ニャック・ポアン/Neak Pean−2/3


神馬『ヴァラーハ』

 ニャック・ポアン中央池の祠堂、ナーガが頭を上げて門のようになっているその前に、神馬『ヴァラーハ』の像がある。これは以下の伝説に登場するものです。(購入した本“アンコールの遺跡”より抜粋)

 シンハカルバという町の善良な商人シンハラは、常日頃観世音菩薩をあがめていたが、ある日航海中に嵐にあい、旅人たちと共に銅の島タームラ・ドゥーバ(現在のスリランカ)に打ちあげられた。この島は恐ろしい人食い鬼の雌ラークシャー(羅刹女)の住家であった。それとは知らず岸に上がってくるシンハラ達を見た雌鬼達は美しい乙女に化けて彼らを歓待し、彼らの身の上を憐れみ慰めなどして自分達の住家へ迎え入れ、やがて旅人達を一人一人夫にしてしまった。
ある夜、皆が寝静まったころシンハラはふと目を覚まし、部屋のランプが笑っているのを見て不審に思い、その訳を尋ねた。ランプは
「あなたがたが共に寝起きしている女達は、実は恐ろしい人食い鬼で、今あなた方はこの上ない危険にさらされています。身を救いたければ海辺へ行きなさい。ヴァラーハという馬が待っています。ただし、馬に乗ったら、向こう岸に着くまで決して目をあけてはなりませんぞ。」
と答えた。シンハラはたいそう驚き、すぐに逃げ出す決心をして仲間をそっと呼び起こした。仰天した人々は我さきに海辺へ行き、待っていた馬の体にしがみついた。馬は天高く駆け上がった。この馬ヴァラーハこそが、シンハラのあがめていた観世音菩薩の化身であった。

これがヴァラーハ。馬の首や脚にしがみつく人々の様子が彫刻されている。
ヴァラーハ
撮影:02年4月

ヴァラーハ
撮影:02年12月

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