大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第27回  直前、池田屋事件  

“一橋慶喜は、京都守護職の松平容保と、容保の弟で京都所司代を務める、桑名藩主松平定敬を
 従え、一会桑、三者の協力による新たな公武合体を目指した。
 これに対し、前年八月十八日の政変以来、実権を失った長州を中心とする過激攘夷派は、劣勢を
 一気に挽回して会津を追い落とし、再び政治の実権を取り戻すべく、肥後脱藩宮部鼎蔵のもと、
 恐るべき陰謀をめぐらしていた。”

いよいよ、池田屋事件に向かいますね〜。わくわく。

会津本陣 金戒光明寺。
近藤・山南・土方が、京都見廻組与頭勤方 佐々木只三郎と再会しています。
佐々木様は、近藤たちが上京する時に参加した、浪士組の取締役だったんですよね。
「新選組のことは、江戸にも聞こえておる。あの時は京に残って何ができると思ったが、存分に働い
 ておるようではないか。」
佐々木様に認めてもらえて、ちょっと嬉しい近藤。なんかこの二人、兄弟みたいな感じだな。
「見廻組のことは聞いておるか。この度、幕府は新しく、市中警護のため、京都見廻組を置くことに
 なった。私も組頭勤方を仰せつかった次第。」
佐々木の言葉に、
「ふっ、見廻組・・・。」
と嘲笑を浮かべる土方。
「その名前は、俺たち新選組に張り合って付けたんですか?」
もう〜、土方さんってば、直参旗本の佐々木様に敵意剥き出し。(苦笑)
「何も新選組と競うつもりはない。」
佐々木様は、余裕で笑って返します。
それに対し、なおもそっぽを向く土方。
あ〜、もう、可愛いってば。やたらと突っかかりたがる中高生みたいだ。(爆)
山南さんがちらりと横目で見て、近藤さんも「いい加減にしろ!」というように振り返ります。
「見廻組の隊士はすべて幕府のご直参と伺っておりますが。」
山南の問いに、
「左様。これからは、京の治安は我ら直参が守る。」
と答える佐々木様。佐々木様には他意は無いんでしょうけど、こういう言葉が土方さんの劣等感を
刺激するんですよねぇ。
案の定、すかさず反応する土方さん。
「俺たちみたいな寄せ集めには、用は無いってことですか。」
自嘲気味に呟く土方に、
「そうは言っておらん。新選組には新選組の役目がござろう。これからは、見廻組と新選組、ともに
 力を合わせてまいりましょう。」
佐々木様が答えます。頷く近藤。

大坂のお茶屋にいる永倉。お酌をしているのは、芸姑の小常さんです。
この小常さんが、江戸を出る時、親友市川宇八郎に簪を渡してくれと託された、宇八郎と夫婦の約束をしたおそのさんだったんですね。ずっと探してたんだ、永倉さん。
大病を患っていた宇八郎。
「今頃はきっと国許の墓にでも・・・。」 と永倉に言われて、小常さんは泣き出します。
小常さんの肩を優しく抱いてやる新八さん。
ふっふっふ・・・。この二人、どういう展開になるのでしょうか。

京、壬生村。
屯所に戻って来た永倉が、大坂で妙な噂を聞いたと近藤に話します。
与力内山彦次郎を殺ったのは新選組ではないか、という噂がたっているらしい。
「噂ですね?」
と確認する永倉に、感情を押し殺した表情で、
「はい。」
と答える近藤。さらに、
「芹沢を斬ったのは? 芹沢の死に、あなたは関わってはいないですね?」
との問いにも、
「あれは長州の仕業です。」
と近藤は答えます。
「ヒュースケンを斬ろうとした時、あなたは私にこう言った。闇討ちは卑怯だと。武士は卑怯な真似を
 してはいけないと。今があるのも、あの時のあのお言葉のおかげだと、私はそう思っている。」
生きるために何でもやってきた永倉の人生を、第6回のあの時、当時の純真だった近藤が変えたのですね。だけど永倉とは逆に、今の近藤は、真っ直ぐではいられなくなってしまった。
「信じてよろしいな?」
「はい。」
「その言葉が聞きたかった。」
永倉は満足して立ち去りますが、残った近藤の表情は苦悩に歪みます。
新見を切腹させ、芹沢と内山を暗殺した。そしてそのことを、永倉に懺悔することさえできない。近藤の良心が痛みます。
近藤さんが嘘を吐いたと知った時、永倉さんはどういう反応を見せるのかな。不安になりますね。


元治元年(1864)6月5日。
幹部会議が開かれています。沖田と斎藤が無断欠席。
総司はひでちゃんと出かけたらしい。あら、手繋いで歩いて、仲良しさんじゃないの。ひでちゃんに
引きずられている感はあるけど。(笑) 
そしてそれを見送りながら、自分の手を見つめる平助の情けない表情も最高。あぁ、青春だねぇ。

総司とおひでちゃんがいい仲だという話になって、
「一度、シメといた方がいいな。」 と言うのは、歳三兄貴。
「いいではないか。そういう年頃なんだ。」 と新八兄さん。
「俺も総司の年の頃には、やらしいことしか考えてなかったもんなぁ。」
と振り返る左之助兄ちゃんに、
「今もだろ!」 と突っ込む新八兄さん。
「付き合ってる時はいいんだ。しかし女は、別れた後がめんどくさい。」
うひゃひゃひゃひゃ。さすが、タラシの歳三。
でも、横からしっかり、
「いいお言葉が出たぞ。みんな覚えておけ。」
って、近藤さんに突っ込まれてますけど・・・。
そうだよ。別れた後がめんどくさいって言ったって、今までずっと、その尻拭いはかっちゃんにさせてきたんじゃないかぁ。(苦笑)
それなのに、ニヤリって・・・ニヤリって・・・カメラ目線で片頬上げて笑ってみせるのは、それは私たちへのサービスですか?(爆)
「確かに何かあった時に、それで八木家の皆さんとの間がこじれなければよいのですが。」
こういう時にも、真っ当な意見を述べる山南お兄さま。
「いや、あの二人、恋仲とか、そういうことではないと思いますよ。」
と言う平助の言葉は、ほとんど願望に近いよね。
それを隣りから、
「いんや。あれは付き合ってるね。」
「どうかなぁ。」
「か・な・り深いとみたよ。」
と容赦なく否定して、平助を撃沈させる島田のあんちゃん。
いやもう、総司くん。あなたのお兄さんたち、優しくてあったかくて、ちょっと鬱陶しくて、いいお兄さんたちがいっぱいだね。

結局、総司の件は近藤が預ることになって、次は斎藤。
・・・と思ったら、
「いいだろう、あの人は。」
って近藤さん、いいんですか? いいんですか?(笑)
「斎藤さんは変わってるよな。いっつも一人でごろごろしてる。寝てるのかなぁと思ったら、目開いて
 んだ。」
と言う島田に、
「あれでも眠ってるらしいぞ。路上で寝起きしてた頃の癖らしい。」
と土方が説明します。確かに、八木家の縁側で横になっている斎藤さん。鼻の頭に虫が止まっても、気づいてないし。(爆笑)
一同、なるほど〜と納得しますが、いったい斎藤さんを、どんなキャラにするつもりなんだぁ。
一人、呆れて聞いていた武田観柳斎が、大きく咳払いをすると、
「続けてもよろしいですか?」
と尋ねます。
「すみませんでした。」
と近藤。
ところが本題に入ろうとした観柳斎の前に、すっと言葉を割り込ませて話を持って行ってしまう、空気の読めないマイペース山南。たぶん観柳斎は、お口ポカン状態。(笑)
三谷さん、本当にこういうシーン、上手いよなぁ。一人一人の個性が全部立ってる。

さて、本題に戻る幹部会議。
肥後脱藩浪士 宮部鼎蔵が、炭問屋桝屋に潜伏しているという噂があるとのこと。主人の喜右衛門は、以前から宮部と深い繋がりがあったらしい。宮部は肥後勤皇党の首領として、尊王攘夷派の中心にいる男。彼の周りには、京にいる浪士たちが続々集まっているという噂だと、山南・島田・武田が次々に説明、報告します。
近藤はすぐさま、桝屋探索を武田に命じました。

武田が隊士たちを引き連れて、桝屋へやってきました。
垣根の陰に潜んでいるのは、飴屋の扮装をした山崎です。前を通り過ぎる武田が軽くアイコンタクト。いい仕事してますなぁ。
「御用改めである!!」

前川邸の庭では、源さんが隊士たちに剣術の稽古をつけています。
それを見ながら、
「私はわからなくなってきた。」
と、横に控える山南に打ち明ける近藤。
「芹沢さんを斬り、内山を斬り、すべては新選組のため。しかし、そんなに大事なのか、新選組は。今
 我々が探している宮部鼎蔵という男は、尊王攘夷の中心。しかし私だって、望むは攘夷だ。帝を敬
 う気持ちは誰にも負けない。」
そうなんですよね。これは近藤だけでなく、新選組という組織自体が抱えることになってしまった、矛盾なんですよね。尊王も攘夷も、考えは浪士たちとちっとも変わらない。ただ、京都守護職お預かりとして幕府の組織に組み込まれ、警察隊としての役割を担ってしまったがために、身動きが取れなくなっていく訳です。攘夷の実行も叶わず、ただ市中見廻りを続ける毎日。悩んだ末、近藤は5月には、幕府上層部へ新選組の解散願いを提出したりもしています。この辺り、近藤の書簡を読んでみると、その苦悩ぶりがよくわかるみたいです。

悩める近藤に、総長山南は、
「彼らは、帝を政の道具としか考えていません。彼らの攘夷は、幕府に対する嫌がらせであり、真の
 攘夷ではない。幕府はなぜ見廻組を置いたのか。それは我らが信用されていないからではなく、
 むしろ新選組が力をつけてきた証。彼らは恐れているのです。浪士風情の寄せ集めに、これ以上
 派手に動かれては、幕府の顔が立たぬと。慌てて直参を掻き集め、京へ寄越したのです。」
と説きます。そして、近藤の真正面に威儀を正して座り直すと、
「悩むのは悪いことではありません。悩むとは考えること。悩むだけ、あなたは大きくなるお方です。
 近藤さんに対する松平容保様のご信用は頗る厚い。京の政治に、近藤さんと新選組は、なくては
 ならぬものになりつつあります。あなたが歴史の表舞台に出て行く日も、そう遠くはない。」
と続ける山南。
だが、近藤の表情は晴れません。
「しかし私は、それを望んではいない。」
と訴える近藤に、
「あなたが望んでいなくても、周りが望んでいるのです。それをお忘れになりませぬよう。」
と諭し、山南は立ち去ります。
土方の“かっちゃんのために新選組を大きくするんだ!”という情熱も、当の近藤にとっては重荷かと思うのですが、山南の“あなたは大きくなるお方”という期待も、本人にとっては結構重たいんじゃないでしょうかね。

落ち着かない様子で総司が座っているのは、お医者さんの待合室です。総司はおひでちゃんに、
お医者さんに連れてこられたのですね。熱出してたなんて、ダメじゃん!総司。
診察を受けるのが、堪らなく不安らしい。
その気持ちはわかるけど、
「ちょっとさ〜、煩わしいんだよな。放っておいてほしいんだよな。別に恋仲でもなんでもないんだから
 さぁ。」
って言っちゃうのは、どうかと思うぞ。女心に気づかないのはまだ仕方がないとして、気持ちを率直に言葉にした時、相手がどれだけ傷つくかは考えるべきだと思うけどな。
ちょっと兄さんたち、末弟を可愛がり過ぎデス。
でも、傷ついて黙り込んじゃったおひでちゃんに、ちょっとは言い過ぎたと気づいたらしい。
「あの・・・心配してくれるのは嬉しいんだけどさ。」
とフォローを入れる。
「ほしたら、いっぺん、ちゃんと診てもろうて、お薬だけでももろうて帰ろ。」
というひでちゃんの言葉にも、笑顔で頷いて・・・。
その時、診察室から患者さんの叫び声が聞こえて、とたんに色を失う総司。
「やっぱり、いいや。」
結局総司は敵前逃亡。(苦笑)

谷三十郎が近藤のところにやってきました。局長に養子の話を持って来たと言います。
それもあろうことか、自分の末弟昌武の売り込み。
「我が谷家は、備中松山藩の歴とした家臣の家柄。近藤家にとっても、非情に名誉なことだと思う
 が? ひゃーっひゃっひゃっひゃっ。」
近藤の後ろに控えていた土方が、ほとほと嫌そうな顔をしています。
それにしても、まいど豊さん。よくこんな声が出せるなぁ。
谷兄弟が去った後、
「案外、悪い話ではないかもしれませんよ。良縁であることは確かだ。」
と山南。おいおい、何を言い出すんだ?と、近藤が振り返ります。
土方の方を窺うと、土方は黙って首を横に振っている。
「噂はすぐに、京の町に広がります。新選組にとっても、けして悪いことではない。」
「あんな妙な笑い声の奴が親戚になるんだぞ。」
あくまで新選組局長の話として考えている山南と、仲間というより身内の感覚で考えている土方と、
その温度差が面白いですね。
そして近藤は、また別のことを考えていました。
「俺の息子となるということは、ゆくゆくは天然理心流の宗家を継ぐことになる。それが・・・。」
「誰か、継がせたい人がいるんですか?」
「総司だろう?」
「あぁ。宗家5代目は、できればあいつに・・・。」
試衛館は沖田に、近藤家は谷昌武に継がせるという手もあると提言する山南。
もちろん、土方は話にならんという反応。
「何、言ってんだ。」 と、ちょっと鼻を摘んでみせる仕草がさりげなくていい感じ。
近藤は、庭の稽古を見ている昌武を見ながら、思案に耽ります。

おまさちゃんの店“お多福”に、近藤と源さんは新入隊士を連れてやってきました。
新選組に入ってみた感想を聞きたいという近藤に、4人それぞれの反応が面白い。
とにかく体育会系の熱いノリで、近藤と新選組に心酔する松原忠司。
勘定方も剣術の稽古をしなければいけないのかと、おずおずと尋ねる河合耆三郎。
「お役に立てるとも思わないんで、あかん時はいつでも言うてください。」と言う葛山武八郎。
そして、ただただひっそりと座っている谷昌武。
近藤はもっと、夢とか思想とかに燃える隊士たちを期待していたのかなぁ。なにか、価値観も感覚も全然違う、おじさんと若者みたいだ。白けていく場の雰囲気。
さらに、自分のことをどう思うか尋ねた近藤に、「恐いですね。」「近寄り難いです。」「笑ったの見たことないし。」と言われて、悩む近藤。みんなの前で拳骨を口に入れてみせるが、唖然とされるだけで、あ〜ぁ、さらに白けちゃったよ。(苦笑)

桝屋喜右衛門を屯所に連行する隊士たち。
武田が桝屋の土蔵を改めると、そこには大量の武器が隠されていました。

八木家の庭では、為三郎くんがコマを回して遊んでいます。寝転んだまま、それを眺めていた斎藤に、為ちゃんはコマを差し出します。

連絡を受けたのでしょう。土方・山南・沖田が桝屋にやってきました。
咳をしている総司を気にして、振り返る土方。
「風邪か?」
土方の問いに、首を横に振る総司。
武田が、宮部鼎蔵はすでに姿をくらましていたこと、桝屋は召し取ったことを報告し、さらに3人を土蔵へと案内します。
隊士たちに居丈高な態度を取る観柳斎。そして土方たちには、「ご覧ください。私が見つけました!」と自己アピール。わかりやすいキャラだ。(笑)
さらに、総司が火薬を手に取りながら咳き込んだのを見て、「危ないっ!!」と慌てて逃げ出そうとする怖じ気っぷりも最高。
いや、火の気が無ければ、全然問題ないと思うのですが?
「奴らはいったい、何をしようとしていたんだ。」
何かが少しずつ、彼らのところに迫ってきます。

再びおまさちゃんの店。
近藤と昌武が、並んでお茶を飲んでいます。
「私は学問が好きなんです。人を斬るのは嫌なんです。」
兄に言われるがまま、新選組に入隊し、兄に勝手に近藤の養子に推薦され・・・。でも、意外としっかり、自分を持っている少年のようですね。
昔は、私もそうだった。盗賊退治に木刀を持っていったこともあった。しかし、仲間が斬られそうになった時、そんな綺麗事は言っていられなくなった。・・・と昔の自分を振り返る近藤。
この話は、第2回「多摩の誇りとは」の時の出来事ですよね。土方が斬られそうになって、助けるために初めて人を斬って、そのことでひどく落ち込んでしまった近藤さん。
「養子にしない方がいいですよ。」
という昌武に、近藤は、
「いや、今の話を聞いたら、あなたを養子にしたくなりました。」
と答えます。

そこへ、おまさちゃんがやってきました。
「ご相談があるんです。」 と言って、近藤に見せたのは、一通の恋文。それも左之助から!!
近藤の驚きっぷりが可笑しい。さらにその背後で、野次馬根性丸出しの新入隊士たちが可笑しい。
前々から、畑で盗んできた大根や青菜を届けてくれたというおまさちゃん。
大根持ってスキップしている左之助。って、盗んじゃダメだろ〜。
しかし、おまさちゃんは、その気はまるでないです!!!とキッパリ。
「そうかて、臭いんやもん〜。声も大きいし、気ぃ利かへんし、なんかゆうたらお腹の傷見せるし。」
って最悪だ。(苦笑) でも、
「まぁ、思うたよりも、字ぃが綺麗なんで、それはびっくりしたんですけどぉ?」
と付け足すおまさちゃん、優しいなぁ。

早速、その手紙を左之助に返す近藤。
「おまさちゃんのことは諦めろ。おまさちゃんはお前のことが好きではない。」
「あの娘がそう言ったの? 嘘だろ〜?」
「お前がなんで嘘だと思うのか、よくわからないが。」
近藤さん、左之助には思いっきり突っ込むよね〜。(笑)
けれど、好みじゃないと聞かされて、左之助がすっかり落ち込んだのを見ると、
「字は綺麗だって言ってたな。」
って期待持たせてしまうのが、近藤さんの優しさ。そして、
「っていうことは、まだ芽があるってことでしょ?」
とたんに左之助の目が輝くと、
「ない。」
と、また落とす近藤さん。(爆) この二人、最高〜。

その時、近藤さん、今度はお茶屋の主人に声を掛けられます。
「今、うちの店にちょうど、沖田先生がおみえになってるんですよ。」
と意外なことを教えられて、源さんと行ってみると、そこには総司ではなく平助が、舞妓さんたちと遊んでいました。
突然現れた近藤と源さんの姿に、青ざめる“沖田先生”。

屯所では、後ろ手に縛られた桝屋喜右衛門に、尋問しています。
「あなたが浪士たちと通じていることは、既にわかっています。蔵にあった武器火薬は、彼らに頼まれて預っているものですね。」
桝屋の正面に座り、あくまでも丁寧な口調で問い掛ける山南に対して、
「奴らは何をしようとしてた? 白状しろ。」
と、桝屋の横にしゃがみ込み、肩に手を置いて脅す土方。(爆)
「あれだけの武器が見つかった以上、放ってはおけないのです。我らとしても、手荒な真似はしたくな
 い。話していただけませんか。」
しかし、桝屋は目を閉じて、拒絶の意思を表わします。
「山南さん、これ以上は無駄だ。俺たちを甘く見てもらっては困るぜ。」
桝屋の肩をぽんと叩いて、立ち上がった土方は、
「土蔵に移せ。」
と武田に指示します。
「土方くん!」
止めようとする山南に、
「白状しないなら、しょうがないでしょう。体に聞くまでだ。」
と拷問にかけることを宣言する土方。山南は、
「申し訳無いが、近藤さんを呼んできて下さい。」
と、慌てて沖田に頼みます。暴走土方を止められるのは、近藤さんだけだと思ったか・・・。

その近藤さん、
「いったいなぜ、名前を偽った?」
と平助に尋ねます。
ひょっとして沖田はんと違いますか?と舞妓さんに人違いされて、つい成りすましてしまったと答える平助。
それから、平助は自分の劣等感を切々と訴えます。
「どんなに頑張っても、私は沖田さんには敵いません。あの人は、いつも私の前にいる。剣を持たせ
 れば、あの人は誰にも負けません。そして皆に愛されている。私は沖田さんを越えることはできま
 せん!」
平ちゃんの言葉が、なぜか私の胸にズキズキ突き刺さるんですけど〜。
「だからといって、総司に成りすましても、お前が辛くなるだけだろう。」
「申し訳ございません!」
そう言って、突っ伏してしまった平助を近藤はそっと起こして、
「総司とお前は年も近い。二人が何かと比べられてしまうのは、仕方がない。しかし、平助は平助、
 総司は総司だ。あいつに無いものをお前は持ってる。俺に言わせれば、総司はお前より何倍も
 子供だ。あいつはまだまだ人の心の痛みを知らない。お前は知ってる。お前は、お前にしかない
 ものを、これから探していけばいい。俺も一緒に探してやる。」
うわ〜ん、泣けたよ〜。瞳の中を覗き込まれて、こんなことを言われたら、絶対にこの人に付いて
行こうって思うだろうなぁ。
この時はきっと平助も・・・。
横で、優しく笑って見守ってくれる源さんも素敵だ。

「すんまへん。もう一人沖田はん、おみえですが。」
訳わからぬまま、取り次ぐ主人。
「探しましたよ。昼間っから何やってるんですか!」
と飛び込んでくる総司。
「近藤さん、急いで帰ってください! 大変なことになってるから!!」
こうして平凡な日常生活の中、だんだんと迫ってくる一大事件の予兆が現実的ですね。

「これが桝屋の蔵に。」
屯所に運んできた武器の一部を見て、近藤が驚きます。
「ワタシが見つけました。」
とアピールする観柳斎。
「局長にあれを。」
土方に促されて、懐から書状の束を出しながら、
「桝屋の部屋にあったのを、ワ・タ・シが見つけました。」
と重ねてアピール。
桝屋喜右衛門の正体は、近江の浪士古高俊太郎。土佐の中岡慎太郎、北添佶磨、望月亀弥太、
長州の寺島忠三郎らと頻繁に手紙のやり取りをしていたようだと、観柳斎は報告します。
「あの手紙を。」
さらに山南に促されて、書状の束から一通を近藤に差し出しながら、
「隠し戸の中にあったのを、これ、ワ!タ!シ!が見つけました。」
観柳斎の、“私が見つけました”三段活用です。(爆)
「奴らは風の強い日を狙って、何かしようとしてる。」
と土方。
「恐らくは、京の町に火を放つつもりなのでしょう。そして混乱に乗じて、会津藩に成りすまし・・・。」
そこまで推理した山南も、それ以上はわからないと首を傾げます。
ひたひたと、緊迫感が押し寄せてきます。

近藤と土方は、土蔵の中にやってきました。
古高を責めていた島田が、
「なかなかしぶとい男です。」
と報告します。
近藤は吊るされている古高に一礼すると、
「新選組局長近藤勇と申します。新選組は市中の治安を守るのがお役目。そのためなら、どんなこと
 でもするつもりです。知っていることを、すべて話してもらえませんか、古高さん。」
と言いますが、すでに覚悟を決めている古高は、目を閉じて黙秘を貫きます。
「話すんだーっ!!」
と一喝する近藤。土方も近藤も、血走った目で古高を見上げています。

一方、古高捕縛を受けて、対応策を相談している浪士たち。
「古高を奪還する。しかし、その前にやるべきことがある。桝屋の蔵の中のものを取り返すんだ。
 あれが無ければ、我らの計画は台無しだ。」
と宮部が浪士たちに説きます。
宮部から、すぐに桝屋に向かうよう頼まれる、望月亀弥太。

新選組隊士たちが見張っている桝屋の蔵を、亀ちゃんたちが襲います。
真っ先に逃げる谷三十郎。(オイッ)
旗持ち尾関が一人残って立ち向かいますが、武器は奪い返されてしまいます。

「警護の意味が無いではないかーーっ!!」
観柳斎に怒鳴られる三十郎。
「敵の数があまりにも多すぎた。」
・・・って、確か、こちらは4人、向こうは3人じゃありませんでした?(苦笑)
「これほど早く奪い返しに来たということは、敵も焦っているのでしょう。何を企んでいるにせよ、遠い
 話では無さそうです。」
と考えを述べる山南。
「古高はまだ喋んねぇのか!」
苛立ちを隠さない土方に、
「島田さんもてこずってるみたいですね。」
と総司が答えます。
「ちきしょうっ!!」
ドンと床を殴ると、土方は荒々しく出て行きます。

土方が向かったのは、土蔵の二階。
「あとは任せてくれるか。」
と島田に告げます。
「総司、斎藤を呼んできてくれ。」
「はい。」
総司が出て行った後、古高を冷たい視線で見下ろす土方。

斎藤は八木家の庭で、為ちゃんとコマを回していました。
上手く回らなくて、
「へったくそ!もう一回や。」
と、為ちゃんにダメ出しされる斎藤。(笑)
「斎藤さん、土方さんが呼んでる。」

土蔵の前で、何か話している土方と斎藤。それを遠くから見ている総司。
やがて土方が頷いて、斎藤の肩をポンと叩くと、その場を離れます。
「何を訊かれたんですか?」
駆け寄る総司に、
「一番痛い拷問は何かって・・・。」
と答える斎藤。
「なんで斎藤さんが知ってるんですか?」
「やくざの縄張り争いに加勢した時に、あいつらのやり方を見てきた。」
「ふ〜ん。」
深窓で(笑)育った総司には、斎藤の生きてきた世界は想像もつかないだろうなぁ。
「で、一番痛いのって何なんですか?」
興味深々の総司に、
「ここでは言えないなぁ。」
とかわす斎藤。コマを回すと、今度は綺麗に回ります。斎藤さん、満足そうにニッコリ。
前川邸の奥から、土方が戻ってきました。
「俺が出てくるまで、誰も中に入れるな。」
総司に言い付ける土方。その手には、大きな五寸釘と百目蝋燭が・・・。
総司の顔が強張ります。黙って頷く総司。
そして、本当にやるのか?といった表情で、土蔵に向かう土方を見つめる斎藤。
蔵の扉が中から閉められます。

土蔵の前で、膝を抱えて待っている総司。
日が少し傾いてきたようです。
やがて、土蔵の扉が開きます。
汗まみれの土方は総司に、
「みんなを集めろ!」
と。

土方は集まった幹部の顔を見渡しから、
「奴らは挙兵するつもりだ!」
と告げます。土方の声が掠れているのが、妙にリアルです。
「すでに、宮部鼎蔵以下数十人の浪士が京に入ってる。奴らは畏れ多くも、御所に火をかけ、駆け
 つけた松平容保公の首を取った後、会津藩を装って御所に押し入り、帝を奪って長州へ連れ去
 る!!」
「信じられん。」
土方の言葉に、愕然とする一同。
「期日は、六月二十日前後の風の強い日!!」
「京は炎に包まれる。」
山南の呟きが悲鳴のように聞こえます。
「局長!!」
立ち上がった近藤が、自分に言い聞かせるように呟きます。
「これは戦だ・・・。戦だーーー!!!」

 

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