大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第28回  そして池田屋へ  

オープニングは、今後の対策を話し合う幹部会議。
「これはもはや、我らのお役目を越えています。ここは会津に加勢を。」
近藤に訴える山南に、
「俺たちだけでは、敵わないっていうのか?!」
と噛み付く土方。
「事が大きすぎます。我らだけで行い、万が一討ち漏らしでもしたら・・・。」
「そんなことにはならん。」
「今までの相手とは、訳が違うのです。」
「戦の前から負けた時のこと考えて、どうする!」
「あらゆることに備えて、策を練っておくのが軍議ではないか!!」
ひょえ〜っ。冒頭から凄まじい火花が散っています。
思わず総司が、
「山南さんも、怒鳴ることあるんだ・・・。」
と呟いてしまう程。

浪士たちの陰謀の大きさに、誰もが気を昂ぶらせているんですよね。
そんな中、とにかく失策は許されないから万全を期そうという、やや守りに入った姿勢の山南に対して、土方はこれを新選組の名を挙げる最大のチャンスと捉え、できればすべて自分たちの手柄にしたいと、単独で突っ込むつもりでいる。
どちらが良策とは簡単には決められない訳ですが、珍しく山南さんの迫力勝ちという感じで、
「近藤さん、是非明日の朝一番に、容保公にお願いに上がってください。」
という山南の言葉に頷く近藤。ところが、
「何を悠長なことを言っておられるのだ!」
と、観柳斎から罵声が飛びます。
「よろしいか。奴らは、我々が押さえた戦道具を早々に奪い返した。これがどういう意味か、おわかり
 か! 奴らは古高が白状したとは思っていない。思っているなら、探索の手が入る前に、すぐに京
 を離れるはずではないか。となれば、奴らが次に企むのは、古高の奪還。奴らは間違いなく、古高
 を取り戻しに、ここへやってきますぞ。」
さすが、軍師。冷静な分析力です。
「先手を打ちましょう。奴らは古高奪還の策を練るために、早々どこかに集まるはず。恐らくは今夜。
 ことごとく捕らえるには、絶好の機会なり! すぐさま兵を整えて、奴らが集まりそうな宿を片端から
 当たるのです。局長!一刻の猶予もなりませんぞ。」
浪士たちの陰謀を防ぐだの、新選組の名を挙げるだの、まずは目的を考えてしまっている山南・土方の策に比べて、浪士たちのこれまでの動きを分析し、これからの行動を推理してそれに対応しようという、現実をしっかり捉え、足元を見つめた武田の策は、説得力がありますね。
みごとに場を制した観柳斎。もちろん、誰にも異論はありません。

“新選組が突き止めた過激攘夷派による陰謀、それは、京の町に火を放ち、混乱に乗じて天皇を
 連れ去るという、恐るべきものであった。京の人々を災いから守るため、ついに新選組が立ち上
 がる。”

うわ〜、ナレーションがかっこいい。
そして、出演者のクレジットの流れの速いこと、速いこと。
隊士や浪士が、いったい何人出るんだ?


「新選組は、どうすればよいのでしょうか?」
はぁ? どうした、近藤さん。今更・・・。
訊かれてる源之丞さんも、目をまん丸くしています。
「それを、私が答えるの? なんで?」
首を傾げる源之丞さんが可笑しい。
「京のことは京に住んでおられる方に聞くのが、一番だと思いました。」
まぁ、確かにねぇ。意識調査は必要かもしれないけど、意見を求めるのは良いけれど、この土壇場になって聞くことか?
困惑する八木夫妻。しかし、源之丞さんはしばらく考えると、
「お行きやす。」
と、きっぱりと答えます。
「今すぐ行って、浪士どもを捕まえてきなはれ。この町に火ぃつけて、どさくさに紛れて天子様を連れ
 出そうなんて、ばち当たりもええとこや。そんな奴ら、えらい目に合わせてやらな。近藤はん、お行
 きやす。」
大きく背中を押してくれた源之丞さんに、
「はい!」
と答える近藤。

一方、会津本陣 金戒光明寺では、
「兵は出せぬ。」
小森様の言葉に、唖然としている広沢様と秋月様。
御所が襲われても構わない。そうすれば殿は京都守護職を解かれ、我らは国へ帰れる。
小森様は、日本国よりも徳川家よりも京の町よりも、会津松平家というお家が一番大事なのでしょうね。
新選組には、戦仕度に手間取っていることにして、体良く引き延ばせ!と指示を出します。

象山先生のところを訪れている、長州の桂小五郎。
先生が国許から持って来た地酒をいただけるということで、嬉しそうに吟味しています。
「信州が誇れるのは、佐久間象山と地酒だけだ。」
いや、そんなことはないでしょうけど。(苦笑)
長州に来てはいただけないかと、先生に訊ねる桂。藩内の過激派に説いて、暴走を止めてほしいとお願いします。過激派を押さえるのに、桂はほとほと手を焼いているのでしょうね。
「わざわざ出向く気はない。ここに来れば説いてやろう。」
と答える象山先生。
祇園まつりのお囃子が、ずっと聞こえています。

再び幹部会議が行なわれています。
近藤の隣りには、会津藩から広沢様も。
「小川亭、島村屋、井筒、近江屋、池田屋、四国屋・・・。」
長州寄りの浪士たちが会合に使いそうな場所を、山崎が挙げていきます。
「少し絞れないのか?」
との近藤の問いに、
「絞ってこれくらいです。」
と答える山崎。
軍議に参加している広沢様は、なんだか心ここにあらず。
観柳斎から「加勢はどのくらい来てもらえるんですか?」と訊かれて、慌てて「五百。」と答えます。
「頼もしい」「一斉にかかれば、すぐだな。」
会津を信頼しきっている彼ら。
あ、でも心のどこかで、(果たしてどうだか・・・。)なんて思ってそうな男が一人いそうですが。(苦笑)
「会津藩とは、祇園の町会所で五つ時におち合う手はずになっている。」
近藤の説明に、心苦しそうに顔を歪める広沢様。
新選組を買ってくださっている方なだけに、騙すようなこの役目はお辛いでしょうね。
「山南くんには、奴らが古高を奪い返しにくることを考えて、ここに残ってもらいたい。」
土方の依頼に承知する山南。土方は、「あらゆることに備えて・・・」と言った山南の意見を、こういう形で取り入れたのでしょう。

象山先生、座敷の隅に桂が地酒を置いていってしまったことに気がついて、捨助を呼びます。
“般若”と呼ばれることに文句を言う捨助。
「名にこだわるのは、己に自信のない証拠だ。桜の花は何と呼ばれようが、美しいのに変わりはな
 い。」
象山先生は諭しますが、捨助にはちょっと難しすぎるようです。(苦笑)
「これを桂くんに届けてくれ。三条小橋の池田屋に行くと言っていた。」

池田屋にいる桂。そこへ長州藩士吉田稔麿が到着します。他には浪士が二人だけ。残りは皆、桝屋の土蔵にあった武器火薬を別の場所に移している最中らしい。
この池田屋。2階建てのセットはとても珍しいとか。スタッフさん、すごく気合い入れて作ったみたいです。おかげで、奥行きや、2階から見下ろす高さが、とてもリアルに感じられます。


「なんだか町が落ち着かないなぁ。」
祇園の町会所に向かう土方が、呟いています。
町中に鳴り響くお囃子の音に、気持ちも落ち着かなくなっているでしょう。
「明日の6月6日は祇園の宵山だから。」
斎藤が教えます。
「宵山?」
「本まつりが7日。その日は町中が騒がしくなる。その前の日が宵山。前の前の日の今日が宵々山
 だ。」
「じゃ、昨日は宵々々か。」
笑い合う二人。のどかだなぁ。なんか、そのまんま、まつり見物にでも行ってしまいそうだ。
二人の後ろを、なぜか武八郎が黙ってついてきています。

「よぉっ!」
と三人の前に飛び出してきたのは、原田と永倉。大きなイカ焼きを持っています。
「うまいぜ〜。お前らもどう?」
と勧める左之助に、
「またこんなところで油売ってる。」
と咎める土方。
「敵を油断させてんだよぉ。ヤリイカ。一口どう?」
左之助は斎藤の顔の前に、イカ焼きと槍を一緒に突き出します。だからヤリイカね、はいはい。(笑)
「イカは胃にもたれる。」
と遠慮する斎藤。土方も、
「よく仕事の前に食えるな。」
と呆れながら去っていきます。
「仕事の前だから食うんだよぉ。」
後を追う左之助。
永倉も武八郎に、「食うか?」 とイカ焼きを差し出しますが、
「いかな。」(“イカな”ね、はいはい。) と先を急ぐ武八郎。
「地味な奴だな。」
さりげなく、DonDocoDonの共演だ〜。

池田屋の桂のところへ、捨助が地酒を届けに来ました。
「お前とは、以前どこかで会ったような気がする。」
それは、近藤さんの婚礼の席でじゃないですか?>桂さん
「桂先生、お願いがあるんですが。私を雇ってはもらえないですかね?」
捨助、象山先生には、いい加減付き合いきれなくなったらしい。(苦笑)
「あのじいさん、人使いは荒いわ、説教は長いわ、言ってること訳わからないし、いったい何者なん
 です? あの髭じじい!!」
「天下の佐久間象山も、形無しだな。」
桂は、人手は足りていると断ります。
しかし、売り込みに必死の捨助、踊りまで踊ってみせたのが、とんだ逆効果。お膳を蹴飛ばして、
桂の着物を汚してしまうという大変な粗相を・・・。
「引き取ってもらえっ!」
「はいっ!」
「話は終わってないんだから、もうっ。」
「いいから。ほら、立て!」
捨助は浪士二人に抱えられて、外に追い出されてしまいます。
「いったん、藩邸に戻る。」
えっ? ということは、もしかして捨助が桂の運命を変えたということか・・・?

土方たちが祇園の町会所に到着しました。
先着している隊士たちは、既に鎖の着込みに隊服で身を調え、準備万端。いつでも出動できそう
です。
土方たちが席に着き、軍議が始まります。
 土方「町に人が溢れていた。早めに出た方がいい。」
 近藤「会津藩が来るまでは、動くなというお達しだ。」
 土方「夜中になっちまうぞ。取り逃がしたらどうすんだ。」
 武田「ここは、加勢を待ちましょう。」
臨機応変・・・というより血気盛ん?な土方、あくまでも指示を守る近藤、冷静に事態を判断する
武田、それぞれの性格を表わした発言が面白いですね。
そこへ、
「いくら待っても無駄だ!会津は来ない。」
良心の呵責に耐えかねたのでしょうか。広沢様が真実を話しにみえました。
 土方「どういうことですか?」
 広沢「会津は、長州を相手に戦をするのを恐れておる。」
 近藤「話が違うではないですか。」
 広沢「・・・小森様のご命令だ。」
土方は「どうする?」 と近藤に訊ねます。
横から「加勢が来ないんだったら、待っててもしょうがないですよ。」 と口を挟む総司。
瞑目して思案に耽る近藤に、「局長!!」 と土方が促す。
「よし。我らだけでやろう!」

町角に座っている、監察方の島田魁と浅野薫。ただ今、お仕事中。
浅野が、見張りばかりさせられてつまらない、自分も刀を持ってみんなと斬り込みたい、と不満を漏らしています。
人に斬りつけられるのは恐いぞ、斬り合いは慣れた奴らに任せておけ、と浅野を諭す島田。
その時、人込みの中を悠然と歩く、宮部鼎蔵を見つけました。後を追う二人。しかし、残念ながら見失ってしまったようです。

町会所では地図を前に軍議中。
「宮部が三条の辺りを歩いていたとすれば、奴らが集まるのは恐らく、ここから北の方だ。俺たちは
 34人。これを二手に分ける。鴨川を挟んで局長には西を、東は俺が受け持つ。四条から三条まで
 の間を、局長は木屋町通り、俺は縄手通りを通って北へ進みながら、一軒一軒片っ端から突付い
 ていく。」
と、土方が探索の手順を説明します。
「何人欲しい?」 と土方。
「10人でいい。」 と答える近藤に、
「足りますか?」 と武田が危ぶむ。
「そっちは祇園を受け持つから手間がかかる。」 なるほど〜。
「その代わり、10人は俺に選ばせてくれ。」 近藤の言葉に、
「じゃぁ、局長と私と、あとは誰にします?」 と武田。
「あんた、決まってんのか?!」 すかさず入る、土方の突っ込み。(爆)
「軍師ですから?」 くっくっくっ。観柳斎には、効き目なし。
いいのか?かっちゃん・・・と訊くように近藤を見る土方に、近藤は頷いてみせる。

近藤 「一人目は永倉くん。」
永倉 「承知!」
近藤 「そして沖田。」
沖田 「はい。」
近藤 「平助。」
藤堂 「・・・はい!」 <良かったね〜、平助。近藤先生、一緒に連れて行ってくれるよ。
近藤 「それから谷くん。」
三十郎「承知。」
近藤 「すまん。あんたじゃない。」 (爆)
憮然とする長兄の奥で、昌武がおずおずと自分を指差します。
そうだ、というように昌武を見つめる近藤。
「泣きそうですよ。」 総司が指摘したのを受けて、土方が、
「兄貴、ついてやってくれるか?」 とフォローする。
三十郎「承知。」
土方 「すまん。あんたじゃない。」 (爆笑)
土方「そっちの兄貴。」
万太郎「承知。」
上手い〜〜。三谷さん!! でもって、まいど豊さんが、また上手いんだ。役者さんたちの息も合っていて、最高の掛け合いになっています。

近藤「お前にあとは任せた。」
土方「では・・・。」
原田「ちょっと待った!」
どうした?左之助。
「俺は?」
寂しそうな、情けなさそうな左之助の声。(苦笑)
「全部もらうとトシが拗ねるから、左之助は諦めた。」
近藤さん、優しい〜。左之助への心配りの上手さに感心するとともに、土方さんとの信頼関係を感じて、とても嬉しかったり。
さらに近藤隊として、土方が奥沢・安藤・新田を指名したところで、
「すいません!」
と手を挙げたのは、さっき島田にぼやいていた浅野です。
「私もお連れください。監察方も一人いた方が、何かと便利だと思うので。」
ん〜、役に立つのか?浅野くん。なにか、気持ちだけ先走っている、高校生みたいに見えるのだけど。(苦笑)
「さて、当たりくじを引いたのはどっちかな?」
土方がニヤリと一同を見回します。
大きな喧嘩を前にして、あなた、絶対ワクワクしてるでしょう〜〜。(爆)
「たぶん、こっちですよ。私、運がいいから。」
って、にっこり言っちゃう総司も、さすが強者。

さて、出動です。
夜の町を、列を組んで駆けていく隊士たちが、かっこいい〜〜!!
障子に映る明かりの前を走り抜け、橋の上を駆け抜ける。
こういうのが見たかったの。

すぱん!と宿屋の戸を開けて、
「主人はいるか!御用改めである!!」
凛々しい近藤の前を
「わぁーー!!」
走っていく素っぽんぽんの子供たち。その後ろを追いかけていくお母さんと、お尻を掻きながらいく
お父さん。(笑)

のれんを掻き分けて、入ってくる土方隊。
「御用改めであーる。」
と左之助。“あーる”ってなぁに? “あーる”って。(笑)

さらに走っていく松原・河合組。
宿屋に入り、「御用改めである!」 と告げると、「へーーい。」と出て来た女中さん。
「お越しやす。お泊りどすか?」 のんびり、にっこり応対されて、
天を仰いで、「違うようだ・・・。」 と呟く松原さん。
へなへなと上がり框に腰を落として、「これ、堪んないなぁ、もうっ。」 と河合さん、泣きべそ。
確かに、断続的に延々と続く緊張感は、精神的に過酷ですよね。

「次は池田屋です。」
告げる武田に、近藤が黙って頷きます。
ザッザッザッ・・・。近藤隊が運命に向かって歩いていきます。

その頃、池田屋では・・・。
「ではこれより、新選組の屯所を襲撃し、古高くんを救い出し、奴らを皆殺しにする。もはや躊躇って
 いる場合ではない。その勢いで、一気に事を成す。御所へ向かうのだ。」
宮部の言葉に望月亀弥太は、
「異議無いぜよ。」
と応えますが、
「桂さんの意見も聞いた方が・・・。」
と吉田稔麿は、提案します。
「桂さんは何をやっているんだ。」
血走った目で苛立ちを見せる宮部。

その桂は、ちょうど長州藩邸を出ようとしていました。
そこへ再び現れる捨助。手には山のようにイカ焼きを持って、さっきのお詫びにと差し出します。
もはや相手にしない桂。


近藤隊、いよいよ池田屋に到着しました。
「主人はいるか。御用改めである。」
平ちゃん、声裏返ってる。(笑)
その声を聞いて、奥へ向かう主人と、応対に出てくる番頭。
「新選組だ。」
「これはこれは、ご苦労はんです。」
「御用改めである。すまぬが部屋を調べさせてもらう。」
「へぇ。」
平助と番頭が遣り取りしている間に、壁に掛けてあった幔幕を、不審に思った沖田が引き下ろしました。現れたのは、ずらりと並んだ槍や鉄砲。
「これを!」
駆け寄る隊士たち。
近藤は、主人が奥の階段を上っていくのに気がつきます。
昌武を連れて、後を追う近藤。

「新選組が来てます。」
主人が宮部たちに教えます。一斉に刀を取って、立ち上がろうとする浪士たち。
それを、「待て!」 と宮部が止めました。
蝋燭を吹き消し、息を潜めます。

一方、足音を忍ばせて、階段を上っていく近藤と昌武。
近藤は階段を上りきったところで、
「お前はここで待て。」
と昌武に指示します。
部屋に近づく近藤。息を殺して待つ浪士たち。
刀を握る手が震えている浪士がいるのが、リアルです。
両側へ引き戸を開けた近藤。そこにはいたのは、多数の浪士たちでした。
近藤の目の色が変わります。そして、一旦戸を閉める。
これは意外だった〜〜!! 思わず「閉めるのかよっ!」と突っ込んでしまった。
でもそれは、昌武に指示を出すためだったんですね。
「当たりだ。土方に知らせろ。」
階段のところに戻ると、昌武にそう告げます。
頷いて、階段を駆け下りていく昌武。
その間に、浪士たちが部屋から出てきました。
「御用改めである!手向かいすれば、容赦なく斬り捨てる!!」
いよいよ、運命の死闘の始まりです。
刀を抜く近藤。真っ先に斬り掛かってきたのは、望月でした。あんなに仲良くしてたのに、亀ちゃん。でもだからこそ、自分が斬る!と思ったのかも。近藤は望月を斬らずに、力任せに蹴飛ばします。

二階の騒ぎが一階にも聞こえてきました。
真っ先に気が付いた沖田が、「永倉さん!」 と声を掛け、刀を抜いて表階段を駆け上がります。
「こっちは引き受けた!」
武田の言葉に、銃を縛っていた手を止めて、永倉・藤堂も沖田の後を追います。
あとはもう、乱戦。
さすが天然理心流宗家らしい、落ち着いた力強い剣を見せる近藤。突きを中心に、軽やかな剣さばきの沖田。力強く豪快な永倉、華やかな藤堂。それぞれの個性が感じられる殺陣です。
池田屋には欠かせない階段落ちも、史実になるべく忠実に作った狭く急な階段を、スタントの(?)
俳優さんが落ちていきます。これは辛そうだわ。
窓から逃げる隊士たち。外を守っていた奥沢栄助・安藤早太郎・新田革左衛門が斬られて倒れます。それを植え込みの陰で震えながら見ている浅野。(オイッ!!)
二階建てのセットだけではなく、最新式のカメラを使っての撮影も、現実味のある、迫力の映像になっていますね。
二階の浪士たちが次々と階下へ下りていき、激戦の場は一階へと変わりつつあります。
「下が手薄だ!誰か!!」
階段の下から叫ぶ武田。それを聞いて、永倉と藤堂が一階へと駆け下りていきます。
さらに浪士たちは一階へと逃れ、
「下へ行ってください。ここは一人で大丈夫です。」
沖田が浪士を一人斬りながら、近藤に叫びます。頷く近藤。

昌武が必死に夜の町を走ります。
探索中の土方隊。先頭を走る土方を、島田が呼び止めました。
向こうから掛けてきた昌武が、「池田屋です。」 と一言告げます。
「池田屋だ!」
「よっしゃーーっ!!」
原田を先頭に、威勢良く走り出そうとした一同を、
「待て!」
と止めたのは斎藤。
「池田屋ならこっちが早い。」
さすが、斎藤さんだ。
源さんが昌武を止めて、
「ご苦労だが、松原たちにも伝えてくれ。」
「はい。」
再び走り出す昌武。

池田屋の前でも、死闘は繰り広げられています。
悲鳴を上げながらも見ている群集。
そこへ捨助と桂がやってきました。
「新選組だぁ。あいつ、知ってる!!」
すっかり見物人と化した捨助の横から、桂が消えます。

中庭で戦っていた藤堂。浪士を倒してほっと一息。刀を地面に突き刺して、鉢金を外します。
ダメだって、平助!そんな、無防備な・・・。
と思ったら案の定、背後から襲ってきた浪士に、振り向きざま額を斬られてしまいました。
倒れる平助。
「平助ー!!平助、大丈夫か?平助!!」
永倉が駆け寄ります。

二階で戦う沖田。上段から斬りかかってきた二人の剣を、同時に受け止めているのがかっこいい。
望月が沖田の背後から斬りつけようとして、刀を鴨居に突き刺してしまいます。芹沢暗殺の時に総司が犯した失敗と同じ。慌てて脇差を抜く亀弥太を、総司が追い詰めていきます。
総司、むちゃくちゃ具合悪そうなんですけど・・・。蒼い顔に暗い瞳。
後ろを向いて逃げようとした亀弥太の背中を斬って、さらにもう一太刀浴びせようとしたその時、総司の胸から込み上げてきた血が、口から飛び出しました。手の平に受けた血の塊を、呆然と見つめる総司。その総司の様子に怯えたように、亀弥太は逃げていきます。
床に膝をつく総司・・・は、いいんですけど、この下から舞い上がる花びらみたいなのは何なんですか?
せっかく藤原くんが、一瞬で変わってしまった自分の運命に、半ば呆然と、半ば愕然とする総司を、熱演で見せてくれているのに、台無しなんですけど。せっかくリアルさを追求している池田屋なのに、こんな陳腐なCGを被せてしまったら、緊張感がなくなって、どっと脱力してしまうんですけど。
勘弁してくださいよ。

・・・気を取り直して。
一階の剣戟はまだ続いています。
手の平を斬られて、応急処置する永倉。
浪士を追って中庭に出た近藤が、一人の浪士と剣を交えていた時、
「かっちゃん!後ろだ!!」
懐かしい声が!! 近藤は振り向きざま、屋根から飛び下りてきた浪士を斬ります。
そして近藤の前の敵は、駆けつけた土方が。
「待たせたな。」
にやりと笑う土方に、近藤も笑みを返します。
山本くん自身が、土方遅れてきたくせに、カッコよすぎ!と言ってましたけど、ほんと。(爆)
でもその一言で、一瞬にして交し合える二人の気持ちがいいですよねえ。
そして遅れてきたくせに偉そうに、「後は俺たちに任せな。」 と続く原田と、にこやかに続く谷三十郎。(笑)
土方隊が表で戦い始めます。
あ、三十郎、今日は頑張ってる。源さん、腕の見せ所。左之助、それはアリかよ。(<キン蹴り)
島田さん、重量級の戦いだ。
中庭では武八郎が追い詰められているところへ、斎藤さん登場。瞬く間に3人を斬り倒して、
「行くぞ。」 と去っていきます。斎藤さんもカッコよすぎ。(笑)

二階に上がってきた左之助。
背後から聞こえてきた咳に、一瞬槍を構えますが、総司だと気がついて、慌てて駆け寄ります。
「どこやられた?」
「大丈夫。」
「だけどお前、血まみれだぜ。」
そこへ永倉もやってきました。
咳き込んだ総司の口から、飛び散る鮮血。
「お前・・・。」
強張る原田と永倉の表情。
「みんなには言わないで。お願いだから・・・。」
総司の切実な願いに、
「わかった。」
二人は応えます。

松原隊到着。
「遅くなりました!」「遅くなりました!」
詫びる松原と河合に、出迎えた武田が、
「遅いっ!!」
と一喝。そんな、怒鳴らなくても・・・。(苦笑)

傷ついた亀弥太は、長州藩邸に助けを求めました。
しかし、屋敷の中では桂が、
「追い返せ。」
と命じます。
「我が藩が面と向かって新選組とやり合えば、どうなる? それは池田屋だけの騒ぎでは納まらなく
 なる。長州と会津の戦になるのは明白。今はその時ではない。池田屋の一件と長州藩は関わりな
 し。我が藩に助けを求めてきた者は、誰一人中に入れてはならん。それがたとえ、長州の者であっ
 てもだ。」
苦渋の決断をする桂。彼は情に流されることなく、冷静に政治的な判断を下します。それでも、
「その男、名は?」
と藩士に尋ねます。“土佐の望月”と聞いて、
「坂本くん、すまん・・・。」
と呟く桂。
そして長州藩邸の門前で、亀弥太は追い返されてしまいます。
「どういてですかぁ。長州の方々も、戦いゆうがですよ、新選組とぉ。どういて助けに行ってやらんが
 ですかぁ。どういてぜよぉ。どういてぜよぉ。」
泣き崩れる亀の姿に泣けます。

土方が平助の額の傷を手当てしています。
「深い傷じゃねぇ。すぐに治る。」
土方の言葉に、
「信じていいぞ。薬屋の言うことだ。」
と近藤が言葉を添えます。頷く平助。
この二人にそう言われると、治ると思えてしまうのは、私が惚れているからでしょうか。(爆)

そこへ二階から、戸板に寝かされた総司が下りてきました。
慌てて駆け寄る近藤と土方。
行き絶え絶えな様子の藤原くんが上手い。
「総司!!」
「大丈夫。斬られてはいない。」 と永倉、
「凄かったぜ。階段、上から下まで転がり落ちてさ。」
と、原田が咄嗟に嘘をついて誤魔化します。
「馬鹿。」
近藤が言うと、
「すいません。情けないです。」
囁くように答える総司。
「怪我の具合は?」
と訊ねる土方に、付き添っていた源さんが、
「骨はやられてないようです。」
と答えて頷きます。
「頼んだぞ!」
土方が戸板を持っている隊士たちに声をかけ、総司は運ばれていきました。
「お大事に〜。」
わざと明るい声で見送る左之助。永倉と顔を見合わせます。

二階に検分に上がった近藤と土方。
土方が見つけたものは、廊下の手すりに掛けられた隊服でした。
「総司のだ。」
なにげなく見ていた土方が、何を感じたのか、付いた血の痕を不審そうに改めます。
土方さん、勘がいいからなぁ。もしかしたら気づいてしまったかも。

近藤が部屋に入っていくと、倒れていた宮部が気づいて起き上がりました。
「新選組局長、近藤勇。」
「肥後脱藩宮部鼎蔵。」
「すべては終わった。潔くお縄を受けられよ。」
「おぬしの指図は受けん。幕府の犬め!!」
宮部に罵声を浴びせられて、背後に来ていた土方が前に出ようとするのを、近藤が止めます。
「わしらを斬ったところで、時代の流れは止められん。自分のやってることの愚かしさに、なぜ気付か
 ん。」
「愚かなのはそっちの方だろう。」
「今我らのお役目は、京の治安を守ること。己の生き方に、一点の曇りもない!」
「我らの後には、何千何万の志士が続く。お前はそれをことごとく斬るつもりか。」
「それがご公儀に盾突く者ならば、斬る!」
「愚かなり。近藤勇。」
宮部が刀を構え、近藤も抜刀します。斬りかかってきた宮部の刀を払い、胴を斬って倒す近藤。
倒れた宮部を見下ろす近藤と土方ですが、重苦しい表情です。

階下に下りると、武田が報告に来ました。
「討ち取り七名、召し取り四名。大勝利です。」
「味方の損害は?」
と訊ねる土方に、
「死亡一名、深手二名。」
声の調子を落とす武田。
死んだのは自分の組の奥沢と聞いて、瞑目する近藤。
そこへ、島田は一同揃ったことを、源さんはたった今会津勢が到着したことを、知らせに来ました。
表に出ると、ずらりと並んだ会津の軍勢が。
「お働き、ご苦労に存ずる。」
「応援、かたじけなく存じます。」
「この場は会津様のお手を借りずに、なんとかなりました。」
というのは、土方さん、嫌味ですか?(笑) それに対し、
「それは何よりだ。あとは我らに任せられよ。」
横柄な言い方をされて、思わず喧嘩を売ろうとする土方さん。
大きな喧嘩の後で、いつにも増して気が昂ぶっているようです。(苦笑)
近藤さんはそれをすかさず止めて、隊士たちの前に立ちます。
「いざ!!」「おーーーっ!!」
誠の旗を先頭に、隊列を組んで凱旋する隊士たち。
後ろにいる、怪我した平助を気遣う源さんが優しい。
走り回って疲れ果て、へろへろな河合さんが可笑しい。


翌朝、おりょうが坂本龍馬に、望月亀弥太の死を報告します。
「亀弥太さんはな、一旦は逃げ延びたんやけど、長州藩邸に助けを求めに行って、断られて自害し
 はったて。」
悲痛な面持ちでそれを聞く龍馬。
龍馬は、窓の手すりにもたれながら、やるせない思いを吐き出します。
「近藤、おまん、何やりゆうがぜよ。わしは昔から言いゆうろう。日本人同士殺し合うても、いったい
 何になるがぜよ。こんなこと繰り返しても、新しい世の中はいつになっても来んきね。・・・亀、おまん
 も馬鹿じゃき。ほんでわしと一緒におったら、良かったがじゃ。何が世直しぜよ。・・・桂さん、どうい
 て助けてやらんかったがじゃ。亀が命賭けて助け求めに来たがぜよ。・・・のう。どいつもこいつも、
 みんな馬鹿じゃきー!!」
叫ぶなり、畳の上にひっくり返る坂本。おりょうちゃんが涙を溜めて、そんな龍馬を見つめています。
龍馬にとって、みんな大切な友人だったはずの3人が、自分の意地のために、立場のために、殺し合う。みんな、国のことを考えているはずなのに、さらに時代を混沌とさせていく。
悲しみと悔しさに身を引き裂かれそうな龍馬の叫びが、胸に突き刺さるようです。

その頃、会津藩本陣では、近藤と土方が松平容保公に謁見し、昨夜の報告を行なっていました。
「敵方の策謀は、もはや灰燼に帰したものと思われます。今後とも、京の治安を守るべく、より一層
 力を尽くす所存です。」
「ん。此度の新選組の働き、名付け親の余としては、まことに嬉しい限りである。近藤、土方、これか
 らもこの国のために、心一つにして励んでくれ。」
「はっ。」
平伏する二人。

新選組の存在を、世の中に知らしめた池田屋事件。
しかし、この事件がさらに次の事件へと大きく膨らんでいくのですね。

 

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