大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第38回  ある隊士の切腹  

オープニングは“新選組を行く”でも紹介されていた、有名なエピソード。
入浴中のおりょうちゃんが、外を捕り方が囲んでいるのに気がついて、慌てて坂本さんに伝えに行きます。
おりょうちゃんの姿に、酒を噴き出し後ずさる三吉さん。
「おうおう、なんぜよ、その格好は。丸見えじゃないかえ。」
いえ、全然見えてませんけど。(笑)>坂本さん
まぁ、NHK日曜夜8時の番組ですから、こんなもんですか。(苦笑)

伏見奉行所の捕り方に応対しているお登勢さん。なんとか誤魔化そうとしたら、
「相手にしちゃ駄目ですよ。」
って、捨助じゃないか〜。(@o@)
「二階の奥の間だ!逃がしちゃいけませんぜ!!」
あ〜ぁ、捨助すっかり逆恨みしちゃって・・・。恨むんだったら薩摩を恨みなさいよ。(^^;;;
龍馬さん、捕り方の前で拳銃をぶっ放してます。それだけで、腰の引けてる伏見奉行所の皆さん。

激しく夢にうなされているのは・・・斎藤さんだ。
葛山を介錯したこと、松原にとどめを刺したこと。
二人とも仲間だった。彼にとって殺さなければいけない人間ではなかった。
その昔、人を斬るのは飯を食うのと同じで何も感じない・・・と言っていた斎藤。
だけど、新選組の中で人と触れ合い、仲間が出来たことによって、人の命を絶つことの苦痛を感じるようになってきたのでしょうね。

老中小笠原長行、大目付永井尚志に随行し、広島へ行くことになったと、近藤が土方に告げています。
「殺されるぞ。」
と土方。
確かにこの時、近藤は死を覚悟して広島へ出掛けたんですよね。その決意を認めた書状が今も残っています。もしも自分に何かあったら、新選組は土方に、天然理心流は沖田に任せると・・・。

そして幹部会議でこの件が発表されます。近藤からは、伊東と武田に同行のご指名が・・・。
「うちの篠原も連れていきましょう。いざという時に使える男です。」
すかさず自分の門人を推薦するあたり、伊東参謀、抜け目がない。
「局長。私はこの度は留守居役を勤める訳にはまいりませんか?」
おや、観柳斎、珍しい。自らこの大役を辞退するなんて・・・。
「京の情勢が不穏な昨今、こちらに残って土方さんの力になりたいと存じます。」
馴れ馴れしく肩を叩かれて、なんだ?こいつ・・・な土方さん。(笑)
その向こうで谷三十郎が「代わりに私がお供仕りましょう。」と立候補するも、誰も相手にせず。(爆)
「長州の軍隊は、新式のミニエー銃を揃えていると聞きました。狙いの確かさ、威力ともに、これまでのものとは比較にならないとか。」と加納さん。戊辰戦争では銃の性能がそのまま勝敗に繋がったことを考えると、新式銃をこの目で確かめてきたいとは、さすが伊東派、目の付け所が違いますね。
それに対して、声を荒げて、所詮借り着と馬鹿にする観柳斎。西洋流軍学vs甲州流軍学。そうか、伊東参謀の講義が大盛況で、一方自分の講義が閑散としていたこと、かなり危機感を抱いているのかな? 観柳斎の後ろで必死に主張している、谷の右手が笑える。

庭で訓練中の隊士たち。あ〜あ〜、銃も大砲も思いっきりぶっ放してますよ。お寺の境内だというのに・・・。(^^;;;
幹部会議を終えた観柳斎。隊士たちを怒鳴りつけ、機嫌の悪さを撒き散らしながら、廊下をドカドカと歩いていきます。
向かった先は勘定方の部屋。河合に真剣な表情で、50両を無心します。
「どうしても手に入れたい物があるのだ。」「急がなければ人の手に渡ってしまうのだよ。私はそれを手に入れるために、広島行きを断ったのだ。」
なるほどね、そういうことか・・・。
「勝手に貸してしまったら、私が土方さんに叱られますから・・・。もう、勘弁してください。」
そうだよ、そうだよ、河合さん。だめだよ、むやみにお金を貸しちゃ・・・。(涙目)

町中で、浪士と斬り合っている一番隊。
浪士を倒したとたん、咳き込む総司。2度目の喀血。絶望に打ちひしがれる・・・。
この、咳がこみ上げてくるところから、吐いた血を見て目を潤ませ、口をぎゅっと結んで悲しみに耐える表情まで、一連の藤原くんの演技がすごく上手いんですよね。

総司は、孝庵先生の診察を受けています。
「なんで医者の言うことをきかん? ん? 養生せいと言うたはずじゃ。」
孝庵先生、そんな、手拭いでぺしぺし叩かなくたって・・・。(^^;;;
先生も悔しいのでしょうね。総司の、自分で自分の命を削っていくような生き方が・・・。
「5年でいいんです。あと5年、元気でいられたらそれでいい。」
搾り出すような声。総司の魂の叫びです。
だけどきっと、あと5年も生きられないところまで、病状は進んでる。
「ねぇ、お願いしますよ。簡単なことでしょう? 贅沢は言わないから、あと5年、元気でいさせてくだ
さいよ。」
先生に縋り付いて、必死のお願い。
あぁ、切ない。長生きを望んでる訳じゃない。せめてあと5年ってささやかな願いさえ、叶わないのか・・・。(泣)
「あほ抜かせ、こら。」
先生、総司の鼻の頭に墨をちょん。可愛い。(*^^*)
「そんな不養生で、5年も生きるつもりか。甘く見るのもいい加減にせい!」
先生に突き放されて、
「こんなところには二度と来るか!このヤブ医者!!」
悔しさをぶちまけて飛び出していく総司に、
「このヤブ患者!!」
って、先生・・・。(苦笑)
お互いわかりあっているからこそ、ずけずけ言い合える先生と総司の関係がいいですね。絶望の中、温かくて優しい。(涙)

お幸さんに、広島出張を告げる近藤。
「今度は生きて帰れんかもしれん。」
思い詰めたような近藤に、
「それは、命を賭けるに足る、名誉あるお仕事なんですか?」
「あぁ。」
「おめでとうございます。」
そして、にっこり笑うお幸さん。
こうして送り出される男は幸せでしょうね。妻の鑑だなぁ。

「新選組の誰かが、今日切腹しはるそうなんや。」
うわぁ〜〜。もう、その日なんですか?(焦)
浅葱色の裃だ・・・。死に装束だ・・・。(呆然)
お坊さんに頼まれて、侍臣の西村さんが河合の話を聞きにきました。こうして西村さんは、隊士たちの話を“新撰組始末記”にまとめる・・・という設定なのですね。
「本日、お腹を召されるそうですね。」
「そうなんです。あれよあれよという間に、こんなことになってしまって・・・。自分でも信じられない。」
疲れきった顔で・・・。
「死ぬ前に、どうしても誰かに伝えておきたいことがあるのです。」
あぁ・・・河合さん・・・。(泣)

「あれは・・・12日前のことになります。」
と河合が語り始めたのは・・・。

観柳斎に、本問屋に連れてこられた河合。西洋軍学の本を見せられます。
武田が50両貸してほしいと言っていたのは、この本のためだったんですね。
「他にもこれを狙っている男がいると言う。」
だから観柳斎、焦っていたのか・・・。
「河合!河合耆三郎!新選組のためにも、この本は必要なんだよ。」
観柳斎、必死です。
主人に愛想笑いしつつ、「もうちょっと安くならないすかねえ。」と値切ろうとしている河合がおかしい。
で、観柳斎の熱意に負けて、50両渡してしまう河合さん。それも、土方たちには内緒で・・・。(泣)
感謝と感激で河合に抱きつく観柳斎がちょっと可愛い。
そして、買ってきた本を覗き込みながらの、二人のぼけ突っ込みが上手いです。
「この武田観柳斎が、新選組を世界で一番強くする!!」
新選組のことを思っている観柳斎。だけどそこに、どうしても“自分が”が付いてしまうんだよなぁ。
「武田さんはいつも偉そうにしているので、隊士の間ではとても評判の悪い人です。でも、食い入るように本を読んでいる姿を見て、この人はこの人なりに一生懸命なんだなぁって。」
どんな相手でも、その人の良いところを見ようとする河合さん、本当に優しい人なんですね。

河合は播磨で米問屋を営んでいる実家に、50両送ってくれるように手紙を出しました。5日もあれば、金は届くはず。
けれど、2日後に突然、土方が隊の金を勘定帳と照らし合わせると言い出します。50両足りない
金を、何度も数え直している河合が哀れです。
土方が急に隊の金を改めると言ったのは、観柳斎の本の購入に疑問を持ったからでした。
そう、他にも本を狙っていたのは、どうやら土方だったらしい。
 土方「買ってったのはどんな奴だった?」
 主人「髪は総髪の撫で付けで、眼鏡をかけた、うさんくさ〜い小柄なお人でしたわ。」
 土方「そんな奴は、日本で一人しかいない。」
“日本で”まで言いますか。>土方さん(笑)
「しかし観柳斎によく50両もの金を出せたもんですね。」
この源さんの言葉に、土方は隊の金からの調達を疑ったのでした。

当然のことながら、金は50両不足しています。
 土方「誰かが借りていったのではないか?」
 河合「それはありません。本当に知らないんです。」
 井上「誰かをかばっているのなら、白状してしまった方がいい。」
 土方「悪いことは言わん。ほんとのことを言え。」
河合は、本当のことを言ったら、土方が観柳斎を罰して本を取り上げるのではないかと、それを恐れて必死に観柳斎をかばったようだけど、本当に土方はそうしたかな? 新選組のために勉強しようとしている観柳斎を、そこまで厳しく罰しただろうか。
隊の金で買ったのだから隊の本にしたかもしれないし、あるいは「貸せ」とか言って本は取り上げたかもしれないけど、罰することまではしなかったんじゃないかと思う。
まぁ、河合にそういう危惧を抱かせてしまったのは、先週沖田が心配していたように、いつも土方があまりにも厳しいから、隊士たちが土方を必要以上に恐れてしまっている、その表れだったのかもしれません。そして悲劇は起こってしまう・・・。

河合は、自分が紛失したことにして親元から50両届けさせるから、勘弁してほしいと頼み込みます。
 土方「しかし、金が届かなかった時はどういうことになるか、わかっているだろうな。」
 河合「はい?」
 土方「お前、切腹だぞ。」
 河合「せっぷく?」
あぁ、河合さん。事の重大さがわかっているのかしら?(泣)
 土方「勘定方が役目をなおざりにしたんだ。当り前だろ。」
 河合「わかりました。届かなかった時は切腹します。私も新選組の隊士です。それくらいの覚悟は
  できています。」
さすが河合さん、潔い!・・・って、褒めてあげたくはないよ。
 土方「よく言った。余裕を持ってそれじゃぁ、10日にしてやろう。」
 河合「5日で結構です。」
 井上「10日にしておきなさい。万一のこともある。」
 河合「では、10日で・・・。」
 土方「10日以内に金が戻れば、すべては無かったことにしてやろう。」
土方さんも源さんも優しい〜。二人とも河合が観柳斎をかばっているのはわかっているから、河合が罪を被るようなことはしたくなかっただろうし、河合同様二人も、まさか金が届かないなどというようなことは、考えてもみなかったのでしょうね。
平伏する河合を見つめる、土方さんの目がすごく優しいんだ。(^^)

しかし、5日経っても金は届かない・・・。
不安になる河合。土方と源さんも心配しています。
源さんが土方に河合の助命嘆願。
「もともとは十中八九、観柳斎をかばってのこと。その気持ちに免じて、助けてやる訳にはいきませんか? 幸い、表にはまだ漏れていないことですし。今ならまだ無かったことにできます。」
源さんの言葉が終わるか終わらぬかのうちに、
「おい、話聞いたぞ。」
部屋に飛び込んでくる左之助と平助。何も、このタイミングで来なくても・・・。(泣)
土方の顔が曇る。
「漏れちまったようだな。」
源さんも取り成す術がない。

庭で稽古中の沖田のところへ、平助が河合のためにカンパを募りに来ています。しかし、
「力にはなれないな。」
協力を断る総司。
大丈夫かい? 稽古なんかして・・・。顔色は悪いし、目の下に隈が出来てる・・・。
「河合も馬鹿なことをしたもんだ。悪いが、自分の命を粗末にする奴に、私は同情はしたくないんだよ。」
去っていく総司を呆然と見送る平助。
でも、5年も生きられないとわかってしまった総司にとって、河合のしたことはものすごく腹立たしいでしょうね。河合は自分よりずっとずっと長く生きられるはずなのに、自分で命を無駄にしようとしている。できることなら、その命を奪い取って、自分のものにしてしまいたいだろう。
総司の思い詰めた瞳。張り詰めた頬。見ているこちらまで苦しくなります。

「なかなか金は集まらないようです。」
と源さん。
「河合を謹慎させよう。今あいつに脱走されたらどうなる。それこそ俺は、奴を切腹させなきゃいけな
 くなる。」
土方の揺れる瞳。彼も追い詰められているんだ・・・。
土方の気持ちをしっかり受け止める源さん。

「うち、ちょっとやったら力になれますよ。」
おまさちゃん、優しい〜。
でも、50両にはほど遠い。
「俺に考えがある・・・。」
やめときなさい!左之助!!

で、案の定賭場へ。
斎藤さんが案内して来たんだね。
 藤堂「斎藤さんはよく?」
 斎藤「昔ね。」
この会話がツボです。
そして予想通り、金は全部取られた上に、身ぐるみ剥がれ、褌一丁で帰ってきた3人。
「俺のことは気にするな。」
台詞はかっこいいけど、寒くて震えてますよ。>斎藤さん(笑)
「どうするんですか?みんなから集めたお金なのに・・・。」
平ちゃん、あなた、女の子座り。(爆)
「呆れた・・・。」
ほんと。>おまさちゃん

それから2日後、こっそり謹慎部屋を観柳斎が訪れます。
「案ずるな。私とてお前を死なせるのは本意ではない。」
確かにそうだろうな。そこまで悪い人じゃないと思う。
「いろいろ考えて、名案にたどり着いた。この本は返すことにした。」
偉いっ!!観柳斎、偉いよ〜。
「もっと早くたどり着いてほしかった・・・。」
この差し迫った状況でこの台詞。河合さん、素敵です。

しかし、本問屋で観柳斎は知ってしまうのです。あろうことか、あの伊東派の加納も、この本を欲しがっているということを・・・。
「いかん。あいつらには渡せん・・・。」
伊東派はライバルであり、観柳斎の地位を脅かす存在。彼らに対抗するために買ったこの本を、むざむざ差し出すようなことはできない・・・。
「この話は無かったことにしてくれ。」
主人の言葉は悪魔の囁きだったのかもしれませんね。
観柳斎は自分の地位を守るために、河合を見殺しにする選択をします・・・。(哀)

「そして昨日になりました。金は届きませんでした。」
西村に淡々と語る河合が悲しい。

その頃、広島の近藤たち。
「伊東さんが新選組に加わって、私は本当に助かっています。あなたのように時局に通じ、豊かな見識をもって判断できる人物がどうしても欲しかった。」
伊東参謀、嬉しそう。でも、
「確かに。武田くんだけでは心もとないですからね。正直に申し上げて、あの人の考えは古すぎる。」
すぐそうやって人を批判したがるのは、いかがなものか・・・。知識もあり、弁論に長けているかもしれないが、人物としては小さいなぁと感じてしまうのですけど。>伊東先生
「あの人は、体も小さく眼も弱く、剣の道で生きることのできない男です。彼はだからこそ、勉学に励み、新選組で生きる場所を見つけた。私も同じようなものです。浪士組で身を立てるしか、生きる道が無かった。あれはあれで勉強家でしてね。伊東さんに負けないように、勉学に励んでいるところです。長い目で見てやりましょう。」
いや〜、感動しました。近藤さん、器が大きいです。観柳斎の長所短所すべてわかった上で、その成長を待とうと言う。ただの気のいい、優しい青年だと思っていたのに、いつのまにこんなに大きくなったんだろう?
伊東参謀、その後言いかけた言葉は何だったのでしょうね。

大目付 永井様がみえました。
「長州が最も恐れているのは新選組だ。ここは一つ、その手腕を存分に振るって、私を助けてくれ。」
ありがたいお言葉ですね、近藤さん。

屯所では、期限が明日に迫って、土方の表情にも焦りが見えています。
河合さん、こんなにやつれて・・・。(泣) 追い詰められた、おどおどした表情。
「今からでも遅くない。本当のことを言いなさい。」「誰もお前に腹を切ってほしいとは思っておらん!
 50両、誰のために用立てた?」
優しくて温かい源さん。
河合はゆっくりと顔を上げます。
「聞こう」というように、こっくりと頷く土方。

河合は結局喋ったのかな?
土方と源さんが、武田に問いただしています。
「覚えがありませんな。」
白を切る観柳斎。
源さんと武田のやりとりを黙って聞いていた土方が、棚の上に置いてあった西洋軍学の本を見つけます。
「この本の代金はどこから手に入れた?」
「入隊して以来、日々の暮らしを切り詰め、貯めに貯めたお金で買いました。」
はぁ、悲しいなぁ。嘘をついて自分の居場所を守っても、それは逆に自分を追い詰めていくことになるだろうに・・・。
「すべては新選組のこれからのため!・・・返していただけますか?」
観柳斎は、精一杯強がってみせます。
そんな彼に、土方も源さんも、正直に話す気の無いのを見て取って・・・。
「手間を取らせてすまなかった。」
おや、土方さん、今日は追及の手が甘い・・・と思ったら、
「金を守るのが勘定方の役目だ。それを怠った罪は死に値する。しかし、いいか、武田くん。己の身
 を守るために嘘をつき、長年の仲間を売るような奴がいたら、俺はそいつを許さない。」
土方の、氷のような冷たい視線。その視線に耐え、必死で睨み返す観柳斎。土方が去ったとたん、大きく息を吐いてがっくりと項垂れる。あまりの必死さが痛いです。

「介錯は斎藤に頼む。」
「俺でなければいけませんか?」
斎藤さん、珍しい。
「喜んで河合を斬る者など、どこにもいない。」
斎藤さんも傷ついているんだね。そして、法度を忠実に体現していく、土方への精一杯の抵抗・・・。
土方は谷三十郎に視線を移します。一瞬躊躇して、引き受ける谷。
でも、大丈夫ですかぁ?>谷さん(^^;;;
「あいつは5日で届くと言ったんだ。それを俺が10日にしてやったのに・・・。」
土方が珍しく、みんなの前でボヤきます。そんな土方を見ている斎藤。
「まだ1日あります。切腹と決まった訳ではない。」
土方の重荷を少しでも軽くしてやろうと、慰める源さん。
「それにしても、河合もほとほと運の無い男だ。近藤さんがいれば、救ってくれたはずなのに。」
あぁ、土方さん、本当に辛いんだね。河合を切腹させたくないんだね。
「だったら救ってやればいい。近藤さんにできることを、なぜあんたができない?」
はっきり疑問を口にする、斎藤さんが好きです。
「それは俺の役目じゃねぇ。」
ううう・・・。(涙)

居たたまれなくなって、部屋を出ていこうとする土方。そこへ永倉が現れます。
「河合の切腹は俺が許さん。奴は優れた勘定方だ。新選組のためにも、今は死なせてはいかん。」
永倉さんの意見は、確かに正論かもしれない。だけど、正義を振りかざすその反論の仕方に、つい抵抗を覚えてしまうんですよね、私は。(^^;;;
話しても無駄だとでも言わんばかりに、出て行こうとする土方。それを永倉が呼び止めます。
すると・・・。
「山南がなぜ死んだと思ってる。」
あの日以来、土方がその名前を口にしたのは初めてじゃないでしょうか。
その言葉に、胸を突かれる一同。
「ここで河合を救えば、山南の死が無駄になるのがわかんねぇのか。山南を死なせたってことは、
 一切の例外を認めないってことなんだ。」
あぁ、やっぱりそうだ・・・。“山南の呪縛”だ・・・。
山南さんが死ぬ前に、土方に残した言葉。それはたぶん、土方があとで自分を責めないようにという、山南さんの優しさだったのだと思うけど、でもあの言葉を聞いた時、これは山南さんの呪縛だと
思ったんだ。土方はこれからきっと、法度に、そして山南の死に、自ら雁字搦めになるだろうと・・・。法度に縛られて、山南の死に縛られて、身動きが取れなくなるんじゃないかと・・・。
あの時の、山南の言葉を聞いていないみんなは、この時初めて、土方が山南の死をどのように受け止めたかを知っただろう。山南を切腹させたことで、土方がどれほど傷ついたかがわかっただろう。
大きく溜め息をついて、座り込む永倉。
「こんな時、近藤さんがいてくれれば・・・。」
永倉の呟きに、
「局長に一番いてほしかったのは、きっと土方さんだと思います。」
たしなめるように言う源さん。
あぁ、源さんはわかってくれている・・・。

誠の旗の前・・・。そこに座っているはずの近藤は、今はいない。
床にへたり込む土方。
「かっちゃん・・・。」
土方の中にも、鬼であり続けることへの迷いがあるだろう。
そんな彼をいつも支えているのは、やっぱり近藤さんなんだよね。
縋りつくように見上げる、誠の旗。懸命に涙を堪える横顔に、胸が潰れそうだ・・・。

「河合さん!飛脚が到着しました!50両届きましたよ〜!!」
えっ?
平助と抱き合って喜ぶ河合。その手から、50両がこぼれていく・・・。
・・・やっぱり夢でしたか。(泣)
代わりに廊下をやってきた足音は、死に装束を持ってきた島田。
「飛脚はまだ来ませんか?」
河合の問いに、島田が悲しそうに首を振ります。
「河合、みな知っているぞ。観柳斎のために命捨てることはねぇ。」
島田の言葉に、
「あの人だって、新選組のことを思ってのことですから。」
この時になってもまだ、観柳斎をかばう河合さん。まるで、観柳斎の良心を信じ、かばい抜くことが自分なりの士道であるかのように・・・。

「父には、父にだけは伝えてほしいのです。本当のことを。父には一言、河合耆三郎は何一つ恥じる
 ことはなかったと、それだけを伝えてください。」
河合の願いに、
「必ず、お伝えします。」
約束する西村さん。
「返す返す思うのは、人の一生なんて不思議なもので・・・。」
達観したように語り出した河合でしたが、急にはっとして、
「今、何か聞こえませんでしたか?ひ、飛脚がなんかって・・・。」
慌てて訊ねる河合に、西村さんは首を横に振ります。
幻聴・・・。河合は泣き崩れます。
士道を貫こうとして、誠を貫こうとして、だけど悟りきれずに心乱れる・・・。
哀れです。切ないです。人間はどうして、かくも愚かなのでしょうか。

いよいよ、切腹の場に臨む河合。
西村さんも見届けに来てくれました。
「何をどうすれば・・・。」
自ら切腹しますと言ったものの、作法も知らない河合。
「形だけでよい。」
語りかけるような、源さんの言葉。
「飛脚はまだ来ませんか?」
問われた平助がそっと首を横に振る。
「あ、あと五つ数えるまで、待ってもらえないでしょうか。」
河合の切ない願いに、土方が黙って頷きます。愛情のこもった頷き方。
そして河合は、五つ数えてから平助にまた、
「飛脚は・・・?」
と。泣きそうになるのを堪えて、首を振る平助。
飛脚の鈴の音を求めるように見回す河合に、源さんが見かねて
「河合!」
とたしなめます。
河合はすでに、軽い錯乱状態に陥っているのかもしれない。

最後に武田を見る河合。そして、目が合って、たまらず視線を逸らし俯く観柳斎。
でも、河合の表情には最後まで、観柳斎を責める気持ちは見て取れません。
気持ちを落ち着けて、覚悟を決めて・・・。
河合は震える手で着物の前を開くと、刀を握り締め、目をつぶって腹に突き立てます。
谷の介錯刀が・・・

「外したっ!!」
おろおろする谷。その場のすべての者に、動揺が走る。
一瞬躊躇った後、立ち上がろうとした斎藤の前を、沖田がすっと通り抜けていきました。
谷を突き飛ばし、刀を抜いて、河合に止めを刺してやる総司。無表情のままで・・・。
ほっとする一同。
やりきれなさを堪えて立ち上がった土方が、観柳斎を見つめます。冷たい鬼の顔。
観柳斎は土方の視線に射竦められて、微かに震えるしかありません。自分の身を守ろうとして、墓穴を掘ってしまった哀れな男。
源さんが、河合にそっと手を合わせています。

そして、一人屯所の中に戻った土方が、柱に何度も頭を打ち付けている。河合を切腹させた自分を責めている。
そんなに苦しいなら、法度の具現者など辞めてしまえばいいのに・・・。
土方の中で、鬼の心と仏の心がせめぎ合っている。
もしも近藤さんがいたら、土方の中の仏の心を掬い取って、それを言葉や形にしてくれるのに・・・。
その近藤さんは今はいない。たった一人で耐え抜くしかない。
辛いよ・・・。痛いよ、土方さん。
あなたを見てると、心臓をぎゅっと捻じり上げられるようだ・・・。
誰か、誰か、この人を優しく抱きしめてあげてください。(泣)

広島では・・・。
長州からやってきたのは事情もわからぬ小役人で、ひたすら謝るばかりで話にもならない。
憤る永井様と近藤。
「それにしても哀れだな、近藤くんも。意気込んで会合に臨んでみたものの、相手があんな小役人で
 は・・・。」
他人事のように言わないでください。>伊東先生
「近藤くんには悪いが、新選組は必ず時代から取り残される。武士道を重んじ、隊士を法度で縛り付
 ける。彼らの居場所はいずれどこにもなくなる。」
だから、他人事のように言わないでくださいってば、伊東先生。
「我々も、次の道を考える頃合かもしれないな。」
新選組を乗っ取る計画はどうなったんですか?>先生。

切腹の跡を片付けている島田さん。
やりきれなくなって箒を叩き折り、空を見上げて泣きじゃくっている。

“お多福”でも、おまさちゃんに肩を抱かれて、子供のように泣きじゃくっている左之助。

しゃんしゃんしゃんしゃんしゃん・・・
店の前を駆けて行く飛脚の鈴の音。

しゃんしゃんしゃんしゃんしゃん・・・
西本願寺にも、鈴の音が近づいてくる。
気づいて立ち上がる西村さん。

しゃんしゃんしゃんしゃんしゃん・・・
土方と源さんが廊下を歩いている。境内に入ってくる飛脚に気づく。
間に合わなかった飛脚の到着。駆けてくる飛脚を、ただ見つめるしかない。

しゃんしゃんしゃんしゃんしゃん・・・
土方の方へと駆ける飛脚の後ろ姿。そして画面は白く消えていく。

耳に残る飛脚の鈴の音。

悲しみの余韻が切なく残る回でした。

 

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