★★★欧風客車 「サロンカーなにわ」★★★  2014727日公開)

 

2014720日(日)「湖西線開通40周年記念号」

 

 2014720日は、湖西線開通40周年ということで、「サロンカーなにわ」による2つの団体列車が運行された。

 車両としては宮原から敦賀への1往復なのだが、京都⇔近江今津間の「湖西線開通40周年記念号」と、近江今津⇔敦賀間の「高島市民号」という2つの団体仕業をこなしたのであった。

 

 近年では珍しい7両フル編成。牽引機DD51-1183には特製ヘッドマークが掲げられた。

 

 

★★旅行計画★★

 私は2014718日から21日まで4連休であった。

 18日上野発札幌行きの「北斗星」も19日札幌発大阪行きの「トワイライトエクスプレス」も取れなかった。そこで、4年ぶりに「くろしお」のグリーン車で南紀白浜に行こうかとも考えていた。ところが、「サロンカーなにわ」に乗れそうな機会があると知り、そちらへ方向を変えた。

 時々「サロンカーなにわ」のツアーが販売されているのは知っていたが、旅程や日程が合わなかったので手を出せなかった。いくらなんでも岡山・広島・山口方面まで行ったり、泊りがけのツアーに参加したいとは思わなかった。しかし今回、日帰りで京都・滋賀地域で運転された。関西への帰省と組み合わせて乗るには好都合である。「サロンカーなにわ」には、最初にして最後の乗車機会であろう。

 

 「湖西線開通40周年記念号」のツアーで「サロンカーなにわ」に乗車できるのは京都⇔近江今津間60km弱の往復だ。琵琶湖一周ならまだしも、この距離で8,000円は高いのではないかと初めは思った。しかし、“往復約2時間の乗車 + 琵琶湖周遊 + 昼食 + ちょっとしたイベント” これで8,000円ならいいのではないかと思った。今津港からの琵琶湖観光ならば3年前にも来たばかりだが、取捨選択できないのがツアーというものだ。

 “機会”を考慮すると8,000円でも安いのかもしれない。確実に10年後には乗れないだろう。もしも「サロンカーなにわ」の引退が発表されていたら、10倍の8万円でも完売するだろうと思った。

 

 

★★「サロンカーなにわ」への思い★★

 「サロンカーなにわ」は、1983年(昭和58年)に14系座席車からの改造で登場した。その数ヶ月前に登場した東京の「サロンエクスプレス東京」と共に「欧風客車」や「ジョイフルトレイン」という新しい分野の先駆者となった。

 当時は団体列車の予約の受け入れを断らなければいけないほどの団体需要があり、一方でお座敷の和式客車だと若年層への受けがいまいち良くなかったということがあり、欧風客車が登場したのであった。 

 当初、東京の「サロンエクスプレス東京」が臨時特急列車としても華々しく活躍するのが報じられる一方で、大阪の「サロンカーなにわ」についてあまり報じられないのが不満であった。どちらも14系座席車7両編成であるが、内装や展望車の形状および全体の塗装が異なる。比較するような発言は好まないが、私は「サロンカーなにわ」の方が好きであった。しかし時は過ぎ、「サロンエクスプレス東京」は1997年に1両減車されて和式客車へと改造され、2008年には運用を退いた。一方、「サロンカーなにわ」は御召列車仕様に改造され、近年では出番が少なくなったとはいえ今なお現役である。

 「サロンカーなにわ」は、14系座席車と往年の一等展望車の双方の美しさを兼ね備えていると思う。色は昔の方が好きだったが、塗り分けの位置や色の系統が大きく変わらなければ許容範囲内だ。トワイライトエクスプレスと同じ山吹色が使われている部分は、1994年のリニューアル工事前は金色であった。

 昔の私は改造によっていくらでも豪華に作れる車両への関心が薄かったが、今となっては14系も24系も改造車ばかりなので改造車をどうのこうの言うつもりは無い。実際に「サロンカーなにわ」は美しい車両だと思う。

  

 

★★当日の様子★★

【旅程】

受付9:209:50

京都10:32→近江今津11:50

今津港(琵琶湖北湖遊覧 昼食)12:3014:30

近江今津15:42→京都16:53

 

 京都駅0番のりばの山科側では、JR西日本の楽団による演奏が行われた。記念列車のヘッドマークを考案した少年の紹介やJR西日本の重役による挨拶も行われた。

 私が「サロンカーなにわ」の実物を見るのはこの日が3回目だ。1回目は28年ぐらい前に和歌山駅5番のりばにて団体列車として見た。2回目は25年前ぐらい前に湊町駅(現・JR難波駅)に停車しているところを高速道路を通るバスから目撃した。それ以来だ。

 写真撮影は近江今津で行い、まずは乗り込んでほしいとの案内があった。車内は土足厳禁だが、まずは乗り込んでもらい、後ほどスリッパを配付するとの案内もあった。

 7号車は、運行や報道に携わる人など、明らかに26号車とは異なる客層であった。7号車の展望室ではびわ湖放送による取材が行われていた。

 私は各車両を見て回ったのだが、出発時からずっと丁寧な案内放送が行われていた。沿線ではどこの地区の住民達が手を振ってくれるとの案内さえもあった。安曇川で運転停車中には当該放送のお姉さんと話をした。各駅の通過のタイミングに合わせたじつに上手な放送だと伝えた。

 近江今津駅で下車後は、琵琶湖周遊の観光船に乗る旅程だ。駅で降りると、プラットホーム上では「高島市民号」の記念式典の準備が進められていた。駅から降りると、我々への歓迎の横断幕が掲げられ、地元高校生達の楽団の演奏があった。また、駅前は「湖西線開通40周年記念」の祭り会場になっていた。

 観光船は、56号車の乗客と、24号車の乗客とに分けられた。私は「MEGUMI」という船であった。こちらは固定の座席が無く、大きなガラス張りの観光仕様の新しい船であった。港で弁当が配付され、船内での昼食になった。

 

★★座席★★

 復路は最初に乗り込んで座席を撮影した。

 通路が片側に寄せられ、一人がけと二人がけの千鳥配置になっている。通路側は荷棚を使うのが不便だ。この日の乗客の多くは荷棚を使わずに足元や座席にかばんを置いていた。

 また、往路において、座席が45度刻みで向きを変えられる旨を他の乗客に教えてあげた。

  

 座席の形状の美しさもこの車両の魅力だと私は思う。古い故か、リクライニングのストッパーが甘い座席もあるようだ。一方、驚いた事に建て付けがしっかりしていた。これは回転機能が付く一人がけ座席としては珍しい事である。

 

 復路においてはスリッパの案内が全く無かった。往路でのあの騒ぎはなんだったのか…。

 旅の終盤で上手な案内放送が再開された。

 京都駅の改札を出たところで解散だと告げられた。つまり、ツアー客は京都駅で「サロンカーなにわ」を満足に撮影できないという事だ…。

 

 

☆☆☆御召列車用の車両としての「サロンカーなにわ」☆☆☆

※天皇陛下御乗用車両について言及するのはさまざまな面で問題があるかもしれないので考え込んでいた。しかし、「サロンカーなにわ」については知れ渡っている事なので公開しても問題ないと判断した。

 

 1983年(昭和58年)に14系座席車からの改造で登場した「サロンカーなにわ」は、1994年(平成6年)に大掛かりな工事がなされた。工事された5月から天皇陛下御乗用の特別列車として運用されている事から、19945月の工事は御召列車仕様への改造だったのではないかと察する。

 19945月の改造については鉄道J19948月号に載っているが、それには御召や防弾ガラスについては触れられていない。

 2011年にも再度リニューアル工事がなされているはずだが、各車両には「平成6年改造 旧車号オロ14-710」のように、旧車号と現車号が全く同じのプレートが貼られていた。つまり、1994年の工事は抜本的なものだったのだろうと察する。

 

 私から見たところ、天皇陛下御乗用のスロフ14-703とその隣のオロ14-706だけは特別扱いに見えた。

 1号車スロフ14-7032号車オロ14-706の間の貫通路は、他とは異なり、トワイライトエクスプレスのように幌が見えないように施工されている。

 倉庫は、3号車〜がアコーディオンカーテンで区切られているのに対して、2号車には上掲の写真のようにきれいな扉が備えられている。

 2号車のトイレは、35号車の和式とは異なり、洋式である。

 モニターの台も2号車だけ3号車〜とは異なる立派な作りである。これについては件の鉄道J誌にも載っている。

 

 天皇陛下御乗用の御召列車や御乗用列車が往路復路で運行される場合にも必ずスロフ14-703が最後尾となる。2003年の運転に際しては津和野にて1両ずつ切り離しての方向転換が行われた程の徹底ぶりである。スロフ14-703は定員外の展望ラウンジ車だが、反対側のスロフ14-704は展望室の他にリクライニングシートの客室もある。車両の機能だけを見ればスロフ14-704を陛下御乗用車両にすれば良かったのではないかと思える。

 

★★あとがき★★

 私は以前、以下の斜字のように記した。

 「自社管内だけをチョコチョコ走る寝台付きクルージング団体列車にどんな魅力があるのか私にはわからない。時刻表を見ながらどこからどこまで乗ろうかと考えられる列車にこそおもしろさがあると私は思う。

 たしかに「サロンカーなにわ」による団体列車は、寝台こそ付かないものの自社管内だけをチョコチョコ走るクルージング団体列車だ。どこかからどこかへの移動手段として使える列車としての運行はほとんど見られない。

 しかし、ある地域を重点的に見て回る定期観光バスのような目的で乗るとすれば、これはこれでありだと思う。往路の車内でも観光船の船内でも継続的な案内放送が行われ、湖西線や琵琶湖を移動するだけではなく重点的に接したい人にとっては満足できるものであった。

 尤も、私のように「サロンカーなにわ」に乗れればそれで満足という場合にもそれはそれでいいであろう。

 魅力ある車両は何度でも乗りたいものだが、「サロンカーなにわ」には最初にして最後の乗車機会であろう。憧れの車両に乗る事ができて満足であった。

 

 

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