福田首相辞任で消費者庁はどうなるのか


  9月1日防災の日の夜、福田首相は突然辞任の意向を発表した。消費者庁構想は、福田首相個人の強い意志で進
進められてきた。その本人が首相を辞任するとなれば、今後が気になる。

  福田首相は、同日の記者会見のなかで、以下のように述べている〔要約。毎日新聞より〕。

「首相就任以来1年近くたった。参院選で与党が過半数割れする中、困難を承知でお引き受けした。最初から
政治資金の問題、年金記録問題、C型肝炎問題、防衛省の不祥事など積年の問題が顕在化して、その処理に
忙殺された。

 その中でも、将来を見据え、目立たなかったかもしれないが、これまで誰も手を付けなかった国民目線での改
革に着手した。例えば道路特定財源の一般財源化、消費者庁設置法案のとりまとめ、社会保障制度の抜本見
直しなどだ。方向性は打ち出せたと思っている。

 今年に入り、物価高騰に国民や農林漁業、中小企業や零細企業の皆さんが苦しむ中、何とかして強力な対
策をと思い、体制を整える目的で8月に改造を断行した。先週金曜日に総合的対策を取りまとめることができ
た。

 臨時国会では補正予算案や消費者庁設置法など、国民生活にとって一刻の猶予もない重要な案件を審議す
。先の国会では民主党が重要案件の審議引き延ばしや審議拒否を行った。今度の(臨時)国会でこのような
ことは起こってはならない。そのためにも体制を整えた上で国会に臨むべきだと考えた。

 国民生活を第一に考えるなら、今ここで政治的空白を生じ、政策実施の歩みを止めてはならない。この際、新
しい布陣の下に政策の実現を図らなければいけないと判断し、本日、辞任することを決意した。経済対策や消
費者庁設置法案をとりまとめ、国会の実質審議入りには時間がある、このタイミングを狙って、国民にも大きな
迷惑がかからないと考え、この時期を選んだ。」


  さらに、記者の「消費者庁などいずれも道半ば。首相が辞めること自体が政治的空白を招くのでは?」との質問に
対しては、「消費者庁は法案がまとまった。私が続けて順調に行けばいいが、そうはさせじという野党がいる。大
変困難だ。」と回答している。


  要するに消費者庁構想に関しては、政府提出法案がまとまったので、後は国会での審議となる。しかし、自分が首
相を務めていては審議が進まない。方向性は打ち出したので、あとは後継者に委ねるということである。

  二つ問題がある。一つは後継者が消費者庁構想に熱意、あるいは熱意とは言わないまでも理解があるかである。
二つ目は強力な消費者庁推進者がいなくなった後、官僚や族議員の抵抗で構想自体が後退しないかということであ
る。

  次期首相候補として麻生太郎氏の名前があがっているが、もし首相になった場合、消費者庁構想を推進する意志
があるのか気になるところである。麻生氏は経済企画庁長官、経済財政政策担当大臣を経験しているし、大臣の時代
に国民生活センターの東京事務所を訪問し、相談員と懇談したことがある。消費者行政の内容や意義は理解している
と考えられるが、抵抗の強い消費者庁構想にイニシアティブを発揮するかは未知数である。
 
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  一方、民主党は8月25日、福田首相の消費者庁構想の対案をまとめた。内閣から独立した「消費者権利院」を設置
し、各省庁に対して強制調査や処分などの権限行使を勧告できる「消費者権利官」をトップに据える。毎日新聞の報道
によれば、内閣の中に置く消費者庁と違い、政府の外から監視する「オンブズマン的構成」にしたのが特徴であり、
費者庁という組織形態に関し、野田聖子消費者行政担当相は「これだけは譲れない」と明言しているという。

  民主党の人権・消費者調査会がまとめた要綱によると、消費者権利官は民間から起用し、国会が指名することで
閣僚以上の権威を持たせる。任期は6年で再任はできない。都道府県に「地方消費者権利官」を置き、中央の権利官
が各地方の民間人から指名する。地方の消費生活センターを組織に取り込んで相談員を任期付きの国家公務員とし
て雇用し、中央と地方の相談窓口の一元化も図る。相談員の人件費などで毎年約1000億円の経費を見込んでいる。


 国会審議では自民党と民主党が激しくぶつかり合うことも予想される。解散総選挙の日程も早まったというマスコミ報
道もある。政権交代があり得るとすれば法案審議に影響してこよう。、消費者庁構想の先行きは混沌としてきたと言っ
てよいであろう。


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