大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第45回  源さん、死す  

前回の近藤狙撃シーンから始まる冒頭。
「局長ーー!!」
近藤に駆け寄った島田が、周囲を見回します。
加納たちの潜む民家に気づいて、近藤の馬の尻を叩く島田。馬は高くいなないて、伏見へ向かって走り出します。後を追う馬丁。
抜刀し、民家に駆け出す島田と他の隊士たち。加納と篠原は急いで逃げていきます。

この時、近藤を襲撃した御陵衛士は加納・篠原の他に、阿部十郎・富山弥兵衛・内海次郎・佐原太郎がいたと記録に残っています。実際に近藤を撃ったのは、篠原の他に富山という説もあって、後者の方が通説になっているかな。
ドラマでは、島田たちが御陵衛士を追っていきましたが、実際には狙撃のあと御陵衛士の方が近藤たちに斬りかかってきました。そのため慌てて馬の尻を叩いて、とにかく近藤だけを逃がしたんですね。残った隊士たちの中で、石井清之進と馬丁の二人が斬られて死んだとされています。

伏見奉行所の廊下を険しい表情で走ってくる、土方と源さん。近藤負傷の一報に、まさに髪振り乱して駆けつけます。
そして、右肩から血をどくどくと流しながら、ふらふらと廊下を歩いてくる近藤。痛みで朦朧としている感じがよく出ています。>香取くん
後ろから追ってくる隊士たち。
廊下で出会う近藤と土方・源さん。
「局長!」 駆け寄る二人に、「たいした傷ではない。」 と答える近藤ですが、土方はすぐに、「誰か、山崎を呼んでくれ!」と命じます。

近藤の肩から弾丸を取り出す山崎。この頃はまだ、麻酔が普及していないんですよね。近藤の口から、思わずうめき声が漏れます。とても正視できず、顔をゆがめている尾形さんがちょっとかわいい。
弾はなんとか、無事に取り出すことができました。さすが、新選組のお抱え医師!!

「撃ったのは篠原です。あと一歩で逃げられました。」
幹部たちに報告している島田。
「では総司を襲ったのもあいつらか。」
と源さん。総司が襲撃されたことも、すでに報告が入っていましたね。
「これで決まりだな。」
左之助、すでに臨戦態勢。
「許さん!」
刀を持って立ち上がる土方に、永倉・原田・斎藤が続きます。ひょえ〜っ、かっこいい!!(爆)
「どちらに?!」
慌てて声をかける源さん。
「決まっている。局長の仇を討つ!」
答える永倉。
「お待ち下さい。今は伏見奉行所を守るのが我らの役目。」
引き止めようとする源さんに、
「新選組の役目は局長の仇を討つことだ!」
言い返す土方。
「我らは上様の命でここに来ているのです。」
必死の説得も聞かず、出て行こうとする面々を、
「勝手に持ち場を離れてはいかん!」
源さんが一喝します。
「源さん・・・。」
「私とて許せぬ気持ちは同じだ。しかし今は動くべきではない!そんなことをして、局長がお喜びにな
 ると思うのか!」
一人一人の顔を見ながら説いていく源さん。その姿に、冷静さを取り戻していく仲間たち。
「確かに、源さんの言うとおりだ。」
永倉が座り、原田が座り、土方が悔しそうに座り込み、
「斎藤!」
永倉に声を掛けられ、渋々斎藤も席に戻ります。


いつ戦が始まるかわからないこの時期に、新選組の幹部たちが揃って仇討ちに出掛けて行くなんてありえないことだけど、局長の一大事に一斉に立ち上がる、見事に呼吸の合ったこの絆の深さが、とても嬉しかったりして・・・。
さらにそれを必死で止めてくれる源さんと、源さんの言うことには一目置いて従う仲間たちの姿にも、思わず感動したりして・・・。
副長という立場から考えれば、普通ここで土方は冷静に引き止め役に回ると思うのですが、この大河の土方だったら、先頭きって仇討ちに飛び出すのもありなような気がします。“かっちゃん命”ですもんね。
そして史実ではどうだったかといえば、永倉が一番隊・二番隊を率いて襲撃場所に駆け付けるも、御陵衛士たちは逃げたあとだったと伝えられています。


さて、全員席に戻ったところで、源さんは山崎に局長の容態を尋ねます。
「命に関わることはないと思いますが、傷は思いの他大きく、私の腕では完全に治すことは出来ませ
 ん。」
残念そうに答える山崎に、
「治せ!」
と無茶を言う土方。
「悪くすると、腕が上がらんようになるかもれません。」
淡々と告げる山崎の瞳が、微かに潤んでいます。
愕然とする土方たち。
「それは、もう二度と刀が持てないということか。」
永倉の言葉に取り乱した土方が、
「馬鹿野郎!!そんなことになってみろ!てめぇ、切腹だぞ!おいっ!!」
山崎に掴みかかります。
驚いて、土方の腕を掴んで止める左之助。
源さんも珍しく、
「土方、落ち着け!」
と呼びつけにして、土方をたしなめます。
「大坂城に松本良順先生がおみえになっていると聞きました。あの方なら、なんとかしていただける
 はずです。」
土方に掴み掛かられながらも、その目を見つめて冷静に自分の考えを伝える山崎さん。


仲間の前で、さらに島田や山崎のいる前で、土方がこんなに取り乱すなんて、たぶん初めてですよね。それほど、近藤の危機が土方にとって、大きな衝撃だったということでしょう。だって、かっちゃんがいなかったら、今の自分は無かったんですものね。かっちゃんがいてこそ、そこに自分もいて、かっちゃんが京に来たから、自分も京に来た。かっちゃんのためにすることが、延いては自分のためにすることになってる。とことん“かっちゃん命”な、この土方。
そして源さんはもちろんのこと、永倉や原田や山崎や、みんなにこれだけ支えられている土方。
なんかすごく新鮮で、こんな土方も良いよなぁと思ってみたり。


治療を終えた近藤に、大坂城で良順先生の治療を受けることを勧める土方・永倉・原田・源さん。
けれど近藤は、「大坂には行けん。」 と戦線離脱を嫌がります。
「駄々をこねるんじゃねぇ。」
土方のこの言い方がいいなぁ。さっきまであんなに取り乱していたのに、副長の顔を取り戻しているのも嬉しい。
「こっちは俺たちがなんとかする。」
「今は体を治すことだけを考えて下さい。」
「局長。」
口々に説得されて、大坂行きを納得した近藤は、
「薩摩には、けしてこちらからは手を出すな。戦をして喜ぶのはむこうだ。それを忘れるな。」
と土方へ、
「副長を支えてやってくれ。」 と永倉へ、
「周平のことをくれぐれも頼む。」 と源さんへ、
自分のいなくなった後を託していきます。
一人、言葉をもらえない左之助に、
「お、俺には? 何かないの?」
とおねだりされて、言い置くことを探している近藤さんがおかしい。で、見つからないうちに、土方さんが次の話を始めちゃって、左之助、拗ねてるし・・・。(笑)
土方は近藤に、総司も大坂へ一緒に連れて行ってほしいと頼みます。総司は、近藤の休息所で御陵衛士に襲われたあと、伏見奉行所へ移っていたのですね。けれど急に動いたせいか、また血を吐いた、と土方。永倉も、
「本人は強がっているが、素人目で見てもありゃぁまずい。どっか落ち着いたところで養生させるのが
 一番かと。」
と説明します。

早速、総司の病室へ行って、大坂行きを告げる近藤。
「大坂城に行って松本良順先生に診てもらう。」「一緒に来てくれるか。お前に俺の警護を頼みたい。いつまた道中襲われるか、わからんからな。」
本当はみんなと一緒に戦いたいであろう、総司の気持ちを察した上で、自分の警護についてきてほしいという言い方をした近藤の優しさがいいですね。
負けず嫌いで見栄っ張りの総司が、
「私でいいんですか。」
力のない声で、不安そうに確認するのに泣けます。きっともう自分の体が役には立たないことが、自分でもわかっているんですね。
「暇なのはお前だけだ。」
冗談めかして言う近藤さんが優しい。その優しさに気づいて、
「いいですよ。ちょうど体も鈍ってたところだし。付いて行ってあげますよ。」
いつもの調子で明るく答える総司も、いい子だな〜。
総司の部屋を出た近藤に、
「警護なんて無理です。」
と、お孝が声を掛けます。
「このところ食欲も無いし、ちょっと歩いただけで息切れしはります。」
「そんなこと、百も承知だ。」
「けど、沖田はん、やる気になってますよ。」
「心配しなくていい。本当の訳が警護のためだけではないことぐらい、あいつだってわかってるはず
 だ。」
納得して、にっこり笑って頷くお孝さんも、優しくて気が効いて、いい子だなぁ。

今度は、源さんが周平を連れてやってきました。
源さんに促されて、廊下にきちんと座り、「お気をつけて。」 と挨拶する周平。
近藤は周平の前にしゃがみ込むと、
「戦にもしなったら、近藤家の跡継ぎの名に恥じぬ戦い方をしろ。頼んだぞ、近藤周平。」
と、目を見つめ、肩に手を置いて言い置きます。
近藤さんが、“近藤周平”と呼んでくれたのが嬉しいですね。
しっかり頷く周平と、嬉しそうに見ている源さん。


えっ? あ・・・、オープニングテーマ、まだだったんだ〜。
今日は最初から畳み掛けるような展開で、すっかり忘れてました。
・・・そして、本編。


大坂城にやってきた近藤が、良順先生の治療を受けています。
「私は、また刀を握ることができますか?」
と訊ねる近藤に、運次第だと答える良順先生。
辛そうに顔を伏せる近藤。さらに先生は追い討ちをかけるように、、
「それにいずれ刀を握れるようになったとしても、そのときはもう、刀の時代は終わっているかもしれ
 ないし。」
と、あっさりと言ってのけます。
まさしく時代は、良順先生のおっしゃるとおりに動いていっているのだけど、剣術道場の道場主だった近藤にとってみれば、そしてその腕で今の地位を築いてきた新選組局長にとってみれば、たまらなく辛い宣告ですよね。

そこへ尾形がやってきて、永井様の来訪を告げます。
廊下の向こうから、飛ぶように駆けてくる永井様。(笑)
「近藤、えらい事になった!」
凄い勢いで言ったあと、近藤の前に座って初めて怪我をしていることを思い出したようで、
「怪我の具合は?」
付け足したように訊く永井様が可笑しい。
「江戸から知らせが届いた。とうとう向うの連中が、薩摩の誘いに乗ってしまったぞ。」「薩摩の嫌がらせに怒った庄内藩の連中が、江戸の薩摩屋敷を焼き討ちしおった。既に城内に噂は広まっている。佐々木などはこれを機に、薩摩が仕掛けてくる前に京に攻めのぼり、やつらと一戦交えようと息巻いておる。あんたの最も恐れていた、戦になるぞ。」
苦渋の面持ちで語る永井様の言葉を聞き、呆然とする近藤。

城の廊下を、お孝が総司の薬を運んでいます。そこへ、
「どけどけ!!」
数名の侍がばたばたとやってきて、廊下の隅に避けたお孝の脇を、慌しく通り過ぎていきます。
「ねえ、何かあったの?」
部屋に入ってきたお孝に訊ねる総司。布団からこっちに出している足の裏が、時々動いて可愛い。
「なんや知らんけど、えらいやかましいな。」
と答えるお孝。
そこへ甲冑姿の一人の男が、無遠慮に障子を開けて部屋に入ってきます。
まっすぐにお孝に近づき、
「貴様、何をしておる。なぜこんなところに、女子がおるのだ。直ちに出て行け。」
居丈高に命令する男。お孝は、
「うちは沖田さんの看病をするようにって。今もお薬を。」
と、薬の入った湯のみを掲げますが、男は湯のみを叩き落し、
「今すぐ城から出て行け!」
と重ねて命じます。
その時、部屋に顔を出した良順先生。
「その人は、ナースです。ナース。」
“ナース”の意味がわからない男は、お孝を見下ろしながら訊ねます。
「どのあたりが?」
どのあたりが?どのあたりが?って・・・。(爆笑)
戦国の時代から、戦で負傷した者たちを城内で女が看護することはよくあったのではないかと思うのですけどねえ。お馬鹿な侍だ。(苦笑)
「患者さんの面倒を見る人のことだ。」
優しく説明したあと、
「行きなさい。」
威厳をもって命じる良順先生、かっこいい。先生はなんといっても幕府御典医ですからね。
慌てて男が出て行ったあと、「すみませんでした。」とお孝に謝る良順先生。
お孝は畳にこぼれた薬をばたばたと拭き取ると、「怖いわ、もう!」 と言いながら部屋を出ていきます。

総司の横に座って、「いかがですか?具合は。」 と良順先生が尋ねます。
「うーん、良くも悪くもないですけど。」
気の抜けた調子で答える総司に、
「ならば御の字だ。この病はなかなか直ぐには良くならない。悪くならないだけでも、良しとしましょ
 う。」
と答える良順先生。
「前に診てもらった先生も、同じこと言ってたから。」
と総司は咳き込みながら苦笑します。懐かしいな、孝庵先生。
そしてさらに、
「あ、あの、それより、どこか別の部屋はないんでしょうか。ここは私には広すぎます。」
部屋を見渡しながら訴える総司。
カメラが引くと、あらあら、まぁ。そこは何十畳もある大広間の片隅だったのでした。(@o@)
「なんだか、寂しさが増すんですけど。」
そりゃそうだ。広間の片隅に、一人ぽつんと布団を敷いて寝ている様が可笑しい。
「ここは怪我人の手当のために、私が上様からお借りした場所です。もうすぐ戦が始まる。今にここ
 は一杯になります。」
良順先生の説明は真面目です。
「とうとう始まるんだ・・・。」
これから始まる戦に思いを馳せて、改めて部屋を眺める総司と先生です。

慶応4年(1868)1月2日。
伏見奉行所では軍議が開かれています。
「この伏見奉行所の北側は高台になっていて、そこに御香宮という神社がございます。そこから奉行
 所は丸見え。つまり、そこを敵に奪われますと、我々は非常に不利になる。敵よりも先に、御香宮
 に兵を置くことが肝要と存じます。」
総大将を務める若年寄並陸軍奉行竹中重固の前で、意見を述べる永倉。そして隣りには土方がいます。
永倉さん、局長に託されたとおり、土方さんを補佐してくれているのね? けれども竹中は、
「何の話をしておる。」
と無表情で返します。驚きの表情で見上げる永倉。そして睨みつける土方。
「戦にはならん!我らは1万5千。むこうは多く見積もって4千足らず。全軍で堂々と京に上れば、薩
 摩は尻尾を巻いて逃げ出すわ。」
余裕の竹中に、再度土方が、
「万が一という場合がございます。ここは御香宮に陣を張るべきです。」
と進言すると、
「薩摩は攻めては来ん!これ以上の軍議は無用である。新選組は血の気が多くて困るわ。」
竹中は嫌味たっぷりに付け加えます。
『これだからお坊ちゃま育ちは見通しが甘くて困るわ。』と、立場上言い返せない土方・永倉の代わりに、心の中で呟き返す私。(苦笑)

大坂城では近藤のもとへ、佐々木様が出陣の挨拶にみえています。
「これより、我ら新遊撃隊も京へ向かう。淀に幕府方全軍を集め、そこで二手に分かれ、鳥羽と伏見
 から京へ乗り込む。」
「一体、なぜそこまで急がれるのです?」
一触即発の今となってもまだ、開戦には反対の近藤。
「わからんのか。今、薩摩を潰しておかねばならんのだ。諸藩は様子を見ている。薩長と徳川、力が
 あるのはどちらか。向うがこれ以上力を付けてからでは遅い。」
「大戦になります。」
「承知の上だ。上様をここまで蔑ろにした薩長を、断じて許す訳にはいかんのだ。早く体を治して、京
 で会おう。」
いざ開戦するとなれば佐々木様のおっしゃるとおりな訳で、あまりにも好戦的ではあるけれど、どんな事態になろうとも揺ぎ無い佐々木様は本当にかっこいい。
そして、いつも考え方は真っ向からぶつかりながら、強い信頼で結ばれているこの二人の関係が素敵だ。
佐々木様たちの軍勢が、大坂城を出発していきます。

その頃、京では、
「だんだん心配になってきたわ。」
西郷と大久保の前をうろうろ歩き回る岩倉卿。
「やる気になってるのは、薩摩と長州だけやないか。時代を変えるためには、国中がそないな気分に
 なって、勢いでブワーッとならなあかんのに、なんや意気が上がらんなぁ。」
と文句垂れ。(苦笑)
「戦は兵の数ではごわはん。薩長の武力は日本一ごわす。」
自信たっぷりに答える西郷に、疑いの目を向けて、
「この戦、勝てるんか?ほんまに。」
と言い返します。
そして、菊の御紋入りの品々を二人に見せながら、
「今から思たら、徳川をあない虐めんでもよかったんや。徳川をひねり潰すことぐらい、この先いつで
 も出来る。今は、新しい時代の土台を固める時やないんか。わしはなぁ、悪いけど、慶喜を新政府
 に入れてもええと、始めから思とった。」
おいおい、岩倉卿・・・。肝が据わってるかと思ったけど、あなたもやはりお公家さんですか?自分の身が一番大事で、ころころ言うことを変える・・・。(苦笑)
 西郷「こいからの時代に徳川は要りもはん。古かもんを叩き壊した上に、新しかもんは生まれも
  す。」
 岩倉「そやから、それが壊せんかったら、どないするんやとわしは言うとるんや!」
 西郷「そん時はおいどん達3人が、腹を切ればよかこつごわす。」
 岩倉「わしを引きずり込むな。」
さすがの西郷さんも溜め息を一つ。けれど、
「大久保どん、岩倉卿の言われるこつも確かじゃ。高見で見物を決め込む腰抜けどもを、こっちの味
 方に付けんといかん。なんか手を考えにゃならんなぁ。」
とは、岩倉卿への皮肉も入ってるのかしら?
西郷さんが喋っている間、菊の御紋入りの鈴を鳴らして遊んでいる岩倉卿。それを見ていた大久保が閃きます。
「そいじゃ!そいじゃ、岩倉卿!我らが帝の軍である事、すなわち、官軍である事を、世の中に知らし
 むとでごわす。菊の御紋の付いた、旗を作りもんそ。錦の御旗でごわす。鎌倉の時代、後鳥羽上皇
 が承久の乱の際に、10人の将軍に錦の御旗を賜ったことが、記録に残っておりもす。こいを、今
 の世に復活をばさせもす。こん旗に刃向かうもんは、賊軍ごわす。」
大久保の言葉に立ち上がる岩倉卿。桐の箱を持って来て、開けてみせます。
中から取り出したのは、まさしく錦の御旗!!
「こんなんなら。もう出来てる。とりあえず作ってみたんや。わしの部屋にでも飾ろう思うてなあ。」
呆気に取られる西郷と大久保。
「これ、使お。」
さ、さ、最高〜!岩倉卿!!
可笑しくて、お腹よじれるぅ・・・。岩倉卿の部屋のタペストリーが、歴史を変えるんかい!!

1月3日。
伏見奉行所では、再び軍議が開かれています。
今日、竹中の前に座っているのは、鎧兜に身を包んだ老将です。会津藩砲兵隊長、林権助。
「それがし、会津藩、林権助にございます。会津が誇る砲兵隊がうち揃ったからには、薩長など恐る
 るに足らず。一気に京へと上りましょうぞ〜。」
重々しく時代掛かった口上に、
「いつの時代からやって来たんだよ!!」
苦笑しながら、土方、小声で突っ込み。(笑)
隣りで苦笑する源さん。
老将に影響されたのか、
「ん。援軍まことに大儀である。」
と、竹中が重々しく返します。
その時、一発の砲声が!!
「今のは?」
竹中が立ち上がった時、報告に現れたのは島田でした。さすが、新選組!!
「申し上げます。鳥羽街道の方で戦闘が始まったようです。」
報告を聞いて、よっこらしょと立ち上がり、よろよろ走り出す権助隊長。
竹中大将を差し置いて、「出陣じゃー!!」 と采配を振るいます。
立ち上がる一同。
開戦は、午後4時頃のはずです。

この頃、大坂城では・・・。
沖田の病室に見舞いに来ている近藤。こんなに元気でいいんかい?(苦笑)
お孝さんはお幸さんと違って女らしさがない・・・などと、こちらはのどかでいいですねえ。
そこへ、尾形が報告にやってきます。
「城内が慌ただしくなってきました。」
「とうとう始まったか・・・。」
「そのようです。」
「とうとう・・・。」
開戦の報を重々しく受け止める近藤の横で、起き上がろうとする総司と力ずくで寝かしつけるお孝のバトル。(笑)

すっかり暗くなった伏見奉行所には、薩摩軍からの砲弾や銃弾が雨霰のように降ってきます。屋根に命中する砲弾。柱や塀に炸裂する銃弾。積まれた土嚢の陰に隠れている新選組隊士たち。その中で、真紅の誠の隊旗だけが雄々しく翻っています。
 永倉「やはり御香宮を薩摩に取られたのはまずかった。」
 原田「上からバンバン撃ってきやがる。」
そこへ銃弾が飛んできて、慌てて身を屈めます。
間断なく撃ち込まれる銃弾。
建物の中から飛び出してきた土方と源さんが、そのまま土嚢の陰に隠れます。
その後ろで、必死に隊旗を掲げている尾関。えらい〜〜。(感涙)

「お前、血が出てるぞ。」
周平の腕の傷に気が付く島田。
「かすり傷です。」
と周平は答えますが、島田は
「山崎、周平が腕やられた。診てやってくれ。」
と山崎に声をかけます。
「喜んで!」
と答えた山崎は、怪我をした隊士たちの治療をしています。
「ひとまず、退いた方がいいかもしれません。」
と提案する源さん。土方は、
「すぐに戻る。」
と言い置いて、降りしきる銃弾の中、自ら斥候に(?)飛び出します。
後ろでは肩を負傷して、うっと呻く尾関。島田が心配しますが、
「何のこれしき!」
と、尾関は旗を掲げ直します。
その昔、土方に旗持ちを命じられた時のことを思い出しますね。
「尾関、今日からお前が旗持ちだ。命に代えてもこの旗を守れ。死んでも手放すな!」
そう言われたんでしたっけ。
暗闇と硝煙の中に浮かび上がる誠の旗・・・。

銃弾の雨の中、奉行所内の会津が守備を受け持っている方へと駆けてくる土方。
目の前で会津の兵士たちが、ばたばたと倒れていきます。
みんな逃げ惑うだけで、もはや戦いの様相を呈していません。
そこへ戸板に乗せて運ばれてきたのは、重傷を負った権助隊長。戸板の上でなおも
「出陣じゃ〜!」
と叫んでいます。
それを見送りながら、「ちっ。」 と舌打ちする土方。
会津兵たちの一団が、奉行所の奥から出てきます。
土方が
「どちらに?」
と訊ねると、
「退去だ!!」
と答える兵士。
土方は、その逃げていく背中に向かって
「我らは勝手にさせていただく!」
と叫び、新選組の陣地へと戻ります。
土方さん、斥候に出たというより、会津藩の指示を受けに行ったんだったのかな?
で、混乱している会津藩を見て、新選組は独自に行動することに決めたんだろうか。

「行くぞ。ここはもういい。」
源さんに告げる土方に、
「永倉さんたちが・・・。」
と指し示す源さん。
「何やってる?!」
咎める土方に、
「ちょっくら暴れてくっからよ。」
「新選組の底力、見せてやる。」
と原田と永倉。
「斎藤、力を貸せ。」
永倉の言葉に、不敵に笑って頷く斎藤。
「行くぞ、尾関。」
原田が声をかけると、尾関は
「おう!」
と応じて、誠の旗を高々と掲げ、奉行所から走り出していきます。
その後に続いて飛び出していく隊士たち。炸裂する銃弾の中を駆け抜けます。
出遅れた周平だけが、激しい銃声に、土塁の陰で耳を塞いでいます。
なんか、悪戯に行くやんちゃ坊主たちのようで、楽しい。昔の試衛館みたいだな。
一生懸命止めようとしている源さんの横で、土方さんもちょっぴり嬉しそうだし。

「源さん、この戦、俺たちの負けだ。」
と、落ち着いた声で告げる土方。
「何を弱気に。」
驚いて励ます源さんに、土方は
「もう刀の時代は終わったのかもしれねぇな。」
と呟きます。
「寂しいこと、言わんで下さい!」
と反発する源さん。
土方さんはこの数時間の戦いで、薩長の銃砲の前に為す術のない自分たちと、指揮系統が崩れて戦えない旧幕府軍とを見切ってしまったのでしょうかね。
「帰って来ました!」
周平の報告に、すかさず
「早いな!」
と土方の突っ込み。(爆)

雄叫びをあげながら、飛び込んでくる原田たち。
「花火みたいだったぜ!」「田舎の夜祭り、思い出しちまった!」
周平に報告する左之助と島田さん。
それを聞いて、渋い顔の源さんと笑っている土方さん。
隊旗を持った尾関が大石たちと戻ってきます。
土嚢を飛び越えてくる斎藤さん。
「お前、大丈夫だったか。」
と心配する左之助に、
「いやー、久しぶりに焦った。」
と言って見せた斎藤の羽織の袖には、銃弾が貫いてできた穴が二つ。
「うぉっはー、やるねえー。俺は3人、ぶっ刺してやったよ。」
そこへ、塀のすぐ外に薩摩の旗が・・・!!
塀の上から槍を構えた左之助と島田の前には、にっこり笑う永倉さん。
「ぶん取って来た!」
その永倉に浴びせられる激しい銃撃。
島田は塀の上の竹矢来を力任せに引き抜くと、永倉の襟首を掴んで引っ張り上げます。
塀の中へと引きずり込んだ勢いで、仰向けに落ちる永倉・島田・原田。
「いってーっ!!」
その様子に、大笑いの新選組一同。こんなに楽しそうな新選組って、何年ぶりだろう?
大きな口を開けて笑っている源さんの手前で、屈託のない笑顔の土方さん。源さんの向こうの斎藤さんの笑顔は、初めて見る表情かも〜〜。
土方は薩摩軍からの攻撃が収まったのを確認すると、「よし、引き上げだ!」 と命じます。


やんちゃ新選組は、彼らの気概と強さを表わしつつ、楽しくて良かったのだけれど、この伏見での戦闘シーンはあまりにも学芸会的で情けなかったかな。鳥羽伏見と、これから描かれる甲州勝沼の戦いは、絶対にロケに行ってほしかった・・・。(涙)
俳優さんたちの都合など、いろいろ事情があって無理だったのだと思いますが、どうしてもスタジオ撮影になるのなら、場面の入れ方や演出など、もう少し実際の戦争らしく、もっと無残に砲撃銃撃を浴びるとか、その中を果敢に斬り込んでいくとか、描けなかったのでしょうか。そうすれば、土方の「この戦、俺たちの負けだ。」「もう刀の時代は終わったのかもしれねぇな。」の言葉にも、もっと説得力が出たんじゃないかと悔しい思いが残るんですけど。

実際の鳥羽伏見の戦いでは、薩摩の軍隊は確かに近代兵器を装備し、覚悟を決めて戦に臨んではいましたが、なんといっても数の上で旧幕府軍とはあまりにも差があり、開戦したばかりのこの時点では、どう考えても幕府方有利だったんですね。
ただ、幕府全軍の指揮官である徳川慶喜の態度が曖昧で、大坂城から出陣する気配を見せなかったこと、最新の装備を備えたフランス式陸軍と海軍もいまだ大坂にあったこと、会津や桑名といった一部の藩を除けば、幕府方についていた諸藩は様子見の姿勢を取っていたこと、寄せ集めの軍勢のため指揮系統が整っていなかったことなど、危うい面は大いにありました。

そして伏見の戦いに限っていえば、御香宮に薩摩軍が陣を敷いたことによって、伏見奉行所は高台から狙い撃ちにされます。しかしその厳しい状況の中、奉行所の守備に付いていた会津藩と新選組の士気は高く、ちょうど夜に入ったこともあって、闇に紛れて何度も斬り込みをかけているんですね。ただ、途中から奉行所にも市内にも火の手が上がり、その火に照らし出されて斬り込み部隊は銃撃に晒され、結局かなりの犠牲者を出すことになってしまいました。
その斬り込みから奉行所へ戻ってきた時に、甲冑が重くて塀を乗り越えられずにいた永倉を、島田が銃を差し出して掴まらせ、それを引き上げて怪力ぶりが有名になったというのが、ドラマの中でも描かれていたエピソードです。
会津藩砲兵隊も薩摩軍に対してかなり砲撃を仕掛けましたが、なにぶん薩摩の大砲と会津の大砲では性能に大きな差があり、また地理的にもあまりに会津側が不利で、一方的な戦いになったようです。その中、林権助隊長はその老齢をものともせずに勇猛果敢に奮戦し、8発もの銃弾を浴びて戦死します。
やがて旧幕府軍に撤退の命が下り、会津藩も新選組も淀城に向けて引き上げることになります。実際に会津藩が新選組を置き去りにして逃走するようなことはなかったと、ここに書き加えておきます。


1月5日、大坂城。
総司の病室で、近藤は尾形から報告を受けています。
「どうやら新選組は、会津藩の兵士たちと、淀の千両松に陣を張ったようです。」
「千両松?」
「なんで、そんなところに?」
不審に思う近藤と沖田に、
「伏見奉行所を離れた後、淀城へ向かったのですが、城の中へは入れてもらえなかった様子。淀藩
 は徳川方の入城を拒んでいるのです。」
と尾形が説明します。
「ねえ、味方じゃなかったの?」
「淀の藩主稲葉様は御老中だ。」
「どうも様子がおかしくなってきているようです。これまで立場を曖昧にしていた諸藩が、続々と薩長
 側に付き始めています。」
という尾形の言葉に、
「一体、戦場で何が起きているというのだ。」
事態が掴めず、困惑する近藤。
戦場に立てず、情報も少なく、焦りと苛立ちばかりが募って堪らないでしょうね。


淀藩主であり、老中を務めていた稲葉正邦は、この時江戸におり、城は家老田辺権太夫が預っておりました。
そしてこの日、朝廷が仁和寺宮嘉彰親王を征東将軍に任命し、薩長を官軍と認めたことを知った田辺は、城の門を閉ざし、旧幕府軍の入城を拒否したのです。
大坂と京都を結ぶ重要な軍事拠点を失ったことは、旧幕府軍にとって大きな痛手でした。軍勢を立て直すこともできぬまま、官軍に追われて千両松から八幡、橋本まで退却。
さらに翌6日、橋本に布陣していた旧幕府軍へ、官軍側へ寝返った津藩が高浜砲台から砲撃を浴びせかけたことによって、混乱を来たした旧幕府軍は大坂城へと敗走していくのです。


さて、その淀・千両松では、山崎と源さんが炊き出しの握り飯を隊士たちに配っています。
夜明け前。薄暗い街道の向こう、官軍がやってくるはずの方向を見透かしながら、
「ずいぶん静かだな。」
と源さんが呟きます。
「静かだ。」「怖いぐらいだ。」 と、同意する永倉と斎藤。
「奴らは何かを待ってる。」
さすが、土方さんは何かを感じ取っているようですが、それが何かまではわからないらしい。
周囲が少しずつ明るくなっていきます。
会津藩の兵士たちにも握り飯を配る源さんとお手伝いの左之助。
「新選組の皆さんと一緒で、心強いです。」
と会津兵たちに言われて、気を良くする左之助。
「みんなさ、原田左之助って、聞いた事ある?俺、俺、俺、俺、俺、俺!」
さらに、
「お腹に切腹の痕があるって本当ですか?」
と訊かれて、
「詳しいね。見る、見る、見る、見る、見る、見る?」
と、お腹の傷痕を見せようとする左之助。(笑)

夜が明けました。薩摩軍はまだ、動きを見せません。
右腕の傷が痛くて、竹筒の栓が抜けない周平。そこへ大石がやってきます。何も言わず、周平から竹筒を奪い取り、栓を抜いて返す鍬次郎。実は優しいんだよね。気になる子には、ついちょっかいを出してしまうだけ。
最初は警戒していた周平ですが、鍬次郎の気遣いに、にっこり笑って頭を下げます。
周平の隣りに座り込んで、
「奴ら、動かねえなぁ。」
と、鍬次郎が呟きます。
そこへ、源さんが握り飯を持ってやってきました。
源さんの差し出す握り飯を、断る周平と鍬次郎。
鍬次郎は立ち去り、今度は源さんが周平の隣りに座り込みます。
伏見奉行所で、みんなと一緒に突撃できなかったことを謝る周平。
源さんは、
「あんなのは命令でも何でもない。無鉄砲は勇気とは違う。」
と周平を慰めます。
「やはり、私には、戦は向いてない。」
「それを言うなら俺だって、本当はこんなところにいる男じゃないよ。俺はなぁ、周平。自分の人生が
 おかしくてしょうがないんだ。試衛館の門人として一生を終えると、ずっと思ってた。江戸の片隅で、
 平穏な人生を全うするって。それが今じゃ、新選組の六番組長。こうして戦場で、薩摩と向かい合っ
 てる。自分の人生、こうあるべきだなんて、思わない方がいい。まずは、飛び込んでみることだ。」
周平を励まそうと、語って聞かせる源さん。
周平が嬉しそうに頷きます。
源さん、そんな、一生を振り返るようにして語らないでください〜〜!!(涙)
その時、遠くから太鼓の音が・・・。

「ありゃぁ、なんだ?」
「あれは?」
街道の向こうから、先頭に菊の御紋の入った旗を高々と掲げ、太鼓を軽快に打ち鳴らしながら、薩摩の銃撃隊が進軍してきました。
「菊の御紋?」
「まさか、錦の御旗。」
永倉と源さんは、気が付いたらしい。
「どういうことだ?」
訊ねる土方に、
「帝の軍隊であるという印だ。あの旗に向けて戦を仕掛けると、我らも賊軍ということになる。」
と永倉が説明します。新八さん、博学〜。
「なんだよ、それ。」
「俺たちが賊軍の訳ねぇだろ。今までずっと御所を守ってきたんだぞ。」
「薩摩の陰謀だ。」
「しかし、そんなことってあるかい。」
「うるせぇんだよ、ドンドコドコドコよ。」
口々に憤慨する土方たち。最後の左之助の台詞が笑える。

新選組の動揺をよそに、指揮官の合図とともに進軍を止め、銃を構える薩摩兵。
「撃てー!」
一斉に発射される銃。物陰に隠れる新選組隊士たち。会津兵たちが慌てて逃げていきます。
それに釣られるようにして、逃げ出す平隊士たち。
「おい、止まれ!勝手に動くな!!」
土方の檄が飛びますが、薩摩軍の激しい銃撃が容赦なく襲い掛かり、倒木や茂みを盾にしている状態では、とても持ち堪えられそうにありません。
「あそこの祠まで走るぞ!」
土方の命令に、後方へと一斉に走り出す隊士たち。
祠まで退却した時、鍬次郎が
「周平が!」
と指差して叫びます。
街道の真ん中で、逃げ遅れた周平が、薩摩の攻撃の的になってしまっていました。
「周平!早く来い!!」
土方が叫びますが、周平は竦んでしまって、身動きが取れません。
薩摩の銃撃隊が、また太鼓を打ち鳴らしながら進軍を始めました。
銃を構えたまま、周平に向かって進んできます。
「周平!」「周平、走れ!」
源さんや左之助が叫びます。
意を決して走り出した周平が、つまずいて転びます。襲い掛かる銃撃。
「周平!」
源さんが思わず飛び出していきます。
「源さん!」
周平の前に立ちはだかって刀を抜き、
「うわぁーー!!」
叫びながら銃撃隊に向かって走り出す源さん。
その源さんに、薩摩の銃が一斉に火を噴きます。

えっ??? マトリックス???
何もそんな、弾道にCG入れなくても・・・。

さらに源さんが顔の前に刀を構えると、飛んできた銃弾が刀に当たって弾け飛ぶ。
えっ??? トリビア???

「周平、逃げろっ!!」
振り向いた源さんの背中に次々と命中する銃弾。
はっとする仲間たち。
「源さーん!!」
土方の叫び。
「周平、走れー!走れー!!」
そう叫んで、なおも薩摩軍の前に仁王立ちで立ちはだかる源さんの胸をいくつもの銃弾が貫きます。
その間に、周平は原田や永倉たちの助けを借りて、祠まで退きます。

あ、源さんの後ろの木に火が・・・。なんで?

崩れ落ちる源さん。
「源さん!」
飛び出していく土方。そして原田と島田。
原田が銃撃隊に向かって槍を投げ、島田が倒木を投げつけて、敵を混乱させている間に、土方と原田は源さんを祠へと運びます。


ん〜、なんかね〜。
みんな大好きな源さんの最期を、なんとか飾ってあげたいと、スタッフさんたち頑張ったみたいなんですけど、あまりにも頑張り過ぎたかなぁ。
江戸の片隅で平穏な人生を全うするはずだったという源さん。そんな源さんの死は、普通で良かったんじゃないでしょうか。派手な演出も要らない、CGで飾ることも必要ない。ただ、息子のように可愛がっていた周平を庇って銃弾に倒れた。それだけでよかったんじゃないかな。
特に、あまりにも他の映画や番組を彷彿とさせるCGは、それだけで気が散ってしまって、絶対に入れるべきじゃなかったと思います。緊迫した場面なのに、正直笑ってしまいました。本当は泣きたかったのに・・・。

実際には、旧式ながら大砲も銃も持っていた旧幕府軍。新選組も会津藩も遊撃隊も、大砲や銃で援護射撃しながら、薩摩軍の陣地に何度も斬り込みをかけて白兵戦を展開しています。しかしさすがに持ち堪えきれず、八幡まで退却することになるのです。
この時、源さんは土方の退却命令に応じず、戦場に残って大砲で応戦。薩摩からの銃撃に遭い、戦死します。源さんとともに従軍していた甥の泰助(11歳)は、せめて叔父の首級だけでも持ち帰りたいと途中まで運んできましたが、さすがに少年の身には重く、途中の寺の門前に埋めてきたそうです。


気を取り直して・・・
祠に運んだ源さんの体を、土方が背後から抱えています。目を閉じ、意識のない源さん。
土方がすがるように傍らの山崎を見つめますが、山崎は残念そうに首を横に振ります。
「源さん。」
目に涙を溜めて、源さんの体を揺さぶる土方。
「こんなところで死んではならん!」
永倉が叱咤します。
「局長も総司もいねぇのに何やってんだよ!源さん!!」
土方の切ない叫びに、胸が痛みます。そうだよ、源さん。土方さんをひとりぼっちにしないでよ。(泣)
「もっと強く抱きしめるんだ!魂が抜け出ていかねぇように。ばあさんが言ってたんだよ。もっと強くだ
 よ!」
泣き叫ぶ島田の声に、源さんが意識を取り戻します。
「周平?」
周平の姿を探す源さんに、
「周平は、ここにいるぜ。」
と教えてやる左之助。
周平は黙って、源さんの手を握ります。
「良かった・・・。」
周平の顔を見て、安堵の笑みを浮かべる源さん。泣き出す周平。
土方に向かって、
「近藤先生に・・・、近藤先生に・・・。」
伝言が言葉にならぬまま、源さんは息絶えます。
土方の、左之助の頬を涙が伝います。山崎も永倉も、鍬次郎も泣いてる。島田も尾関も・・・。
まるで子供が泣いているような表情で、土方が源さんの体を抱き締めます。
「そんなんじゃ、駄目だ。」
号泣しながら、源さんを土方ごと抱き締める島田。
「島田。」
永倉が首を横に振って、島田の肩に手をかけます。
源さんを囲み、泣き崩れる隊士たち。

その様子を輪の外からじっと見つめていた斎藤が、突然絶叫すると、進軍してきた薩摩の兵たちの前に飛び出します。悲しみを叩きつけるように、刀を振り回し、次々と薩摩兵を斬り倒していく斎藤。まだ、悲しみをこういう形でしか表現できないのね?>斎藤さん。
恐れをなして逃げ惑う薩摩兵。地面に落ちた錦の御旗さえも、踏みつけて逃げていく。
隊士たちの気持ちが籠もった新選組の誠の旗は、どんな銃撃の中でも高く翻り、岩倉の「これ、使お。」から始まって、上層部に持たされているだけの錦の御旗は、いざとなれば打ち捨てられ、踏みにじられる。その対比が上手く描かれていますね。
散り散りになって逃げていく薩摩兵を、なおも斎藤は追っていきます。
隊士たちの嗚咽は止みそうにありません。

この頃、大坂城では、陣羽織を身にまとった容保公が、行き場のない怒りを近藤にぶつけています。
「なぜだ。なぜ、このような事になるのだ。薩長は官軍となり、我らは賊軍となった。予にはわからん。
 先の帝の御信用が最も厚かったのは、予ではないのか、近藤。」
「はい。」
「この陣羽織は、先の帝から頂戴した衣で作った物ではないのか。」
「はい。」
「予はこれまで、帝のために命を捧げてきたつもりじゃ。それがなぜ朝敵になる。このような事があっ
 てよいのか。正しきは我らではないのか。この世に正義は無いのか。」
容保公の言葉に、近藤は決意を固めます。
「会津藩をけして賊軍には致しません。薩長の謀略、この近藤勇が打ち砕いて見せます。すぐに軍議
 を開いて下さい。上様の前で申し上げたき事がございます。」
容保公を見つめて、誓う近藤。

慶喜公の御前で、軍議が開かれます。
居並ぶ諸侯を差し置いて、慶喜公に意見する近藤。(汗)
戦となってしまったからには、武力をもって薩長を打ち破るしかないと説きます。
「しかし、むこうには錦の御旗が立った。」
「御旗が何でございましょう!あのようなものは、まやかしでございます。薩摩が帝を利用しているだ
 けでございます。」
「だが官軍であることに、違いはない。予は、徳川を逆賊には出来ん。」
「それならば、戦に勝つより他はありません。戦に勝って、御旗を奪い取り、我らが官軍となるしかな
 い。」
不安そうに顔を上げる諸侯。
「勝てるのか?」
容保公が訊ねます。
「勝ちます。いや、この戦、勝たねばなりませぬ。上様には御自ら陣頭に立ち、京へ入っていただき
 ます。上様のお姿を見れば、錦の御旗で薩長になびいた諸藩も必ずや、我らの側に付くはず。そ
 の勢いをもって御所を制圧し、帝に拝謁して、薩長討伐の勅命をいただくのです。これより他に、
 徳川家の生き残る道は無い!」
断言する近藤。
「近藤!お主を信じて良いのだな。」
確認する慶喜公に、
「上様の下に近藤勇がいる限り、薩長の思いどおりにはさせませぬ!」
と誓う近藤。
近藤のことは信じていいと思いますけどねえ。慶喜公を信じてよいものかどうか・・・。(苦笑)

果たして実際にこのように、近藤が一人、将軍に訴えることができたかどうかは疑問ですが、近藤の述べた意見は大坂城の中に強くあり、慶喜公も一度は出陣を約束したといいます。
しかし・・・。

夜に入って、慶喜公は容保・定敬兄弟に告げます。
「予は決めた。これより大阪城を脱出する。江戸へ帰る。」
ほらね。やっぱり二心様だ。(苦笑)
唖然とする容保と定敬。
「戦は終わりじゃ。」
「終わり?」
「足利尊氏は、錦の御旗に刃向かったために、末代まで逆賊の汚名を着せられた。予は、尊氏には
 なりとうない。」
水戸学を信奉し、強い尊王思想を持つ慶喜らしい理論です。
「しかし近藤は、必ず勝つと約束しました。」
「徳川家の行く末は、あの男の言葉に託す訳にはいかん。」
まぁ、確かに。おっしゃる通りかとは思いますが、だったら「お主を信じる」みたいなこと、言わないでくださいよ。
「兵士は既に、戦いの準備を進めております。」
食い下がる定敬も、
「もう決めたことである。」
と慶喜に返されて、「兄上。」 兄に助けを求めるしかないところがちょっと可愛かったり。
「好きにしていただこう。」
呆れた兄は突き放したように言いますが、それに対し慶喜は、
「他人ごとの様に申すな。お主らも一緒に帰るのだ。」
微笑みさえ浮かべて、二人に告げる慶喜。
「家臣を置いて逃げる訳には参りません。」
定敬様、泣きそう。容保様は、慶喜公を睨みつけるように見上げています。
「これは命令じゃ。これより天保山へ向かう。あの沖には開陽丸が停泊している。それに乗って帰
 る。」

雷が鳴っています。近藤は一人、地図を見ています。
不意に揺れる蝋燭の炎。
近藤がふと顔を上げると、そこには源さんが・・・。
「源さん!」「いつ戻ってきた?」
「たった今でございます。」
「他の者は?」
「私だけ、一足早く。」
「皆、なかなか苦戦しておるようだが、心配はするな。上様が御自ら、指揮をとられることが決まっ
 た。これで味方も、士気が上がる。」
源さんの言葉に疑うこともなく、語る近藤。そんな近藤を、
「局長は昔から、人が良すぎるところがございます。人を信じすぎる。結局傷つくのはご自分であるこ
 とを、お忘れになりませぬように。」
源さんは優しく諭します。
「何を言ってるんだ。上様が約束して下さったのだぞ。」
瞬間、源さんの体が陽炎のように揺らぎます。
「先生、どうかご無理をなさいませぬよう。身を壊す元でございます。それから、あまり一人で何もか
 も背負おうとなさらぬこと。たまには力を抜くことも必要です。たまには気晴らしに、みんなと騒ぐの
 も良し。私は、江戸にいた頃の先生の明るいお顔、好きでございました。」
涙ぐみながら語りかけてくる源さんを不審そうに見つめる近藤。
「源さん・・・。」
ようやく、源さんが最期のお別れに来たことに気が付いたようです。
源さんがゆっくりと頷きます。その拍子に、源さんの目から零れ落ちる涙。
「済まなかった。ここまで付き合わせてしまって・・・。」
涙ぐみながら話す近藤に、源さんは首を大きく横に振って、
「楽しゅうございました。悔いはありません。欲を言えば、みんなと一緒に江戸へ戻りたかった。」
笑顔で話す源さん。
「源さん・・・。」
まるで本当に幽霊を見ているかのように、宙を見つめる近藤の表情がいいですね。
涙を拭う源さんに、
「馬鹿。死んだ奴が泣いてどうする。」
涙を溜めつつ、笑いながら突っ込む近藤に、
「そうか。」
照れ笑いの源さん。ちょろっと舌を出すところが可愛い。
それから、源さんは近藤に深々とお辞儀をして、消えていきました。
揺れていた炎が元に戻ります。
笑顔で見送っていた近藤は、やがて目を閉じて、悲しみに咽び泣きます。
余韻の残る、悲しくも素敵な別れのシーンでした。


さて、戦闘シーンに不満は残るものの、源さんの死を中心に据え、隊士たちそれぞれに見せ場のあった今回。
特に土方ファンとしては、ここにきて急に、土方が表情豊かになってきたというか、鬼の仮面が剥げて人間らしさを曝すようになってきたのが印象的です。その分、新選組をぐいぐい引っ張っていく強さがなくなったのには物足りなさは感じるのですが、ちょうど鬼から仏への移行期なのでしょうかね?
刀から銃への移行期でもありますし。
近藤に代わって、かっこよく戦の指揮を取る姿は見られませんでしたが、近代戦というものをしっかり見ているといった風はあったかな?戦国時代と変わらぬ装備の上に、指揮系統がめちゃくちゃになっている幕府軍とか、逆に薩長の近代兵器を使った戦い方や、心理戦への持ち込み方とかを、すごく冷静に見ていた感があります。

それと、山本耕史くん。
山南切腹の時のグダ泣き顔も凄かったけど、今回の山崎に掴み掛かった時の必死の形相とか、源さんを抱きしめての子供みたいな泣き顔とか、彼の演技は本当に体当たりで、あんな男前な俳優さんがここまでかっこ悪くなっていいのか?と心配になってしまうほど。その熱さが土方ファンとしてとても嬉しいと同時に、一視聴者としてその潔さにぐいぐい惹き付けられますね。

これからますますシビアな展開になっていく時、土方がどんな風に変わっていくのか、さらにどんな表情を見せてくれるのか、本当に楽しみです。
そして来週の予告では、いよいよ洋装土方の登場になるのかな? わくわくしますね〜。

 

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