬鹿みたい。」
「姉上・・・。」
総司は姉に甘えたかったのかもしれませんね。なかなか他人に言えない、死病に罹ってしまった悲しさ・悔しさを、おみつに聞いてほしかったのでしょう。だけど、おみつにしてみたら、総司が病気であることさえ、否定したい気持ちじゃないでしょうか。
「あなたは悪いけど、まだまだ死にません! しわしわになって、みんなに糞じじいって言われるまで
 生き続けるの! 沖田さんとこの総司さんは、若い頃はいい男だったのにねって、あの時死んでれ
 ばねって、そう言われるまで生き続けるの!」
総司に背を向けて、憤りを何かにぶつけるように、言葉を重ねるおみつ。そんな姉の背中を、総司は呆然と見つめています。
おみつはそれから総司の方へ振り返って告げます。
「あたしより先に死んだら承知しないから。」
おみつの目からは今にも涙がこぼれそうで、そんな姉の言葉に、うっすらと微笑んでみせる総司。
「また来る。」
おみつは総司の前を去ります。
廊下でふと立ち止まり、堪えきれずに泣くおみつさん。
総司は縁側に座ったまま、庭の桜が散っていくのを眺めています。

弟を励ましたい気持ちもあったかもしれない。でもそれ以上に、自分が泣き崩れてしまわないために、おみつさんは敢えて憎まれ口を叩いてみせたような気がします。「死なないで」っていう気持ちが、言葉にしてみたら、「死にません!」「死んじゃいけません!」になってしまったような・・・。
「偉そうに血なんか吐いちゃって、馬鹿みたい。」 なんて、おみつさんにしか言えない台詞だよなぁ。そして最後の、「あたしより先に死んだら承知しないから。」 勝気な台詞であればあるほど、おみつさんの悲しみや切なさががどんなに大きいかを伝えているようで、本当に胸が詰まりました。
多摩の頃は、うざいうざいと思って見ていたおみつさんに、ここに来てこんなに泣かされるとは思わなかった・・・。


仮屯所では、近藤が土方に、甲府へ行くようにと正式なお達しが出たことを告げています。
土方さんの腕に、“誠”の袖章が付いてる〜。今も残っているあれですね。
「そこで勝てば甲府城をくださると、勝先生がお約束された。」
「・・・話がでかいな。」
「およそ5千の軍勢で、敵は東山道を下ってきている。それを甲府城で迎え討つ。・・・俺たちは2百名
 足らずで、5千と戦う。」
近藤の顔をじっと見つめたまま、土方は黙って話を聞いています。
「俺の本音を聞いてくれるか?」
という近藤の言葉を、
「いや、聞かん。」
と即座に断って、すっくと立ち上がる土方。
「かっちゃんは思うようにすればいい。俺はかっちゃんに付いてくだけだ。」
そう言って、部屋を出て行く土方。

土方は近藤の言葉から、勝の思惑に気が付いたのでしょうね。新選組は邪魔だから、体良く甲府に追いやられるのだということに・・・。
でも、実際にそれを聞きたくはなかったのでしょう。すでに江戸にも自分たちの居場所がなくなっているのだということを、土方はまだ受け止める覚悟ができていなかったんじゃないのかな。
近藤は、土方に話したかったみたいですけどね。一人で受け止めるのは辛すぎて、トシと一緒に慰め合いたかったのかもしれない・・・。(涙)


幹部会議が開かれます。
「甲陽鎮撫隊の編制を伝える。」
と告げる土方に、
「あんた、本当にこういうの好きだねぇ。」
と感心する左之助。はい、好きみたいです、この人。(笑)
お!土方さん、上着を脱いでますよ。真っ白なシャツに、ボタンがいっぱい付いた、黒のチョッキ姿。この格好もまた、なんとも素敵じゃないですか〜〜。(*^o^*)
島田が見せている編制表にはもう、副長助勤が4名しかいませんよ。
あ、小荷駄方に安富才輔の名前が・・・。
彼は、立川主税・沢忠助らとともに、土方の戦死を見届けた隊士です。日野の土方さんの実家には、土方戦死を知らせる安富の書状が残っています。「早き瀬に 力足らぬか 下り鮎」 書状の中にある、安富の土方追悼の句ですね。(落涙)
「いいか、甲府城が手に入れば、近藤先生は一国一城の主だ。」
「たとえ名前が変わったとしても、我らは新選組。誠の旗の下、あくまで薩長と戦う。心して、掛かって
 もらいたい。」
「よっしゃー!」「よーし!」
土方、そして近藤の飛ばす檄に、士気の上がる隊士たち。
末席にちょこんと座っている捨助が、まだ馴染めない様子でかわいいです。

「頼みがある。使いに走ってもらいたい。」
部屋に戻った土方が、上着を着ながら話し掛けているのは、部屋の入り口に突っ立ったままの捨助です。
うわぁ、土方さんの上着の裏地が真紅だよ。素敵だよ。その上着をパサッと羽織る土方の、かっこいいことといったら!!襟を直してくるりと振り向いて、くぅ〜〜、男前過ぎるっ!!!(崩壊)
その男前な土方の前で、なにか悩んでる風な捨助。今までさんざん邪険にされてきたからね〜。
ふんだくられた50両も、まだ返してもらっていないはずだし。信じられないのも無理はない。(苦笑)
そんな捨助に土方が掛けた言葉は、
「心配すんな。その羽織を着た奴に、嘘は言わねぇ。頼まれてくれるか。」
土方の新選組への、そして隊服へのこだわりが覗えて、嬉しいですねえ。
「これからか。」
それでも渋る捨助に、
「新選組隊士としての、初仕事だ。」
土方が言うと、
「はい!」
にこやかに受ける捨助。かわいいじゃ〜ん。
土方さんにも認めてもらえて、それも仲間として認めてもらえて、良かったね。


江戸の会津藩邸で、近藤と島田が容保様に拝謁しています。
この時はまだ、容保様は江戸にいらっしゃるようですね。やがて江戸からの退去を命じられ、会津にお戻りになるはずですが。
「必ずや、朝敵の汚名を晴らす日がやってまいります。その魁としてまずは、この近藤勇が、甲府に
 て奸賊どもを蹴散らしてご覧に入れます。」
「頼もしいぞ、近藤。いずれ、お前も会津へ来い。」
「はい。」
容保様の優しさが身に沁みます。先のことを考えると泣けるけど・・・。

「そうじゃ。お前に見せたいものがあった。先ほど京より、ようやく身の回りの物が届いたのだ。」
傍らの箱を開ける容保様。気になって、遠くから横目で見ている島田がかわいい。(*^^*)
箱の中から出てきたのは、“文久三年 壬生相撲”と書かれた団扇。
うわ〜、ここでまた出てくるのか〜。懐かしい、懐かしいよ〜。
グッズ作りに精を出していた、平助と野口くんとか、受付やってた山南さんとか、ちょうど情報探りに来て相撲に大喜びだった坂本さんとか、お忍びでいらした容保様と、広沢様以下黒羽織のシークレットサービスとか・・・。
あ、島田が飛び入り参加しようとして、褌が切れて、ちょうどそれを容保様に目撃されてしまったりもしましたっけ。
容保様、大切に取っておいてくださったのですね。(涙)

「覚えておるか?」
「壬生大相撲。」
「一番人気の、黒神の手形じゃ。」
容保様が団扇を裏返すと、朱色の手形と黒神の署名が!
一瞬、固まる近藤。
「予の宝じゃ。」
あちゃっという表情の島田。だって、それって、それって・・・。(笑)
「懐かしいな、近藤。あの頃は、まことに楽しかった。」
容保様の寛いだ笑顔。
「一つだけ、よろしゅうございますか、殿。」
「なんだ。」
「島田。」
誠実な近藤さん、これ以上容保様を騙しているのに耐えられなくなったらしい。(苦笑)
「それ、押したの、俺なんです。土方さんに言われて。俺の手形なんです。今まで騙していて、すみま
 せんでした。」
深々と頭を下げる島田と近藤。ん〜、一番謝るべきは、土方さんって気もしますが。(爆)
ちょっとがっかりした表情を見せた後、思わず苦笑を漏らしてしまう容保様。
「やりおったな。」
容保様の苦笑が微笑へとかわります。それがどんな思い出であれ、あの頃の出来事は、容保様にとっても、本当に懐かしく大切な宝物なのかもしれませんね。
容保様の笑顔にほっとして、笑ってしまう島田さん。


翌朝、試衛館では、陣羽織姿の近藤が、ふで・つね・たまに出陣の挨拶をしています。
近藤さんの陣羽織、かっこいい〜〜。襟と前立ての臙脂色が効いてますね。
「これより途中多摩へ立ち寄り、甲府へ出陣いたします。」
「ご武運をお祈りいたしております。」
お母さんに言われて頭を下げる、たまちゃんを見つめて微笑む近藤。
「行ってまいります。」

近藤が出て行ったあと、庭で手まり歌を歌っているたまちゃんと、縁側に座ってそれを見ているふでさんとつねさん。
「勇殿、随分と立派におなりで。」
「はい。」
「馬子にも衣装とは、よく言ったものです。」
相変わらず、口の悪いふでさん。(笑) でもその言葉の中に、愛情とか誇らしさとかがいっぱい詰まっているんですよね。だから、ふでさんとつねさんは顔を合わせて笑います。
近藤の死後、この3人がどんな思いを抱えて生きていったのかを考えると、この穏やかな朝の一時が、とても切なく物悲しく感じられます。


同じ頃、西洋医学所では、お孝が沖田に薬を運んできます。
いつものように、立ったまま障子を開けようとして、思い直すお孝さん。
障子の前で跪いて、
沖田はん、朝のお薬ですよ。」
と声を掛けますが、中から返事はありません。
不審に思って障子を開けると、中にはきれいに畳まれた布団が・・・。
驚いて走っていくお孝さん。


試衛館を出た近藤、そして土方、原田、永倉・・・。
その行く手を遮るように現れたのは、医学所を抜け出した総司でした。
思い詰めたように、縋るように、近藤を見つめる総司の目。
 近藤「同じ光景を、前にも見た気がする。」
そう、京へ上る朝、お前はまだ若いから置いていくという近藤に、総司は前髪を落として月代を剃って、みんなの前にこうやって現れたんでしたっけ。
「連れてってやろうぜ。」
左之助の台詞も、あの時とおんなじだ〜。(嬉)
総司に頷いてやる近藤さん。


慶応4年(1868)3月2日。
甲陽鎮撫隊が多摩に着きました。
門の前には大勢の人だかり。中で寛いでいる隊士たちが手を振ると、歓声が上がります。

「お勤め、まことにご苦労様でした。」「ご苦労様でした。」
屋敷の中では、近藤と土方が多摩の皆さんから挨拶を受けています。
「えー、本日は・・・。」
小島鹿之助さんが挨拶を続けようとするのを遮って、おのぶさんが弟に声をかけます。
「ちょっと、歳三。なぁに?その格好。」
「フランス人みたいだろ。」
「なんだか恥ずかしいな。」
照れつつも自慢する土方に、突っ込む義兄佐藤彦五郎さん。
「えー、本日は・・・。」
再度鹿之助さんが挨拶しようとするも、
「よし。」
と立ち上がって、
「よくやった。新選組、日本一ーー!!」
扇を開いて叫んだのは、今度は近藤の兄宮川音五郎さん。
音五郎さんの音頭に合わせて、その場の人たちから
「日本一!新選組、日本一!日本一ー!」
一斉に声が上がります。嬉しそうに、照れくさそうに、顔を見合わせる近藤と土方。


多摩の人たちが、ちょっとした宴会を開いてくれました。
主だった幹部隊士たちも席についています。
「局長って呼んでもいいか。」
と、音五郎さん。
「今はもう局長ではありません。新しい名前もいただきました。甲陽鎮撫隊の、大久保剛です。上様
 から大久保の姓を賜りました。」
「上様からいただいたお名前だが、俺は気に入らん!俺にとっては、お前は新選組局長、近藤勇
 だ!局長!お前は、多摩の誇りだ!」
“新選組局長近藤勇”の名にこだわってくれる、音五郎兄さんの気持ちが嬉しいですね。
「ちなみに俺も変えたからな。」
と、横から告げる土方。
「内藤隼人。」
「なに?」
「随分、格好いい名前にしたものだ。」
「隼人っていうのは、土方家に伝わる由緒ある名前なんだ。」
そうなんですよね。代々土方家は、家督を相続した人が、隼人の名を名乗ったそうです。

「そうだ、近藤さん!」
と、大きな声で呼ぶ彦五郎さん。
「だから、大久保さん。」
と土方が突っ込み。(笑) あぁ、多摩の人たちに対する土方の突っ込みも、懐かしいなぁ。
「どっちだっていいんだよ。私も、一緒に行くことにしたから。この時のために、ここいらの男かき集め
 て、戦支度してたんだよ。名前はもう決めてある。春日隊。」
と彦五郎さんが言います。
「多摩の人間も、何か力になりたいのです。」
と言い添える鹿之助さん。
近藤も土方も、故郷の人たちの気持ちがどんなにか嬉しかったことでしょうね。

ちなみに近藤・土方たちが上京した文久3年、日野では、農村にも広がった治安の乱れを取り締まるため、日野宿組合農兵隊が組織されました。
そして慶応4年、彦五郎は土方から鳥羽伏見の戦いの様子を聞いて、元込銃20挺を購入し、農兵隊から22名の兵士を引き抜いて春日隊を編制、甲陽鎮撫隊に参加したそうです。ちなみに春日という名は、彦五郎の俳号「春日庵盛車」から取ったもの。
しかしこの時、甲陽鎮撫隊に参加したために、彦五郎はじめ多摩の人たちは、新政府軍から大変厳しい追及を受けることになるのです。


お銚子が空になって台所へ向かう彦五郎さんが、総司の咳に気づきます。
「あら、風邪?」
と訊く彦五郎さんに、
「いえ。」
咳き込みながら首を振る総司。
深く気にもとめずに、立ち去る彦五郎さん。


「いささか、心配だ。」
永倉が一人、難しい顔をしています。
「いいのか、こんなところでゆっくりしていて。薩長の奴らに、先に甲府城に入られたら終わりだぞ。」
厳しい声で心配する永倉さん。
「いいんじゃねぇか。故郷に錦を飾ったんだしさぁ。」
あまり難しいことは考えない左之助です。(笑)

永倉の台詞は、甲陽鎮撫隊の敗因が、近藤・土方が多摩の行く先々で歓待を受け、そのために行軍が遅れて、先に甲府城を取られたから・・・とする説から取ったものですね。しかし実際には、そう長々と宴会で盛り上がっていた訳ではなく、休憩を取っただけですぐに出発しています。甲府城に先に入られたのは、とにかく新政府軍の進攻が速かったから。逆に甲陽鎮撫隊の進軍が遅かったのは、寄せ集めの軍隊だったことと、笹子峠で降られた雪のせいだったのではないかと思われます。


「誰だ、お前!」
玄関の方で上がる声。
「いよー、けぇったぞ!」
得意そうに手を挙げながら入って来たのは捨助です。
捨助ももちろん、故郷に錦を飾ったつもりかな?(笑)
みんなに囲まれて、
「捨助!」「どこ、ほっつき歩いてた!」「もう、みんなに心配掛けて。」「この親不孝もん!」
口々に責められる捨助。
「うるさい!俺は今、新選組なんだよ。下々の連中と語り合っている暇は、ねぇんだよ。」
おいおい、下々って・・・。(苦笑)
「もうちょっと歓迎してくれたっていいじゃねぇかよ。」
それが捨助の本音なんだよね。

「連れてきた。」
捨助の報告に、
「ご苦労だった。」
と返す土方。
捨助が手を引っ張って部屋の中に連れて来たのは、一人の武士でした。
「菜葉隊の小松と申します。」
「菜葉隊?」
「はい。我々もまた、薩長を快く思わない、直参の集まりです。我々も、甲陽鎮撫隊と共に、戦わせて
 下さい。」
特別出演、ビビる大木さんですね〜。大の「新選組!」ファンだとか。やたら芝居がかった喋り方が笑えます。
「前々から、菜葉隊に加勢してもらうように頼んでたんだ。捨助が正式な返事を持ってくるまで、黙っ
 てた。」
と近藤に説明する土方。
「一刻を争うと思って、こいつを連れて馬飛ばしてきたよ。」
捨助が得意そうに近藤に話します。かっちゃんの役に立てるのが、本当に嬉しいんだろうなぁ。
「よろしくお願いします。」
近藤の言葉に、わずかに頷く小松。

「しかし、なぜに、菜葉隊?」
背後から近づき、遠慮しながら小松に聞いたのは、音五郎さんです。
同じく、興味深々で背後に近づいている鹿之助さんも可笑しい。
「もう少し強そうな名前は無かったのですか。」
と近藤も重ねて訊くと、
「これがうちの揃いの羽織なんです。菜っ葉色で揃えたもんで、菜葉隊と呼ばれています。」
と小松が答えます。でも、菜っ葉色というよりは、抹茶色といった感じですが。
「ちなみに菜葉隊は、何人いるんですか?」
またまた興味深々の音五郎さん、そして鹿之助さん。(笑)
「1600ですが。」
小松が自慢げに答えと、
「そんなにいるんですか!」
音五郎さんと鹿之助さんはびっくり。近藤も目を見張っています。
土方が盃を口に運びながら、
「名前に似合わず、頼りになるだろ。」
と微笑むと、黙って頷く近藤。
「それでは、共に戦いましょう。」
「はい。」
小松に杯を差し出し、注いでやる近藤です。

この菜葉隊も文久3年に設立された部隊で、最初は神奈川の太田陣屋や横浜居留地の諸関門などを警備していました。甲陽鎮撫隊が出陣したこの時期は、江戸城西の丸の警備にあたっていたようです。
冗談のような隊名ですが、実際にあった部隊なんですね〜。役名の小松は、三谷さんが付けたそうですが。菜っ葉だから、小松。(笑)


鹿之助さんが、懲りもせず、挨拶の文章を必死で覚えています。
いい感じで酔っ払った彦五郎さんが、おのぶさんに支えられて戻ってきました。
可笑しそうに土方の前に座ると、
「な。あの、ほら、お前が見合いした、あの、お琴ちゃんていたろ?」
と言い出します。
さりげなく酒に口をつけながら、
「うん。」
と答える土方。あまり触れられたくなくて、ちょっと警戒してる?(苦笑)
そんな土方の様子を気にも留めずに、
「夫婦になる気も無いくせに、手を出した・・・。ふはははは。」
とからかう彦五郎さん。
土方は近藤の方をちらっと見ますが、近藤は知らん顔。仕方なく姉のおのぶさんに、
「なんとかして下さいよ。」
と訴えます。この日野では、鬼副長も形無しですね〜。(笑)
「あのお琴ちゃんな、嫁に行っちゃったぞ。」
土方の表情が固まります。
「そうなのよ、つい先月。多摩でも指折りの金持ちのところ。」
「あ〜。ちょっと残念だろ?」
彦五郎にからかわれて、
「別に。どうでもいい。」
と盃を呷る土方。動揺してるのが見え見えですよ。
口とは裏腹に、結構初心なんだよね?>土方さん(爆)


挨拶文を覚えた鹿之助さんがおもむろに立ち上がると、
「えー、それでは、近藤先生の義兄弟として、私、小島鹿之助が、一言ご挨拶申し上げます。」
と挨拶を始めました。
けれど、
「思い起こせば、近藤先生・・・。」
まで話したところで、酔っ払った彦五郎さんが、
「よしっ、気分良くなってきた。先生、歌おう。ね?さぁさぁさぁさぁ。」
近藤の手を引いて、立たせてしまいます。
「あなた!」
たしなめるおのぶさんの言うことも聞かず、さらには呆気に取られている鹿之助さんに、
「あなたは、もういいから。」
とのたまう、酔いどれ彦五郎さん。
鹿之助さん、憮然としています。確か、近藤さんの祝言の日も、こういう役回りだったような・・・。(笑)
彦五郎さんは、宴席の中央へ近藤を引っ張り出すと、みんなに手拍子を求めて歌い始めます。
「あ、ごきとじゃ、ごきとじゃ♪はぁ〜、かわいいなぁ〜♪」
あ、壬生浪士組の頃、広沢様をもてなす席で、土方が歌った多摩伊勢音頭だぁ。
近藤さん、総司の手を引っ張って引きずり出そうとするも駄目で、土方さんを無理矢理立たせて連れてきます。
土方が再び総司を立たせようとして、総司は笑ってそれをかわして・・・。
「あんなに笑っている沖田さん、初めて見ました。」
末席で手拍子を打ちながら、周平が隣りの鍬次郎に話し掛けます。
「こんな近藤先生も。」
照れくさそうに手を叩いている近藤を、嬉しそうに見つめる周平。周平の言葉に黙って頷く鍬次郎も、どこか嬉しそう・・・。


宴も終わったその夜、周囲を覗いながら、嫁いだ家の中からそっとお琴が出てきました。
現れる土方。そして無言で見詰め合う二人。
やがてお琴は、懐から土方の文を取り出し、
「うちの人が見たら、どうするつもりだったんですか。」
と土方を責めます。
「よく俺とわかったな。表で待つとしか書いてないのに。」
「多摩に戻っているというのは、知っていました。こんな事をするのは、あなたぐらいしか・・・。」
急に土方に抱きしめられて、お琴の言葉が途切れます。
昔からこのパターンだったなぁ、この二人。(爆)
っていうか、土方さんがね、口下手だから。言葉にするより先に、押し倒・・・(以下、自粛)。
でも好きだったんだよね。今でも好きなんだよね。
だから、嫁いだって聞いても、会いに来ちゃったんだよね?
「やめて下さい!人を呼びますよ。」
「呼ぶ訳がない。その気がなければ、文を見て、のこのこ出てきたりしない。」
「のぼせるのも、いい加減にして!!」
あ、お琴さんが土方さんを突き放した。今までになく抵抗されて、土方が少し驚きます。
「のこのこ出てきたのはね、この世で一番憎い男が、どんな顔をしていたのか、思い出したくなったの
 です。」
「こんな、ツラさ。」
「悪い顔に、なったわね。」
「ずいぶんだな。」
お琴の言葉に、苦笑するしかない土方。
「聞いてるわよ。あんたら新選組が、京で何をしてきたか。一体、何人の浪士を殺したの?おまけに
 仲間同士の殺し合い。新選組がもっとしっかりしていれば、上様もあんな事にはならなくて済んだっ
 て、こっちではみんな言ってます。」
思いがけず新選組を非難されて、土方の表情が変わります。険しい視線でお琴を見つめ、その言葉を黙って聞いている土方。
「早く帰りなさい。本気で人を呼びますよ。早く、私の前から消えなさい。」
土方は、そのまま何も言わずに立ち去ります。その後ろ姿を、ずっと見つめるお琴さん。

敵方や、わからんちんの幕府のお偉方ではない。自分たちの苦労や功績をわかってくれると信じていた、故郷の人。それも昔付き合っていた彼女の非難の言葉に、土方は愕然としていましたね。
お琴が心の底からそう思っていたかどうか・・・。というよりも、彼女はまだ土方に、想いを残していたのだと思います。何も言わずに自分の前からいなくなり、5年間便りもよこさず、ただひたすら待ち続けた日々。諦めて諦めて、ようやく他の男に嫁いだら、突然目の前に現れて、当り前のように抱きしめられて・・・。そりゃぁ、悔しいですよね。どんなになじっても、なじりたりないくらい。
だけどお琴の言葉は、土方の全然別の琴線を断ち切り、その胸に深い傷を付けてしまったようです。
今まで薩長に、京の町の人に、水戸藩の家老に、どんなに非難されても、そんなはずはないと強がってきた。けれどお琴に非難されたことで、土方の心はぐらぐらになってしまいました。お琴の前を去る、肩を落とした後ろ姿。
もしかしたら、自分たちのしてきたことは、やはり間違っていたのだろうか・・・。そんな不安に、足元から揺さぶられると同時に、ここ故郷にも自分たちの居場所は既になくなってしまったのだと、土方は気づいたのかもしれません。


八王子宿、「鍵屋」。
縁側に土方が、悄然と座っています。
風呂から戻ってきた近藤が、
「お前だったのか。」
と声を掛けます。近藤さん、浴衣がお似合い♪
「俺はてっきり、今夜は朝帰りかと思っていた。」
って近藤さん・・・。(苦笑) いや、確かに、いつもの土方さんなら、当然そうなるでしょうが。(爆)
「かっちゃん・・・。俺たちにとって、京の5年って一体何だったんだ?」
思いがけない土方の言葉に、
「いきなり、どうした?」
と尋ねると、近藤は土方の隣りに腰を下ろします。
「俺は、新選組を大きくするために、出来ることは全部やった。そのためには鬼にもなった。だがそれ
 が何の実を結んだ。俺たちは結局、世の中を引っかき回しただけじゃねぇのか?」
確かにそうかもしれない。
そうかもしれないけど、それを自分で認めてしまうのは、辛すぎるよ、土方さん。
近藤は、
「そんなことは俺にはわからん。俺はただ、いつだって正しいと思ってやってきた。そりゃ、迷いもした
 が、最後は自分を信じた。悔いはない。久々に多摩のみんなと会って、俺は心から嬉しかった。し
 かし俺は悟ったよ。あの頃にはもう戻れないんだって。俺たちは、信じられない程、遠くへ来てしま
 った。もうあとは、先に進むしかない。振り返るのは、もう少し先に取っておこう。」
と、今の自分の気持ちを語ります。
近藤の言葉に、黙って耳を傾けている土方。
土方の動揺と、近藤の揺ぎない心。その違いは、実際に負け戦を体験したか、しないかの差なのかもしれません。

奥から咳が聞こえてきました。
「話し声が聞こえたから。」
咳をしながら、総司がやってきます。
「お前、寝てなかったのか。」
と訊く近藤に、
「夜は咳が止まらないから、寝られないんです。」
と答えて、土方の隣りに座り込む総司。
「鬼の副長が弱気になってる。」
「うるせぇ。」
あ〜、なんかいいなぁ、このスリーショット。状況がどんなに変わっても、この3人の関係は全然変わってない。

 近藤「いい機会だから、お前たちに言っておく。今度の戦は、どう考えても勝てる見込みは無い。」
 沖田「そうなんですか。」
 近藤「俺たちは江戸から遠ざけられたんだ。新選組が江戸にいては、困るらしい。」
 沖田「どうして?」
 土方「全ては、江戸で戦を起こさないためだ。そうだろ?」
 近藤「・・・。(こくり)」
やっぱり、土方はわかっていましたね。
 土方「しかし、かっちゃん。俺はな・・・。」
 近藤「最後まで俺の話を聞け。俺は負けるための戦はせん。こうなったら、死力を尽くして戦うつも
  りだ。」
近藤の言葉に、総司が笑みを浮かべます。
 土方「そう来なくちゃな。」
 近藤「そう易々と、あいつらに天下は渡さない。」
土方も微笑んで、近藤にしっかりと頷きます。
「土方さん、稽古付けてあげましょうか。なんだか、昔を思い出しちゃった。」
何か考えていた総司が、そう言って立ち上がります。
「無理すんな。」
総司を見上げて、返す土方。
「言っときますけど、試衛館の塾頭は私ですから。土方さんには負けませんよ。労咳に罹ってる位
 が、丁度いいかも。」
「止めておけ。」
近藤も止めますが、
「軽く。」
と主張する総司。
土方が近藤を振り返り、近藤は、いいだろうと頷きます。

庭に下りて、木刀で立ち会う二人。
「どこからでも、掛かってきなさい。」
と言われて、土方から仕掛けますが、総司に簡単にあしらわれてしまいます。
木刀を持ったとたん、総司の表情がぴんと張り詰めるのがいいですね。さすが、剣士。
「土方さん、昔の癖が直ってない。」
「今のは、本気じゃねぇ。」
「本気で来なさい。」
「病人相手に、本気でやれるか。」
「では、私から。」
総司の打ち込みに、追い詰められる土方。
「おい、だらしないぞ、トシ。」
近藤の檄が飛びます。
力任せに総司を押し返して、再び間合いを取ったところで、総司が咳き込みます。
木刀を落として跪いてしまった総司に、慌てて駆け寄る近藤と土方。
「おい。だから、言っただろう。」
いつになく強く叱る土方に、
「すみません。」
と謝る総司。咳が止まっても、激しく息が乱れています。
「お前は、江戸へ戻れ。」
諭すように近藤が告げると、総司は素直に頷きます。そして、
「駄目だな、土方さんは。こんな病人相手に打ち込めないなんて。」
と。
近藤と土方が、心配そうに総司を見つめています。

総司は、自分が今できる形で、弱気になっている土方を励ましたかったのでしょうか。
それと同時に、何かを託したような気がしました。なんだろう。つわもの(武士)の心かな。戦う者の気合いかな。
自分はもうこれ以上付いていけないから、戦場で土方を支えてやれないから、どうしても伝えておきたいと思ったのではないでしょうか。
それにしても、江戸へ戻れと言われて素直に頷いてしまう総司が、やるせないですね〜。意地を張ることもできない程、体力が落ちてるんだ。試衛館の塾頭まで勤めた自分が、手加減される。それは、たまらなく切なかったでしょうね。
3人が一緒に過ごせるのは、もしかしたらこれが最後・・・。と思うと、総司が近藤や土方を気遣う優しさ、近藤と土方が総司を気遣う温かさ、それらが表情や言葉の端々から伝わってきて、すごく印象に残るシーンでした。


翌朝。江戸へ戻る総司と、総司を日野まで送っていく彦五郎を、近藤・土方が門のところまで見送りに出ています。
「ご迷惑をお掛けします。」
総司が彦五郎さんに謝ります。
「具合悪いなら、しょうがないよ。風邪だと思う。夕べ咳してたから。」
総司を慰める彦五郎さん、本当に優しい人だなぁ。
その彦五郎さんに、
「私が戻るまで、戦っていてくれよ。追いついたのに敵がいないんじゃ、洒落にならないからな。」
と言われて、
「必ず待ってますから。」
と答える土方。
沖田が近藤と土方の顔を見つめています。まるで、その目に焼き付けるように・・・。

実際にも、沖田が日野まで一緒に来て、まだまだ元気だと相撲の四股を踏んでみせたという話が
あります。けれど、やはり付いてきたのはここまでで、鎮撫隊とは別れて一人で江戸に戻ったとか。
みんなと一緒に、戦いたかったでしょうね、総司。


慶応4年(1868)3月6日。甲州勝沼の甲陽鎮撫隊本陣。
庭には、大砲や銃の使い方を確認している隊士たち。建物の中では、幹部会議が開かれています。
聞こえてくる銃声。
偵察に出ていた島田が戻ってきました。
 島田「申し上げます。敵の攻撃が始まりました。」
 土方「先に甲府城を取られたのが痛かったな。」
 永倉「だから。」
 土方「だから、何だ。」
 永倉「誰ぞの故郷で、浮かれてもたもたしていなければ、先に城に入れたんだ。」
 土方「別にそれで進軍が遅れた訳じゃねぇ。」
土方はそう言い捨てると、席を外します。
誰もが苛立っています。近藤さえも。
 近藤「捨助、菜葉隊はまだか。」
 捨助「何やってんだろなぁ。」
様子を見に行く捨助。

席を外した土方は、大砲を囲む尾形たちのところにやってきました。
「大砲の具合はどうだ。」
土方の問いに、
「この型は使い方がよくわかりませんね。弾にも何種類かあるようです。」
と答える尾形。尾関が
「こんなことなら、もっと砲術の勉強をしておくんだった。」
とボヤきます。
それを聞いて、小さく溜め息をつく土方。
渡り廊下に立って見下ろす、憂い顔も素敵だわ。(爆)

このやり取りは、せっかく借りてきた大砲も扱える隊士がろくにおらず、唯一撃ち方を知っていた隊士には、近藤が違う任務を与えてその場を外させてしまい、まったく役に立たなかった・・・という話を上手く使っていますね。

「このままだと、戦にならん!」
苛立ちを我慢できなくなった永倉が、荒々しく席を立ちます。
「おい、腹減ってんのか? 付き合うぞ。」
相変わらず脳天気な原田が、その後を追う。
近藤も立ち上がると、土方のところへ行って、
「土方、菜葉隊を連れてきてくれ。捨助、案内を頼む。」
と指示を出します。
「承知!」
元気よく走っていく捨助。
「こっちは平気なのか。」
「こっちはなんとか、踏みとどまってみせる。」
「必ず加勢を連れてくる。くれぐれも、命、粗末にするなよ。」
「お互いにな。」
近藤の言葉を確認して、土方が口の端をきゅっと上げて笑うのがいいなぁ。

土方は馬と駕籠を乗り継いで江戸に戻り、菜葉隊や勝海舟らに援軍を要請しますが、結局どこも援軍には応じてくれませんでした。諦めた土方は再び甲府へと向かい、敗走してきた近藤たちと合流するのです。


いよいよ戦が始まりました。雨が降り出しています。
激しい銃撃に、また倒木を盾にして手も足も出ずですか? 千両松と同じじゃねーか!と思わず突っ込み。戦えよっ!!(苦笑)
「これは確かに、もはや刀の時代は終わったのかもしれないな。ひとまず引こう。」
土方たちが鳥羽伏見で実感したそのことに、近藤はこの時初めて思い知ったのですね。隊士たちも、まだまだ銃の扱いに慣れていなかったと思いますが、何より近藤が、銃撃隊を指揮できなかったのではないでしょうか。


雨が激しくなってきました。
隊士たちが軒下で雨宿りをしています。みんな、疲れてる・・・。
家の中では、再び幹部会議。
「会津へ行こう。向うには、薩長に不満を持つ者たちが、続々と集まっているらしい。我らもそこに
 加わる。」
との永倉の提案を、
「いや、今は菜葉隊の到着を待つ。」
と、近藤は却下します。
「菜葉隊が来ると、本当に思っているのか。はぁ〜。奴らにその気があるならば、もうとっくに着いて
 る。」
「今、だから土方君が、説得に向かっている。」
「我らだけでも、会津へ向かうべきだ。」
「いずれ会津には行く。しかし、その時は一軍を率いて、堂々と加勢に行くつもりだ。」
「今はそんな見栄を張っている場合ではない。」
「見栄ではない。殿と約束したのだ!」
「我らは行き場を失った。だから会津に助けを乞う。それだけのことではないか。」
「会津候のためにも、今はここを死守するべきである。最後の一兵となっても。」
永倉と近藤のやり取りを、不安そうに見つめている他の幹部たち。
会津に行く、という目的は同じなのにね。今、助けを乞いに行くか、結果を出して力を付けてから、加勢に行くか、その違いなだけなのに。今までの近藤と永倉だったら、話し合えば歩み寄れたはずなのに。悲しいかな、すべての歯車が噛み合わなくなってきてる・・・。

「近藤さん!」
永倉に叫ばれて、思わず
「これは、命令だ!」
と居丈高に返してしまう近藤。うわぁ〜、永倉さんにそういう態度は禁物なのに・・・。
案の定、永倉は、
「我らは、あなたの家来ではない。」
と言って立ち上がります。
「俺は会津へ行く。」
宣言して、出て行こうとする永倉の背中に、
「勝手に隊を離れれば、切腹だ!」
と叫ぶ近藤。
うわ〜、言っちゃったよ。その台詞は、土方が言うべきもの。近藤さんが言っちゃいけないのに。
やっぱり土方が傍にいないからなんでしょうね。近藤に余裕が無くなって、必死な様子がよくわかる。
永倉は振り返って、
「まだ、そんなことを言っているのか。いい加減に目を覚ませ!思い出してくれ。俺たちがなぜ、試衛
 館に暮らすようになったのか。それは、あなたの分け隔てなく人と接する生き方、それに打たれた
 からだ。それが今では何だ。隊士が増えるに連れ、どんどん窮屈になっていった。あなたと土方
 は、規則で我らを縛り付けた。新選組という名を捨てた今も、まだ同じようなことを繰り返すのか。」
と、近藤を責めます。土方のこと、呼びつけかよっ!!
「まだ、そんなことを言っているのか。」と、同じ言葉を永倉さんに返したい。あんたの頭は、まだ壬生浪士組の時のままなのかと。組織というものが未だ理解できず、ただ仲間とわいわいやっていればいいのかと。

「わかってくれ。あの頃とはもう違うところに、我々はいるのだ。」
「いや、違わない。変わったのは、あんたの心だ。ここまでのようだな。私は、山南さんに新選組を託
 された。しかし、その新選組は、もはや無い。私はこれで失礼する。」
「永倉君!」
と近藤が呼びかけますが、もはや永倉はそれには答えず、
「左之助。お前、どうする?」
と原田に尋ねます。さっきからずっと、涙を溜めて永倉の言葉を聞いていた左之助は迷っています。
永倉は、
「ここにはもう、俺たちの居場所は無い。」
と捨て台詞を吐き、
「ご免。」
と近藤に頭を下げると、雷雨の中に飛び出していってしまいました。
なんだかな〜。この永倉さん、最後まで小学生みたいだったな。

気まずい雰囲気の一同。
「まぁ、どっちが楽しいかだよな。」
と左之助が呟きます。
「人は、楽しいだけでは、まとまらん。」
と言い返す近藤に、
「でも俺は、縛られんのは好きじゃねぇから。」
明るく返して、
「俺、あんたに会えて良かったと思ってる。楽しいこともいっぱいあったしさ。そりゃ、腹の立つことも
 あったけど、そういうの、俺、すぐ忘れちまうから。いっぱい、いろんなことあったけど、全部ひっくる
 めて、俺、あんたに感謝している。うん、そんなとこだな。じゃ、な。」
と近藤に礼を言って、永倉の後を追う左之助。左之助の目にも近藤の目にも、涙がいっぱいです。
泣かせるじゃないか〜。空気が読めてるんだか読めてないんだか、左之助は左之助らしく、ずっと
生きてきた。みんなにはなかなか相手にしてもらえなかったけど、実は一番優しかったのが、そして人間の器が一番大きかったのは、左之助だったかもしれませんね。

「去りたい者があれば、去ってもいいぞ。」
近藤の言葉に、平隊士が数人、出ていきます。
「寂しいものだな。これで浪士組結成の頃からの同志は、俺とトシと総司だけになった。」
肩を落として呟く近藤。

ずっと考え込んでいた斎藤が、
「永倉さんは間違えてる。新選組は終わっちゃいない。」
と呟くと、すっくと立ち上がりました。
“誠”の隊旗のところへ行くと、
「この旗がある限り、新選組は終わらない!」
熱く語り、隊旗をぐっと掴みます。
突然隊旗を持って、雨の中に走り出る斎藤。
「この旗が、俺を拾ってくれた。俺は一生掛けて、この旗を守る!たとえ一人になっても。局長ー!!俺がいる限り、新選組は、終わらない!」
と叫びます。今までほとんど感情を表に出さなかった斎藤の思いが、迸り出るようです。
「斎藤君。」
近藤に名前を呼ばれて、はっと我に返り、照れているのもかわいい。
 島田「局長、俺も同じ思いです!」
 尾関「私もです。」
「まだまだ、これからですよ。」「局長!」「局長!!」
口々に叫ぶ隊士たち。
ありがとう〜、斎藤さん。思わず目頭が熱くなりました。
クールだった斎藤が、なんて熱くなったのでしょう。本当にどこにも居場所のなかった斎藤が、ようやく新選組に居場所を見つけたのですね。
近藤が大きく頷きます。



近藤の言葉にもありましたけど、本当に寂しくなってしまいましたね。みんなバラバラ。

でも、ここに来てどの役も、人物像がぐっと引き締まってきました。京に上り、いろいろな経験を経て、ファンにはお馴染みのイメージ・・・たとえば、みんなが慕い集まってくる近藤、厳しい仮面の下はほんとは照れ屋で優しい土方、達観していて透明感のある総司・・・へと絞り込んできたところが、すごいな三谷さんって感じです。永倉さんと左之助が変わらないのは、敢えて変えていないからなのでしょうけれど。

人と人との繋がりも一段と強くなってきて、特に近藤・土方の関係は、もう何を言わなくても分かり合ってるというか、この二人はお互いを補い合っているんだ、どちらが欠けても駄目なんだという感じがすごく出ていて、嬉しいです。一時は気持ちがすれ違ってしまって、この二人はいったいどうなってしまうんだろうと不安になる時もありましたが、今は信頼し合っているのがとてもよく伝わってきて、見ていてなんだかほっとします。

でも、それなのに、それなのに、来週はもう・・・。
“第48回 「流山」、ご期待ください。”
期待します。期待しますから、思いっきり泣かせてください。(T_T)

 

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