大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第44回  局長襲撃  

“それはまさに、クーデターであった。慶応3年(1867年)12月9日、薩摩の兵を中心に尾張、越前
 など5つの藩が、御所の守りについた。”

京都守護職松平容保から報告を受け、寝所の将軍徳川慶喜は飛び起きます。

“薩摩藩らの決起からまもなく、王政復古の大号令が発布された。これにより、260年あまり続いた
 徳川幕府は正式に廃止され、倒幕派の諸藩による、朝廷を中心とした、まったく新しい政府がつく
 られたのだった。”

詔を読み上げる、みずら姿の明治天皇が可愛い〜♪
そして、衣冠束帯に身を包んだ岩倉卿が胡散臭〜い。
さらにその岩倉卿と頷き合った後、にやりと笑う大久保が怪しい〜。

薩摩藩などへの怒りを、近藤の前で露わにする容保公。
「上様は何とおおせなのですか?」
との近藤の問いに、容保公の回想シーンが流れます。

飛び起きた慶喜は、結局そのまま寝床に横たわってしまいました。
「薩摩の動きぐらい、すべてお見通しじゃ。」
と言う慶喜。
「それならば、なぜ手を打たれなかったのです。上様は、今政権を渡されて、最も困るのは朝廷だと
 仰せになった。されど朝廷は薩摩の言いなり。上様をないがしろに、新たな国の仕組みが作られよ
 うとしているではありませぬか。」
憤る容保に、
「案ずるな、肥後守。」
と慶喜は上半身を起こして、
「諸外国にとっては、日本の総代は今でもこの徳川家じゃ。フランスもアメリカも、どこも相手にはして
 おらん。ゆっくりと次の手を考える。」
余裕の表情で語ります。

容保公の説明に、
「上様はご存じでらっしゃったんですか?」
と驚く近藤。
「それもどうかわからん。知らなかったとは決して口にされないお方じゃ。」
苦笑する容保公。もう、振り回されっ放し。(哀)
そして、
「近藤、予はもう我慢がならん。上様が何と仰せになろうと、薩摩を討つ。」
と決意を披露します。

慶応3年(1867年)12月12日
新選組の屯所では、近藤が王政復古の大号令が発布されたことを、幹部たちに報告しています。
「王政復古の詔により、このたび新しい仕組みが決まった。」
近藤の説明に、
「みこと海苔って、なんか美味そうだな、えっ?」
左之助〜〜。(苦笑) まぁ、あんたのそういうとこが好きだけどね。
近藤は左之助を無視して、先を続けます。
「松平容保様は、京都守護職を辞めさせられた。そして上様は、内大臣の位とすべての領地を返上
 させられるらしい。」
動揺する一同。さすがの左之助も、
「それって、どういう事?」
と訊ねると、末席の尾形が、
「徳川家が大名では無くなるのです。」
と説明します。
「ええっ。」
「酷ぇ話だな。」
口々に反応する一同。
「あの、私が思うに、薩摩は喧嘩を仕掛けているのではないでしょうか。無理難題をふっかけ、幕府
 が怒り出すのを待っているのでは?」
と尾形。いたじゃないか、ここに〜。解説してくれる人が!!
「怒らしてどうする?」
永倉の問いに、
「戦がしたいのです、奴らは。」
と答える尾形。
「それは私もそう思う。薩摩は我らと戦をし、力で徳川を倒す事で、次が薩摩の時代であると天下に
 示したいのだ。」
近藤も同意します。
「くそぅ、酷ぇなあ。くそっ!」
これこれ、島田さん。畳むしってどうする!(苦笑)

そこへ総司がやってきます。ぽやんと寝起き顔なのが可愛い♪
「お前、何やってるんだ。」
「お前は寝てなきゃ駄目だろ。」
咎める源さんと近藤。
「だって、なんだか大変な事になっているらしいじゃないですか。寝てなんか、いられませんよ。」
そう言いながら、座り込むと、
「いいから、病人は寝てろ。」(左之助)
「早く行け。」(土方)
「ここに来るんじゃない。」(永倉)
口々に言われてしまいます。あらあら、かわいそうに、総司。ちょっと涙目。
「そんな、よってたかって言わなくたって・・・。」
口を尖らせているところへ、お孝さんが追いかけてきました。
「あっ、こないなとこにいた。ほんまに、もう!!」
叱られて、ますますしゅんとする総司。
「新選組はどうなるんですか。」
近藤に尋ねますが、近藤は答えぬまま、土方に、
「お前は、新選組のことより、自分の体のことを心配しろ。」
と言われてしまいます。
そしてまた、お小言の一斉射撃。
「そうだ。」「病人は、いっぱい寝ろよ。」「総司。」「帰りなさい。」「早くしろよ。」「寝てろよ。」「お孝さん、お願いします。」「総司、ほれ。」・・・・・
口々に言われる中、お孝さんに立たされる。
訴えるように近藤を見つめる、うるうる総司。
けれど、近藤にも「戻りなさい」というように頷かれて、お孝さんとともに渋々部屋を出て行きます。
「今から私は二条城に行って来る。いつでも出陣出来るように準備しておいてくれ。」
近藤の言葉に、
「承知。」
答える土方。

近藤が出掛けた後、
「なぁ、なぁ、なぁ、幕府って本当に無くなっちゃうのか。」
「新選組は、これからどうなる。」
不安を口にする原田と永倉。
みんななんとなく俯いてしまう中、
「どうもなりゃしねぇよ。そう、やすやすと、徳川様の世が終わる訳がねぇ。いずれ薩長まとめて、俺た
 ちが京から追い出す。」
強気の発言の土方。土方に励まされて、にやにやし始める左之助。
「島田、局長について行け。御陵衛士の生き残りが、局長を狙っているという噂を聞いた。」
「わかりました。」
島田も元気になって出て行きます。
自分だって政治のことなんかわからない土方だけど、こういう、政治だの時勢だのなんざ知ったこっちゃねぇ的なところが、土方の強さだよなぁ。これからどうなるか悩むより、自分はこれからどうするかを考える。先の見えないこんな時は、土方のような存在が有り難かったりするんですよね。
とはいえ、憂うることはいろいろあるようで、島田を送り出した後、表情を曇らす土方。一番の心配は、やはり御陵衛士からの報復のことでしょうか。

京の町を行く近藤と島田(とお供一人)。
向こうから、長州軍の小隊がやってきます。洋装に身を包み、肩には銃を掛けています。
「長州っぽですよ。」
びくつく島田に、
「臆することはない。」
と言って、すたすた歩いていく近藤。
「近藤や。局長の近藤や。」
町の人たちの声に、長州軍の方が怯えて道を開けます。

新選組の屯所は、出陣の準備で大騒ぎになっています。
それを眺めている土方と源さん。
「世の中、一寸先は闇と言いますが、まさかこんな事になるとは思わなかった。薩摩と長州は、徳川
 様に代わって幕府を興すつもりなんでしょうか。」
嘆く源さんに、
「源さんも老けたな。」
と土方が苦笑します。
「はい?」
きょとんとして問い返す源さんが、かわいい。
「愚痴が多くなった。心配するな。俺がそんな事にはさせん。」
強気で言い切る土方の言葉を聞いて、源さんはほっと表情を緩ませる。
ふっふっふっ。箱館まで戦い続ける土方の片鱗が、ちらりと顔を出しましたね。
だけど、来週を思うと・・・。来週を思うと・・・。うわ〜んっ!!(泣)

近藤の休息所。
ふらふらと床を抜け出してしまう総司は、ここに隔離されてしまいました。
お世話係はお孝さん。

 お孝「なんやら、町はえろう物騒になってきたよ。長州の兵隊さんで溢れてるし。」
 沖田「京の人たちは、どう思ってるんだろう。」
 お孝「長州が戻ってきたんは嬉しいみたい。こっちの人はみーんな、長州贔屓やから。金払いが
  ええんや。あそこの人は。」
お孝の説明に、
 沖田「ねぇ、新選組はどう思われてたの?」
わくわくしながら訊きますが、
 お孝「下の下やったね。」
と言われて、あえなく撃沈。(苦笑)
 お孝「とにかく、新選組と聞いたら、近寄るなて言われてた。」
 沖田「あなたは怖くはなかったの?」
 お孝「ちょっとも。」
 沖田「どうして。」
 お孝「うちはね、こう見えても、小さい頃から苦労してるんよ。いろんなとこに奉公に出されて、それ
  で自分で覚えたん。人の値打ちは、自分で見て決めなあかんて。噂を信じては、あかんの。」
そういうお孝の言葉に、総司は感心した様子で耳を傾けています。
 沖田「新選組は、怖くはなかったんだ。」
 お孝「平気やった。近藤さんは優しいし、沖田はんは子供みたいやし。」
再び、総司撃沈。(笑)
いまだに子供扱いされるねぇ。>総司くん
こういう京都庶民の感情を、もっと前から入れてきてくれたら良かったのになぁと思いますが、まぁ、
ここでお孝さんが喋ってくれただけでも感謝することにしよう。

二条城の廊下を近藤と島田が歩いていきます。
「近藤殿。」
呼び止めたのは、甲冑に身を包んだ広沢様でした。いつになく硬い表情の広沢様。
「近藤殿。どうか会津藩を救ってくれ。」
「広沢様。」
「京都守護職は廃止になったが、殿は京に残って、今後も上様をお守りすると仰せである。このまま
 では徳川は、いずれ薩摩や長州と戦になる。戦になれば、矢面に立たされるのは我らだ。」
広沢様の必死の訴えに、思わず胸が詰まります。黙って頷く近藤。
「なんとか殿に、戦だけは思い止まっていただくよう、申し上げてはもらえないだろうか。殿は、何より
 そなたを信用しておる。ここはひとつ、力を貸してくれ。」
広沢様は、近藤に深々と頭を下げ、さらに
「小森様、小森様からも、お願いを!」
と振り返ります。小森様も、真剣な眼差しで近藤を見つめ、
「お主だけが頼りだ。これまで新選組には、辛く当たってきた。しかしすべては、会津藩のため。殿を
 思う心は、そなたと変わりはせんのじゃ!」
と訴えかけます。
あの小森様まで、小森様まで、近藤を頼ってこられるとは・・・。(涙)
確かにこの時、会津藩は、長年の京都駐在と飢饉で経済的にも疲弊し、藩内も主戦論と反戦論とに二分されていたと聞きます。どんなにか追い詰められていたことでしょうね。
さらには、やがて広沢様のおっしゃるように、薩長による討幕の矢面に立ち、鳥羽伏見から始まって会津戦争、さらに敗戦処理による移封など、この後会津を待ち受ける苦難の歴史を思う時、涙を誘われずにはいられません。

新選組の屯所では、小判のぎっしり詰まった箱を土方が開けています。
「一箱だけ残して、後は隊士一同に分け与えてくれ。」
尾形に命じる土方。
「今度のはかつてない大仕事になる。それぞれに身の周りの始末をさせる為の金だ。」
土方の説明に不安になったのでしょうか。
尾形が土方に尋ねます。
「新選組は無くなってしまうのですか。」
不安そうな尾形に、
「先のことは誰にもわからん。」
と答える土方。
尾形は気を取り直したように、
「しかし、太っ腹ですね。」
と感心したように言います。
「たまには俺も、仏の副長と呼ばれてぇからな。」
言いながら照れ笑いする、鬼副長。(爆)
やがて、“慈母のごとし”と言われる片鱗を、ちらりと覗かせてみたのかな?

それを聞いたはずもないのだけれど、二条城の島田がくしゃみをしたのは、この後、土方から離れることなく転戦していく、その繋がりでしょうか。

さて、二条城。
座敷で待つのは近藤と佐々木様です。
「いよいよ、我らの出番となったな。近藤殿。」
「今、国を二つに割って戦をする事が、果たして日本の為になるのでしょうか。」
「そんな寝ぼけたことを言っている場合ではない。武力では我らが圧倒している。薩長はさっさと叩き
 潰す。それが日本の為だ。我らにとっての報国とは、ご公儀に仕えるということ。それだけを考えて
 おればよい。」
佐々木様には本当に迷いが無い。ただ真っ直ぐに、上様のため、ご公儀のためと思っている。
凄いなぁ。

その時、永井様が部屋に入ってきました。今日の永井様、元気がない・・・。
「承知のとおり、京都守護職をはじめとして、幕府の役職はすべて廃止となった。今後は、伏見奉行
 所、京都町奉行所の与力同心、並びに見廻組は、新遊撃隊として一つにまとめる。新選組に関し
 ては、新遊撃隊御雇として、これに準ずる事。」
平伏して承る佐々木様と近藤。部屋の外で控える島田も、泣きそうになりながらひれ伏します。
「お達しはここまでだ。さてと・・・。」
と足を崩して、
「これからどうすりゃいいんだ、わしらは。薩摩は、どこまでわしらを困らせれば気が済むのか。」
永井様が愚痴をこぼした時、慶喜公が容保と定敬を従えてやってきます。
慶喜公から、意見を聞きたいと言われる二人。
 佐々木「恐れながら申し上げます。これ以上、薩摩の横暴を許しておくべきではありません。一日も
   早く、薩長を京から追い出し、再び徳川の世に戻す事が、この国のためと存じます。」
 近藤 「恐れながら申し上げます。僭越ながら私は、戦はすべきではないと心得ます。今、こちらか
   ら仕掛ければ、我らは朝敵となります。」
 佐々木「朝敵とはなりませぬ。薩摩は朝廷の一部と組んで、幼い帝を意のままに操っているだけで
   こざいます。となれば、薩長の陰謀を砕くためには、御所に攻め入り、帝をお救いする以外に手
   は無いと心得ます。」
 近藤 「今、攻めれば、薩摩の罠に嵌るだけです。向うは、上様を討つ口実を待っているのです。奴
   らに付けいる隙を与えてはなりませぬ。」
 佐々木「口実など与えてやれば良い。勝てば済むことではないか。」
 近藤 「佐々木様は、上様を逆賊になさるおつもりか。」「あくまでも恭順の姿勢を貫き、機会を待ち
   ます。諸藩の中には薩長のやり方に不満な者もいるはず。その者たちと手を結び、力を蓄え時
   至れば、上様と松平容保様に御参内頂き、帝に上様の真意をお伝え頂きます。」
 佐々木「手ぬるい。」
 近藤 「戦を避けるには、それしかござらぬ。」
 佐々木「なぜ、そんなに戦を避ける。」
 近藤 「国の為にならぬからです。」
 佐々木「だから、早く決着を付ける。」
 近藤 「付かぬ時は、如何される!」
激高して、口論を始める二人。
見かねた永井が、「佐々木!近藤!御前であるぞ!!」とたしなめます。

この二人の口論、迫力がありましたね。時勢がわからない、政治がわからないと言っていた近藤が、上様の前で佐々木様と互角に意見を述べられるようになるとは・・・。(感動)
それにしても、どちらもご公儀のことを考えながら、この二人はどうしても意見が対立するようで。
佐々木様は純粋な幕臣の考え方。近藤は龍馬の影響を受けているせいか、広く日本までを視野に入れた新しい考え方。
佐々木様の意見は、あまりにも強引な気もするし、近藤の意見はやっぱり見極めが甘いような気がする。
難しいですよね。政治に正解は無いということかな。

廊下に佇む、容保様と近藤。
「近藤、余も戦がしたい訳ではない。無駄な血は流さずに済めば、それに越したことは無いと思って
 おる。しかし、薩摩の傍若無人な振舞いは目に余る。」
真面目な容保様らしい。近藤は、
「ここはご辛抱下さりませ。正義は我らにございます。最後は必ず、天は我らに味方するはず。」
あ〜、近藤さん、こんな風に容保様に意見できるようになったなんて〜。(感動)
容保様も、頼もしそうに近藤を振り返ります。

その時、慶喜公が廊下を渡ってみえました。廊下の端に控える二人。
慶喜公は、これより大坂へ下ると容保に告げます。
「ここにおれば、戦は避けられん。今、薩摩に仕掛ければ、奴らの策に嵌る事になる。よって、血の
 気の多い者たちを集めて、大阪城に入る事にした。全軍に触れを出せ。」
「佐々木たちを説得するのに、骨が折れそうです。」
と訴える容保に、
「ひとまず大阪に軍勢を集めた後、京へ攻め上ると言えば良い。」
さすが、策を弄するのが好きな二心様。(苦笑)
慶喜公は、近藤にも直々に、
「お前はここに残って、二条城を守れ。」
と命じます。
「かしこまりました。」
と答える近藤。慶喜は近藤の傍に膝をついて、
「戦にはせん。されど、それでも戦わねばならぬ事になったら、その時は近藤、力を貸してくれるか。」
と語りかけます。
「死力を尽くして戦います。」
「勝てるか。」
「近藤勇、戦で負けた事はございません。」
負けるもなにも、正面切って戦なんてしたことありましたっけ?>近藤さん
「その言葉が聞きたかった。」
と言って、慶喜公は立ち去ります。

薩摩藩邸で、囲碁を打っている西郷と大久保。さすが、こちらは余裕ですねえ。
 西郷 「大阪に退く。なかなか誘いに乗ってこんどなぁ、慶喜も。」
 大久保「真っ先に戦を仕掛けてくるち踏んじょった近藤勇が、どうやら最も慎重らしかちゅうことでご
  わんど。」
 西郷 「さて、どげんすっか。」
 大久保「近藤については、手は打ってありもす。御陵衛士の残党に、ふっかけておきもした。伊東さ
  ぁの仇を討つ気なら、薩摩が手を貸すっち。」
うわぁ〜、やめて〜〜!!(涙)

“お多福”では、小判をじゃらじゃらと、おまさちゃんに見せている左之助。
「すげぇだろ〜、おい。」
嬉しそうな左之助の頭を叩いて、
「どっからちょろまかしてきたん?」
と、おまさちゃん。(笑)
「何すんだよ、そんなんじゃねぇよ。土方がみんなに配ってくれたんだよ。」
まぁ、信じられないだろうけど、信じてあげてよ。
喜ぶおまさちゃんとは逆に、左之助は急に真顔になって、
「まさ、これからひょっとすると、戦になるかも知れねえぞ。」「いいか。もしも俺に何かがあったら、この金で息子を立派に育ててやってくれ。」
あ〜、いやだ〜。いやだ〜。そんなこと言うな〜。>左之助
子供は男の子だと言い張り、名前も考えたと言う左之助。
 おまさ「何?」
 左之助「茂じゃ。」
 おまさ「茂?」
 左之助「うん、草冠にこんな漢字。」
 おまさ「なんで、茂?」
 左之助「そもそも俺たちが京へやって来たのは、何のためだ?上様のお供をするためだろ。そんと
  きの上様は家茂公だ。家に茂って書いて家茂。そっから一字もらいました。」
 おまさ「あんた、将軍様から一字もらうやなんて、恐れ多いわ。」
 左之助「そんなの、黙ってりゃわかんねぇよ。いいか、家茂公がこっちに上ってこなけりゃ、俺たち
  は出会えなかったんだぞ。言ってみりゃ、縁結びの神様みたいなもんだ。」
左之助もいろいろ考えてるんだなぁ。いい話だけど、なんか淋しいよ〜。

二条城から、慶喜公が大坂へと出立されます。
それを見送る近藤と島田。
「近藤先生。俺たち、これから新遊撃隊とやらになるんですか。」
「そういうお達しだった。」
「新選組のまんまじゃ、まずいですか。俺は、まんまがいいです。自分の名前は色々変わったけど、
 新選組は、新選組がいい。」
「名前が変わっても中身は変わらん。」
「新選組は、なくなったりしませんよね。」
「あぁ。」
「俺、他にいる場所がないんで。」
「私もだ。」
舞いはじめる粉雪。
悲しいです。無性に悲しいです。
新選組に入れただけでいいと言っていた島田。
他にいる場所がないと言う島田。そして近藤。
だけどこれから、新選組のいる場所そのものが無くなってしまうんだよね。(号泣)

その頃、近藤の休息所では、沖田が床の中で刀を見つめています。刀身に映る自分の顔。
ほつれた髪、潤んだ瞳、透きとおるような青白い肌。
ここにも、いる場所がなくなってしまった人がひとり・・・。(涙)
そこへ、障子を開けて現れたのは、斎藤さんでした。
 斎藤「俺たちは二条城を守ることになった。」
 沖田「私も行っちゃ、駄目ですか。」
 斎藤「駄目だ。」
 沖田「だったら、一々知らせないでほしいんだけどな。」
この二人のボケ突っ込みのような会話がいいなぁ。
「これ、精がつくらしいから、良かったら・・・。」
斎藤が懐から取り出したのは、油紙に無造作に包まれた朝鮮人参でした。
高いんでしょう?これ。斎藤さん、分配された隊費で買ったのかな?
左之助にこけしをあげた時は、何も言わずにドンッと差し出したけど、「良かったら・・・。」なんて言いながら渡せるようになったんだねぇ。成長したねぇ。でも、
 沖田「何ですか?」
 斎藤「知らん。」
 沖田「知らないもの、持ってこないで下さいよ。」
 斎藤「店の者が、そう言っていた。」
 沖田「どうやって食べるんですか?」
 斎藤「・・・・・・・。」
 沖田「なんか、いろいろやってみますよ。ありがとうございました。」
もう、最高。(*^^*)

きまりが悪くなったのか、斎藤はそのまま帰ろうとして立ち上がります。
部屋を出ようとする斎藤の背中へ、
「私は斎藤さんの様になりたかった・・・。」
と語りかける総司。
斎藤が驚いたように振り返って、総司を見つめます。
「ずっと思ってました。私は斎藤さんを尊敬しています。けして驕らず、無駄口は叩かず、仕事はきっ
 ちりこなす。私は、あなたのような剣士になりたかった。」
潤んだ瞳で斎藤を見上げる総司。
斎藤は複雑な表情を浮かべて、
「やめとけ。俺のようにはなるな。だから俺は、お前を気に掛けている。」
そう言って、足早に総司の部屋を後にします。
残された総司は、とても淋しそう。

平助から、私は沖田さんのようになりたかったと言われた総司。その総司は、実は斎藤さんのようになりたかったんですね。近藤や土方のために働きたい総司にとって、斎藤が仕事の上で二人に信頼されていることも、斎藤に憧れる理由の一つになっているのかもしれない。
でも斎藤の心の闇を、総司は知らないんですよね。人斬りとしての苦悩を・・・。
もしかしたら実は斎藤さんも、総司の純粋無垢なところに惹かれていたのではないかしら。若い時からたった一人、裏街道を歩いてきた斎藤にとって、試衛館のみんなに囲まれて大切に育てられてきた総司の穢れのない部分に憧れていたのではないでしょうか。芹沢は総司のそういうところを汚したくなると言っていたけれど、斎藤は逆に、大切にしたいと思っていたのでは? その気持ちが、「俺のようにはなるな。」という言葉になったような気がします。

総司の部屋を出た斎藤は、お孝の部屋の前を通りかかります。
部屋の中で餅を焼いて、食べているお孝。
無言のまま部屋に入り、お孝の横にしゃがむ斎藤に、お孝はびっくりして飛び退きます。
そりゃ、恐いよ、斎藤さん。(苦笑)
でも、斎藤はお孝の反応など気にも留めずに、
「新選組は方々から狙われている。戸締まりを忘れるな。それから、いざというときの逃げ道を作って
 おくように。」
忠告だけして、さっさと立ち上がる斎藤。
餅を喉に詰まらせかけたお孝さんは、なんとかお茶で流し込み、
「戸締まりしたら、逃げ道無いやないですか。」
振り返って突っ込み入れた時は、既に斎藤の姿は無し。(笑)
「もうっ!!」
この、お孝さんの怒ってる顔が可愛いなぁ。

「二条城の警護は、我ら水戸藩が責任をもって行なう事が既に決定しておりもす。どうか、お引き取り
 を。」
水戸藩家老 大場一真斎が、新選組の入城を拒んでいます。
「我らは新遊撃隊御雇として、二条城をお守りせよと命ぜられております。」
と返す近藤。
すると大場は、
「名前が変わろうと、そなた達は紛れもなく新選組! 軍の志気に係わるのじゃ!」
嫌悪感を露わにします。
「それはどういうことでしょうか。」
あくまでも冷静を保つ近藤。
「そなた達が行なってきた乱暴狼藉、我らが知らんとでもお思いか。一体、何人斬った?!どれだけ
 京の町を血で汚してきた!お主らの振舞いが、徒に薩長の恨みを買い、その挙げ句、かような様と
 なったのだ!直参に取り立てられたからといって、我らが皆認めていると思うな!我らにとっては、
 獅子身中の虫じゃ!!」
激しく愚弄されて、
「お話しになりたいのは、それだけですか。」
近藤が確認します。
「そうだ!わかったなら、さっさと立ち去れぃ!」
言い捨てるなり、廊下を歩きはじめた大場の前に、土方と井上が立ちはだかります。土方さんの涼しい顔が堪らない!(*^^*)
庭には、武装した新選組隊士たちがずらりと並んで、殺気を漲らせています。
ひょえ〜〜。さすがに慄く大場一真斎。

近藤が大場の前に来て、静かに睨みつけながら語りかけます。
「我らは常に戦陣に立ち、徳川様のために命を張って来た。確かに何人の浪士を斬ったか知れな
 い。しかしその分、我らの仲間も死んだ!」
近藤の言葉は、居並ぶ隊士たちすべての思いだ。
「我が隊の規律を守るために、自ら手を掛けたこともあった。それもこれも、ご公儀のため!おわか
 りか。あなたは、そうやって死んでいったすべての者たちを、今愚弄した!!ならば伺おう。我らが
 命がけで戦ったこの5年、お手前方は、一体何をした!ご公儀のために、一度でも命を賭けた事が
 おありか?!!」
近藤の迫力に、扇子を落としてその場にへたり込む大場。
「行くぞ。」
近藤は冷ややかに言って、歩き出します。
大場の脇を通る時、その横に膝をついて大場の扇子を拾ってやる土方。
「お望みなら、命のやり取りの仕方、お教えしますよ。」
きゃ〜〜!!かっこいい!かっこいい!かっこいい!!土方さん!!!

このシーンの近藤は最高でしたね。静と動の使い分けが凄い。
ほんと、急速に化けてきたなって思います。
さらにその後、駄目押しするかのような、土方のクールな台詞と微笑み。
修羅場を潜ってきた隊士たちの姿がまた、威圧感とカッコよさが漲っていて、だけどそれが淡い陽光の中で輝いてるんだけど透きとおるような儚さもあって・・・。(涙)

二条城の警備につこうとして、水戸藩と対立したのは史実のようですが、実際にどういうやり取りがあったのかはわかりません。ただ幕府方の中に、新選組に対してこの大場のような認識を持っていた人たちが、少なからずいたことは確かだと思います。そういう人たちに対して、近藤や土方が心の中で叫んでいたのは、まさにこの近藤の台詞ではなかったでしょうか。

ところでこの大場一真斎役の俳優さん、どこかで見たんだけど〜?と思って、誰だっけ?誰だっけ?と騒いだら、ダンナが「ウルトラマンティガ」第45話で“三千万年前から他の土地を探している人”ヌークの俳優さんだと突き止めてくれました。もちろんその後、二人でDVDを観てしまったのは言うまでもありません。(なにやってんだか、この夫婦・苦笑)

近藤・土方・井上は永井様の部屋にやってきました。
 永井「確かに水戸藩は、上様直々のお声掛かりじゃ。」
 近藤「しかし私は上様から・・・。」
 永井「あの方、その場の勢いで、時々そういう事をおっしゃるのだ。」
あ、やっぱり?(^^;;;
水戸藩とこれ以上事を構えても仕方がないから、新選組には別の所を守ってもらいたい、と永井様。

「これより、我らは伏見に向かう!薩長がもし徳川に義の無い戦を仕掛けて来た時には、伏見にて
 我らが薩長軍を返り討ちにし、上様のご威光をお守りするのだ。」
隊士たちに告げる近藤。
「これは新選組結成以来、最も大きなお役目である。ゆめゆめ油断せず、磨いてきた腕を存分に
 揮ってもらいたい!」
続いて土方が飛ばした檄に、
「おおっー!」
と応える隊士たち。
「尾関!」
と土方が呼びます。
「はっ!」
高く掲げられる誠の旗。傾きかけた陽に映えているのが、輝かしいのと同時に物悲しい。(涙)

慶応3年(1867年)12月18日。
近藤の休息所へ、土方が沖田の見舞いに来ました。
総司に差し出したのは、桐の箱に入った朝鮮人参。(笑)
画面に映っている木箱が、ほれ!ほれ!と動いているのが可笑しい。
総司がびみょ〜な顔で、申し訳無さそうに、
「ありがたく頂きますけど、あの、斎藤さんからもらったやつがまだ残っているんですよ。」
と使いかけの人参を土方に見せると、急に気の抜けた顔になって、布団の上に木箱を落とす土方。
さらに総司は、
「あと、こっちはさっき近藤先生が置いていったやつ。」
と、籠に入った朝鮮人参を見せる。
斎藤さんは無造作に油紙に包んで、土方さんは高級そうに桐の箱に入れて、近藤さんは籠に入れて3本も!! それぞれの性格が出ていて楽しいですね。
「みんな気に掛けてくれるのは嬉しいけど、考えることは同じなんだよな。」
苦笑する総司。お孝が、
「どないするんですか?こないにぎょうさん。」
土方に文句を言うと、
「お前にやる。」
顔も向けずに木箱を押し付けます。(笑)
「いけませんよ、この人これ以上元気にさせちゃ。たたでさえ、もう、煩わしいんだから。」
憎まれ口を叩く総司に、お孝はほっぺた膨らませて、人参で総司を突付き回します。
「やめろよ、やめろよ。いてっ。やめろって、もう。返せよ〜。やめろよ〜。」
姉弟喧嘩をしているような二人。
微笑ましく見ていた土方さんが、あっ、笑った〜〜!!(*^o^*)
こんな、穏やかで優しくて屈託の無い笑顔、江戸を離れて以来初めてじゃないだろうか・・・。(嬉)

帰り際、お孝に、
「世話を掛けるな、あんたのおかげで、総司も随分明るくなった。」
と礼を言う土方。
「沖田はん、ほんまに伏見に行きたいみたいや。」
振り向くと、閉められた障子の中から沖田の咳が聞こえてきます。
「気分のええ時は、ずーっと縁側に腰掛けて、伏見の方の空を眺めたはるし。」
と教えるお孝に、土方は
「これからもしっかり見張っててくれ。あんな体で、伏見に来ちまわないようにな。」
と頼みます。置いていかなければならない土方さんも、辛いでしょうね。
お孝は黙って頷きます。

二条城で、永井様から書状を見せられる近藤。
江戸では幕府を挑発するために、薩摩の浪士たちが夜な夜な町に火を付けて暴れているとのこと。
「薩摩は何としても、戦に持ち込みたいようですね。」
「そのとおりだ。」
永井様が立ち上がります。
「向うでは、血の気の多いやつらが江戸の薩摩藩邸に焼き討ちしようとするのを、上の者たちが必死
 に止めているらしい。わしも配下の者にくれぐれも誘いには乗らないように命じた。新遊撃隊も、ど
 うか気を付けてくれ。」
近藤に頼む永井様。
その近藤は、改まって永井様に、新遊撃隊の名をお返ししたいと願い出ます。
「新選組に、戻すってか?」
「はい。」

二条城からの帰り道、近藤は御高祖頭巾の女に襲われます。
近藤が小刀を持った手を捻り上げ、島田がその覆面を取ると、女はおりょうでした。

島田を先に屯所に返した近藤は、おりょうを連れて、休業中の“お多福”へ行きます。
龍馬を殺したのは、新選組だと誤解しているおりょう。
それで仇を討とうと、近藤を襲ったのですね。
「龍馬はんは、一体何をしようとしてたん?」
「日本を変えようとしていた。」
「そんな大それたことするから、殺されてしまうんや。日本なんて、変えんでも良かったんや。うちは、
 うちは、龍馬はんに傍にいて欲しかったんよ、もっと。」
残された者の正直な思いは、そうだろうなぁ。
大きな志に殉じた龍馬を誇りに思えという近藤の言葉は、おりょうちゃんにとっては酷過ぎる。
「なぁ、うちはこれからどないしたらええのん? うちは、ひとりぼっちや。」
「あなたのりょうの字は、坂本龍馬のりょうではないですか。それを忘れてはならない。そして、あなた
 はこれから、坂本龍馬の名に恥じない生き方をしなければならない。それがあなたの努めです。」
「あぁ、えらい事になってしもうた。」
龍馬との出会いを思い出して、涙するおりょうちゃん、笑ってみせる健気さがいじらしい。

縁側に座って、渡っていく雁の群れを見上げる総司。群れからはぐれ、置いてきぼりにされたような気持ちでいるのかしら?(涙)
「ちょっと、買い物行ってきます。」
総司に声をかけて出かけたお孝は、家の周囲を怪しい男たちが見張っているのに気がつきます。
一方、誰もいないはずの家の奥で、物音がしたのに気づく総司。
刀を取って、足音を忍ばせ、押入れの前に立ちます。
さっと戸を開けると、床板が下から外され、中からお孝が出てきました。
「どうしてそこから出てくるんですか?」
驚く総司。
「斎藤さんに言われて、逃げ道を作っといた。」
すごい!偉い!!お孝さん。
「はよ中に入って!表に怪しいやつがおった。」
と説明するお孝さん。
感心したように穴の中を覗き込んでいる総司を、
「はよ、中に入り!」
背中を押して突き落とします。
「んもぅ〜、病人なんだからぁ。」
文句を言う沖田に、お孝は
「堪忍!」
と手を合わせると、急いで戸を閉め、総司の部屋に入りました。
そこへ、どかどかと入ってくる男たち。
抜刀して障子を開け、布団ごと病人を刺そうとした時、布団の中から聞こえてきたのは女の咳。
顔を見合わせて、バッと布団をめくると、そこにはお孝さんが・・・。
「どなたはんどす?」
「どういうことですか。」
「わからん。」
とまどう男たちに、にやりとするお孝さん。(^^)

暗い展開の本編の中で、総司のシーンがどれも息抜きのような、清涼剤のような感じになっていますね。
御陵衛士の生き残りが近藤の休息所にいる沖田を襲ったのは史実ですが、その時沖田を討ち漏らしたのは、隠れていたのではなく、既に沖田が伏見に向かって休息所を出た後だったからでした。
まだここにいるということは、この沖田はいつ、どんなタイミングで伏見に向かうのでしょうね。

伏見街道を、京から伏見奉行所へと戻る近藤たち。近藤は馬上です。
その先の民家の中に潜んでいるのは、御陵衛士の加納と篠原。
「やはりこれでは闇討ちではないか。」
憤慨する加納に、
「構わん。向こうも散々汚い手を使ってきたんだ。」
と返して、篠原はわずかに開けた障子の間から銃を構えます。
加納はやはり納得がいかない様子。いいなぁ、加納さん。

狙われているとは知らない近藤が、島田に話し掛けます。
「そうだ、お前の言うとおりにしたぞ。」
「はい?」
「先程、永井様にお願いして、新遊撃隊の名を返上した。俺たちはこの先も新選組だ。」
近藤の言葉を聞いて、嬉しそうに笑う島田さん。

「来たぞ。」
狙いをさだめる篠原。

響き渡る轟音。馬上で仰け反る近藤。
一瞬自分の身に何が起こったのかわからず、右肩を見ると激しく血が流れ出しています。
激痛に、馬の背に伏せてしまう近藤。
「局長ーー!!」
駆け寄り絶叫する島田。
次回に続く・・・。


その次回予告。
  “第45回「源さん、死す」 ご期待ください。”
「ご期待ください」 なんて言うな〜〜〜!!(叫び)

 

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