大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第41回  観柳斎、転落  

“慶応3年6月、新選組はこれまでの活躍を認められ、徳川家の家臣、いわゆる直参に取り立てられ
 ることになった。会津藩のお預かりとして、いわば臨時雇いにすぎなかった、あいまいな立場から、
 正式に幕府の一員として認められることになったのである。”
近藤と土方は、容保様から内示を受け取りました。
“農民の出でありながら、実力で身分の壁を乗り越えたのである。”
会津藩本陣 金戒光明寺の廊下で、感慨深げに佇む二人。

「近藤先生、直参だってさ。」
「ああ。」
「とうとうここまで辿り着いたな。」
「ああ。」
「これで俺たちも、とうとう名実ともに武士になった。」

良かったね〜。頑張ったね〜。本当に嬉しいよ〜〜!!
私も感動に咽び泣こうとしたら、

「トシっ!」
「かっちゃん!」
ひしっ!!

ぶっはぁ〜〜!!
噴き出しそうになったよ。(爆)
あぁ、でも良かったよね〜。そりゃ、抱き合って喜びたくもなるよね〜。
と、うるうるしそうになったら、通行人に気がついた近藤さんが、土方さんを引っぺがした。
あまりにも勢いよく離されて、思わずのけぞってる土方さん。(笑)
さらに照れ隠しに、乱れてもいない髪を撫で付けてるし・・・。
むふふ。でも、ちょっと色っぽくてよいわ〜(*^o^*) とか頬染めてたら、

「かっちゃん!!」
「トシっ!!」
がばっ!!!

さらに抱き合いますか。(^^;;;
なんかこの大柄な二人だと、熱い抱擁っていうより、ダイナミックな抱擁って感じだな。(爆)
でも、多摩の頃の二人を思い出しますね〜。無邪気にバカやってたあの頃・・・。
新選組も大きくなって、とうとう武士になれたけど、二人の本質は昔と全然変わってないのかもなぁ
なんて思えて、嬉しかったり・・・。けれど、この先の展開を思うと、胸が痛かったり・・・。

“6月23日、正式に新選組の直参取り立てが通達された。しかしその中に、軍師として近藤勇を支え
 てきた、武田観柳斎の名前を見つけることはできない。”


そして本編は、幕臣取り立ての内示について、幹部会議で発表されるところから始まります。
 局長近藤     見廻組組頭格
 副長土方     見廻組肝煎格
 兵学師範武田  見廻組肝煎格
 副長助勤6名   見廻組格
尾形の読み上げるこの内示に、表情を硬くする副長助勤の皆さん。(^^;;;

庭では、源さんと周平が、木刀を振って稽古をしています。
なんだか父子みたい。(ほのぼの)
部屋では、隊服を繕っている島田さん。大きな体でちまちまやってるのが可愛い。(*^^*)
島田さん、どうして幹部に上がってこないのか不思議だったけど、上に立つのは苦手だからって土方さんにお断りしてたのね?
「新選組に入れただけでも嬉しいんだから、それ以上は何も望まねぇんだ。こいつが着られれば、そ
 れで満足なんだ。」
隊服を見て嬉しそうに笑う島田さん、本当になんていい人なんだ〜〜。(感動)
源さんと周平も、そんな島田さんを温かく見つめています。

「いい機会だと思うんだ、トシ。ご直参となった以上、新選組の命はもう俺たちのものではない。将軍
 様のものだ。」
「法度のことか。」
「今まで何人死んだ?」
「無駄に死んだ奴はいない。」
「河合もそう言えるのか?」
「俺は間違ったことはしてねぇ。」

あぁ、局長。そんなに土方さんを責めないでやってください。(T_T)
何も好きで隊士たちを切腹させてきた訳じゃない。
ただ、近藤さんを世に出すため、新選組を大きくするためにはこれしかないと、あまりにも強く思い、あまりにも不器用に徹底させてきただけなんです。(涙)

「ああ。お前はもちろん正しかった。しかし、もういいだろう。俺たちのような多摩の百姓が京に上って
 世に出るためには、自らを律することが第一だった。烏合の衆を京で一番にするためには、厳しい
 掟がなくてはならなかった。俺たちはだからこそ、法度を定めた。そして武士になり、新選組は一番
 になった。」
「・・・・・。」
「なぁ、トシ。これからは将軍様からお預かりしている隊士の命を、将軍様のために生かしていこう。
 法度も大事だ。しかし、命を奪うのはもういい。今ならきっと山南さんも同意してくれると思う。」

そうか。近藤さんは一応、土方さんのやってきたことは必要だったと、認めてくれてはいるんだ。その上で、これから方針を変えようと言っているんだ。土方さんが、山南さんを切腹させたことに縛られて、苦しんでいたのもわかってくれている。(ほっ)
けれど、土方さんの気持ちは複雑だろうなぁ。
今までどれだけ悩んで苦しんで、葛山を、山南を、河合を、切腹させてきたことか・・・。
それをこれからは許すという。
では、今までのあの胸が潰れそうな思いはなんだったのか? 彼らの死はなんだったのか?
近藤の理屈は理解できても、感情はなかなか納得できなさそうな気がする。
でも・・・。

「決めたんだろう?局長は。」
「ああ。」
「じゃぁ、副長はそれに従うまでだ。」
「・・・すまんな。我が侭な局長で。」
「今に始まったことじゃないだろう。」
なんか、久しぶりに二人の絆を見せてもらったような気がします。土方の気持ちをしっかり受け止めてやった上で、でもこうしたい、こうあるべきだと意見を言う、優しい近藤。近藤のためなら、自分の
感情も感傷もすべてを捨てようとする、いじらしいまでの土方。二人の表情の中に強い信頼関係が
窺えて、すごく良いシーンでした。

「ねぇねぇ、大変です。みんな怒ってますよ。」
沖田が飛び込んできてご注進。
何かと思えば、観柳斎の処遇が他の副長助勤より上なことに納得がいかないらしい。
「誰が決めたんだ?!また、土方さんじゃないのか?」
おいおい、永倉さん。まだ土方を疑うか・・・。(苦笑)
 近藤「土方くんはこの度のご沙汰については、何の関わりもない。説明してやってくれ、尾形。」
尾形の説明によれば、今回事前に会津藩に言われて、隊の編成を書き付けたものを提出したとの
こと。その書き付けには、武田は“副長助勤かつ兵学師範”とあったから、お上もその点を考慮したのではないかと。
 土方「これでわかったか。」
 永倉「わかったが納得できん!」
いや、もう、新八さん、真っ直ぐで真っ直ぐで・・・。(笑)
 原田「武田の野郎が今まで何やってきたって言うんだよ。河合が死んだのも、あいつのせいじゃ
  ねぇかよ。みんな知ってんだぞ。」
思わず顔を見合わせる、近藤と土方。

近藤と土方は観柳斎を呼び出し、その昇進に隊士たちから文句が出ていることを伝えます。
憤慨する観柳斎。まぁ、このご沙汰だけに関していえば、彼はやましいことはこれっぽっちもしてない訳で・・・。彼は彼なりに頑張って、その結果を認められたと喜んでいたところに、水を差された訳だから、まぁ、気持ちはわからないでもないですけど。それでもなぁ・・・。(^^;;;
 土方「日頃の行いが悪いから、こういうことになるんだ。どうだろう?武田くん。この際、沖田たちと
  同じ、見廻組格で納得してはもらえないか?」
 近藤「これ以上、あなたへの当たりが強くなるのを防ぐためだ。」
土方のみならず、近藤からも諭され、
「よくわかりました。こんな屈辱は初めてだ!ならばいっそのこと私は、直参にならずとも結構でござ
 います!」
キレる観柳斎。悔しさに目に涙さえ滲ませ、
「武田観柳斎にも意地がございます。そこまで言われたからには、一切を返上させていただく!!」
言い捨てて立ち去ります。
傍に控えている総司。柱に背中をもたせかけて、なんか本当に具合悪そう。大丈夫かぁ?

よほど悔しかったのでしょう。自室に戻った観柳斎は、鉢金を扇子で引っ叩いて荒れています。
そこへ4人の隊士たちがやってきました。茨木司、富川十郎、佐野七五三之助、中村五郎。
彼らは、観柳斎が直参取り立てを辞退したと聞いて、「自分たちは尊皇攘夷の志を遂げるために、脱藩して新選組に入隊した。今ここで幕府のお召抱えになれば、先の主に対して面目が立たない。このままでは新選組にはいられない。」と、相談に来たのでした。
「ならば、良い考えがある。伊東先生のところへ行くがよい。私が間を取り持ってやろう。」
と請合う観柳斎。お〜い、それはまずいだろ〜〜。(^^;;;
「それでは脱走ということになるのでは?」
と心配する茨木に、観柳斎は
「近藤局長宛に、正式に御陵衛士に加わるという文を書きなさい。そうすれば、脱走ではなく、脱退と
 いう事になる。」
とアドバイスします。
「案ずるな。私に任しておきなさい。」
この時観柳斎は、純粋に一肌脱ごうと思っただけなのでしょうね。土方と加納が「今後、隊士の移動を禁じる」という取り決めを交わしていることなど、露ほども知らずに・・・。

確かに直参取り立てについては、入隊前の身分によって受け止め方もそれぞれだったことでしょう。近藤・土方のように武士でなかった者たちには、感慨も一入だったと思いますが、もともと武士だった者にとっては、特に騒ぎ立てるほどのことでもなかったかもしれないし、あるいは茨木たちのように、複雑な思いを抱く者も多かったかもしれません。
ちなみにこの4人は、伊東甲子太郎に心酔する、勤皇思想を持つ者たちだったといいます。(伊東がスパイとして、新選組に残しておいたという説もある。) 新選組がどんどん佐幕化して、自分たちも幕府に取り込まれていくことに、危機感を持ったということも考えられますね。

茨木たちの残して行った書状を読む近藤。書状の中で茨木たちは、近藤は出世のために新選組を利用していると糾弾しています。
「人をまとめていくというのは、難しいものだな、トシ。」
しかし近藤も土方も、彼らをどうしたらいいか、良い策が思い付かない様子です。

一方御陵衛士の屯所では、訪れた武田と4人の隊士たちを、伊東が追い返すように命じていました。
「その者たちを引き入れる訳には行かん。今は新選組との関係を悪くしたくない。」
4人の身を案じる平助にも、「我らとは、係わりの無い事。」 と冷たく返します。
新選組との取り決めがある以上、伊東が突き放すのは尤もなのですが、それに対し憤慨の表情を
ちらりと見せた平助は、もしかすると近藤のことを思い出したのでしょうか。近藤だったら、たとえ自分たちが責められることになろうとも、ここで彼らを見捨てることはしないだろうと・・・。

別室で、武田は加納から取り決めのことを聞かされます。
「彼らを引き入れれば、我らも責めを負うのです。申し訳ない。」
加納に頭を下げられて、万策尽きた観柳斎。茨木たちを残して帰ってしまいます。
あ〜、それじゃまた、河合の時と同じじゃないか〜。(焦)
夕餉の支度で大根の皮を剥いているのかと思ったら、木彫りをしている斎藤さんの手でした。(笑)
つぶらな瞳で(爆)、去っていく観柳斎を見送る斎藤さんです。

その後、観柳斎に置いてきぼりにされた茨木たちを見つけて、驚く平助。
そして、自分たちが見捨てられたことを知って、慌てる茨木たち。

「斎藤さんからの知らせによれば、どうやら御陵衛士のところへ行くように勧めたのは、武田さんの
 ようです。」
山崎の報告を受けた近藤は、茨木たちの書状を破り捨てると、
「戻ってくれば、水に流す。」
と処分を決めました。それに対し、
「奴ら、隊を抜けようとしたんですよ。まとめて斬っちゃえばいいじゃないですか。」
異を唱えたのは、最近すっかりダークな総司。今や、危険さでは土方以上かもしれません。(苦笑) けれどそれも、死を突きつけられて生きるがゆえの厳しさなのだと思うと、哀れを感じずにはいられませんね。(涙)
「あいつらは、己の筋を通そうとしただけに過ぎない。」
取り合わない近藤。
憤る総司は、
「土方さん、いいんですか。」
と土方に訴えます。
土方もやはり思うところはあるようだけど、口には出しません。「局長に従う」と約束してしまったからね。それでも気持ちが揺れているのは表情に出ていて、なんだか見ていて切ないです。
近藤の気持ちを確認するように、見上げる土方。見下ろす近藤の、強い意志のこもった眼差し。
そこへ、尾形がやってきました。
「会津藩広沢様より火急の知らせです。茨木たちが守護職屋敷に参っており、すぐに引き取りに来いとのことです。」

会津様、金戒光明寺から京都守護職屋敷に移られたようですね。
その一室に控えている茨木たち4人。
「文を残してきたのがまずかった。俺たちは、脱走者だ。戻れば、切腹だ!」
茨木の言葉に頷く3人。夕暮れ迫る中、追い詰められている彼らの心境が、手に取るようです。
まずいよ、まずいよ〜。近藤さん、急いで〜〜!!

「新選組を脱して御陵衛士に加わることを、許してほしいと訴えてきた。そういうことを我らに言われ
 ても困る。」
守護職屋敷に駆けつけた近藤と尾形に、広沢様が訴えています。
「奥の間で待たせてある。早く連れて帰ってくれ。」
しかし、事態は最悪の結果に・・・。茨木たちは近藤の到着を待たずに、切腹してしまったのでした。
その惨状に、
「なんてことを・・・。」
やりきれない表情で呟く広沢様。
近藤は思わずしゃがみ込み、悔し涙を堪えるしかありません。

何食わぬ顔で屯所に戻ってきていた観柳斎は、土方からすれ違い様、
「茨木たちは腹を切ったそうだ。」
と教えられます。呆然と立ち尽くす観柳斎。
恐いよな〜。鬼副長にこんな耳打ちするように告げられたら・・・。
さらに気づけば、大石鍬次郎ら隊士たちが、周囲を取り囲むようにして観柳斎を見つめています。
自分を責める、いくつもの眼差し。
夜の屯所のほの暗い灯りと、BGMの効果もあって、なにかすごく恐怖を感じる画でした。
観柳斎、もはや新選組に居場所はありません。

それから数日が経って・・・。
一番隊に追われる坂本龍馬。しかし、沖田たちは坂本を見失ってしまいます。
かわりに見つけたのは、莚を被って野宿している観柳斎でした。
総司を見て、慌てて逃げていく観柳斎。

総司は早速、近藤と土方に報告します。
「あの胡散臭い顔は間違いないですよ。」
総司の言い方。(笑)
隊士たちが庭で稽古しているのを眺めながらの、スリーショットがいい感じ♪
「すぐに連れ戻せ。」
近藤の指示に、頷いて立ち去る土方と総司。呼吸がぴったりで嬉しいなぁ。

逃げた観柳斎が、ねぐらに戻ってきました。誰かに待ち伏せされてるんじゃないかと、へっぴり腰で
中を窺いながら入ってくる様子が可笑しい。
ほっとして座り込む。手に取ったのは、例の西洋軍学の本。大切に持って来ていたんだね。
悔しそうな顔で思い出しているのは・・・。

「またあなたか・・・。」
伊東先生の美声が呆れています。綺麗なお顔が溜め息一つ。(爆)
「ぜひとも御陵衛士に加えていただきたい。」
執拗に頼み込む観柳斎に、
「この話はこれまで。」
出た!伊東先生の決め台詞。
それでもなお、
「お待ちください!お待ちください。お待ちください、伊東先生。」
と、慌てて風呂敷包みの中から取り出したのは、あの西洋軍学の本でした。
「京ではまず手に入らない代物です。西洋の軍隊の戦法から武器の種類、調練の方法まで、ありと
 あらゆるものが載っております。本屋の話では、加納くんもこれを狙っていたとか。まあ、それも
 むべなるかな。西洋軍学を学ぶ者なら、是が非でも欲しいはず。手みやげ代わりに持参致しまし
 た。」
とうとうと語る観柳斎ですが、伊東先生はその本を一瞥したきり、表情さえ変えません。
そして伊東が傍らの書物の中から取り出し、観柳斎の本の横に並べて置いたのは、まったく同じ本でした。
「君に先に買われたので、方々探しました。手間を掛けさせてくれたな。お引き取りを。」
観柳斎は引き下がるしかありません。哀れ。

どこぞの花街。店から出て来たどこぞの若旦那・・・と思ったら、山崎さんじゃないですか!いや〜、
なかなかお似合いですなぁ。お店を出るなり、視線が厳しくなるところが上手いです、吉弥さん。
その山崎が近くの飲み屋に飛び込むと、そこには永倉・原田・島田・源さん・周平が・・・。
 山崎「あの店やないみたいです。」
 島田「こうなったら、一軒一軒あたるしかないかな。」
誰かを探索中の模様。

坂本龍馬が宿に戻ってきました。部屋に灯りがついていることに気が付き、警戒して中の様子を窺う坂本さん。背後の気配に振り向くと・・・、斎藤さんじゃないですか〜。軽く笑みを浮かべたお顔が素敵です。龍馬に銃を向けられても動じず、
「伊東先生がお待ちです。」
先生の影響でしょうか、なんかやたらソフトな美声なんですけど〜。(爆)
斎藤が障子を静かに開けると、中には伊東先生と平助が。

見廻組屯所では、捨助が西瓜に齧り付いています。そこへやってきた佐々木様、
「坂本龍馬の動きが知りたい。坂本に近づき、逐一私に報告しろ。」
と捨助に指示。今夜の佐々木様、ちょっと恐いです。
「承知!」
喜び勇んで飛び出して行ったはいいけれど、捨助、西瓜置きっぱなしにするなよ〜〜。(苦笑)

こちら、花街を探索中の新選組幹部たち。
 原田「いたか?」
 島田「いたいた。」
 永倉「間違いないか?」
 島田「間違いない。」
探し当てた模様です。
「踏み込みますか?」
島田に訊かれて、
「いや、俺に策がある。」
と、なにか企んでいる新八さん。

さて、坂本の宿屋では・・・。
外の様子を窺っていた斎藤さんが、障子をそっと閉めて、伊東の背後に座り込みます。御陵衛士に加わって、雰囲気がなんとなく洗練されてきた印象なんですけど、この座り方は変わらないみたい。
坂本は伊東を警戒しているのか、まだ立ったままです。
「殺そうと思えば、宿の前で襲うこともできました。こうして膝を交えていることが、あなたの味方であ
 る、なによりの証拠です。」
微笑を湛えつつ優しく説かれて、ようやく警戒を解き、座り込む坂本。
「坂本先生。私の思いは、帝を中心に新しい世を作ること。我らの手で、世界に拮抗しうる強い国を
 作る。機運は高まっております。立ち上がるなら、今しかない。」
伊東先生、いきなり熱く語り出しました。坂本さんの方は、軽く頷きながら伊東の話を聞いています。
「わしは、長崎で海援隊を作った。メリケンで言うところのカンパニーじゃき。」
「カンパニー?」
さすがの伊東先生も、不思議そうに問い返します
「それで商売をするがじゃ。金の事やったら話は聞く。けんど、難しい話はもう嫌じゃき。」
坂本さん、上手くはぐらかしましたね。
思わず微笑を浮かべて、
「食えないお人だ。」
と返す伊東先生。

これからまた出かけると立ち上がる坂本に、伊東は平助を護衛にと差し出します。
「まだ若いですが、北辰一刀流と天然理心流を極めた、腕の立つ男です。お側に置いておけば、きっ
 と役に立ちます。」
うわ〜。伊東先生、ずいぶん平助に対する評価を変えたな〜。で、平助自身も、新選組にいた頃よりぐんと落ち着いて、一回りも二回りも大きくなったように見える。あの時、総司に背中を押してもらって良かったね。
「平助。」
「はっ。」
「しっかりと坂本先生をお守りしろ。」
「かしこまりました。」
伊東先生からご指名でこんな重要な任務を与えられて、平助は嬉しいでしょうね〜。
平助を守れなくなった斎藤さんは、困っているようだけど・・・。
そして、無理矢理護衛を付けられた坂本さんも、ちょっと困惑気味だけど・・・。

薩摩藩邸を訪れた坂本・・・ではなく、あんたかい!>観柳斎
「拙者、長年に渡り、新選組の軍師として、近藤君を支えて参りました。是非とも、薩摩の陣営に加え
 て頂きたい。戦に勝つためには、敵の兵法を知ることが大事。拙者、甲州流軍学を極め、昨今は
 幕府のフランス軍制の採用に伴い、西洋の軍学も一通り学んでおります。新選組、そして幕府の
 戦い方は熟知しておるつもり。」
観柳斎、西洋軍学の本を抱えて、今度は薩摩へ売り込みですか。
思想で動く武士が多かったであろうこの時代に、とにかく自分を高く買ってくれるところを求める観柳斎の行動は面白い。
しかし、西郷は観柳斎の言葉を遮って、
「幕府も新選組も敵ではなか。薩摩の敵は、異国でごわす。お帰りを。」
観柳斎を相手にもしません。
しかし、ふと思いついたのでしょう。
立ち去ろうとした観柳斎に、
「会津の軍事について知りたか。もし薩摩と戦をする事になった時、どこにどげん陣を敷くか、新選組
 にはお達しがいっちょうはずじゃ。」
と西郷は話かけます。
「屯所に行けばある。」
思わず答えてしまう観柳斎。
「そいを持ってきてもらいもんそか。そげんしたら、おはんを薩摩が面倒を見る。約束しもす。」
あ〜、なんて腹黒い西郷さん。
動揺している観柳斎、果たしてこの誘いに乗ってしまうのでしょうか。

そして今度こそ、坂本と中岡の待つ部屋に、西郷と大久保が入ってきました。
 坂本「いったい薩摩は、幕府をどうするつもりぜよ。」
 西郷「幕府をなくそうち、思うちょりもす。」
 中岡「徳川を滅ぼすと。」
 西郷「はい。」
大久保「そん為には、戦しかなかち、薩摩は考え申す。」
いよいよ薩摩は、倒幕を明確に打ち出してきましたね。
それに対し坂本は、
 坂本「戦は止めようぜよ。相手は腐っても幕府じゃき。フランス仕込みの陸軍と、日本一の海軍を
  持っちゅうき。たとえ勝ったとしても、沢山の人間が死ぬき。戦が長引いたら、喜ぶがは、フランス
  やエゲレスじゃき。」
と反対します。そして、
 坂本「徳川の世から新しい世へ、時代を動かす方法があるがじゃき。戦抜きでにゃ。徳川慶喜に政
  権を返上させるき。つまり、幕府の政を、これで終いにするがじゃ。」
と大政奉還を説きますが、大久保は有り得ないと真っ向から否定します。
 坂本「ほんで帝を中心として、力のある藩が結集して、新しい政府を作るがじゃ。王政復古じゃき。」
大久保「そげなこと、徳川が納得するはずがなか。」
 坂本「それを納得させるがじゃ。引き替えに、新しい政府に徳川を入れるがぜよ。それが、土佐の
  考えじゃき。」
坂本の言葉を黙って聞いていた西郷は、政権返上のこと、もう一度考えてみると約束します。
 坂本「頼むぜよ。」
 中岡「後藤先生たちが、吉田屋でお待ちですき。」
西郷に託して、坂本と中岡は部屋を出ます。

中岡は廊下を歩きながら、会談の結果に、
「これで戦も避けられるかも知れんぜよ。」
と喜びを隠しませんが、坂本はそんな中岡を、
「いや、おまんはまだあの男の怖さを知らんき。」
とたしなめ、厳しい表情で歩いていきます。

そしてその頃、西郷と大久保は、
 西郷「大久保どん、こん話は、渡りに船じゃ。」
大久保「戦をやめるつもりな?」
 西郷「逆じゃ、逆。慶喜が政権をそげん簡単に返すはずがなか。じゃっどん、やつが王政復古を
  拒めば、戦を仕掛ける大義名分が立つ。そんためにも、慶喜にどげんしてん受け入れさしたら
  いかん。」
やっぱり、西郷は限りなく腹黒かった・・・。(^^;;; さらに、
 西郷「そいにしても、あん男(坂本龍馬)、だんだんと目障りになってきたなあ。よか気風の男じゃっ
  とん、もったいなか。」
って、やっぱりあなたが黒幕なのですか?>西郷さん

再びねぐらに戻ってきた観柳斎。
「よう。」
と声をかけられて驚いて振り向くと、土方と沖田が立っていました。
「元気か。」
土方に訊かれて、
「はい。」
と力なく答える観柳斎は、まるで蛇に見込まれた蛙のよう。
まさに、鬼が出た!!というところでしょうか。(苦笑)

土方と沖田に連れられて、観柳斎は屯所に戻りました。
廊下を歩いている途中、大石たちに石をぶつけられる観柳斎。鍬次郎、ほんとガキ!!(苦笑)
近藤の前に放心したように座る観柳斎でしたが、
「なぜすぐに、京を離れなかった。」
と土方に訊かれて、
「私には、私の志というものがある。剣の腕がものを言う世の中で、才覚だけで世の中を渡り歩き、
 いずれは天下を動かしてみせる、それまでは決して国元には帰らぬと心に決めたのだ。」
と観柳斎は力強く答えます。
 近藤「しかし、あなたのために多くの隊士が命を失った。」
 武田「私のせいだけではない。」
 近藤「言い切れるのか。」
 武田「もちろん。」
強気に答えていた観柳斎が、
 近藤「そう思っているなら、なぜ逃げた。」
と問われて、言葉に詰まる。そして、
 近藤「全てはあなたの心の弱さから生まれたこと。身を守ることだけを考え、嘘をつき、周りを振り
  回す。」
ずばり自分の欠点を指摘されて、
 武田「これは何ですか、この期に及んで説教ですか。早く切腹をお申し付け下さい。とうに覚悟は
  できております。」
開き直る観柳斎。

「死んでいく者には、説教などせん!」
近藤の言葉に、観柳斎がはっとする。
総司が不審そうに近藤を見つめ、土方は眉を寄せて目を伏せる。
「死をもって償うことだけが、武士道ではない。生きる事もまた、償いである。そうやすやすとは死な
 せん。」
観柳斎の目を睨みつけたまま、立ち上がり、その前へ行き、座り込んで、さらにその瞳の奥まで睨みつける。近藤の目ヂカラと、お腹の底に響いてくる言葉に、痺れました。
観柳斎が感動して、目に涙を溜めています。
「近藤先生・・・。」
信じられないと言わんばかりに、呆然と近藤を見つめる総司。
「それだけこいつが犯した罪は、重かったってことだ。」
土方が総司に説明する。
「ちょっと待って下さい。」
混乱している総司。
「生き続けよ。生きて誠の武士となれ。」
観柳斎に説き続ける近藤に、
「何言ってるんですか。法度を破ったんですよ。」
立ち上がって抗議する総司。
「総司。俺たちは、先に進まなきゃならねえんだ。」
総司に言い聞かせる言葉は、そのまま土方自身に言い聞かせている言葉だ。
「今まで死んでった奴らはどうなるんですか。山南さんは?!河合さんは?!」
総司は目を潤ませて、叫び続ける。だって今まで、総司が好きな人たちはみんな、総司の刀で粛清されていったのだから。ここで観柳斎を許すなら、なぜあの人たちは死んでいかなければならなかったのか。なぜ自分の刀にかけねばならなかったのか。

しかし、近藤は総司の叫びには耳も貸さない。
「そのかわりに言っておく。今後、軍師としては扱わない。一隊士としてやり直すのだ。そして、二度と
 隊を脱する事は許さん。」
「ありがとうございます。」
近藤の言葉に感動し、震えながら答える観柳斎。
「もう一度、這い上がってこい!武田観柳斎!!」
「ありがとう、ございます。」
感極まってついには泣き出してしまった観柳斎を、総司は憤慨した面持ちで見下ろしています。
河合を見殺しにしたこの男を、なぜ許さなければならないのか。脱走したこの男を、なぜ許さなければならないのか。
そして、観柳斎を苦悩の表情で見ていた土方も、ついには目を閉じてしまいます。
罪を犯した者を許すこともまた、土方にとっては苦痛でしょう。誰かを許すたびに、法度に照らして処断した者たちの死が、彼の胸を抉るでしょう。

納得できない総司は、憤然として部屋を出ていきます。
「とりあえず今夜は、風呂に入り、腹いっぱい飯を食え。」
涙でぐしょぐしょの観柳斎に、鬼副長が思いがけず優しい言葉をかけます。たぶん土方も、観柳斎という男の哀れさ悲しさがわかっているのでしょうね。しかし、
「あの、ひとつだけお願いが。一隊士としてやっていくのは構いません。しかし、大部屋だけは勘弁し
 ていただきたい。」
との武田の言葉に、
「甘えるな!」
と怒鳴りつけます。
けれど、武田には理由があったのでした。
「私、隊士にいたく評判が悪いもので、何をされるか判ったものではない。」
武田に必死に懇願され、困ったように近藤を見上げる土方。近藤は頷いて了承してやります。

久しぶりに、それぞれの滾る思いが激しくぶつかり合うシーンでしたね。
この大河、三谷さんの脚本も人の思いというものがすごく丁寧に書かれていて、さらに役者の皆さんがさまざまな感情や思いを演じるのがすごくお上手だから、こういうシーンは本当に見応えがあって大好きです。かと思うと、コミカルなシーンが面白かったりして、ほんと飽きないドラマだわ。(*^^*)

「とりあえず風呂に入り、腹いっぱい飯を食え」と、鬼副長に温情をかけられた観柳斎。山盛りのご飯をがっついています。
ふと思い出したように、給仕をしてくれていた房吉に、頼みごとをする観柳斎。
そしてその夜・・・。
皆が寝静まった頃、観柳斎は屯所を抜け出します。手には何か、風呂敷包み。
まさか、まさか薩摩藩邸に行くんじゃないよね?
見咎めた総司が後をつけています。冷たく鋭い視線がすごくいいです。>藤原くん

「何をやってるんですか?」
立ち止まったところに、総司が声をかけます。
驚いて振り返る観柳斎。
総司が抜き打ちで風呂敷包みを斬ると、中から転がり出たのは竹の皮に包まれた握り飯やら野菜でした。
「人には言わんでくれ。頼む。」
懇願する観柳斎。
「誰に食わせるつもりだったんですか。」
そこは、なんと河合の墓前だったのでした。
なんとも言えぬ表情で、墓石を、そして観柳斎を見る総司。
あぁ〜、それはないだろ〜〜。>三谷さん これじゃぁ、観柳斎を憎めないじゃないか。(涙)
「さすが金持ちの息子だよな。こんな立派な墓建ててもらってな。」
きっと、河合に申し訳ないと詫びる気持ちでいっぱいのはずなのに、こんな言い方しかできない観柳斎が愛しくさえ感じられてきます。
持って来たお供えをあげる観柳斎に、
 沖田「いつもお参りされてたんですか。」
 武田「いつもではない。」
 沖田「なんで、こんな夜中に?」
 武田「人に見られたくないからだろう。私の柄に合わないし。内緒だぞ。」
 沖田「はい。」
観柳斎の思いがけない一面を見せられて、刀を納め、ため息をつく総司。
総司はこの時初めて、観柳斎を許した近藤の思いが理解できたでしょうね。
 沖田「薩摩藩邸から、あなたが出てくるのを見たものがいます。裏で薩摩と繋がっているという噂
  は、本当ですか。」
 武田「軍師として雇ってもらうつもりだった。その代わり、会津藩の内情を知らせろと言われた。しか
  し、私は、そこまで屑じゃない。」
まさか正直に話すとは思わなかった。
近藤に叱責されて、観柳斎はきっと変わったのですね。今までの彼だったら、保身のために絶対ごまかしていたでしょうに。
観柳斎にぶつけるはずだった思いの持って行き場をなくして、うろうろもじもじしていた総司。
「火の始末、忘れないように。」
ようやく見つけた言葉をかけて、その場を後にします。

観柳斎は河合の墓に線香をあげ、静かに手を合わせます。
その時、背後に振りかざされる白刃が・・・!!
斬りつけたのは、大石鍬次郎たちでした。
背中を斬られながらも、観柳斎は刀を抜き、鍬次郎たちに向かっていきます。
「ここでは死ねん。近藤局長からいただいた命。ここでは、死ねん!」

屯所の廊下を慌てたように走ってくる総司。
その部屋には、誠の旗の前に観柳斎が寝かされていました。
総司は呆然と立ち尽くします。
観柳斎の顔に白布をかけてやる近藤。
枕元には割れた眼鏡。
土方が近藤に背を向けたまま、
「そいつが自ら撒いた種だ。しょうがねえよ。」
と声をかけます。少しでも近藤の気持ちが軽くなるように・・・。
「もう、ここまでにしよう。」
改めて心に誓う近藤。
土方も黙って頷きます。
総司も辛そうな表情。
生まれ変わって、一からやり直すはずだった観柳斎。せっかく心を入れ替え、考えを改めたというのに、突然襲った悲劇。自業自得といえばそれまでだけど、やはり哀れに思わずにはいられません。
「ここまでに...。」
近藤の声が悲しく響きます。

翌朝。
源さんたちに呼ばれた近藤。
永倉・原田たちがさんざんもったいぶって、近藤に見せたものとは・・・。
お幸の妹、お孝でした。
驚き呆然としている近藤に、
「なあ、ちょっと。これどういうこと?はよ帰して。仕事あんねんから。誰や、あんた。」
お孝さんは、お姉さんとはずいぶん性格が違うみたいですね。(笑)
呆気に取られて、お口ぽかん状態の近藤さんが可愛い。
しかし、あんたら、さんざんに探索してたのはこの娘かいっ!!
ったく、坂本龍馬でも見つけてこいや〜〜!!
(実は、彼らも龍馬を探しているものだとばかり、すっかり三谷さんに騙されて、ちょっと悔しいらし
 い。笑)


さて、先週からまた近藤が変わってきている訳ですが、その変化は、彼がまた一つ成長したことを表わしているのでしょうか。
先週、そして今週の前半を見ているうちは、近藤が芹沢暗殺以前の優しいだけの人に戻ってしまったような気がして、すごく苛々していたのですけれど、観柳斎に覚醒を促すシーンを見ながら、これは後退ではなくて成長なのだと気が付きました。
つまり、今までのように新選組を厳しい規律でまとめていくのではなく、これからは情でまとめていこうとしている。無益な争いを避け、お互いに生き残る道を探している。

その変化のきっかけの一つになったのは、お幸さんの死であるような気がします。
大切な人を亡くしてしまって、もうこれ以上、誰かの死を見たくない。ましてや、自分の手で死なせるようなことはしたくない・・・と、そう思うようになったのでしょうか。
近藤はもともと、優しい青年でしたものね。目的のために頑張って鬼になってはみたけれど、それはとんでもなく辛いことで、大切な人を失った時、限界が来てしまった。だから、切腹や粛清といった、命を奪う処罰はやめよう。相手の考えを生かし、命を生かしていこうと思うようになった。

もう一つのきっかけは、近藤自身が言っているように直参取り立てかと思います。先日の広島出張で、成果は上がらなかったかもしれないけれど、政治というものの現場を見てきた近藤は、京の特殊警察隊の隊長としてだけではなく、もっと大きな形で幕府の役に立ちたいと考えるようになってきていたのではないでしょうか。そこへ内示のあった直参への取り立て。自分も新選組も、もっと大きな器となり、高いところを目指さなければいけないと思うようになったのかもしれません。
これは、とても大きな成長ですよね。

ただ残念なことには、近藤自身が遂げた成長に周囲がすぐについてこられるかと言ったら、これは急には無理な話で、それが悲しい事件となってしまったのが今回の観柳斎の死だと思います。脱走した観柳斎を復帰させたことは、近藤にとっては新しい一歩だったのかもしれませんが、今までの法度が徹底していた隊士たちには納得できない、許せないことだった。だから、仲間による惨殺という最悪の結果を招いたのではないでしょうか。
近藤が自分の考えを周囲に浸透させようとしていないのは、とても気になるところですね。新選組はいまや大きな組織なのですから、“これからはこう変える”“こうしていこう”ということを皆に周知徹底させていかなければ、今後も行き違いは多々起きるのではないかと危惧します。

近藤の成長や新選組の変化が社会に評価されるようになるには、さらに時間がかかることでしょう。でももう、あまり時間は残されていないのです。
これから時代はさらに激流となって、渦を巻いて人々を押し流していきます。高みを目指し、流れの中に飛び込んでいっても翻弄されるだけ。
その中で、近藤や土方はさらに成長していってくれるでしょうか。たとえば、土方は鳥羽伏見の敗戦を通して・・・。そして近藤は、勝沼の敗戦を経験して・・・。

彼らの更なる変化を、最後まで楽しみに見ていきたいと思います。

 

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