ネットオークションでのダフ屋行為で逮捕者


  
  堂本光一主演の「Endless SHOCK」(帝国劇場)千秋楽チケットが30万円でチケット屋で売りに出されている話
本サイト別コーナーでしたが、同舞台のチケットをインターネットオークションでの転売目的で購入したとして、警視庁
生活安全特別捜査隊などが4月3日、東京都迷惑防止条例違反(ダフ屋行為)容疑で東京都江東区越中島、無職後
藤崇容疑者(41)ら2人を逮捕したことが報じられている。同隊によると、2人はチケット購入の予約番号を入手するた
め、電話申し込みを6480回繰り返していた。124枚のチケットを購入し、定価1万2000円のS席を5万円前後で転
売し、計約335万円の利益を上げていたという。 

  2005年9月17日付読売新聞によると、東京都迷惑防止条例は、戦後の愚連(ぐれん)隊による暴力や押し売りか
ら市民を守る目的で1962年に制定され、施行後も、スカウト行為や強引な勧誘の禁止が盛り込まれるなど、社会情
勢の変遷に伴って改正されてきた。ダフ屋行為についても禁じているが、チケットなどがインターネットで転売されること
は想定されていない。 同条例では、〈1〉「不特定の人に転売する目的でチケットなどを購入する」行為〈2〉「チケットな
どを公共の場所で売る」行為−−のどちらかが適用できれば、ダフ屋行為を摘発できる。しかし、ネットが「公共の場」
にあたるか否かについては、警察は今のところ、あたらないとの見解を示している。今回は前者の「不特定の人に転売
する目的でチケットなどを購入する」行為によって逮捕されている。

  一橋大学・松本恒雄教授は同新聞の記事で、「従来の公共空間に適用する法律が、インターネット上でもそのまま
適用できるかどうかは、個別に検討しなければならない。しかし、現実の世界でもよくない行為は、ネット上でもよくない
として規制されるべきだ。現段階では、オークションの事業者側で、悪質な商品は出品しないように呼びかけ、出品され
たら削除するといった対応しかないだろう」 とコメントしている。

  転売目的で購入すれば、法触れるということを承知しているためか、チケットのネットオークションでは、出品者の
「都合で見に行けなくなったので、仕方なくお売りします」などというメッセージを見かける。出品、落札の双方を常識の
範囲で行っている人のメッセージであれば納得するが、出品だけが何百回もあるような行為はやはり条例違反となる
のではないか。

  ネットオークションでの取引そのものの規制については消極的な意見もある。岡村久道弁護士は同記事のなかで
「新たなネット上の問題が発生すれば、それに合わせて条例改正も検討されるべきだろう。だからといってネット上での
チケットの取引自体を規制する合理性はない。そもそも今回の問題は、一部の人に大量の予約券が集中し、投機の対
象になったことにある。主催者側はネット時代にこのような取引が行われることも考えて、配布システムに注意を払うべ
きだったのではないか」 としている。

  興行主はいろいろ工夫はしている。購入者の名前が入ったチケットとしたり、あるいは通常は席を指定して購入でき
るが、席種(S席、A席、B席等)だけを選べるようにしたり、あるいは席種すら選べないというクレジット会社による貸切
公演日の販売もある。
 
  ではYahoo等のオークションの事業者はどのような対応を取っているのであろうか? 出品者や落札者を相手方が
評価できるシステムを構築したり、エスクローを利用できるようしたり、トラブルの多い取引者の口座情報を公開したり
と、ネットオークションでの不正が行われないような努力をしているが、これらは詐欺等の犯罪防止策であり、ダフ行為
を防ぐ手段ではない。


  自由主義経済のもとでは何をいくらで売買するかはそれが公序良俗に反しない限りは原則自由である。また、ネッ
トオークションでは訪問販売のような不意打ち性や強引な勧誘等もない。さらに講演会場前でやくざ風の男が「チケット
売るよ」と寄ってくるような迷惑行為もない。その意味では自由であってよいのかもしれない。しかし、人気のあるチケッ
トは額面での購入機会が少なくなるであろう。それは国民が文化にふれる機会を減少させる。考えるべきは、従来はや
くざなどが行っていたダフ行為が市民に広く拡散し、自宅で出来る金儲けの手段になっているのではないかということで
ある。演劇やコンサート等の文化の振興に水をさす行為であるように思う。その意味では法的に規制したり、オークショ
ンの事業者が制限を加えるということの検討とともに、そういった利益追求の出品には落札しないといった市民の自覚
も必要なのではと思う。




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