大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第32回  山南脱走  

「新選組は寄せ集めの集団でもあり、一度反乱を許せば隊がばらばらになる恐れがあった。そこで
 やむなく土方は、隊の結束を守るため、反乱に加担した隊士の一人を処分する道を選んだ。」
オープニングで説明がありましたね。
・・・と喜んでいたら、土方さん、いきなりぶっ飛ばされた。(@o@) この近藤さんに殴られたら、そりゃひとたまりもないよなぁ。
お酒を飲むシーンとかでも思うんですが、土方さんの口元を拭う仕草って色っぽい(*^o^*)・・・などと思っている私は、やはり鬼ですか?(爆)

言い合う二人の間に入って、一生懸命土方を庇おうとする総司。近藤に「うるさいっ!!」と一喝されて、しゅん・・・となってるのが可愛い。(*^^*)
土方「脱走すれば切腹だ。」
近藤「総司でもか?」
土方「・・・総司でもだ。」
土方が一瞬詰まって、答えるのを躊躇したのは、仲間に対する優しさだ。それでも瞬時に情を切り捨て、切腹させると言う。さらに、
「俺でもか?」
と問う近藤に、
「当り前だろ。」
あっさりと言ってのけた。
総司と源さんは、土方が葛山に切腹を申し渡すまでの葛藤を見て理解してくれている訳だが、近藤もこの時改めて、土方の覚悟に触れたといえるだろう。
「上に立つ者ならなおさらだ。」という言葉が重い。

伊東甲子太郎の入隊挨拶。流れるような弁舌に、土方はさっそく
「また俺の苦手な男が現れた。」
と総司に耳打ち。
総司はくすっと笑っているけど、山南が厳しい目で見つめています。仲間内での争いにほとほと嫌気が差している山南。「またか、この人は・・・。」とうんざりしているのでしょう。
その一方で、伊東のことも鋭い目で見つめているのは、伊東が新選組にとって吉であるか凶であるか、しっかり見定めてようとしているらしい。
まぁ、土方の“苦手な男”というのも、要注意人物に対する警戒心を土方なりの言葉にしただけだと思いますけどね。勘で判断する人だから。そして、たとえ“苦手な男”でも、それをどう使っていくのかはまた別の話だったりする。
逆に山南こそ、自分にとってどういう存在になるのか、見極めようとしているのかもしれませんね。
文武両道の隊士も増えてくる中、知識で近藤を支えてきた自分の立場がどんどん危うくなってくる。下ろしていく視線に、山南の心情が表れているようです。

さて、伊東は挨拶を終えた後、連れてきた門人たちに本心を語ります。
「我らが目指すのはあくまでも真の尊王攘夷。会津の手先となっている近藤らとは、そもそもの志が
 違う。」
悪かったな、会津の手先で・・・!!(怒)
甲子太郎、厭らしさ全開。谷原さん、ナイスです。

こちらも、うざさ全開の捨助。
「調子に乗るんじゃない。天狗になりやがって・・・。」
浪士たちの我慢も限界に来ている様子。だけど桂が連絡係に使っている以上、屈辱に耐えるしかない訳で・・・。さらに巡察中の新選組に出会えば、庇って逃がしてやるしかない訳で・・・。浪士の皆さんも大変ですね。(^^;;;
「天狗、逃げろー!!」
「天狗?」
風呂敷で顔を隠して、天狗と呼ばれて・・・って、やっぱり三谷さん、アレのつもりですか?(笑)
総司、貫禄ついてきたなぁ。

屯所移転の話が持ち上がりました。
幹部会議、近藤は黒谷に呼び出されて不在ですが、伊東参謀が今日から参加です。
土方からの提案に「ここがいいなぁ。」とグズる総司と左之助を、「八木さんや前川さんのことも考えてあげましょうよ。」と諌める山南。せっかく山南が賛同したのに土方が浮かない顔をしているのは、移転先を言えば反対するであろうことがわかっているからか?
と、その前に、予想外のところから待った!が。
「屯所の引っ越しは新選組の重大事。そのようなことを近藤局長のおられない時に決めるというのは
 いかがなものだろうか?」
やはり観柳斎か。(苦笑) それに対して、
「近藤先生からは一任されている。腰巾着は黙ってろ!」
副長、ナイス突っ込み!! 八嶋さんの反応もグッドです。
「場所のあてはあるのか?」
「西本願寺だ。」
名前を出した途端に反応する山南。やはり・・・。
西本願寺について、島田が報告します。
この説明を島田にやらせるとは、三谷さん、上手いなぁ。
島田魁は土方について函館まで参戦したあと、降伏。やがて京へ戻って西本願寺の夜警を勤め、明治33年、境内で喘息の発作を起こして、72歳の生涯を終えるんですよね。

「素晴らしい。本願寺なら新選組の新しい屯所に相応しい。」
伊東参謀は大変乗り気のご様子。そこへ、
「よろしいですか?」
金銀に日の丸の扇をパラリと開いて、
「腰巾着というのはあまりにも失礼じゃございませんか?」
と観柳斎。ようやく土方に反論するも、
「ずっと気にしてたんだ。」
と沖田に笑われ、土方には相手にもされない。いと哀れ。(笑)
そんな様子をにんやり監察している伊東参謀。

山南「申し訳ない。私は承服致しかねる。親鸞上人以来の由緒ある寺に対し、あまりにも礼儀に反す
 るのではないだろうか。」
土方「由緒なんてどうでもいい。長州とつるんでいる奴はみんな俺たちの敵だ。」
この二人の意見の違い、まるで比叡山焼き討ちをめぐる、織田信長と明智光秀のようです。
「山南さんの言う通りだ。西本願寺は多くの人々の信仰を集める洛中屈指の寺だ。そこを蔑ろにす
 れば、我々はますます評判を落とす。」
永倉も山南とともに異を唱えると、
「永倉さんは人の目を気にするお方のようだが、俺はこっちの奴らにどう思われようが関係ねぇん
 だ。」
後ろの髪を払う仕草は、土方がムカついている証拠だ。
それにしても土方さん、言うことがガキくせぇよ。失礼な発言に一生懸命耐えてる永倉さんの方が、
ずっと大人だ。(笑)
「長州に対して目を光らせるというのはわかります。しかし由緒ある寺院をそういった生臭いことで
 汚すのはどうだろうか。」
さらに山南に言葉を重ねられて、反論できなくなる土方。
そこへ思わぬ助っ人が・・・。
「これは異なことを申されますな、山南どの。あなたは今、汚すとおっしゃった。あなたは新選組の
 使命を穢れたものとお考えか?」「本願寺は古く戦国の世から政には深く関わってきている。そも
 そも・・・(眠くなるので略・笑)・・・。ご存じか?」
この薀蓄語りは山南さんを越えるな。(^^;;;
口を噤んでしまう山南。
「山南さんの負け〜〜♪」
おいおい、総司。お前が止めを刺してどうするよ。
「土方くん、この話、是非。」
伊藤参謀が西本願寺移転に賛成して、土方をフォローしたのは、新選組の中で参謀の位置を確かにするためか、土方を味方につけておくためか、あるいは西本願寺に引っ越すことによる自分なりのメリットを考えてのことか・・・。
ん〜、それは追々明らかになっていくだろうが、山南さんがさらに追い詰められたのは確かだろうな。

捨助が潜伏中の桂に会いに来ました。これ、西本願寺の中だったりして・・・。幾松からの届け物を
渡し、代わりに岩倉公への届け物を預かります。

屯所の庭で、稽古の場所をめぐって松原と篠原が言い争い。
もう少し向こうへ行け、先に始めたのは自分たちだと、まるで小学生だな。(笑)
加納が篠原を止めたのは、伊東先生の野望のため、今ここで問題を起こす訳にはいかないからだろう。 っていうか、稽古はもっと広い場所でやれよ!!(苦笑) 一応道場を作ってあったんじゃなかったっけ?
争いを見ている永倉と山南。
永倉「芹沢さんたちを思い出す。同じことの繰り返しだ。」
山南「時代は目の前で動いているのに、我々は何をやっているのか。」
新選組の現状を憂えている二人だが、考えていることは違いそう。
永倉のそれは、単純に仲間内の争いが続くことに対する不満であり、みんなが志を一つに仲良く
やっていければ、それで満足できそうな気がする。
山南の憂鬱は、もう少し複雑で深刻だろう。新選組が時代の流れに乗っていけないことへの憤り、
それに対し自分が何もできないことへの苛立ち、自分の存在意義が無くなっていく不安・・・。
山南の厳しい言葉に驚いて、見つめる永倉。

土方は、西本願寺の見取り図を前に思案中。あ、北集会所だ〜。
嫌そうに視線を流したと思ったら、伊東参謀のお出ましでしたか。(^^;;;
「だんだん皆さんの関係がわかってきました。」
「あぁ、そうかい?」と、土方の言葉を脳内補完。(笑)
「原田くんの発言にはなぜ誰も応じないのか。」の言葉は「今にあんたもわかる。」と流したくせに、「山南くんとは上手くいってないようですね。」は流せない土方。
「そんなことはねぇ。」
「彼はやや隊の中で孤立した感がある。山南くんは雄弁ではあるが、詰めが甘い。沈着を装っている
 が、案外情に動かされる方ではありませんか?」
さすが伊東参謀。すでに山南という人物を見切っていますね。でも、それを土方に言うのは何のため? 自分の有能さをアピールするためか、土方と山南の関係に亀裂を生じさせるためか・・・。
「山南の悪口は言ってほしくねぇな。」
「ほう? (笑) 嫌っておられるのだとばかり。」
「別段好きではないが、付き合いが古いんでね。昨日今日やってきたくせに、でかい顔して知ったよう
 な口をきく奴よりは、遥かにマシってことですよ。」
土方の睨みvs伊東の微笑み。うわ〜、ゾクゾクする〜〜。これからが楽しみだ。
伊東参謀は、山南を庇った土方をどう思ったのだろうか。こいつは油断がならない・・・と思ってくれたのなら、嬉しいな。
それにしても、「山南の悪口は言ってほしくねぇな。」 土方さんのこの台詞を山南さんに聞かせてあげたい。まったく、ラブコールは本人に向けて言えっての。>土方さん

会津本陣。薩摩の西郷さんと、見廻組の佐々木様、近藤が呼び出されています。
容保様から、弟であり京都所司代で桑名藩主、松平定敬公をご紹介。定敬公は戊辰戦争の折、会津まで援軍に駆けつけているんですよね。仲の良い兄弟だったのでしょう。
今後の京の守備について、意見を求められる3人。
西郷さんがボケまくっているのは演技ですよね。立場を明確にしたくないという、薩摩藩の当時の方針でしょう。
近藤は良順先生や象山先生の言葉を紹介し、まずは開国して力をつけた後に攘夷を行なうべきとの意見を述べます。
江戸で良順先生に会って、すっかり考えが変わりましたね。
良順先生の「どっかのゆすりたかりとおんなじだ。」は、もしかして新選組のことですか?(苦笑)

寺田屋では、坂本が飲んだくれています。先週から今週の間に・・・といっても、実際には5ヶ月の時が経っている訳ですが、勝海舟が軍艦奉行をお役ご免になり、閉居謹慎になってしまったらしい。
外国と渡り合える海軍を創る夢も潰え、幕府の上層部に対しても失望し、自暴自棄になっている坂本さん。訪ねてきた山南も驚き、言葉もない様子。
「わしはもう、どうでもよくなった。」
ふて腐れて寝転がる坂本に、山南は
「坂本さんにはそういうことは言ってほしくない。」
と言う。
その昔、坂本から近藤勇の話を聞いて、試衛館を訪れた山南。先日は、坂本の壮大なスケールの話を聞いて、今の自分に疑問を持った。今日もきっと、坂本と話すことによって、自分のこれから進むべき道を見出したい・・・そう思って訪ねてきたんじゃないのかな。
だから、自棄になっている坂本には少なからずショックだっただろう。
「私は近頃思うのです。つまるところ、この国を動かすのは、考え方や主張ではなく、人と人との繋が
 りなのではないでしょうか。」
山南の言葉に頷く坂本。
「だからこそ、藩に属さず、一つの考えにこだわらないあなたのような人が、日本になくてはならない
 のです。」
「知らん。こんな国、滅んだらええがじゃ。」
坂本はまだまだ立ち直れないでいるけれど、山南は少しずつ、自分の取るべき道が見えてきているような気がします。
「この国を動かすのは、考え方や主張ではなく、人と人との繋がり」 この言葉はすごく意味がありますよね。山南の言葉に影響を受けたのかはわかりませんが、このあと坂本が長州の桂と薩摩の西郷を結びつけたことによって、幕府は倒れ新しい世の中になった訳ですから。
山南も、“新選組を変えていくのは、人と人との繋がり”と考えていくのでしょうか。そのためにああいう道を選択するのかな。

寺田屋の別の一室では、酒に酔った捨助がおりょうちゃんに迫っています。
「俺だって、なんにもしねぇで銭をもらってる訳じゃねぇんだよ。ちゃんとそれに見合った仕事はしてんだ。命懸けのな。」
調子こいてると、いつか痛い目に合うぞ。>捨助

水辺に佇む山南さん、すごく無防備な表情してる。最近の思い詰めた風ではなくて、なにかぼんやりと、どうしようかなぁという感じ。水面に映る自分の顔を見つめて、足元の石を蹴り入れる。波に消える顔。今の自分が嫌なんだね。
それから思いついたように顔を上げて・・・。

「休むってどういうことだ?」
唐突な山南の願い出に困惑する土方。
「仮の話です。江戸に戻り、自分の進むべき道をもう一度ゆっくり考えてみたいと、ふと思ったもので
 すから。」
“仮の話”とするところが哀しいなぁ。土方はきっと聞き入れてくれないとわかっていて、お願いしているんだから。それでも願い出てみたのは、山南にとって大きな変化かもしれない。
「あんたの進むべき道は俺が知ってる。今、隊を離れてもらっては困る。」
土方は、山南が自分の居場所を見失って悩んでいるのに、気づいているのかもしれない。
その上で、「あんたのいるべき場所はここなんだよ。」と示しているのかもしれない。
「局長が許しても副長の俺が認めない。言っておくが、法度にそうある以上、許しなく隊を離れた者は
 脱走とみなして即刻連れ戻す。」
あ〜、土方さんの馬鹿〜〜。なんて不器用な人なんだ。こういう言い方しかできないなんて。(泣)
「お手間を取らせました。」
山南は極上の笑みを浮かべて立ち去る。
この微笑みは、なんとか立ち直るきっかけにしたいと思った最後の道さえ閉ざされた、山南の失望感の大きさを表わしているような気がします。

「休ませてあげればいいのに・・・。」
山南をずっと心配そうに見ていた総司の言葉に、
「今は山南が頼りなんだ。うちで伊東と理屈で勝負できるのは、山南だけだからな。」
と答える土方。
“うち”っていう言葉がいいね。試衛館生え抜きではないにせよ、土方にとっての山南の位置は、しっかり試衛館派の仲間の中にあるんだ。
「案外山南さんのことを買ってるんだ。」
にこにこする総司に、厳しい表情をふっと崩して、
「悪いか。」
と鼻の下をこする土方。いや〜、このさりげなさが、山本くん上手いなぁ。
総司もとっても嬉しそう。
あぁ、でも、総司に言わずに山南さん本人に直接言え!!って感じですよね〜。
先週の山南さんと同じ。この二人、考え方は全然違うのに、こういう不器用なとこだけ、どうして似てるんだろう。(^^;;;
「山南が頼りなんだ。」 この素直な言葉を本人にそのまま言えばいいのに、どうしても高圧的に、追い詰めるようにしか言えない。その不器用さがいじらしくて愛しいんだけど・・・。
でもね、土方さん。それじゃ、いつか、大切な人を失ってしまうんだよ。(泣)
「うちで伊東と理屈で勝負できるのは山南だけ。」これをもし本人に直接言ってあげていたら、山南さんは自信をなくすことはなかっただろうか。居場所を見失うことはなかっただろうか。

佐々木様と近藤がどこかのお座敷で飲んでいます。
「しかし近藤殿。同じ徳川様をお守りする者としてご忠告申し上げるが、あなたの振舞いはいささか危
 うい。」
容保公への発言を、佐々木様にたしなめられてしまいました。
佐々木「我らはいつでもご公儀のために忠節を尽くすだけ。余計なことは考えるな。」
近藤 「そもそも浪士組は、尽忠報国のために京へ上がりました。報国とはなんですか?諸外国から
 日本国をお守りするということではありませんか?つまりそれが攘夷。しかし今の攘夷では日本を
 守ることができないとしたら?攘夷を行なうことが日本国のためにならないとしたら、私たちはどう
 すればいいのですか?」
佐々木「我らが仕えるのは上様お一人。我らにとっての報国とは、ご公儀に報いるということであ
 る。」
近藤 「ご公儀に報いるということが日本国のためにならないとしたら?」
ん〜、確かに、佐々木様が近藤を危惧するのもよくわかる。開国思想だけではなく、最後の言葉はほとんど倒幕思想に繋がっていくものだからね。

この二人の会話はすごく興味深い。佐々木様の言葉はまさに、藩に仕え将軍に仕える“武士”の考えだ。特に会津藩士の家に生まれ育った佐々木様なら、会津士道が骨の髄まで叩き込まれているはず。本来の士道からすれば、たとえ主君の考えが我が意に染まぬとしても、極論すればたとえ間違っていたとしても、主君に従うのが武士だろう。
近藤が主君よりも日本国を考えるのは、新しい考えだ。佐久間象山や坂本竜馬、松本良順と深い親交があったとはいえ、近藤がこの新しい考えをすんなり受け入れられたのは、彼がもとは武士の身分ではなかったからかもしれない。あれだけ武士に憧れていながら、武士になりきれない。
これからも新選組として佐幕の立場を貫いていくには、近藤は葛藤を余儀なくされそうだ。

盃を持ったまま、固まっている山南。
明里さんはただ今、歴史の勉強中。でも、戦国時代の武将の関係がなかなか覚えられない様子。
「もういい。あなたに日本の歴史を学ばせようとした、私が間違いだった。」
山南さん、苛ついている。
「そないなことないよ。うち、やる気になってるんやから。」
「それにしては、前に教えたことをまったく覚えていないではないかっ!!」
声を荒げる山南。あ〜ぁ、明里さん、泣かしちゃった。
彼女にしか苛立ちをぶつけられない山南さんが哀れだ。
すぐに気づいた山南は明里に謝る。
「うちなりに頑張ってるのに。せんせと話がしたいから。」
山南のことを叩きながら、必死に訴える明里がいじらしい。
「私が悪かった。」
「あんたが悪い。」
「すまん。」

「今日の私は虫の居所が悪かった。いろいろあったものだから。」
「うちと関わりないやないの。」
「申し訳ない。だからもう、勘弁してくれ。」
「・・・(こくり)」
このシーンがすごく好きだ。感情をまっすぐにぶつけてくる明里に、山南が少しずつ変わっていくのがわかる。明里を横から流し見るようにしか見ていなかったのが、明里にしっかり体を向けて、正面からまっすぐに明里を見つめる。そして、
「石田三成は豊臣秀吉の家来だ。」
「誰?」
「太閤様だ。」
「・・・あ・・・猿ね。」
「・・・(こくり)」
今までも、人にいろいろ教える・・・というか、薀蓄をたれることの多かった山南だが、いつも知識を相手に説くだけで、相手に合わせてわからせるように話すことはなかったような気がする。だから総司に「眠くなってきちゃう」などと言われたりして・・・。
それが明里に会って、相手に合わせることを知ったのだ。理解できて喜ぶ明里を見つめる、山南の表情も嬉しそうだ。
人とまっすぐに向き合うことができず、その本心をいつも微笑の下に隠してきた山南が、明里に対して初めて心からの笑顔を向けられたのではないだろうか。その笑顔は穏やかで優しい。
良かったね? 山南さん。
「なにか欲しいものを言ってください。あなたに絡んだお詫びです。何が欲しい?」
「富士山・・・。富士山、見たい。」
「・・・富士山・・・。」
また思案顔になった山南さん、何を考えてる?(涙)

総司が木刀振って、一人稽古に励んでいます。
こんな気合い、今まで聞いたことないような気がする。
いっぱいいっぱいな、なんだか辛そうな表情だよ。
ふと、ひでちゃんがいることに気づく総司。
屯所の引っ越しで、会えなくなるのが寂しいひでちゃんに、総司はつれない。
さらに、ひでちゃんが医者に行く総司をつけていたことを知って、顔色を変えます。
「・・・つけたのか? なんでそういうことするんだよっ!!」
こんなに総司が声を荒げたことなんてあっただろうか。
「近頃そっけないから、他に好きな人ができたんかなぁって・・・。かんにん・・・。」
さすがに怒鳴られるなんて思わなかっただろう。引っ越しの話を聞いて寂しくて、総司がそっけなくて寂しくて、思わず後をつけてしまったひでちゃんの気持ちを思うと、可哀想になる。
でも、ひでちゃんに隠しておこうと思ったのは、たぶん総司の優しさだ。それを踏みにじられた形になってしまって、総司は悔しそうだ。
「重い病気なん?」
「たぶん・・・。そんなに長生きはできないと思うよ。先生も言ってたし・・・。」
「そんなことない・・・。」
「わかりもしないのに、そういうこと言うなよ!!」
「・・・かんにん・・・。」
やるせなさに泣き出しそうな表情で、総司がひでちゃんに話す。
総司を慰めようとして不用意に口にした言葉が、総司の胸をさらにえぐる。
「だから急がなくちゃいけないんだ。申し訳ないけど、私にはやらなきゃいけないことが山ほどあるん
 だよ。剣術だってもっと強くなりたいし、近藤さんや土方さんのためにもっと働きたい。だから・・・
 もう、私には関わらないでください。」
思い詰めたような総司の瞳。その視線は、ひでちゃんを通り越して、どこか遠くを見ているような・・・。
背中を向けられて、立ち去るしかないひでちゃん。
総司のことが好きなんだもの。慰めて励まして、ずっと傍についていてあげたいだろうに・・・。
ひでちゃんを拒絶しなければならない総司も辛いだろう。小鼻を膨らませて、必死で涙を堪えている総司が切ない。(涙)
あぁ、でも、藤原くんってほんと上手いですね。総司の心の揺れの一つ一つが、表情の変化になって全部伝わってくる。限られた命を見つめている、ガラスのような総司の心が、その瞳から、台詞から、息遣いから、溢れてくるような気がして・・・。見ていて胸が詰まります。

屯所の奥に端座する山南。動かない背中。
ふと顔を上げ、障子の先に広がる空を見つめた山南は、ついに心を決めてしまったのでしょう。
その表情は穏やかです。

帰ってきた近藤の姿を見つけた山南。
「今、お戻りですか。」
最後に声をかけていこうと決めて、表情をパッと変える堺さんがいいです。
「いかがでしたか?会津候の前で、思うところをお話しできましたか?」
近藤の参謀役として常に傍にいた時の、自信に満ちた表情と話し方に戻っている。あぁ、こんなきびきびとした口調だったなぁと懐かしくて泣けてくる。
「近藤さん」
報告して立ち去ろうとする近藤を呼び止めて、
「己の信ずるところに従って生きて下さい。周りからはいろいろな声が入ってくるでしょう。あなたの進
 む道はあなた自身が決めるべきだ。」
と。
「はい。」
近藤の答えを聞いて、頷く山南は満足そうだ。
自分の道をこの人に託そうとした時もあった。今、自分の進む道を決めた山南が、近藤に伝えるこの思いは大きいように思う。
それが別れの言葉と気づかぬ近藤は、不思議に思いながらも山南の前から去っていきます。(泣)

飲み屋さんで、山南は永倉と原田に江戸へ行くことを告げます。
一緒に飲む相手がいないと言っていた山南が、最後にようやく、二人を誘って飲んでいるんだと思うと泣けてくる。
「土方さんに内緒ってことは、脱走だろ?」
おや、左之助、土方さんのこと、“さん”付けに戻ってる。(笑)
「大丈夫。この人は捕まりはしない。」
永倉さんのこの自信は、いったいどこから来るんだろう? 三谷さん、また何か企んでます?(爆)
「また戻ってくるんだろ?」
左之助〜、そんなこと言っちゃダメ〜〜!! だって、戻ってきちゃったら、戻ってきちゃったら・・・。(T_T)(思わず錯乱状態)
「で、二人にお願いがあるんですが。」
山南がプライベートで誰かにお願いしたのは、もしかして初めて?

山南が二人に頼んだのは、屯所でみんなの注意を引き付けておくことでした。
二人のわざとらしい喧嘩が最高に笑える。この二人の喧嘩は派手そうだ。
慌てて飛び出していく島田。やれやれと出て行く源さん。土方さんまで出てきたよ。作戦成功だね。
灯りを吹き消して、荷物をまとめて、部屋を出て行こうとして固まる山南。
斎藤さ〜ん。気づくとなぜかいる斎藤さんだ。(爆)
「見なかったことにしてくれないか。」
「・・・俺は人のことには関心がない。」
あ〜、いいキャラだ。(*^o^*)
そんな斎藤さんに、きちんと頭を下げていく山南さん。

屯所の門の前でも、誠の提灯に一礼。先を急いでいても、山南さんは礼儀正しい。
さらに、こんな遅くまで稽古をしている総司を見つけて、迷った末、やはり声をかけていくことに決める。この辺の細かい演技も、堺さんお上手だ。
「剣先が下がってきている。君の悪い癖だ。」
「細かいところ見てますね。」
「・・・頑張りなさい。」
「頑張ってるんですけど。」
「頑張りなさい」に万感を込める山南と、何も気づかずに「頑張ってるんですけど。」と返す沖田。
あ〜、泣けます。
最後に、沖田をもう一度振り返って・・・。これは沖田だけではなく、屯所全体を、新選組を、見納めているように感じました。

翌朝・・・
近藤「それはどういうことだ?」
井上「夕べ、どうも帰ってないんです。」
近藤「一番最後に見たのは?」
井上「ゆうべ遅く、総司が表で話しています。」
沖田「でも、遠出する風ではなかったですよ。」
武田「長州の奴らにやられたのかもしれませんね。」
慌てる面々の中、黙ったまま床をずっと見つめている土方。
カメラがだんだん寄っていくところが上手い。
近藤「・・・すぐに手分けして探せ。」
沖田「はい。」
土方「その必要はねぇ。・・・奴は逃げたんだ。」
気づいてしまった土方。昨日の、休暇願いの一件を話します。
「もちろん俺は認めなかった。だからあいつは・・・。」
あ〜、追い詰めてしまったのは自分のせいだと、土方は後悔しているのだろうか。
「・・・だけど。」
まさか本当に行ってしまうなんて・・・と、総司は山南の行動が信じられないでいるが、
「これは脱走だ。」
と土方は言い切る。土方は山南の覚悟も全部、わかってしまったのかもしれない。
対立していたからこそ理解できる、山南の心境、そして行動。
「・・・逃げる理由はどこにある?」
近藤はまったく気づいていなかったんだね。外に出る仕事が多かったし、山南にはいつも気遣ってもらう側だった。時勢のこと、新選組のこと、近藤は自分の悩みで手一杯だった。
源さんはもちろん観柳斎だって、そういえば・・・と思い当たることはできるのに。
「しかし脱走すればどういうことになるのか、あの人だって・・・。」
そこまで言いかけて、山南の覚悟に気づく近藤。

「山南さんの持ち物が全部なくなってます。」
報告しながら源さんも悔しそうだ。
「あの馬鹿野郎っ!!!」
土方が将棋盤を蹴り上げる。土方の悔しさと無念さが駒とともに飛び散る。
彼はこういう行動を取った山南を責め、そうさせてしまった自分をも責めているはずだ。
「どうするんですか?」
切羽詰ったような表情で訊ねる総司に、近藤は
「脱走した者は連れ戻す。それが法度だ。」
と振り絞るように言う。
「連れ戻した後は?」
心配そうな源さん。
答えられない近藤に代わって
「決まってんだろ。」
と答える土方も苦しそうだ。
息を飲む源さんと総司。
「今はその話は・・・。」
覚悟の決まらない近藤に、
「近藤さん、一切の例外は認めないと言ったはずだ。」
と土方が詰め寄る。
すさまじい緊張感。どの役者さんの目も血走っています。人ひとりの命がかかるというのは、こういうことかと、息が詰まってきます。

武田が斎藤に追っ手を命じるのを、土方が止めました。
そして、近藤と土方はしっかりと目を見合わせて、互いの意思を確認し、頷きあいます。そして今度は近藤が沖田を見つめると、沖田はかすかに目を見開いて、近藤の意思を知ります。
「総司、お前が行け。」
沖田はしっかりと、自分を指名する近藤と土方の意思を受け止めたようです。
このみごとなアイコンタクト。ただ見つめ合っているなんて、生易しいものじゃない。本当に意思を伝え合っているんだと感じさせる凄み。
はぁ・・・。いや、気づくと、息するのを忘れてる。(爆)
斎藤が追っ手では、きっとしっかり任務を遂行し、山南を見つけ、連れ帰ってきてしまうだろう。
近藤も土方も、法度は遵守しなければならない。けれど、本音はやはり山南を見逃したい。二人の気持ちを汲んで行動できるのは、総司しかいないだろう。

馬で追う総司。
その先を歩く山南とおすずはのどかだ。鮮やかな緑。鳥のさえずり、道端の花。
明里を見つめて微笑む山南は、本当に穏やかな表情だ。今この時の幸せを噛み締めている。
おすずが山南の“明るい里”になったんだなぁと心から思う。
二人の幸せがずっと続いてほしい・・・と無理を承知で願わずにいられない。
切なく優しいBGMが放送後もずっと心に残って、胸が締め付けられました。


これから一週間、まるで、屯所で待つ近藤や土方のような気持ちで、次回の放送を待つことになりそうです。(T_T)

 

前へ 戻る 次へ