大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第40回  平助の旅立ち  

7月26日 「余は決めた。出陣する。この戦、なんとしてでも勝たねばならぬ。」
8月11日 「出陣は止めだ。(長州征伐は)取り止めじゃ。今は国内で日本人同士が戦っている時
        ではない。」
わぁ〜い、“二心様”だ〜。って、喜んでいる場合ではないが・・・。(^^;;;
振り回されている容保公が哀れです。孝明天皇もお怒りの様子だし・・・。
そして、天皇崩御。幕府にとっては、これが痛かったですよね。ずっと公武合体を支持されていた
孝明天皇。薩長が倒幕に傾き始めていたこの時期、毒殺説が出るのも無理ありません。

さて、本編。
孝庵先生が往診して、お幸さんを診てくれています。
「なんで、あんなんなるまで放っておいた? 体、ぼろぼろや。」
誰に対しても容赦ないな。>先生
近藤はショックで言葉も出ません。
帰り際、隣室の総司に気づく先生。
何か言おうとしたところを、(余計なことは言わないで)と総司に首を振られる。
「たまには顔を出せい。」
心配しつつも、総司の意を汲んでくれる先生。優しい。(涙)

先生に「今夜はなるべく傍におってやんなさい」と言われたのに、近藤さんどうして?と思ったら、山崎が妹さんを連れてくるのを待っていたんですね。
結局、妹・お孝だと思われた娘は、人違いでした。優花に少し似てるけど違う、ぴったりの女優さん、上手く見つけてきたな〜。
「お孝は?」と訊ねるお幸に、「妹さんは今こっちに向かっている。」と嘘をつく近藤さん。優しい・・・。
お幸さんは妹のことを託して、息を引き取ります。
「せんせ・・・。おおきに・・・。」
お幸の最期の言葉に、頷く近藤さんの表情・・・。きっと、お幸さんは幸せだったよね?
舞い散る雪がさらに悲しみを誘います。

「新選組を離れる!!」
いよいよ伊東先生が、門人たちの前で宣言しました。
「尊王とは言っても、新選組はあまりにも幕府に寄り過ぎている。私が望むのは、あくまでも朝廷を中
 心とした新しい世である。新選組を離れ、これよりは尊王に身を捧げたいと考える。異存はない
 な。」
愕然としている平助は、このこと初耳だったのでしょうか。
「ありません!」と口々に答える門人たちの中で、一人動揺したまま。

座敷を抜けて、廊下に佇む平助。散らつく雪をぼんやり眺めています。
「平助。」
はっとして振り返ったけれども、加納さんの顔を見てちょっぴり落胆しているのは、きっと平助は、
伊東先生に声をかけてほしかったから・・・。そう、
「お前の立場はよくわかる。辛いとは思うが、これからは伊東先生のために力を尽くしてもらいた
 い。」
この加納さんの言葉こそ、伊東先生の口から聞きたかったのでしょうね。
「もちろんです。」
微笑んでさえみせる平助が健気だ。
それにしても加納さん、頭はいいし、使える男だし、情にも厚く、気配りもできる。いや〜、素敵な方ですね。

屯所で女の子たちと羽根つきをしている島田さん。打ち損ねて、また顔に墨を塗られちゃってます。ほのぼの〜〜♪
そしてそんな様子を、手すりに体を預けてぼんやり眺めている総司。顔色悪いよ〜。ほんとダルそうだし。昔は、為ちゃんと竹とんぼして遊んだりしてたのにね。
「沖田さんも一緒にどうです?」
島田さんに誘われて、総司くん、ようやく笑顔を見せて庭に下りていきます。

近藤がお幸さんの位牌に手を合わせています。そこへ入ってきた土方、近藤が声をかけてくるのを待って、
「伊東さんが仲間を集めて行なっている新年の集い。あれは近藤さんが許したのか?」「永倉も呼ば
 れたらしい。仕事も断りなく休んでる。」
おぉ〜。これはもしや、島原流連のエピソードですか〜?(嬉)
「俺にはただの新年の宴だとは思えねぇんだ。」
厳しい表情で呟く土方さん。

そして、島原の料亭で踊りながら歩いていく芸人さん。あ、やっぱり山崎さんだ〜。
柱の陰に隠れて座敷の様子を窺う時には、すでに監察の顔。素敵です。

で、屯所に戻ってさっそく報告。
 近藤「斎藤もか?」
 山崎「斎藤さんは本日剣術の指南をされるはずやったんですが、こちらも断りなく休んでおられま
  す。」
「伊東一派の集まりにその二人が参加しているというのは、これまた妙〜な話ですな。」
あ、観柳斎だ!
「みんなまとめて切腹だ。」
その、力の抜けた言い方・・・。(笑)>土方さん
 近藤「いや、これには何か訳がありそうな気がする。」
そしてその訳とは・・・。

「そろそろ本心を聞かせてはもらえないか?我々はまだ、ここに呼ばれた本当の訳を伺ってはいな
 い。」
永倉も警戒しているようだが、
「それは、追々。」
伊東先生・・・というか、谷原さん。声の良いのが、ますます怪しさを醸し出しています。(^^)
「俺たちには仕事がある。」
職務に忠実な斎藤さん。
「心配ご無用。近藤さんの了解を得ていると申したではありませんか。」
えーっ、えーっ!!
伊東先生、盃を置くと、最上の笑みを浮かべながら、
「私は新選組を離れるつもりでいます。ついては、両先生も我らとともに来ていただきたい。」
と告げる言葉に、永倉・斎藤は驚きの表情。
「せっかくここまで新選組が力を付けてきたというのに、今の有り様はどうです? 組を守ることばか
 りに気を取られて、汲々として内ばかり見ている。」
うぅぅ、おっしゃる通りです、伊東先生。
「私は近藤さんを離れ、私自身の手で、本来あるべき姿の新選組を作りたい。その上で、近藤くん・
 土方くんを迎え入れたいと、そう思っています。」
伊東先生、あなたが作るものは新選組ではありえないし、近藤・土方を迎え入れる気なんて更々無いでしょうが〜。(苦笑)

「伊東がこのところ、薩摩や公家の連中と会っていることは、山崎の調べでわかっている。奴が何か
 を企んでいることは明らかだ。」
さすが、土方さん、気づいてる。
西本願寺に移ってから、廊下を歩きながら話すシーンが増えたけど、好きだな〜。なんとなく。(笑)
「ちきしょーっ。許せねぇ。なんで俺を誘わねぇんだよ。」
憤る原田を誰も相手にせず。(爆)
「誰かに様子を見に行かせよう。」
との近藤の考えに、
「ここは俺に行かせてくれ。」
と左之助が立候補。
「冗談じゃねぇぞ〜、伊東の野郎。」
大丈夫か?左之助で・・・。(^^;;;

伊東・加納が席を外した宴席で、
「平助はどうするつもりだ?」
と永倉さん。平助の立場を気遣ってあげて、優しいな〜。
「私は伊東道場の人間なので、先生に付いてまいります。」
と平助は答えます。でも、なんとなく浮かない表情。
「伊東さんは、ちゃんとお前のことを認めてくれているのか?昔は名前も覚えてくれてなかった・・・。」
突っ込んだ永倉の言葉に、動揺を見せる平助。心中を言い当てられてしまいました。
これは、平助が試衛館に来ることになった時の話ですね〜。伊東先生から道場を移る許しを得るのに、永倉さんと総司が付いてきてくれたんでしたよね。懐かしいなぁ。
でも、
「伊東先生は、私の勧めで、京へ上る決意をされたんです。」
と、平助は気丈に答えます。自分は先生に信頼を置いてもらっているのだと思える、ただ一つのよすがなんでしょうね。

「悪いが俺は残る。」
と、恩義で動く斎藤さん。
永倉も、
「俺も新選組を離れる気はない。山南さんと約束したんだ。」
山南さんに託されたこと、永倉さんも覚えていてくれたんですね。(嬉)
「俺は伊東さんに、新選組に残るようにお願いしようと思う。近藤さんの傍には、やはり伊東さんのよ
 うに、時勢を正しく見極められる人が必要だ。」
確かにそういう人は必要ですけどね。伊東さんは見極められるだけじゃないから・・・。胡散臭い人だから・・・。(苦笑)

そこへ、様子を見に来た左之助が、バタバタと乱入。座り込むなり、斎藤の膳に手を付けます。
しっかりmy箸持って来てるし。(爆)
「近藤さん、お怒りだよ。」
この言い方。
「いつまで断りもなく休む気かって。鬼の副長もお怒りだぜ。」
バクバク食べながら、この台詞。
「なんで俺を呼んでくれねぇかな。おかしいじゃねぇかよ。永倉・原田っつったらよ、新選組の二本柱
 じゃねぇかよ。」
そうだったんですか?(笑)
「嵌められたな。」
顔色を変える永倉と斎藤。慌てる平助。

斎藤が立ち上がって座敷を出て行こうとしたその時、席を外していた伊東が戻ってきました。あまりに上手いタイミングに、見てる私はゾクゾク来てます。
「お気持ちは固まりましたか?」
睨みつける永倉、そして斎藤。
二人の様子を訝る伊東は、その場に左之助がいることに気が付きます・・・って、やっとかよ!
にやにやしながら食べ物を頬張る左之助に、一瞬固まって、伊東先生溜め息。
でも、すぐに体勢を立て直して、
「つまりは、お二人はもう新選組には戻れぬということです。もはや、我らとともに来てもらう他ない。」
と微笑む伊東先生。
「私が考える新選組には、両先生は欠くことができぬのです。すべてはお二人に、我らのもとに来て
 いただきたいがゆえの策とお考えください。」
声を荒げたところに、伊東の必死さが見て取れる。
「伊東さん、あなたが国を思う気持ちは近藤局長と並ぶと言ってもよい。しかし、近藤さんとあなたは
 大きく違う。あの人はけして策を用いない。それは人を信じているからだ。しかしあなたは、しなくて
 よい策を弄した。それはなにより、あなたが人を信じず、そして己も信じてないからだ。残念ながら、
 私はあなたにこの身を預けることはできん。」
感動!!永倉新八・・・。
いつもは、相手の気持ちの奥まで見えない、真っ直ぐ過ぎる意見に苛立ってしまうのだけど、今日の永倉さんはかっこいい!!近藤と伊東の違いをしっかり見切って、自分の信念を通している。
永倉の言葉に、うんうん頷いている左之助。
「今戻れば、切腹ですよ。」
今度は脅しですか?伊東先生。でも、永倉さんに脅しは効きません。下手すりゃ、逆効果だ。
「ならば、それも運命。」
動じず、肩を並べて出て行こうとする、永倉&斎藤。かっこよすぎ〜。(惚)

すると、
「待たれよ!!」
伊東は脇差を抜いて、自分の首の当てます。
「今、私の真意を近藤くんに知られる訳にはいかない!!そこまでの秘密を打ち明けたのだ。私の
 気持ち、察していただきたい。」
捨て身の説得なのかもしれないが、逆効果ですよね。余裕の無さがそのまま、器の小ささに見えてしまう。
「おやめなさい。」
永倉さんは余裕だ。左之助がにやにやしながら伊東を見ているのがちょっと不気味。(苦笑)
「我らここで聞いた話は、一切漏らさない。約束しよう。」
そう言って、出ていく永倉さん、斎藤さん。
「なんで俺を誘わねぇかなぁ。」
最後に干物にむしゃぶりついて、出ていく左之助。もしかして、様子を見に来たのも、なぜ俺を誘わないって怒ってるのも、すべて食べ物目当てですか?(爆)
残された伊東先生、脇差を納めて酒を煽ります。
やさぐれた色が滲む瞳。唇の端から零れ落ちる、一滴の酒。
「強情な奴らだ。」
悔しさとみじめさをなんとか誤魔化そうとして、吐き捨てた罵りの言葉。
ただでさえ納得せぬまま伊東に付いていかねばならない平助は、自分の師の弱さを見せ付けられてしまって、辛かったでしょうね。

屯所に戻ってきた永倉と斎藤。
「あの男は何を企んでいる?」
土方の問いに、
「それ以上は答えられん。」
と永倉。
斎藤も微かに頷く。
漢だなぁ、二人とも。
「いいか。お前らがしたことはな・・・。」
「トシ、もうそれ以上はいいだろう。」
土方が二人を責めようとしたのを制し、さらに先手を打って、
「しばらくの間、二人には謹慎してもらう。」
処分を言い渡す近藤。
実際には、法度違反で切腹だ!!!と激怒する近藤を、土方が必死に宥めて謹慎処分にしたと言われているんですけど、まぁ、大河のこの近藤さんの描き方では通説どおりにはできないですよね。ドラマのキャラ設定に合わせて、近藤と土方を逆にしたのでしょう。

さて、永倉と斎藤が下がった後、
「しかしこれではっきりしましたね。伊東さんは新選組を割る気だ。」
観柳斎が指摘するも、近藤は、
「それはまだわからん。」
と慎重な姿勢を崩しません。
わからないのかよ〜〜。観柳斎だってわかっているのに・・・。(^^;;;
 土方「どうする?」
 沖田「斬りますか?」
うひょっ、危ない兄弟だ。特に弟の方は、なんだか目が逝っちゃってるし。(苦笑)
長くは生きられないのだという、追い詰められた精神状態が、前回から総司をダークで危険なものにしてますね。
 近藤「あの人は、今の新選組にとっては、なくてはならぬお人だ。」
おいおい、近藤さん。“新選組にとって”じゃないでしょう。“私にとって”でしょう。
伊東の学と弁に惹かれる気持ちが、すっかり目を曇らせているのでしょうね。学のある人に弱いという近藤の欠点が、上手く描写されています。
「芹沢の時もおんなじこと言ってたな。」
と呆れる土方。

「ここは私に任してはいただけないでしょうか。これは言うなれば、試衛館一派と伊東道場一派との
 争いでもある。どちらにも属さないこの私こそが、仲を取り持つに相応しい。」
その分析、微妙にズレてると思うのですが・・・。>観柳斎
「なんとかしましょう。」
と言い切って、「失礼。前を失礼。」と勇んで出て行ってしまいます。(笑)
「妙に気張ってるね。」
「河合の一件ですっかり評判落としやがったから、あいつも必死なんだろう。」
クールな兄弟。
「あれに任せておいて大丈夫なんですか?」
さすがの源さんも心配しています。
首を横に振って、
「だめだろ。」
と、一刀両断の土方。
その間、近藤が何か考えている風なのは、観柳斎に名誉挽回のチャンスを与えてやりたいということでしょうか。
広島で伊東に、「長い目で見てやりましょう。」って言ってましたものね。

さて、見廻組の佐々木様が新年のご挨拶にみえました。
佐々木様と近藤が挨拶している横で、土方が何をちらちら気にしているのかと思ったら、捨助じゃないか〜〜。(@o@)
 近藤「佐々木様。悪いことは言いませぬ。おやめなさい。」
 捨助「言わせておきましょう。」
虎の威を借るなんとやらだ。(苦笑)
「この慶応3年という年は、徳川幕府にとって大きな転機になるやもしれんぞ。」
転機どころではないです、佐々木様〜。(涙) まぁ、今後の展開はネタバレになるので置いといて・・・。
「これからも、見廻組・新選組、ともに力を合わせてご公儀のために働こうぞ。」
佐々木様の後ろで偉そうに頷いてる捨助。それを睨んでる近藤さん。(笑)
「お前はここに残って、竹馬の友と存分に語り合え。」
いいです、佐々木様。そんな奴は連れて帰ってください。by近藤&土方

 近藤「お前は何やってんだ?」
 土方「おいっ、お前、バカだろ!」
可笑しい〜〜。
二人とも、捨助には容赦無いっていうか、多摩の頃と全然変わらないよね?この口調。
特に、片膝立てて毒づいてる土方さん。(爆)
「うるせ〜なぁ〜。」
捨助はさらに変わってない。
「ま、これからも見廻組と新選組、力を合わせてご公儀のために働こうぞ!」
「帰れ!!(ユニゾン)」
近藤&土方、息ピッタリの台詞とリアクション、お見事です〜〜。(パチパチパチ)

そして伊東のところへやってきた観柳斎。
「話の筋が見えないな。どうかお引取りください。」
容赦ないです、伊東先生。(笑)
「あ〜、じゃぁ、話題を変えまして・・・。」
必死に食い下がる観柳斎ですが、さらに墓穴を掘ることに・・・。
「実は私、このところフランス語にえらく興味を持ちましてな。」
と披露するも、
「武田くん、これから世界で最も頻繁に使われる言葉は、メリケン語です。」
確かに・・・。今や、英語が話せなければ何もできないもんな〜。(後悔) さすが、伊東先生は先見の明あり、といったところでしょうか。
でも、観柳斎も頑張って、西洋軍学ばかりでなく語学まで勉強しようとしてるんだよね。そこのところは、買ってあげたいな〜。
「Please.」 
「プリーズ。」
「Please go home.」
「プリーズ ゴー ホーム。」
「どうかお引取り下さいという意味です。」
余裕の笑顔と綺麗な発音の伊東先生。引きつった笑顔で片言に真似て言う観柳斎。勝負になりませんな。もう、観柳斎、見ていられません。
「失礼、しましたっ!」
出口を間違えるお約束まで、していってくれました。(苦笑)
近藤たちはどこまで気づいているのか。もしや永倉たちが喋ったのでは?と疑う門人たちに、
「永倉さんや斎藤さんは、けしてそういうお方ではありません。」
きっぱり宣言する平助。偉いよ〜、偉いよ、平助。
「私が何をなそうとしているかは、土方なら推察できるはず。」
ふっふっふっ、その通り。(嬉)
「ここは、先手を打つ。」
伊東がそう言って、屯所に戻り、局長の許可を得に来たこととは・・・。

「長州の動きを探りたいと思ったのです。これからの新選組は、京の治安を守るだけではなく、もっと
 幅広く働くべきではないでしょうか。」
自信に満ちた余裕の笑顔、やたら響きのいい低音ヴォイス。思わず騙されてしまいそうですが、
「それで? 何が言いたい。」
土方の反応は素っ気ない。前置きなんかいらねぇから、とっとと本題に入らねぇか!ってところでしょうか。(笑)
「しばらくの間、間者として長州に潜入したいと思います。つきましては我ら一党、しばらくの間、新選
 組から離れることをお許しいただきたい。長州には、我らが新選組から離れたと思わせておいた方
 が、なにかとやりやすいので。」
忌々しそうな土方の顔。でも近藤は、
「あなたのお考え、わかりました。それなら仕方がない。」
と了解してしまいます。
呆れた・・・とでも言うように、心の中で溜め息ついてる土方。気を取り直して、
「しかし訳はどうあれ、新選組から抜けることは法度で禁じられている。」
と食い下がります。
「ですから、形だけと申しています。」
「だが、長州はどう見るだろうか?怪しむに決まっている。」
「帝が崩御され、このたび、御陵が造営されることになりました。我らはその御陵を守る衛士となりた
 いと、今願い出ているところです。」
上手いな〜、伊東先生。土方の突っ込みに対し、近藤に説明するような形で答えていく。警戒しなければいけないのは土方だが、要は局長の許可さえ得られればいいのだものね。そしてその局長は案の定、
「よくわからないが・・・。」
おいおい、勘弁してくれよ、近藤さ〜ん。(呆)
「帝の御陵をお守りするのです。帝の御為に働くということであれば、我らが新選組から離れることを
 局長が快く承諾されたとしても、そこには何の不思議もございません。」
御陵衛士・・・これは、強い尊王思想を持った伊東ならではの転身であり、“脱走”ではなく、あくまで“分離”とする見事な言い訳であり、組織として山陵奉行の支配下に入るため、今後新選組の指図は受けない絶妙のポジションと言えるでしょう。
「分離を認めていただけますか?」
「喜んで。」
“喜んで”じゃないだろう、局長〜〜。(怒)
ほら、土方が苦虫噛み潰したような顔してるよ。
部屋を出た伊東甲子太郎、
「すべては思いのまま。」
その油断が命取りですよ。

「あれ程言い包められるなって言ったのに、結局言いなりじゃねぇか!!」
怒り心頭な土方さん。伊東の思惑がすべてわかるだけに、すごく悔しそうだ。こんな土方さん、久しぶり。っていうか、近藤さんが芹沢暗殺以前の、優しいだけの人に戻っちゃった?
「俺はな、トシ。伊東さんの話を聞きながら思ったんだ。それで無駄な血を流さずに済むのなら、言い
 包められても構わないと。」
近藤の言葉に、土方は大きな溜め息を一つ。
「そして伊東さんは、物の見事に言い包めてくれた。それでいいではないか。」
「勝手にやってくれ。」
背中を向けて座り込む土方。さらに大きな溜め息をつく。
「芹沢さんの時のような思いはもうしたくない。」
あの時の近藤さんの苦悩はわかっているけど、芹沢暗殺を乗り越え、山南切腹を乗り越え、そうして結局、近藤さんはまた、情に流されるだけの近藤さんに戻ってしまったんですか?
頬杖をつき、眉を寄せ、悔しさに耐えている土方に、つい感情移入してしまいそう。
だって、ここで伊東を許してしまっては、今まで鬼となって自らも他をも律してきたことがすべて無に帰してしまうのだから。そして、ここまで作り上げてきた新選組が、きっとぐずぐずになってしまうのだから。そして、伊東たちは新選組にとって、どんな障害になるかわからないのだから・・・。
「局長が心配されているのは、伊東先生には心酔する者たちが多いということです。もし伊東先生を
 斬れば、あの者たちが黙ってはいない。」
たぶん4人の中で、一番隊士たちのことをわかっている源さんが、近藤をフォローする。
「何を恐れているんですか。斬り合いになったところで、こっちが負けるはずがないし、一息にけりを
 付けちゃえばいいのに。」
総司はすっかり、ダークで過激になっちゃいましたね。しかし、
「伊東さんたちの脱退は、もう決まったこと。この話は終わりだ。」
近藤は反論を許さない。
「平助は? どうするつもりなんだろう。」
「辛い立場になってしまったな。」
総司と源さんの呟きに、土方も目を潤ませている。

近藤の言葉にどんなに納得できなくても、大河の土方は近藤に絶対的に従う。けれど、その裏でしっかり手を打っておくところが素敵です。
「伊東たちに加わってもらいたい。」
早速、斎藤に指示を出している土方。
「あいつら御陵衛士を名目に、薩長と手を組み、幕府に盾突く気でいる。」
ずばり言い当てています。
「俺はいずれ伊東を斬るつもりだ。御陵衛士も壊滅させる。その時のために、常に伊東と動きを共に
 し、向こうの様子を逐一俺に伝えてほしいんだ。」
昔から、土方が自分の決意を吐露する場面に、なぜか必ずいた斎藤。そして今度も、土方から直々に考えを打ち明けられ、重要な任務を任されます。
頭の中で土方の言葉を咀嚼し、自分の信念と照らし合わせ、納得した上で、
「承知!」
ただ一言で、この難しい任務を引き受ける斎藤さん、かっこいい。(爆)
「そしてその日が来たら、平助の傍から離れず、あいつを助けてやってほしい。あいつだけは死なせ
 たくないんだ。」
照れ屋で、自分からはめったに人への情を語らない土方さんが、珍しいですね。常に付かず離れずの距離にいる斎藤さんは、土方さんにとって心情を語りやすい存在なのかな。口が堅く義理堅く、仕事もきっちりこなす斎藤さんを、近藤・沖田・源さんたちとはまた違う部分で、信頼し、心を許しているのでしょうね。

平助が、誠の旗の前に座っています。
背筋を伸ばして、きちんと正座している後ろ姿が平助らしい。さすが歌舞伎役者、勘太郎くんの正座は美しいですね〜。
そこへ沖田がやってきて、平助に話し掛けます。
「伊東さんたち、出て行くんだって? 平助はどうするの?」
「伊東先生が出て行くとおっしゃるなら、ついて行くしかありません。」
「ほんとは行きたくないみたいな口ぶりだな。」
親友の総司の前では、つい本音が零れてしまう平助。
そして、平助の本音にすぐ気づいてしまう総司。
「沖田さんには本心を言います。できれば私は、新選組に残りたい。」
「ふ〜ん・・・。」
意を決して本心を打ち明けたのに、総司の反応がつれなくて、平助は憤ります。けれど、
「甘いなぁ、平助は。だって伊東さんがついてこいって言ったんだろ? だったら迷いなんか捨てて、
 喜んでついて行かなきゃ駄目じゃないか。」
と、総司に逆にたしなめられてしまう。それでも納得できない平助。
「ついてこいなんて言われていない。私は一度たりとも。」
伊東先生が「新選組を離れる!」と宣言した、あの時からずっと、平助はこのことに拘っていたのですね?
「伊東先生は立派な方です。でも未だに私のことを認めてはくれない。今度だってそうです。先生は
 一度だって私の思いを聞いてはくださらなかった。永倉さんや斎藤さんには、嘘をついてまで連れ
 て行こうとしたのに。先生の中では、私は最初からついていくことになってたんです。」
「それだけ信用されてるってことじゃないのか? 永倉さんたちは信じてないから、汚い手だって使っ
 た。お前は心から信じてるから声もかけない。近藤さんだって、いざとなったら私の気持ちなんか
 聞いたりはしないと思うよ。だって聞かなくたって分かるから。」
初めて人を斬ったあと、近藤に優しい言葉をかけてもらえなくて、ふらふらと芹沢の後ばかりついて歩いていた、あの頃の総司を思い出しますね。あの時、辛い思いをしながらも、近藤との絆というものを自分で気づくことができた、その経験が、今の総司の台詞になっているのでしょうか。
「何も言わない間柄が、一番深いんだ。」
今も、総司の病気に気づいていながら、何も言わないでいてくれる近藤の優しさを、総司は実感しているのかもしれません。
「まだまだ子供だな。」
厳しい言葉で、平助の覚醒を促す総司。

 平助「沖田さんには適わないや。」
 総司「やめてくれ。」
 平助「試衛館に入ってから、私の目標はいつもあなたでした。」
 総司「いいよ、もう。」
照れ笑いする総司。
 平助「いつか必ず沖田さんを抜いてみせる。それは剣術なのか、もっと他の事なのか、分からない
  けどいつかきっと、沖田さんに胸を張って勝ったと言える、そんな日を目指してやってきました。
  でも、いつだって沖田さんは私の先にいる。適わないです。」
平助は、ずっとずっと、総司へのコンプレックスを抱えて頑張ってきたんだよね。時には総司の名前を騙ったりもして、コンプレックスに押し潰されそうな時もあった。けれど逆に、それをバネにして頑張ってきた。頑張って頑張って、こうして素直に総司にコンプレックスを打ち明けられる程、強くなった。
背を向けて、平助の言葉を、嬉しさと憂いの混じった表情で、じっと耳を傾けている総司がいいですね。

 平助「私は沖田さんが羨ましい。」
 総司「羨ましいのはこっちだよ。」
 平助「私のどこが・・・。」
平助には、思いがけない総司の言葉。
「はなむけに、一つ教えておく。私はそう長く生きられない。労咳なんだって。」
夜の闇を見つめ、瞳を潤ませ、それでも淡々と平助に打ち明ける総司。
そして総司の言葉に呆然とする平助。
「今年の桜は見られても、来年の桜はわからない。もう二度と、姉さんや多摩の人たちには会えない
 かも知れない。・・・私はお前が羨ましい。お前の元気な姿が羨ましい。来年のお前が羨ましい。
 再来年のお前が・・・。」
藤原くんの抑えた声が胸の中に響いてきて、聞いているのが本当に辛いです。何をどう足掻いても、先の無い総司の、悲しみ、切なさ。そう、来年の桜さえ、見られるかどうかもわからないんだ。(泣)
だけど・・・。

「だからさ、私のことを敵わないとか、そういう風には言わないように。」
振り返って見せた総司の笑顔は、澄んで、そしてとても深い・・・。耐えて生きる強さと、平助を想う
優しさが、溢れています。
「はい。」
総司の気持ちを、しっかりと受け止める平助。
 総司「ひょっとしたら、いつか剣を交えることになるかも知れないな。」
 平助「沖田さんとやり合ったら 一太刀でやられてしまいます。」
 総司「たぶんね。」
総司くん、あっさり肯定。(笑)
 平助「今はね。でも見ていてください。もっと強くなってみせますから。」
 総司「無理するな。」
 平助「せめて相討ちに。」
平助らしい、控えめな宣言。でも総司に背中を押されて、しっかり歩いていく決意ができたみたい。
 総司「頑張れ。」
総司がやっと、明るい笑顔を見せます。平助の表情にも、もう迷いは見えません。
誠の旗の前で固く手を握り合う、若く純粋な二人の別れ。それは、切ないほどに清々しくて・・・。
もう、涙ぼろぼろ。
「相討ちに」って、「相討ちに」って・・・。三谷さん、この先の二人をどう描くつもりなんだろ〜〜。(焦)
あぅ〜、心が痛む。

平助(と伊東甲子太郎一派)の旅立ちの日・・・。
島田さん、号泣してます。喜怒哀楽を素直に表わす島田さん、良い人だ〜。
「たまにはうちに、汁粉でも食いに来いよ。」
そうか、“お多福”は左之助にとっては“うち”になるのか〜。
「本当に試衛館の皆さんには、お世話になりました。」
平助の言葉を受けて、
「お前、試衛館じゃなかっただろ〜〜。」
と、泣きながら島田に突っ込んでる左之助。
源さんが平助に差し出した餞別は、浅葱色の隊服!!
「平助は、これからも新選組の八番組長だ。」
源さんの優しさが泣けます〜。
そして、その言葉を噛みしめながら、そっと羽織を抱きしめている平助が可愛い。うるうる。

分離にあたって、土方と加納が取り決めを交わしています。
「では、このようにさせていただく。これ以降、新選組から御陵衛士に加わりたいと願い出る者があっ
 ても、一切それを認めない。また御陵衛士の方も、これ以上の新選組隊士の参加を許さない。」
と告げる土方。
「では念書を・・・。」
と尾形に促したところで、加納から待ったがかかる。
「御陵衛士から新選組に戻ることも、同じく禁じていただきたい。そうでなければ公平を欠く。」
さすが加納さん、鋭い。
土方はちょっと考えを廻らせた後、
「いいでしょう。」
と了解。
さて、任務を終えてからの斎藤さんの復帰、どうしましょうかねぇ。>土方さん

最後に平助は、近藤局長にご挨拶。
「新選組の八番組長として、長い間京の治安を守ったことは大いに自慢していい。あの池田屋に最
 初に踏み込んだのはお前なんだからな。」
近藤の言葉に、嬉しそうに笑う平助。
そうでした、そうでした。ちょっと裏返った声で、「御用改めである!!」って言ったんだよね。
「伊東先生の元で、これからは存分に働くように。お前がたとえ新選組を去ろうとも、平助は我らの
 同志。今までともに戦ってきたこの年月は、消え去ることはない。これからも新選組の八番組長と
 して、恥ずかしくない生き方をしなさい。」
近藤は父親のように、平助を励まして送り出します。
「そして・・・。辛かったら、また戻って来い。」
笑顔で頷く平助が、まるで子供のようだ。あぁ〜、平助〜〜。
先の展開が辛いです。(涙)


それにしても、今まで伊東甲子太郎の描写が少なかったことが残念でなりません。
彼がいかに文武両道に秀でていたか、隊士たちがどれほど傾倒していったか、広島に行った時、尊攘派と接触してかなり怪しい動きを見せていたことなど、もっともっと見せてほしかった。
伊東の描き方が薄っぺらいから、伊東派分離が新選組にとっていかに危険なことかが感じられず、近藤の言葉も土方の反対も源さんのフォローも、なんかピンとこないんですよね。
土方ファンとしては、伊東と土方の、腹を探り合うシーンももっともっと見たかったし、近藤が伊東をすっかり信頼していて、土方がヤキモキしているシーンなんかも見たかったなぁ。あの、「山南くんは雄弁ではあるが、〜〜」「山南の悪口は言ってほしくねぇな。」のシーンのように、谷原さんと山本くんの二人だったら、ぞくぞくするようなやり取りを存分に見せてくれたんじゃないかと思うと、すっごく残念。

それから、せっかくここのところ剛柔使い分け、器の大きさを見せてくれていた近藤局長が、伊東を粛清したくないばかりにあっさり分離を認めてしまう・・・というくだりは、ちょっと納得がいかなかった。
「無駄な血を流さずに済むのなら、言い包められても構わない。そして伊東さんは、物の見事に言い包めてくれた。」って、それじゃ、ただのバカじゃん?
すでに御陵衛士となることを朝廷に願い出ているとすれば、新選組としては分離を認めない訳にはいかない。けれど、御陵衛士は単なる隠れ蓑というか、分離のための方便であることは、監察の調べで、少なくともわかっている訳です。だとすれば、反対はできずとも十分警戒するべきだし、今後のためになんらかの手を打っておくことは必要なはず。(土方は、斎藤を間者として潜り込ませてましたけど。) ご公儀のためを思えば、少なくとも「喜んで」分離を承諾することなどできないと思うんですけど。
その辺、三谷氏は、近藤の“見通しが甘く、時代が読めない”という部分を、また“ひたすら相手を受け入れる優しさのゆえに、相手の真意が読めない”という性格を、強調して描こうとしているんだとは思うのですが、正直、見ていて苛つくんですよねぇ。
芹沢粛清の時に「鬼になった!」と宣言し、山南を切腹させ、前回は周平さえも切腹させようとしていたのに、突然思い出したように「芹沢さんの時のような思いはもうしたくない」って、あまりにも近藤という人物像がグラついていて、見ているこちらまで振り回されるというか・・・。
えっ? もしかして、それが三谷さんの策略? だとすれば、恐るべし、三谷幸喜・・・。(^^;;;;;

 

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