包茎手術トラブル 東京都が被害救済



   人の弱味に漬け込む消費者被害が後を絶たない。その一つとして、私は前から包茎手術の自由診療トラブルを
問題視してきた。苦情を言いにくい人の弱みに付け込んで荒稼ぎする医療の現状が野放し状態である。

  保険診療の場合の不正は保険金不当請求事件として扱われるが、自由診療は当事者間の民事上の問題として厚
労省はほとんど何もせず、唯一問題となるのは大もうけしている医師の所得隠しによる脱税事案だけである。

  そんな中、東京都が調停に乗り出した。東京都消費生活条例に基づき、東京都知事は東京都消費者被害救済委
員会(会長 淡路剛久 早稲田大学大学院法務研究科教授)に、「高額な包茎手術の契約に係る紛争」の処理を付
託した。
  本件は下記の3人の申立てによるものである。申立人A、B及びCは、雑誌やインターネットの広告を見て、15万円
程度で包茎手術ができると思ってクリニックへ行ったが、広告とは違う手術とコラーゲンの注入で高額になたっというも
のである。

●申立人A 学生・20歳代 契約金額・約140万円
 無痛との広告を見て手術を予約した申立人は、手術後の痛みを緩和するためにはコラーゲンの注入が必要と言われ、高額な治療費となったこと
に納得がいかないと減額を要求。しかし、クリニックは、何度も説明し納得の上で手術したので減額には応じられないと主張し、紛争となった。

●申立人B 給与生活者・20歳代 契約金額・約200万円
 受付後、すぐに手術台の上で数種類の写真を見せられ、「安いコースだと綺麗にできない。一生に一度のことだからみんな一番高いのをやって
いる。コラーゲンの効果は一生続く。」と言われた。申立人は、手術台の上で冷静な判断ができず承諾したが、高額な手術代に納得できないと減
額を要求。クリニックが提示した回答に納得できず紛争となった。

●申立人C 給与生活者・20歳代 契約金額・約280万円
 カウンセラーが真性包茎と診察したが、健康保険が適用される疾病であることや当該クリニックは自由診療のみであるとの説明はなかった。ま
た、手術後の痛み緩和と亀頭強化に効果があると言われコラーゲンを注入した。申立人は、効果が実感できず、また、広告の10倍以上となった手
術代にも納得ができないとして減額を要求。クリニックが提示した回答に納得できず紛争となった。


  今後、同委員会は、申立人(消費者)及び相手方(事業者)双方から事情を聞いて、あっせん等による紛争解決に
向けた取組みを行なうという。

  しかし、相談に来た消費者を救済すれば済む問題ではない。東京都の案件は3人の申立てによるものである。仮に
この3人が救済されても、当該医師にとっては3人に返金等をすれば済む話であり、引き続き荒稼ぎを続けることが可
能なる。潜在的な被害は多数あることが予想され、また、新たな被害者を生み続けることとなる。過去の被害の掘り起
こしや不当行為の差止めが必要である。

  現在、消費者庁の設置など消費者行政の一元化が議論されているが、組織改編ばかりに目を奪われず、違法行
為のやり得を防ぐための行政権限のあり方を議論すべきである。
  
  また、東京都等の自治体で消費者被害救済委員会を開催する場合は、一定の期間公示して、同種被害者の堀り
起こしをしてはどうか。例えば、韓国消費者院には消費者紛争調停委員会が設けられ、被害を受けた消費者は一定の
要件のもと調停の開始を申し出ることができるが、被害が多数の消費者に同様に発生している場合は、「集団紛争調
停」という手続きがある(韓国消費者基本法68条)。

細川幸一


東京都の報道発表資料「高額な包茎手術の契約に係る紛争東京都消費者被害救済委員会に付託(2008.1.9.)

過去の関連ページ「包茎手術 自由診療の契約トラブルをどう解決するのか


 2008年7月24日あっせん解決しました


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