大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第26回  局長近藤勇  

“新選組誕生から8ヶ月、京都をめぐる情勢は再び混沌としていた。政局の混乱を見てとった長州
 は、再び京都に返り咲く機会をじっと窺っていた。”
ドラマの折り返し地点を過ぎて、日付がポンと飛んだようです。

江戸の試衛館で、近藤からの手紙を広げるつねちゃん。ふっと表情が崩れるところが可愛い。

元治元年(1864)5月21日。
大坂でその手紙を認めている近藤さん。
あ、髪型が変わってる。月代を伸ばして総髪になりました。
“壬生浪士組儀、新選組と名を改め候て、以後、一同心形も新たに忠勤致し候。”

「慣れとは恐ろしいもんやな。」
「はい。」
源之丞、雅夫妻が何の話をしてるのかと思ったら、家族の団欒の横で、だらしな〜い格好で寝そべっている左之助がいました。居眠りしながら、乳首を掻くな、乳首をーー!!(爆) こんなのにも慣れてしまいましたか、八木家の皆さん。(苦笑)
“隊士も相増え候に付き、八木家屋敷の他、向かいの前川家屋敷も借用致し、役務に励み居り候。”
庭で素振りをしている隊士たち。部屋から近藤・土方・山南が出てくると、その手を止めて声を揃えて挨拶します。かっこいい〜〜。芹沢一派が粛清されて、統制の取れた組織らしくなってきました。

“拙者局長を相務め、その下に総長山南くん、副長土方くんと致し候。主たる勤めは、例の如く市中
 見廻りにてござ候。庶務方は山南くん、勘定方は河合くんに任せ居り候。市中に身を潜めたる怪し
 き者共の行状を探るは、監察方の役目にて候。島田くんは姿改むれば、およそ侍には見え申さ
 ず、この役に何より相応しく候。我ら儀、ご公儀の御為に如何程相尽くし候共、上方衆には所詮
 他所者にてござ候。新選組の働きを心よく思わざる者も多々有り申し候。”

山南さん、庶務方ということは、見廻りや取り締まりといった第一線の現場には、出なくなったという
ことなのかな?
近藤の手紙に合わせて流れる、隊士たちの日常がいいですね。幹部会議、誠の旗を掲げて見廻りに出て行く隊士たち、庶務方や観察方のお仕事。
そして何より、大坂の町を見廻る土方・斎藤たちが、大坂町奉行所の役人たちと出会して、ガンを
飛ばし合ってるのが最高です。なんてヤンキーな連中なんだ。(爆)
「新選組の奴らに言うておけ。大坂の町は我ら町奉行所が守ると。百姓上がりの近藤某の助けなど
 無用じゃ!」
与力の内山彦次郎は、かなりご立腹。
まぁね〜。こんなヤンキーな連中が、自分の縄張りに乗り込んできたらねぇ。(苦笑)

“新隊士もようよう相増え申し候。”

屯所の庭で、入隊希望者の面接を行なっている土方・山南・井上の3人。
あ、武田観柳斎が来ました。・・・態度でかい。(苦笑)
甲州流軍学を修めていると聞いて、満足そうに頷く山南。でも、土方はあまり気乗りしない様子で、「近藤局長の意向を伺ってみよう。」 と隣りの源さんに指示します。
「その儀は無用ーーーっ!!!」
あぁ、驚いた。土方さんも山南さんも、驚いてる、驚いてる。(笑)
「思い違いをされては困る。今は私がそちらを値踏みしておるのです。新選組の気風、大いに気に
 入った!喜んで入隊しましょう。」
観柳斎に勝手に決め付けられて、腕組みしたまま目が点になってる総長&副長が可笑しい。(爆)
胡散臭いというより、かなりうざい観柳斎になりそうです。

次は・・・あ、山崎烝です。
人より秀でた技は?と訊かれて、なかなか人に覚えてもらえないと答える山崎さん。
「ここはあなたの来るところではない。」 土方があっさり告げると、「こないだもそう言われました。
土方先生。」 と返されて、びっくり〜〜!な土方。(笑)
さらに、「ひょっとして以前にもおいでになったことが?」 と尋ねる山南にも、「はい、今日で三度目になります。山南先生。」  と返すものだから、山南もびっくり〜〜!!
思わず顔を見合わせる、面接官3人。(大笑)
「こちらは確か井上源三郎先生。」 源さんまで覚えてる〜〜。
「京の町で不逞浪士の探索を行なう監察方というお役目があると伺いました。自分で言うのもなんで
 すが、私みたいな者は、もってこいやと思うのですが。」
山崎の売り込みに、うんうんと納得して、採用を決定する土方。
山崎さんは優秀な監察として、これから土方さんの手足となって働いてくれそうです。

さらに屯所には、谷三十郎兄弟がやってきました。
「ひゃーっひゃっひゃっひゃっ。」
この笑い、聞いてるだけでこちらの喉が引きつりそうなんですけど。(苦笑)
近藤さんも驚いています。
「谷三兄弟、合わせてご厄介になり申す。」
と挨拶する谷に、
「聞いてないなぁ。」
と土方。
「固いことを言うな。一人も二人も同じこと。」
「三人じゃねーかよっ!」
思わず突っ込む土方さん。(爆) でも、
「確かに。ひゃーっひゃっひゃっひゃっ。ま、いいではないか。ひーっひっひっ。」
三十郎は全然動じません。土方さん、苦虫を噛み潰したような顔してる。
近藤さんや土方さんには悪いけど、楽しい新選組になりそうですね。(笑)

“さて、総司儀、芹沢殿亡き後、力落としのように見受けられ候えど、近頃ようよう常の如く、笑顔など
 見せ申し候。これひとえに、八木家息女のお陰と有り難く存じ候。”
ひでちゃんの握ったおにぎりを美味しそうに食べる総司。口元に付いたご飯粒をひでちゃんが取ってあげて、総司の口に入れてあげる。照れてる総司が可愛い。
さらに、そんな仲の良い二人を横目で見て、自分もわざと口元にご飯粒を付け、ひでちゃんにアピールするも、気づいてもらえない平助が微笑ましい。

近藤さん、深雪太夫を待ちながら、手紙を書いていたようですね。

“然れば、今般の京中の有り様、お知らせ致したく候。一度京を追われし長州儀、再起を窺い、近頃
 は久坂玄瑞ら過激の輩、兵を起こし、政権を我が物にせんと企み居る由、物騒な噂もこれ有り候。
 それを抑うるは、留守居役として京に戻られし、桂殿にて候。さて、坂本龍馬殿の近頃の様子は
 ・・・。”

蝦夷地へ行って開墾し、新しい町を作るという坂本。アイヌの衣装まで着て、すっかりその気です。
一緒に来ないか?と誘われる近藤さん。
そこへ賄いの女が、食事の支度が出来たことを知らせに来ました。竜馬さん、一目惚れ〜〜。
「坂本には気ぃ付けな。誰よりも女子が好きじゃき。」
北添佶磨に言われても、もはや耳には入っていない様子です。おりょうの名前が、自分と同じ“龍宮城の龍”の字を書くと聞いて、大喜び。おりょうさんも満更でもなさそうですね。

潜伏する浪士たちの動きを探るため、いずれ大坂にも新選組の屯所を設けるつもりだと、土方が近藤に話しています。
その時に例の内山が厄介になるので、今のうちに手を打っておくとのこと。策士土方。
閉ざされた障子に写っている影は、外に控えていた山崎でした。
「さっそくお前に仕事だ。叩いて埃の出ねぇ奴はいねぇ。内山にもきっと何か弱みがあるはずだ。探ってもらいたい。」
副長の指示に、
「喜んで!」
と応える山崎。

“去る十月、会津中将様のお召しにて、御前へ参上仕り候。”
この度、容保様ご発案で、薩摩・土佐・安芸・肥後の各藩から有志を募り、時局について論じ合うことになったので、近藤にも新選組局長として参加してほしいとの仰せ。近藤さん、びっくり!!
秋月様にまで、「殿のたってのお望みである。有り難くお受けせよ。」 と言葉を添えられて、嬉しいやら、不安になるやら。
そして十月十日、秋月様の司会で、在京諸藩有志の会合が開かれました。
一番最初に指名されて、「私からですか?」 と動揺する近藤さん。可愛い。
「真の攘夷とは、国を挙げての攘夷であります。それぞれの藩がそれぞれの思惑で異国と向き合っ
 ていても、それは何の力にもなりません。諸外国から日本を守るためには、藩同士が手を握り合っ
 て、国中が同じ思いで事に当たらなければならないと、私は考えます。その時、要となるのが徳川
 幕府であり、将軍家であると存じます。」
「あなたの心から国を思う気持ち、感服致した。」 って秋月様、ちょっと持ち上げ過ぎ。(苦笑)
“かの時ほど、心引き締まりしことは、之無く候。”
手紙を読むつねさん、ちょっと誇らしい気持ちになったようですね。

“今春、懐かしき人、ご上洛なされ候。”
懐かしき人とは、佐久間象山先生でした。
守護職本陣で、まさか既に面識があるとは知らない広沢様に、紹介される近藤。
「象山先生、ご無沙汰しております。」 嬉しそうに挨拶したのに、「知らん。」 と忘れられてる近藤さん。うぅぅ、寂しい。(苦笑)
近藤は象山先生を連れて、おまさちゃんの店にやってきました。
「その面を見ている間に思い出したよ。大胆にも黒船からフラッグを奪おうとした小僧が、今では新選
 組の局長か。よく励んだものだな。」
近藤さん、良かったね〜。象山先生に思い出してもらえて。その上、頑張りを褒めてもらえて。
「わしはあまり人は褒めんのだから、有り難く思えよ。」 って、象山先生ってば、照れ屋さん!(笑)
それにしても懐かしいですねぇ。第1回「黒船が来た」で、土方と一緒に黒船を見に象山先生に連れて行ってもらったこと。掲げられている星条旗を奪いに行こうとしたけど、浜辺でもたもたしているうちに黒船の大砲が鳴って、二人はその轟音に抱き合って震え上がるしかなかった、あの日のこと。
「日本が生き残るためには、諸外国に立ち向かえるだけの国力を付けるのが肝心。それにはな、
 日本が一つになることが第一。即ち、公武合体だ。朝廷と幕府が手を握る。これしか道はない。」
と教えてくださる象山先生に、
「それで私にできることは?」
と近藤は尋ねますが、
「知らん。自分のことは自分で考える。」
突き放されて、がっくりと項垂れる近藤さん。

そこへ、おまさちゃんの怒鳴り声が聞こえてきました。
お店で働いていたお騒がせ捨助、今度はお店のお餅を勝手に食べたらしい。
「あんた、やめてええよっ!!」 とクビを言い渡されて、「こっちから願い下げだ、こんな店!!」 と言い返す捨助。口では強そうなこと言っていても、しっかり近藤の陰に隠れてるのが笑える。
「捨助、お願いだから多摩へ帰れ!」
近藤が言うと、
「帰るもんか!俺は京で出世して、お前らを見返すまでは、死んでも帰らねぇって決めたんだよ!!
 かっちゃんには関係ない。俺の行く末は俺が考える!」
捨て台詞を残し、荷物を抱えて出ていこうとします。その捨助を、象山先生が呼び止めました。そして象山先生が京にいる間、先生に雇ってもらうことに・・・。
「こいつは役に立ちませんよ。」
忠告する近藤に、
「ははは。小さい、小さい。弾除けぐらいにはなるだろう。」
と笑う象山先生ですが、先生、弾除けにもならないと思います、捨助は。(苦笑)
でも先生はそんなこと、少しも気に留めずに、
「お前、般若に似ているな。よし、今からお前を般若と呼ぶぞ。」
さっそく捨助にあだ名をつけてご満悦。
“かくて捨助儀、象山先生の従者と相成り申し候。”

総司とひでちゃんが、仲良くお寺のお堂のところに座っています。
総司が芹沢の死に関係があるのか、教えてほしいと言うひでちゃん。
総司はひでちゃんの方は見ずに、あの時「部屋から出るな」と忠告したのは、ただ単に胸騒ぎがしたからだと説明します。そして話を打ち切るように立ち上がると、
「さぁ、帰ろう。これ以上遊んでると、近藤先生に叱られる。胸騒ぎが。」
と言って、ひでちゃんに笑いかけます。
先にお堂の階段を下りて帰りかけた総司を、追いかけるひでちゃん。
総司はそのひでちゃんを待って、二人肩を並べてお寺を出て行きます。いいなぁ、若いって。(笑)


“さて、いささか辛き儀を申し上げ候。”
大坂町奉行所の内山彦次郎は、油商人と手を組んで灯油を買い占め、値段を釣り上げているらしいこと、その見返りとして、賄賂をたんまりもらっているらしいことがわかったと、近藤は土方と山崎から報告を受けます。
あ、土方さんの髪型も変わってる〜。今までポニーテール風だったのが、きっちりと髪を結った総髪に変わりました。うふふ、凛々しい。(爆)
内山はさらに安政2年に、油の相場をめぐって上方中の百姓が訴えを起こした時、商人から賄賂を受け取って、百姓に不利な裁きを下したとのこと。
「奴は、根っから百姓がお嫌いのようだ。」
土方さんが丁寧な言葉で喋る時は、相当ムカついている時ですね〜。(苦笑)
奉行所にそのことを訴え出ようと言う近藤に、奉行所には息のかかった連中もいるはずだから、途中でうやむやにされるのがオチだと土方。
「本人に直に会って話す。」
近藤は頷いて、土方の案を了承します。

そして、大坂の座敷で内山と向かい合っている土方。その後ろには斎藤が控えています。
「わしをなめるな!!」
と、盃の酒を顔にぶっかけられる土方。ばっと立ち上がりかけた斎藤を片手で制し、口元の酒を手で拭う土方さんがかっこいい〜〜。(爆)
「そんな脅しにわしが屈するとでも思うたか。片腹痛いわ。」
「よろしいんですか。そんなに強気に出られても。」
「百姓たちの訴えなど、何年前の話だ。そのような根も葉もない話を持ち出されても屁でもないわ。」
立ち上がり、部屋から出て行こうとする内山を、
「灯油の一件は、そうも言ってられないんじゃないんですか。」
土方の言葉が止めます。
「奉行所が取り成してくれると思うておるのか。」
「奉行所に行く気なんか、端からありませんよ。」
土方も立ち上がって、内山の前に立つと、
「悪いが、京都守護職のお耳に入れさせていただく。」
と揺さぶりをかけます。内山のふてぶてしい顔に、微かに動揺が走る。
前回の、宴席で芹沢と向かい合っている時もそうだったけど、土方のこの、下から見上げるような視線がいいですよね〜。自分よりも大きな獲物に飛びかかっていく、獣の精悍さを感じます。(惚)
「やってみるがよい。そもそもすべては噂に過ぎぬ。証拠など、どこにもないわ。」
捨て台詞を吐いて、立ち去る内山。
その背中を睨みつけるように、見送る土方。そして斎藤。ふっふっふっ、危ない二人です。

奉行所に戻って来た内山は、憤懣やるかたない様子。
そこへ部下が、何か情報を持って来ました。
耳打ちされて、ほくそ笑む内山。
ささきいさおさんと言ったら、私の中ではコンドルのジョー(「科学忍者隊ガッチャマン」のアテレコ)か、♪宇宙〜戦艦、ヤ〜マ〜ト〜〜♪(主題歌熱唱)だったりするのですけど、この内山様、ぴったりですよね。

飲み屋で一人、斎藤が酒を飲んでいます。
そこへやってくる、奉行所の捕り方。
「御用だ!御用だ!!」
取り囲まれて、斎藤は刀は抜かずに防戦しますが、、多勢に無勢。捕まってしまいます。

斎藤は昔のやくざ仲間・小六の讒言によって、盗賊の疑いをかけられ、捕まったのでした。
小六は、今も仲間だと白状すれば、罪を軽くすると内山に言われたとのこと。
後ろ手に縛られ、吊るされて、拷問にあっている斎藤さん。
内山様は小六に面通しして、満足そうに微笑みます。
土方からの報告に、近藤はすぐに容保公に掛け合おうと言い、さすが、容保公。
斎藤は釈放されました。ぼろぼろになって奉行所の外に放り出される斎藤さん。
自嘲の笑みを浮かべる斎藤を助け起こしながら、土方は奉行所の中を厳しい表情で睨みつけています。

近藤が内山に会いに来ました。
「土方に伝えよ。わしを脅そうなどと、金輪際考えぬことだ。言うておくが近藤、わしをただの与力と思
 うな。将軍家お目見えである。大坂の町は大坂の者が守る。京の町は京の者が守る。それが上方
 に生まれた者の誇りなんじゃ。関東の田舎者の、それも百姓上がりのお前たちに、大きい顔で歩き
 回ってほしくはないのだ。わかるな。」
内山の、優しく言い聞かせるような口調が余計に、武士ではない近藤たちに対する蔑みを感じさせます。
それに対し、口を一文字に結んだまま、睨むように一点を見つめ、ひたすら屈辱に耐えている近藤。
「ここは、お前たちの居る場所ではない。新選組は、この内山が潰す。目障りじゃ。下がれ。その
 田舎臭い面を見ているだけで、吐き気がするのじゃ。下がれ!」
最初は悪感情に過ぎなかったお互いの気持ちが、揺さぶりをかけ合って、どんどん大きな憎悪に膨らんでいく様が、リアルで堪りませんね。
今まで一言も口をきかなかった近藤が、ようやくその口を開きます。
「内山様のお考え、よくわかりました。そのお言葉の一つ一つ、肝に銘じておきます。されど失礼を
 承知で、一つだけ申し上げてもよろしいでしょうか。」
「なんじゃ。」
「内山様のようなお方がいる限り、幕府は遠からず滅びる。」
「近藤、無礼であろう!」
「ですから、先に失礼と謝った!!」
近藤は初めて、内山をまっすぐに睨みつけます。たじろぐ内山。
「今、幕府は、日本は、未曾有の危機に瀕しております。今こそ人は、生まれを捨て、立場を捨て、
 思いを捨てて、一つになり、帝と上様をお守りして、諸外国と向き合う時! にもかかわらず、相も
 変わらず身分にこだわり、天下の趨勢から目をそむけようとされるお方が、いまだ幕府の役人の
 中におられるとは、いささか驚きであります!!」
「黙れ!!」
「内山様のようなお方がいる限り、徳川幕府に明日はない!!」
「下がれ!下がれぃ!!」
「言われなくても下がります。ごめん。」
芹沢を倒して、近藤さんもだいぶ揺れがなくなってきましたね。
土方さんの、こちらから揺さぶりをかけていく対峙の仕方は、ゾクゾクして堪りませんが、近藤さんの、岩のように揺ぎない対峙の仕方には、何か圧倒されます。

「内山を斬る。」
ひょ〜、蝋燭の明かりに半分だけ照らし出された、土方の顔が綺麗だ。(オイッ)
「生きるか死ぬかだ。あんたもよくわかっているはずだ。」
土方の言葉に、ゆっくりと頷く近藤。
奉行所からの帰りを狙うと言って、立ち上がった土方の右手を、近藤が掴みます。
不審そうに近藤を見下ろす土方。
「俺も加えてくれ。」
「駄目だ。」
「トシ!」
「総大将は本陣にいるもんだ。」
「いつも手を汚すのはお前たちだ。俺にはそれが耐えられん。」
「耐えろ。局長っていうのは、そういうもんだ。」
この遣り取り、好きです。
近藤と土方、それぞれの性格や考え方、相手に対する思いがすべて詰まっているような気がする。
そして、
「闇討ちはするな。」
「勝たなきゃ意味がねぇ。」
「正々堂々と勝負し、そして勝て! 恥かしくない戦い方をしろ。あの男に笑われないような、誇りある
 戦いを。」
近藤の言葉に、土方は刀を掲げてしっかりと頷きます。
くぅ〜。すごい!すごい!! 二人の目力に圧倒される・・・。


そして、元治元年五月二十日の晩。
大坂町奉行所から、内山の乗った駕籠が、護衛に付き添われて出てきます。

近藤は源さんと、深雪太夫のところで、土方からの報告を待つようです。
硬い表情を崩さない近藤を、じっと見つめる深雪太夫。

橋の周辺で待ち伏せしている、土方、沖田、斎藤、原田、島田の5人。
内山の駕籠が近づいてきたのか、刺客たちは頷き合います。

思い詰めたような近藤のために、深雪太夫が舞いを舞い始めます。
夜の闇に響く三味線の音。それに被さる川の瀬音。

駕籠が橋の真上に差し掛かりました。
斎藤が行く手を塞ぎます。そして、退路は島田と原田が。
駕籠かきが駕籠を置いて逃げ、護衛の侍たちが刀を抜きました。
斎藤と原田・島田は護衛の侍たちを引き付け、少しずつ駕籠から遠ざけていきます。
橋のたもとで待機している総司が、うずうずしてきて土方を振り返る。
けれど、土方はまだだと言うように、首を横に振ります。
そうか。近藤さんの「正々堂々と勝負しろ」という言葉を受けて、土方は内山と総司を一対一で戦わせようとしているのですね。

斬り合いの音が遠ざかったのを感じて、内山が駕籠から出てきます。
しかし、背後の気配に振り向くと、そこには土方と沖田が立っていました。
憎々しげに二人を睨みつける内山と、涼しげに見つめる土方。
内山が刀を抜いたのを見て、土方は刀に添えられた総司の左手を握り、託します。
小さく頷いて鯉口を切り、一気に刀を抜く総司。
三味線の音色が次第に激しくなっていきます。

この、暗殺の場に三味線の音を被せているのがいいですね。
近藤の思いと土方たちの動きがリンクしていて、現場に行けない近藤も、気持ちは共にあるのだと
いうことが伝わってきます。

内山の背後から、原田が槍を構えて近付いてきたのを見て、
「左之助!」
土方が首を振って、それを制します。
そして了解した原田が、今度は駆け寄ろうとした島田を止めます。

険しい表情で深雪太夫の舞いを見ていた近藤は、やがて視線を畳に落とし、一点を睨みつけます。

対峙する内山と総司。微動だにしない総司の落ち着きぶりが素敵です。
内山が上段から仕掛ける。その腕を、総司の刀が払います。
とっさに内山は刀を投げつけ、後ろに逃げようとして転びます。
総司が内山の前に回り込み、突き刺そうと構えた時、内山は総司に短銃を向けていました。
ずるいぞ、飛び道具なんて!!
驚きに目を見開く総司。ゆっくりと撃鉄を起こす内山。見守る土方たちの顔に緊張が走ります。
その時、橋の上に駆け上がってきた斎藤が、内山の背中をグサリと刺しました。
斃れる内山。
総司の顔から、緊張が解けます。
三味線の音調も落ち着いて、ふっと笑みを浮かべる左之助。あんた、ほんと、戦闘モードに入ると
恐いよ〜。(苦笑)
結局、一対一ではなくなってしまいましたが、相手は飛び道具を出してきたんだもの、仕方ないです
よね。土方も、まぁいいか・・・という表情をしています。

そして、舞いの途中で倒れる深雪太夫。近藤が駆け寄り、源さんが店の者を呼びに行きます。
近藤の腕の中で微かに微笑む深雪太夫は、近藤のことが好きなんですね。女心がいじらしい。

内山の死体の脇に、斬奸状を立てる土方たち。
「悪いが、攘夷派の仕業にさせてもらった。」
さすが土方、抜け目ない。(苦笑)


“何事も新選組のためなれど、我が所業、果たして武士道に適いしや否やと、なおも思い悩み居り
 候。”
と、ここまで書いた近藤は、手紙を二つに引き裂きます。
暗殺などと、可愛い奥さんに読ませる話ではないと思ったのでしょう。
近藤は改めて、続きを認めます。
“かくの如く我ら、つつがなく日々を送り居り候。何事も心配ご無用。皆々様によろしく申し上げ下さる
 べく候。恐々謹言。近藤勇”

深雪太夫の仕度が整い、座敷に通された近藤は、書いた手紙を深雪太夫に預けます。
いや、それって、つねさんにも深雪太夫にも失礼かと思うのですが・・・。
女心がわかってないなぁ、近藤さん。
「確かにお預かり致しました。」 と、深雪太夫は手紙を懐に入れます。

“かくの如く我ら、つつがなく日々を送り居り候。何事も心配ご無用。皆々様によろしく申し上げ下さる
 べく候。勇”
読み終えたつねちゃん、安堵と嬉しさでほっと息をついて、それから・・・。
ん? 訝しげに手紙を見つめ、そっと匂いを嗅いでいます。
あ〜ぁ、深雪太夫の移り香が残ってたんだ。だから言わんこっちゃない。
さて、この先は、どういう展開を見せるのでしょうか。

 

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