Give Me Your Blood!

はじめがきより抜粋

 えーと、この本は、RQに興味はあるけど、まだプレイしたことがないという方、および、最近グローランサに住み始めた方に、世界を紹介することを目的として書かれています(表向きはね)。ですから、RQの素人さんも、どうぞ、お気軽にお読みください。なお、くれぐれも真剣に読まないように(笑)。  初心者の方には、この本を読んで、その雰囲気を一端なりと、つかんでもらえれば幸いです。ヴァンパイアならすぐにプレイできるようになりますよ(笑)。

 しかし、残念なことにヴィヴァモートに関する公式な設定(for 3rd)は、いまだ発表されておりません。そこで、カルトの設定のほとんどとヴァンパイアについての設定の一部については、Cults of Terror を参考にしています。ちなみに、Cults of Terror とは、RQ2時代にケイオシアムから出版されていたサプリメントで、混沌のカルトについて、詳細に記述されている優れものです。  90'sにも紹介されているのですが、そちらは公式なものかどうかわからないので、最小限の参考にとどめてあります。ヴィヴァモートに興味があったら、そっちも参考にしてみてください。なお Cults of Terrorからの引用部については、混乱のないように、(CT)という記号をつけておきました。

 では、混沌カルト人気No.1、ヴィヴァモートの世界をどうぞお楽しみください。
 これで君もイモータルだ!(笑)


キャラクター紹介

ニム伯爵

種族 ヴァンパイア(もと人間)
身長 182cm  体重 71kg
年齢 200±50歳

ヴィヴァモートの高司祭にして高貴なるヴァンパイア。
自尊心が高く、逃げ足が早い。
なぜ伯爵なのかは誰も知らない。

イオ

種族 人間
身長 158cm  体重 49kg
年齢 17歳

ヴィヴァモートの平信者で、ヴァンパイアを夢見る少女。
ヴァンパイアとなるべく日夜努力している。
愛と根性と献血の主人公。

スケノビッチ

種族 スケルトン
身長 175cm 体重 11kg
年齢 不詳

なぜか喋るスケルトン(笑)。
ヴィヴァモートテンプルのロイヤルガードにして、執事。
ニム伯爵に昔から使えている。
かなりの腕らしい。

ギャレット

種族 人間
身長 187cm 体重 73kg
年齢 29歳

フマクトの剣(ルーンロード)。壊滅したヴィヴァモートテンプルから逃げ延びた、ヴァンパイア司祭を追っている。
愛剣ピエールを同盟精霊にもつ。

プロローグ

イオ「司祭様〜、休みましょうよぉ。あたし、疲れてもう動けませ〜ん」
ニム「何をいっておる。わしを見よ、汗一つかいておらんし、息も切れておらんぞ」
スケさん「わたくしめも、まだ大丈夫でございますよ」
イオ「司祭様はヴァンパイアですし、スケさんはスケルトンなんですから、当然じゃないですかぁ。普通の人間なら、土が詰まった棺を抱えて3時間も歩けば、限界ですぅ」
ニム「全く、人間というのは、どうしてこう弱いのであろうな」
スケさん「そうでございます。イオ、根性が足りませぬぞ。わたくしもともに、運んでいるというのに」
イオ「スケさんも、あんまり長い間、重い物持ってると、疲労骨折しちゃうよ」
スケさん「(ぎくっ)伯爵様、イオもこう申しておりますことですし、そろそろ休憩でもとってはいかがでしょう」
ニム「ふむ。そうだな。夜明けまでにはまだ間があるし、ここまでくれば、大丈夫であろう」
イオ「はぁ、はぁ、はぁ。あ〜、疲れた」
スケさん「ふー、骨がおれるわい」
イオ「《修復》かけてあげようか?」
スケさん「いや、そういう意味ではないのですがね‥‥」
ニム「さて、イオ、休息をとるのならお茶の用意をしなさい」
イオ「え〜、でも〜」
ニム「ほら、つべこべいわんと用意するのだ」
イオ「‥‥はーい」
ニム「(ちゅうちゅう)しかし、我が神聖なる寺院に押し入るとは、(ちゅうちゅう)許せん連中だな」
イオ「司祭様、喋るのか血を吸うのかどちらかにしてくださいよぉ、くすぐったいですぅ。それと、あまり吸わないでくださいね。まだ、棺を運ばなきゃいけないんですから」
ニム「(ちゅうちゅう)わかっておる」
イオ「きゃはは、くすぐったぁーい」
ニム「ふぅ、なかなかの味であったぞ。誉めてやる」
イオ「あ、ありがとうございます。でも、なんだかふらふらするんですけど」
ニム「大丈夫である。100tしか飲んでおらん」
イオ「そうですかぁ」
ニム「そうだ」
イオ「‥‥。ところで、いままで、逃げてきたから聞けなかったんですけど、昼間、村を襲ってきた人たちって何者なんですか?」
ニム「風の連中だな」
スケさん「つまり、オーランスやブルやフマクトの連中ということでございます」
イオ「へー」
ニム「奴らめ、卑怯にも昼間に襲撃し、我が臣民達をも扇動して襲ってくるとは、全く許せん」
イオ「護衛のアンデッドやルーンロード様もやられちゃいましたもんね」
ニム「今となっては、生き残りはわし達二人だけとなってしまった」
スケさん「あのぅ、わたくしもおりますが」
ニム「おお、そうであったな、スケノビッチ。貴様のことはすっかり忘れておった」
イオ「司祭様、最近、物忘れが激しくなってきたんじゃないですか?」
スケさん「イオ、そんなことをいってはいけませぬ。年をとりすぎてぼけてるとか、もう死んでるんだから頭の血のめぐりが悪い、だとか。伯爵様に失礼であろうが」
ニム「貴様がいちばん失礼だ!(ポカッ)」
スケさん「おお、頭蓋骨に響く」

ギャレット「見つけたぞ! ヴァンパイア! 貴様があの寺院の高司祭だな! 護衛はそこのスケルトン一体のみか。もう逃がしはせぬ、覚悟!」
ニム「いきなり誰だ? む、貴様はフマクトの‥‥」
ギャレット「フッ、その通り。人は俺のことをこう呼ぶ、最強の剣士にして死者に死を運ぶもの、その名も、美しき死神、フマクトの剣、ギャレット!」

 バーン!!

ギャレット「フッ、決まったな」
ニム「イオ、スケノビッチ、今の内に逃げるぞ」
イオ「はい、司祭様」
スケさん「御意」
ニム&イオ&スケさん「(こそこそ)」
ギャレット「んー、やっぱりここは、こう正眼に構えるべきだったかなぁ、いや、それともバラをくわえた方が‥‥」
ピエール「ちょっと、あんさん、ヴァンパイアが逃げていきまっせ」
ギャレット「ピエール、少し静かにせんか、今大事なところなのだ」
ピエール「しかしでんな、ここでヴァンパイア逃がしてしもうたら、フマクトさんにえろう怒られまっせ」
ギャレット「‥‥ん? ヴァンパイアが逃げるだと? どこだ? おおっ、本当だ。待てーい! ヴァンパイア」
ニム「むぅ、なぜに見つかってしまったのだ」
ギャレット「わたしには偉大なるフマクト神と、どんなことも見逃さぬ愛剣ピエールがついているのだ!」
ピエール「はぁ。そりゃ、あんな大きな棺を抱えて動いてたら、誰だって気づきますがな」
ニム「うーむ。見つかってしまっては仕方がない。ゆけ、スケノビッチ、アンデッドの恐ろしさを見せてやるのだ」
イオ「骨は拾ってあげるからがんばって〜」
スケさん「は、わかりました。参りますぞ、やー」

 バキッ!

スケさん「うわー。やられました」
イオ「スケさ〜ん、あとで直してあげるからね」
ニム「むむ、なかなかやるな。だが、コホン、 だぁーはっはっは、我こそはアンデッドの長にして、愚かなる人間を導く高貴なる存在、死をも超越した力を持つ偉大なる神ヴィヴァモートの高司祭にして無限の時間を生きるヴァンパイア、ニム伯爵であ〜る」
イオ「おお〜。ぱちぱちぱちぱち」
ニム「キャロットとやら、貴様一人でこの、高貴な、わしに立ち向かおうというのか? わははは、笑わしてくれる」
ギャレット「ギャレットだ!」
ニム「こい! にんじんの若造」
ギャレット「だから、ギャレットだ! ゆくぞ、ファイヤーブレード!そして、デスルーン! もひとつおまけにサンブラ〜イト!」
ニム「ちょっと待った! どうして、フマクティの貴様が、サンブライトを使えるのだ」
ギャレット「フッ、知り合いにイサリーズがいても不思議はあるまい」
ニム「むむぅ、卑怯な」
ギャレット「どこがだ!」
ニム「そんな卑怯な奴には‥‥こうだ!」
イオ「キャー、なにするんですか」
ニム「(小声)(しっ、黙っておとなしくしておれ)」
ギャレット「おお、何ということだ! 何の関係もない少女がヴァンパイアに捕まってしまったぁ」
ピエール「いやに説明的な台詞でんな」
ニム「ははは、動くなよ、貴様が一歩でも動いたらこの娘の命はないぞ」
ギャレット「ぐ、ぐ。卑怯な」
ニム「卑怯? 最高の誉め言葉だな」
イオ「(司祭様、かっこいいです)」
ニム「(ふふふ、そうだろう)」
ピエール「あんさん、女の子一人の命よりヴァンパイアやっつける方が大事でっしゃろ。ヴァンパイア生かしとくと、このあと何人犠牲者がでるかわかりまへんで」
ギャレット「確かにピエールの言うとおりだ。少女よ、その男はヴァンパイアなのだ。混沌を討つため、グローランサの平和を守るため、犠牲となってくれ。おお、俺は悲劇のヒーローだったのかぁ!」
ニム「お、おい」
イオ「ちょ、ちょっと」
ニム「(イオ、どうにかしろ)」
イオ「(どうにかしろっていわれても‥‥)ああ、フマクトの剣士様、混沌を討つため、この命がどうなろうとそれはかまいません。ですが、あたしには、小さな弟と妹がいるんです。父も母もなく、おなかをすかせてあたしの帰りを待っているんです。なのに、あたしまで死んでしまったら、あの子たちは明日からどうやって食べていけばいいのでしょう、それが不憫で不憫で‥‥ううう」
ギャレット「むっ、かわいそうになぁ。俺はこういう話に弱いのだ」
ピエール「あんさん、そんなこといわんと、はようヴァンパイア斬りましょ」
ギャレット「ばかもの! おまえには人間のあたたかさというものがないのか」
ピエール「そりゃ、わいは剣やさかい」
ニム「こら、なにを独りでぶつぶつ言っておるのだ(注、ピエールの言葉はギャレットにしか聞こえません)。さあ、どうするかね?」
イオ「(司祭様、悪役みたいですぅ)」
ギャレット「くっ、今夜だけは見逃してやる。だが、その少女だけは助けてやれ」
ニム
「約束しよう。わしは貴族だからな」

イオ「司祭様、さっきの人、いっちゃいましたね。くす」
ニム「うむ、良くやったぞ、イオ。誉めてやる」
イオ「へへ、ありがとうございます」
ニム「さて、夜が開ける前に昼を過ごす場所を見つけねばならん。出発するぞ」
イオ「はい、司祭様」

スケさん「‥‥あのー、修理してもらえませんでしょうか」

カルトのおはなし

イオ「あ!」
ニム「どうした?」
イオ「司祭様、あっちに廃屋があります。今日の昼はあそこで過ごしましょう」
ニム「どれどれ。うーむ、高貴な私には不釣り合いなぼろ建物だが、まあ、よかろう。一昼泊まってやろう」
イオ「ふわーい。じゃあ棺、運び込みますね。あたし、眠くなっちゃった」
スケさん「では、わたくしめは外で見張りでもしておりましょう」
ニム「馬鹿者、おまえ、自分の格好を考えたことがあるか」
スケさん「おお、そういわれれば。裸でしたな。ポッ」
ニム「(ポカッ)中に居ろ、中に」

 ZZZzzz

ニム「これ、イオ、いつまで寝ておるのだ」
イオ「むにゃ、もうあたし食べられないよぉ、むにゃむにゃ」
ニム「ほれ、ちゃんと目を覚まさんか! もう夕暮れ時であるぞ」
イオ「は! あれ? 司祭様、どうしてこんなところに?‥‥あ、思いだした」
ニム「やっと目が覚めたか。よく夕暮れまで寝ていられるな、人間の癖に。わしがまだ人間だった頃は昼には起きだしたものだが‥‥はて、いつのことだったか」
イオ「司祭様、そんなこと言うためにあたしを起こしたんですかぁ」
ニム「いやいや、ちがう。聞いておくことがあったのだ。おまえはまだ、平信者だったな」
イオ「はい、そうですけど」
ニム「おまえを入信者にしてやろう、どうだ?」
イオ「え、本当ですか?」
ニム「うむ。幸い、今夜は聖夜(Holy Night)でもあるし。まあ、新たに寺院を再建するにあたって、信者が平信者だけでは格好がつかんからな」
イオ「わーい、うれしいなったらうれしいな。これであたしも、一歩、イモータルへ近づいたわけですね」
ニム「まあ、そういうことになるな」
イオ「わーいわーい」
ニム「はしゃぐのはよいが、カルトの決まりは当然、知っておろうな」
イオ「え?‥‥」
ニム「‥‥知らんのか」

 一時間目《神話》

ニム「まず、神話についての講義をはじめる」
イオ「はい、司祭様」
ニム「ちがーう! ここではわしのことは『せんせい』とMPを込めて呼ぶのだ」
イオ「は、はい。せんせい」
ニム「よろしい。イオはヴィヴァモートの神話を知っておるかね?」
イオ「はい、少しだけですけど」
ニム「うむ。説明しなさい」
イオ「えーと、ヴィヴァモート様は、昔は地界で謎のルーンの守護をしていた暗黒の神様でした。ところが、ユールマルやフマクトと一緒に謎を暴き、「死」のルーンを発掘してしまいました。「死」の力によって地上が混乱すると、「死」のルーンを地上にばらまいたのはユールマルとフマクトなのに、ヴィヴァモート様が守ってなかったのが悪い、ってみんながいぢめました」
ニム「いぢめました、って、もう少しいいようがあるだろう。まあ、よい。だいたいその通りなのだが、いくつか補足せねばなるまい。わしが直々に教えてやる。心して聞くように」
イオ「はい、せんせい」
ニム「時が始まる前、ヴィヴァモートは、地獄へ通じる、迷宮となったホールに住む暗黒の精霊であり、おそるべき秘密を永遠に守るべき存在であったのだ。ところが、ユールマルが地獄へ這い入ろうとしたとき、ヴィヴァモートは、その秘密がなにかに興味をもち、その信託を裏切ることとなった」
イオ「きっと、ユールマルに騙されたんですね」
ニム「そして、「死」を発見したのだ。その後、ヴィヴァモートは、ユールマルとフマクトが、デスハウンドや、地獄の門衛ビンバロスのもとを通り過ぎ、「死」を地表に運び出すのに手をかしてやった。  「死」によって、グランドファーザー・モータルが最初に死に、ヴィヴァモートのもとへやってきた。彼が最初に、ヴィヴァモートの反逆行為に気づき、おおいに憎んだ、とある」
イオ「ええっ。それって逆恨みもいいとこじゃないですか。殺したのはフマクトだし、「死」をばらまいたのってユールマルでしょう。ぷんぷん」
ニム「遅れて太陽が地獄におちた。ヴィヴァモートは焼かれ、傷つき、醜い姿となって、今や暗くなった地表へと逃れねばならなくなった」
イオ「うう、ヴィヴァモート様も、オーランスの馬鹿の、とばっちりを受けたかわいそうな方だったんですね、うるうる」
ニム「地表につくと、ヴィヴァモートは病の母マリアのもとへ保護を求め、かわりに、暗黒と死の秘密を与えた。彼は、力を求めて世界をさまよった。さまようにつれ、「死」についてより多くのことを知り、自分が解き放ったものを恐れはじめたのだ。というのも、「死」の延長上に混沌をみたからである。ヴィヴァモートは恐怖に凍りついた」
イオ「ヴィヴァモート様って責任感の強いお方だったんですね。悪いのはみんなフマクトとユールマルなのにぃ」
ニム「じきに、デビルがヴィヴァモートを襲い、彼を傷つけた。その傷は治癒できず、彼の力は虚無へと流れ出した。ヴィヴァモートは混沌による傷により、死ではなく消滅の危機に直面したのだ。故に、彼はなんとか存在し続けたいと願い、敵である混沌に助けを乞うて、彼らと契約を交わした。  ヴィヴァモートは空虚なものとして存在することをデビルに認められ、世界との神秘的な絆を断ち切り、生とも死とも離れた存在となった。そのため、ヴィヴァモートは他者から生命を吸い取り、混沌を包含しなければならなくなったのだ。完全な消滅かエントロピーの執行者となるか、二者択一を迫られた末、プライドと恐怖から、かの神は後者を選んだのだ」
イオ「当然よね」
ニム「彼はその能力を他の神々から力を吸い取ることに用いた。ヴィヴァモートは徐々に同盟者を増やしていき、他者を彼のようにしてやった。かつて、ヴィヴァモートとアンデッドたちはアローインを捕らえ、その魂を破壊したが、彼を殺すことはできなかったという」
イオ「アローインって?」
ニム「チャラナ・アローイの息子である。その神の治癒の力のおかげで、混沌の者達は治癒されることができたのだ。その功績を認めて、ヴィヴァモートは彼を殺さないでやったのであろう。  ヴィヴァモートが裏切ったという知らせは、彼に襲われたが消滅させられなかった精霊達によって、地獄へもたらされた。そこの多くの神々がヴィヴァモートを呪った。中でも太陽、タイ・コラ・テック、スティクスの呪いが強力であった」
イオ「ううう。ヴィヴァモート様、おかわいそう」
ニム「まあ、普通の神ならば、とっくに滅んでおろうが、ヴィヴァモートは力も知恵もある神だったのだ。だから、こうして「死」
以上の力を得た存在として、みなから畏れられておるのだよ」
イオ「ヴィヴァモート様、かっこいい!」
ニム「ちなみに、ヴィヴァモートの所持するルーンは「アンデッド」、「暗黒」、「無秩序」である」
イオ「でも、せんせい、「無秩序」ではなくて「混沌」だとかいてあるもの(CT)もあるんですけど」
ニム「‥‥まちがいである」
イオ「どっちが?」
ニム「さあ?」

 二時間目《カルト》

ニム「次は、カルトについて知ってもらう。よいな」
イオ「ところで、せんせい」
ニム「ばかものぉ! わしのことは『コーチ』と呼ばんか」
イオ「え、でもさっきは、せんせい、と呼べと‥‥」
ニム「えーい、ヴァンパイアを目指す者が過去のことにこだわってどうする。明日を見つめるのだ!」
イオ「わ、わかりました、コーチ‥‥」
ニム「よろしい。で、何かな?」
イオ「スケさんはどこにいったんですか? さっきから見えませんけど」
ニム「ああ、スケノビッチか。あやつは今夜の儀式の生け贄を探しにいっておる。本来なら、おまえが自分で連れてこなくてはいけないのだが、まあ、無理であろうからなぁ」
イオ「へへへ」
ニム「では、はじめるぞ。まず、おまえは今まで平信者だったわけだが、平信者の心得を申してみよ」
イオ「はい。えーと‥‥えーと‥‥ははは」
ニム「ははは、ではない。まったく入信者になろうというものが、嘆かわしい。よいか、下の表1をよく見よ」

表1 ヴィヴァモートカルトのお約束(CT改)

平信者
 誰でもなることができる
 秘密を守ること
 一週間に1ポイントのMPをカルトに捧げること

特典
 普通は、ヴァンパイアの生け贄になることはない

入信者
 入信希望者は寺院に生け贄を連れて来ること。それが評価される仕事であれば、それだけ入信者になり易い
 入信のためのテストは、提供した生け贄一人につき(INT+APP+1)×5/2%以下をロールすることで表される。現 金によって入信確率をあげることはできない。入信に失敗した者は裏切り者とみなされ、次の宴のメインディッシュとなる。逃げようとするのは自由だが、逃走に失敗してもゾンビとなってカルトを護衛することができる
 上司であるヴァンパイアのルーンロードやルーンプリーストを決して裏切らない、と誓うこと
 家族や氏族との絆を断ち切るか、ともにカルトに入るかすること
 家族の少なくとも一人を、ヴァンパイアの為に、宴の食事として差し出すこと。家族がいなければ友人でもよい
 聖夜のたびに、MPを2ポイントとFPを4(?)ポイント捧げること
 収入の3分の1を寺院に納めること
 上司から要求されたことはどんなことでもすること
 必要時には、生け贄を見つけるのを手伝うこと
10 寺院に住んでも、近くの共同体での仕事を続けてもよい
11 ヴァンパイアが(戦闘などで)特別にMPを必要とするときには、MPを提供すること
12 以下の精霊呪文は禁止。《火の矢》《火剣》《発火》《光の壁》

特典
13 ヴァンパイアになるための道を歩む資格が得られる
14 昼の間は、平信者達を直接率い指導することができる
15 カルトのスキルを教えてもらえる。<隠れる><忍び歩き><物を隠す><視力><ソードバイター>など

イオ「信者の心得ですか。‥‥え〜! 平信者になってていいことってこれだけだったんですか?」
ニム「ん? 何か問題でもあるのか?」
イオ「なんか、詐欺っぽくないですか?」
ニム「何を言っておる。普通、平信者で特典のあるカルトなどそうあるものではないのだぞ。特典があるだけありがたいと思うのだ」
イオ「でもぉ」
ニム「よいではないか。今夜からおまえも入信者となるのだから」
イオ「それもそうですね。で、入信者についてですけど、いっぱい条件があるんですね」
ニム「もちろんだ。ヴィヴァモートカルトの入信者は他のカルトよりも多くの権限が与えられているのだからな」
イオ「といいますと?」
ニム「14にあるように、昼の間、カルトを運営するのは入信者の役目なのだ」
イオ「へー。あたしにできるかしら?」
ニム「大丈夫であろう。スケノビッチもおるしな」
イオ「えっと、入信するときには、と。生け贄を連れてこなければいけないんですか?」
ニム「普通はそうだ。が、今回は特別に、つけにしておいてやるから、そのうちにつれてくるように」
イオ「はーい。それと、試験があるんですね」
ニム「うむ、まあ、そのなんだな。なに、形式的なものだ。失敗する者はほとんどおらぬ(たいてい生け贄を2人は連れてくるからなのだが)」
イオ「なーんだ。失敗したら、ゾンビにされるってあるからびっくりしちゃった。えーと、つぎは‥‥ニム様を決して裏切らないと誓いまーす、これでいいんですか?」
ニム「儀式の時に誓えばよい」
イオ「4と5なんですけど、あたしには家族も氏族もいないんですが‥‥」
ニム「たしか、おまえは捨て子であったな」
イオ「はい。あたし、ずっとカルトで育ててもらったから、司祭様が親同然なんですけど‥‥。司祭様、生け贄になってください」
ニム「おいっ、どうしてそうなるのだ。わしがおらぬと儀式を執り行うことができぬのだぞ」
イオ「あ、そっか、どうしよう」
ニム「よいよい。4については問題ないし、5はその内に友達でもつくって連れてこい」
イオ「それでいいんですか。よかったぁ」
ニム「あとは問題ないな?」
イオ「はい。ところで、特典15の<ソードバイター>ってなんですか?」
ニム「ヴィヴァモートカルトのオリジナル武器である。要するに、ソードブレイカーつきパリー用ライトメイスだな。詳しくは下に説明してある」

【ソードバイター】(CT)
 ヴィヴァモートの入信者及びルーンマスターだけが、ソードバイターという、特別なカルト武器を学ぶことができる。これはライトメイスの一種で、攻撃側が21-95をロールし、受け手が01-20をロールしたとき、攻撃側の武器をディザームできる。ファンブルの場合は通常通り扱う。受け以外は通常のライトメイスとして扱う。
 ソードバイターは、先端に刃のついてないフォークがついており硬い防御用のつかがついたメイス、といった形をしている。ヴァンパイアは、剣による攻撃をフォークで受け、ソードバイターをひねることによって、剣をディザームすることができる。通常、ソードバイターとともにショートソードが用いられるが、信者でないものを捕らえることが、カルトにとってより有用なことであるのはいうまでもない。(編注:ソードブレイカーのついた特殊な受け用ライトメイスの攻撃/受け技能だと考えればよいと思う。ディザームについては、上記のルールよりも上級ルールブックのルールを採用することを勧める)

イオ「へー、すごいすごい。あたしも教えてもらえるんですか?」
ニム「教えてやってもよいが、めったなことで使ってはいかんぞ」
イオ「え? どうしてですか?」
ニム「ソードバイターはヴィヴァモートカルトの特殊武器だ。つまり、ソードバイターを使うということは、ヴィヴァモートの入信者であるということなのだ。そんなところをフマクトや他のカルトの連中に見られでもしたらたいへんなことになるからな」
イオ「なるほど。じゃあ、意味ないじゃないですか」
ニム「うむ。だからわしもあまり訓練しなかった」
ニム「いい機会だ。ロードとプリーストについても覚えておくとよい。表2をみるように」

表2 ルーンマスターのお約束(CT)

ルーンロード
 生き物から命を吸い取る恐怖であり、ヴィヴァモートの司祭の守り手である
 ルーンロード志願者は、少なくとも1年間(たいていはそれ以上)入信者であり、以下の技能が90%以上であること。<隠れる><視力><武器技能>ふたつ、それと任意の技能一つ(なんでもよい)。また、POWが15以上あること。志願者は死ななければならない。一昼夜そのままの状態であれば、ヴァンパイアとなって再び目覚める

特典
 ヴァンパイアである
 同盟精霊をもらえる
 カルトの特殊神性魔術を、一回限りとして聖夜に得ることができる。ただしその後一年間、毎週呪文ポイント分のMPをヴィヴァモートに捧げなければならない

司祭
 寺院の指導者
 志願者は、3年以上入信者であり、少なくとも25人の贄を寺院に提供していなければならない。POWが18以上であること。また以下のテストを通過する必要がある。(INT+APP)×5/2+(50%を越える言語、知識技能ごとに2)以下をD100でロールすること。現金や提供した生け贄の数によって成功率が増すことはない。ルーンロードと同様の儀式が行われ、ヴァンパイアとなる。失敗はカルトの敵となることを意味し、死体はゾンビとされる
 <隠れる>を除き、DEX関連の技能はDEX×5に制限される。司祭には武器技能などの訓練をする時間がないからである

特典
 ヴァンパイアである
 同盟精霊が得られる
 カルトの神性魔術を再使用可で使用できる

高司祭
 各寺院の高司祭は、バジリスクの創造法を学ぶ(編注:魔道呪文《バジリスク創造》の変形版でしょう)。一度に一匹のバジ リスクを創造、制御できる。新しくバジリスクを創造するには、高司祭は一週間ほどの儀式を行った後、卵が孵化するまでまる一年待たなければならない。この生物を創造するには希少な雄鳥の卵が必要である。これは、ヴァンパイアの錬金術技能によってつくられるか、その他なんらかの方法で得られる
 生け贄を最初に選ぶ権利がある

ヴィヴァモートの同盟精霊

 魂のゆがんだアンデッドの信者であり、POWをもっておらずMPだけをもつ。精霊戦闘か、主人からわけてもらうことによってのみMPを得ることができる。
 ヴァンパイアは通常、精霊戦闘をさせる

イオ「はい。ふむふむ。ヴァンパイアになるには、ルーンロードか司祭にならなければいけないんですね」
ニム「逆だ、ばかもの。ロードやプリーストになると、ヴァンパイアになることができるのだ」
イオ「じゃあ、ヴァンパイアになりたければ、ロードかプリーストを目指すことになるんですね」
ニム「そういうことだな」
イオ「司祭の試験って失敗することもあるんですね」
ニム「うむ。それだけ司祭になるのは難しいということだ」
イオ「この条件をみたせば、ルーンロードや司祭になれるんですか?」
ニム「そうではない。他のカルトでもそうであろうが、上の者の数というのは限られておるのだ。普通は、そのポストが空いておらねばなることはできぬ。これはヴィヴァモートカルトでも同じこと。いや、それ以上であろう。ヴァンパイアとして存在していくためには、多くの血が必要だが、その供給量にも限りがあるからな。どれだけの血とMPを供給できるかによってルーンマスターの数が限られるのだ。それに加えて、ヴァンパイアは死ぬことがない。よって、時がたつとルーンマスターのポストが空く、ということもない。そこで、新しくヴァンパイアとなったものは幾人かの入信者を連れて新たな地へ発つこととなるのだ」
イオ「ふーん。ヴァンパイアになるのも楽じゃないんですね。ところで、司祭様は高司祭でしたよね」
ニム「うむ、そうだ」
イオ「バジリスクもってるんですか?」
ニム「ん? バジリスクか、うーむ、たしか何十年か前に飼っていたことがあったはずだが、どうしたか。おお、思いだした。たしか、カルトのみなで出かけていた間に、餌をやらなかったので死んでしまったのだ」
イオ「あら、かわいそうに」
ニム「うむ。もったいないことをしたな」
イオ「新しく育てないんですか?」
ニム「創造しようとは思っておったんだが、なかなか時間がなくてな。こんなことなら創っておくべきであったな」
イオ「ところで、ヴィヴァモート様からいただける神性魔術にはどういったものがあるんですか?」
ニム「うむ。表3を見なさい」

表3 ヴィヴァモート神性魔術(CT)

《神託》 1ポイント、再使用可
《スケルトン創造》 1ポイント、再使用可
《シェイド召喚》 1ポイント、再使用可
《ゴースト創造》 2ポイント、再使用可
《ゾンビ創造》 2ポイント、再使用可
《レイズ・グール》 2ポイント、再使用可
《陶酔鏡》 2ポイント、再使用可

イオ「レイズグールってなんですか?」
ニム「死体をグールにしてやる呪文だ」
イオ「グールって、あの、ほえ〜、ってやつですか?」
ニム「そのとおりである」
イオ「へー、いろんなものを創れるんですね。でも、これだけ?」
ニム「うむ。これだけである」
イオ「少し足りなくないですか?」
ニム「そう思ったら、獲物から奪えばよい」
イオ「???」
ニム「ヴァンパイアにのみ許された素晴らしい力なのだ」
ニム「それから、おまえはカルトの聖夜がいつか知っておるか?」
イオ「え、えーと。‥‥今日ですよね?」
ニム「ちゃんと覚えておくように。聖夜は毎週凍の日の夜。特別な聖夜は各季ごと、死の週の凍えの夜。だが、大聖夜は暗黒の季、死の週の荒の日だ」
イオ「大聖夜の日って凍の日じゃないんですね」
ニム「何度もいうが、忘れるんじゃないぞ」
イオ「大丈夫です。まっかせてください」
ニム「‥‥やっぱり不安だ。手に書いておいてやる」
イオ「そんなに信用ないですか、あたしって」
ニム「うむ」
イオ「しくしくしく」

スケさん「ちなみに、これらのデータは RQ2nd のものをもとにしておりますが、AH版では、かなり違っているのではないかと思われます。どう違うかといいますと、わたくしの推測ですが、  ルーンロードとプリーストの区別がない  プリーストの技能限界がない  同盟精霊がいない、またはルールが異なる  ヴァンパイアになるためのPOW制限がない、または異なる  《スケルトン創造》、《ゾンビ創造》呪文の内容が特殊(POW消費なしでしょう) と、いったところでしょうか。あくまでも、参考ということで。はい」
ニム「スケノビッチよ、いつの間に帰ってきたのだ」
イオ「スケさん、おかえりなさーい」

 儀式開始

ニム「ところで、スケノビッチ、今夜の獲物は何かな?」
スケさん「は、こやつでございます」
イオ「トロルキン?」
スケさん「その通りでございます。この近くを独りでうろうろしていたので殴り倒して連れて参りました」
イオ「スケさんって強かったんだぁ」
スケさん「わたくしのDEXは18ですから」
イオ「すっごーい」
ニム「では、始めるぞ。ここは寺院ではないから、まず、《聖別》をかけてだな」
イオ「質問でーす。ヴィヴァモートカルトでは《聖別》を教えてくれるんですか?」
ニム「いいや。授かることはないぞ」
イオ「じゃあ、どうして」
ニム「ああ、これは昔誰かからもらったものだ。誰からかは忘れたが」
スケさん「ヴァンパイアは犠牲者から神性呪文を奪うこともできるんですよ。詳しくは後ほど」
イオ「へー。便利なんだぁ」
ニム「あー、どこまでやったかな、そうそう《聖別》をかけたところまでだな。しかし、早いところ社を建てねばならんな。あと《聖別》は3回分しか残っておらん」
スケさん「《神託》により、寺院再興の場所のお伺いをたてる必要もございますな」
ニム「うむ。だが、まずは《ヴィヴァモート礼拝》だ。生け贄を祭壇に」
スケさん「はは」
ニム「偉大なるヴィヴァモートよ、うんたらかんたら‥‥」
イオ「このベッドが祭壇なんですか」
スケさん「危急時ゆえに仕方がありません」
イオ「あれ? あんなに暴れてたトロルキンが急におとなしくなっちゃいましたよ」
スケさん「呪文の効果が現れたのですよ」
イオ「呪文の効果?」
スケさん「《ヴィヴァモート礼拝》またの名を《陶酔境》、この呪文の効果は下に示したようなものでございます」

《陶酔境(Ecstatic Communion)》2ポイント (CT)
残照(30分間)、遠隔(距離160m)、最使用可、複合不可

 この呪文は、寺院での聖夜のいけにえの儀式の間に唱えられる。この呪文により、犠牲者はMPとFPを失い、犠牲者とヴァンパイアの両者は、素晴らしい至上の性的な喜びを得る。この呪文の影響下にあるものは、呪文の効果が終わるまで、外界の出来事にいっさい反応することはできない。このような生け贄の儀式では、祭壇上のすべての犠牲者に対して、エリア呪文として働く。犠牲者はPOW+INT以下のセービングロールを行うことができる。ロールに失敗したなら、もう一度同じパーセンテージで試みること。どちらにも失敗したなら、より強くエクスタシーを感じるために、対象はヴァンパイアにすっかり協力してしまうことになる。この呪文はヴァンパイアを創造するときに一般に用いられるが、寺院の外でも、犠牲者の叫び声を黙らせたり、快楽を求めるもの達からMPを得るために用いられる。寺院の外では、この呪文は神聖呪文の攻撃として働き、犠牲者のMPとの抵抗ロールに打ち勝つ必要がある。いったん、この呪文が、ある人物に対して効果を示したなら、その後、その人物が呪文の影響に抵抗するときには、MPを・ ・半分として抵抗しなければならない。
編注)サンカウンティによると、この呪文は《ヴィヴァモート礼拝》呪文でもある。生け贄の儀式がヴィヴァモート礼拝の儀式となっているのだろう

イオ「トロルキンと『性的な喜び』? ヴァンパイアが美女ばかり襲うのがわかる気がする」
スケさん「などと言っている内に、伯爵様のお食事がそろそろ終わりそうですぞ」
ニム「(ちゅうちゅう)」
イオ「トロルキンはどうなるの?」
スケさん「通常でしたら、死体はゾンビにされ寺院の護衛として奉仕してもらうことになるのですが、今回は、いつまでたっても動かない死体のままでしょうな」
イオ「ふーん」

ニム「さて、生け贄の儀式も終わったことであるし、イオ、D100振ってみよ」
イオ「え? D100ですか? えーと、ころころ、69」
ニム「おまえのINTは?」
イオ「13」
ニム「APPは?」
イオ「14」
ニム「13+14+1は28でその2・5倍は‥‥」
スケさん「70ですな」
ニム「うーむ、なんとか成功か。おめでとう、イオ、入信試験合格だ」
イオ「へ? いまの入信試験だったんですか? ずいぶんとあっさりしてるんですね」
ニム「略式だからな」
イオ「と、いうことは、71以上をふってたりしたら‥‥」
ニム「ゾンビだ」
イオ「えー、だって、さっき、たいていは大丈夫だ、って言ってたじゃありませんか」
ニム「たいてい生け贄として2人は用意しているからなのだが。今回は異例ということだ」
スケさん「無事、入信できてよかったですねぇ、イオ」
イオ「で、でもぉ」

ニム「さて、入信者となったところで、MPとFPを捧げなさい。入信者心得7番だ」
イオ「まだ、血を飲み足りないんですかぁ」
ニム「トロウル系の血はどうも硬くていかん。やはり、人間の女の血がもっともうまい」
イオ「くすん」
ニム「(ちゅうちゅう)」
スケさん「ところで、伯爵様、《神託》はなさらなくてもよろしいのでございますかな?」
ニム「にゅ、ふゃしゅれしょった(ちゅうちゅう)」
イオ「司祭様、くすぐったい。血を吸いながら喋るの、やめてくださいってば」
ニム「ふむ、では、ヴィヴァモートに伺いをたててみるか」

 しばしの間

ニム「ここから、北へ3日ほどいったところに、ちょうどよいくらいの村があるそうだ。明日の晩はそこへ向かうぞ」
スケさん「かしこまりました」
イオ「はーい」

ヴァンパイアの秘密

 次の晩

ニム「さて、出発するか」
イオ「出発するのはいいんですけど、スケさんも司祭様もちょっと目立ちすぎませんか?」
ニム「スケノビッチは確かに目立つが、わしも目立つか?」
イオ「ヴァンパイアにしか見えません」
ニム「しかし、これは埋葬されたときのコスチュームで、気に入っているのだが」
スケさん「わたくしもこの格好は、結構好きなんですけど。身軽で」
イオ「でも、外歩くんだから、困るでしょ。だから、変装しましょう、変装」
ニム「なぜ、この高貴なるわしが、変装などという低俗なことをせねばならんのだ」
スケさん「わたくしが、かつらやつけ髭をつけても、やっぱりスケルトンにみえるとおもうのですが」
イオ「こんなことだろうと思って、昼の内に準備しておいたんです。この服は司祭様にきていただいて、スケさんにはこのフルフェイスのヘルメットとズボン、あとはコートで何とかなるでしょ」
ニム「高貴なわしには似合わぬ」
スケさん「動きにくくてたいへんでございますな」
イオ「文句いわないでください」

ニム「うーむ、やはりこんな低俗な服は落ちつかぬ」
イオ「まあまあ、司祭様、我慢してください。ところで、あたしヴァンパイアのことについてよく知らないんですけど、教えてもらえませんか?入信者になったんだからいいですよね」
ニム「そうだな。普通は秘密なんだが、入信者にならよかろう。表4をみなさい。これがヴァンパイアの素晴らしき能力の数々である」

表4 ヴァンパイアの秘密

アンデットの貴族である
影がない
鏡に写らない
青白く冷たい
光沢のある髪をもつ
肉食または雑食性の知性ある生物だけがなれる

すばらしき能力
1.イモータルである
2.STRとCONが二倍
3.暗闇でもものが見える
4.行動によってFPが減ることはない
5.変身能力
 DEX SR + 3 で霧(MOVE 5/SR)へ変身。狼(MOVE 7/SR)、こうもり(MOVE 8/SR)にも変身できる
 霧になっている間、HP1回復/1MR
 霧になっている間、ほとんどの物理的ダメージ(火、デスルーンも含む)無効
 HPが0になると、自動的に霧になる
6.MP吸収
 相手に接触し、MP抵抗に打ち勝つことで、アーマーに関係なくD4のMPを吸収できる
7.魔睡(enthrall)
 MP抵抗に打ち勝つことで、相手は、1ターンの間無力化し、外界に反応できなくなる。これは、1ラウンドに1回、攻撃の代わりに行うことができる。相手の防御呪文は無効だが、POW×5で視線を避けられてしまう。また、相手が目を閉じていたら効果は無い
8.FP吸収
 かみつき、血を吸うことにより、1ラウンドに1D6FPを吸収できる。
 獲物は知性をもつ存在である必要がある
9.病気にかからず、毒(poison、blade venomとも)は効果がない
10.神聖呪文奪取(CT)
 ヴァンパイアはPOWをもたないため通常の方法で神性魔術を得ることはできないが、犠牲者の持つ神性魔術を吸い取ることができる。ヴァンパイアは、神性魔術を持つ者のMPを3未満まで下げることで、その者が最後にPOWを捧げて得た神性魔術を、その種類ポイント数に関わらず、得ることができる。
 捕らえられた者は、すべての呪文を吸い取られるまで何度も何度もMPを3未満に下げられる。すべての呪文を吸い取られるとそのものは殺されるが、呪文はヴァンパイアの内に残るのである。
 そのようにして得られた神性呪文は一回限りで使用できる

困ったこと
1.頭か胸のHPが0になると、霧になれない
2.火や日光によるダメージは回復できない*)
3.胸に杭を打たれ、頭を切り落とされると、滅びてしまう
4.流れる水に浸されると、滅びてしまう
5.日光が苦手
 日光下では、変身、魔睡、MP吸収、ができない
6.「死」のルーンが苦手
 「死」のルーンを焦点具のようにして精神集中しながら突きつけられることにより、MP抵抗できないと、アーマー、防御呪文を無視して、再生不可能なD3ダメージをうける*) 「死」のルーンをかざしている相手を魔睡する事ができない 。「死」のルーンで打たれると、アーマー、防御呪文を無視して、再生不可能なD3ダメージをうける*)
7.土で満たされた棺で1/3日休まないと、1日ごとに3D6MPを失う
8.アンデッドの体を維持するために、毎夜1D6MPを失う
9.毎晩、その時点でのMPに等しいFPを失う。血を吸うことでFPを回復できる
10.センスケイオス、デテクトアンデットにより検知される
11.埋葬されたときに着ていたもの以外は、霧になるときに置いていかねばならない

*) 再生不能のダメージは次の聖夜に回復?。明記されてはいないが、心臓を貫かれても、次の聖夜にはそれを抜くことで、再び動くことができる(CT)ことより推察

神性介入 for ヴァンパイア(CT)

 ヴァンパイアはPOWをもたないが、種族POW限界値(species' maximum capacity for POW、POWの下限+上限のこと)をヴィヴァモートに捧げることで神聖介入を試みることができる。たとえば、人間のヴァンパイアルーンロードが神聖介入を試みD100で4を出したとすると、通常ならPOWが4下がるが、ヴァンパイアの場合は種族POW限界値が4下がる。つまり、上の例で言うと(21-4=)で、17となるのである。ただし、この値が15を下回った場合、ヴァンパイアロードは活動を停止し、15を下回った1ポイントにつき一か月の間、昏睡状態となる。なお、司祭は18を下回ると昏睡状態になる。そのため、ヴァンパイアの神聖介入は、防御的に、昏睡状態になっても安全なところへ逃げるために用いられる。一旦減少した種族POW限界値は一年間減少したままで、一年たつと通常の値に戻る。種族POW限界値が0となったヴァンパイアは滅びてしまい、どのプレーンからも永劫に消えてしまう

イオ「ひゃー、いっぱいあるんですねぇ」
スケさん「特典、弱点あわせて、ここまで特殊能力のあるクリーチャーは、グローランサ広しといえど、そうはおりますまい」
イオ「ほーんと、たくさん弱点があるのね」
ニム「はっはっは、恐れ入ったか」
スケさん「弱点は、神話の所でも話にでた呪いのためなのでございます。火や日光が苦手なのはイェルムの、流れる水がダメなのはスティクスの、不浄の土の上で眠らないと3D6MPを失うというのはタイ・コラ・テックの、呪いの為なのでございます」
ニム「うむ。困ったものだ」
スケさん「あと、これはあまり知られていないことなんですが、「清められたもの(The Creansed One)」の《水浄め(Purify Water)》によってつくられた聖水は、ヴァンパイアに対してかなりの効果があります。対ヴァンパイア用の簡易結界を張ることができるのですな」
イオ「ほよー」
スケさん「それから、シルフも苦手としていまして、霧状態のヴァンパイアがシルフによって吹き散らされますと、エレメンタルのSTR時間の間、再びまとまることができなくなってしまうんですな(CT)」
ニム「だが、風は、他のエレメントほど致命的なものではない。ヴィヴァモートは神々の時代に、風の力を盗みとっていたから大丈夫なのだ」
スケさん「故に、嵐の神やその信者達からは目の仇にされておりますが」

イオ「いいこともたくさんあるのよね」
スケさん「最大の利点といえば、不死であることですな。定命の者たちのように、焦ってことをなす必用がございません」
ニム「そのとおり。ヴァンパイアの計画は遠大なのだ。滅びさえしなければ、何度でもやり直しがきく」
スケさん「他の特徴としては、変身と吸収と魔睡でございますな」
イオ「中でも神性呪文奪取ってすっごーい。《聖別》もこれで手にいれたんですね」
ニム「ふふふ、そうだ。ゆえに、神性呪文をたくさんもっている獲物はよい獲物なのだ。グローランサ中でも手に入れられる神性呪文に制限がないのはヴァンパイアだけだからな、はーっはっはっは」

インターミッション

イオ「ねえ、司祭様、これからいく村ってどんなところなんですか?」
ニム「なんでも、人口80人ほどの辺境の開拓村だそうだが」
イオ「また、辺境なんですかぁ。あたし、たまには、都市に住みたいなぁ」
スケさん「ヴィヴァモートカルトが辺境にあるのは仕方がないことでございますよ。人は多すぎず、少なすぎず、これが一番ですな」
イオ「そうなの?」
スケさん「辺境といえば、陸の孤島、ヴァンパイアの脅威に気づいたときには、時すでに遅く、外界との連絡はとれなくなっておりますから」
ニム「われわれのようなはぐれヴァンパイアには、そのようなところから手をつけるのが一番なのだ」
イオ「組織が大きくなったら、隣村にも手を出すんですね」
ニム「うむ。そのとおりだ」
イオ「もっと大きくなったらその隣に、次はまた隣に‥‥じゃあ、そのうち、都市にも住めるようになるんですね」
ニム「‥‥ま、まあそういうことになるか」
スケさん「ほら、おふた方、村の明かりが見えてきましたぞ」

ニム「では、イオよ、偵察してまいれ」
イオ「すっかり、夜ですけど村にいれてくれるかなぁ。明日の朝じゃだめですか?」
ニム「ばかもの! 朝になったらわしが動けんではないか。ほれ、とっとと行ってくるのだ」
スケさん「まだ、夜も早いですし、大丈夫でございましょう」
イオ「あーい」
ニム「わしらは手近な隠れ家を探しておるからな」
イオ「ああもう、どうしてあたしばっかり、こんな苦労しなくちゃいけないのかしら? でも、これもヴァンパイアになるため。頑張らなくっちゃ」

イオ「あのー、すいませーん」
ギャレット「ん? なんだ?」
イオ「げ!」
ギャレット「???」
イオ「(どうしてあんたがここにいるのよぉ)こんばんわ、またお会いしましたね」
ギャレット「はて? どこかで会ったか?」
イオ「(しまったぁ、気づいてなかったの!)」
ピエール「あんさん、覚えてないんでっか? ヴァンパイアに捕まってた娘でんがな」
ギャレット「? ヴァンパイアに捕まってた娘‥‥おお、そういえば。お嬢さん、大丈夫でしたか? 無事、ヴァンパイアの魔手から逃れられたようですね。よかった。私はあなたのことが心配で一時も忘れられませんでした」
イオ「‥‥」
ピエール「嘘はいけまへんなぁ、嘘は」
ギャレット「フッ、嘘ではない(きっぱり)」
ピエール「‥‥そうでっか」
ギャレット「ところで、お嬢さん、見たところ、あなたも今、村に着いたご様子。どうです、お食事でも一緒にいかがですか。もちろん、わたしのおごりですよ、はっはっは」
イオ「はあ。(あやや〜、どうしよう)」

ギャレット「‥‥と殴りかかってきたところを、フッと口元に笑みを浮かべて、らくらくと受け流し、かえす刀で相手の胴を凪払ったのだ!」
イオ「はあ。(んー、あれから酒場で3時間。こんなとこで遊んでるのが司祭様に知れたら、怒られるだろうなぁ)」
ギャレット「でやー!」
イオ「わー、かっこいいぃ。ぱちぱちぱち。(でも、せっかくフマクトの剣と知り合いになれたんだし、ヴァンパイアについて勉強するのもいいかな。うふ、あたしってば、かっしこ〜い)」
ギャレット「こうして、トロウルたちは全滅したのだ。フッ、きまったな」
イオ「あのぉ、ギャレットさん」
ギャレット「フフッ、やはり俺はかっこいいな、うんうん」
イオ「もしもし、ギャレットさん」
ギャレット「は! な、なにかね、お嬢さん」
イオ「えーと、ギャレットさんはフマクトの剣なんですよね」
ギャレット「その通り。ルーンロードだ」
イオ「じゃあ、何回もヴァンパイアと対決したこと、あるんですよね」
ギャレット「さすがに、何度もというわけにはいかぬが」
イオ「でも、何回かはあるんでしょ、すっごーい。あたしにも、ヴァンパイアをやっつける方法を教えてもらえませんか」
ギャレット「このわたしにヴァンパイアの退治法を教授して欲しいというのか? よかろう、お嬢さん、あなたは幸運だ。ヴァンパイア退治をさせたらかなう者なしといわれた、このギャレットから直々に講義してもらえるのだからな」
ピエール「そやさかい、嘘ついたらあきまへんって」
ギャレット「うるさい」
イオ「へ?」
ギャレット「いやいや、今のはピエールに言ったのですよ。そういえば、ピエールの紹介がまだでしたね、ほら、ピエール、挨拶しなさい」
ピエール「挨拶しろっていわれても、あっしの声はあんさんにしか聞こえまへんがな」
ギャレット「なんとかしろ」
ピエール「そんな無茶苦茶な。しかたありまへんなぁ、じゃあ《マインドスピーチ》。あーあー、もしもし、聞こえまっか」
イオ「あ、声が聞こえる。ピエール?」
ピエール「さいです。あっしはグレートソードに宿った、ギャレットはんの同盟精霊の、ピエールいいますねん。よろしゅうたのんますわ」
イオ「あ、どうも、よろしく」
ギャレット「では、美しきフマクトの剣、ギャレットのヴァンパイア退治講座、はじめるとしよう」

 

はう とぅ ばすたー ばんぱいあ

ギャレット「まずは、ヴァンパイアと戦う場合の戦術について解説しよう」
イオ「はい」
ギャレット「完全にこちらが不利な場合、たとえば、MPを高くしたヴァンパイアが何体も奇襲してきた場合などだが、一番よいのは川の中に逃げることだ。そこが一番安全だからな。であるから、ヴァンパイアに襲われる危険性のある場合は川原にキャンプするのがもっともよいのだ」
イオ「ヴァンパイアは流れる水が苦手ですからね」
ギャレット「だが、すぐに逃げ出すことができない場合もある。この場合、敵が少なければ、もっとも効果的なのは、わがフマクトの授けてくれる呪文《亡者滅還(Turn Undead)》。これはMP抵抗に成功すればヴァンパイアは逃走し、失敗しても《惑い》状態になるという優れものだ。この呪文さえあれば間違いない。敵が多い場合に有効なのは《陽光(Sunbright)》の呪文だな。この呪文のもとでは、ヴァンパイアは消沈し、変身、魔睡、MP吸収ができなくなる。と、いってもこれはイェルマリオの呪文なので、そうそうは使えないのが欠点なのだが。これらの呪文がないなら、仕方がないので、全力で戦うしかないな。MPに余裕があるなら《火剣》をかけるのもいいだろう。《火剣》を見ただけで、たいていのヴァンパイアは逃げ出すからな。偶然出会ったのなら、つまり、相手がMPを増強していないのなら、全員で「死」のルーンをかざすのも一つの手だ」
ピエール「ヴァンパイアは不死なんてもんにしがみついとるさかい、滅びることを極端に畏れる傾向がありますのや。そやさかい、いくらヴァンパイアが圧倒的に強くても、不利な要素が少しでもあったら、すぐに逃げ出してしまいますのや」

ギャレット「次は、ヴァンパイアを滅ぼすべく、こちらから襲撃する場合のことを考えてみよう。相手の隠れ家や寺院のことを十分調査しておくことは当然だが、できるだけ多くの人材を集めて、多くの呪文をそろえておくと有利だな。以下にヴァンパイアに対して有効な呪文をあげておこう」

精霊呪文       理由
《火剣(Fireblade)》 火によるダメージを回復できない
《火の矢(Firearrow)》        〃
《敵の検知(Detect Enemy)》 ヴァンパイアは隠れるのが得意
《亡者検知(Detect Undead)》        〃
《かすみ(Shimmer)》 MP吸収の成功率低下
《熱狂(Fanatiscism)》 ヴァンパイアは逃げられなくなる
神性呪文  
《亡者滅還(Turn Undead)》 文字どおりヴァンパイアには致命的
《陽光(Sunbright)》 日光下と同じ状態
《召喚/支配シルフ(Summon/Command Sylph)》 霧状態のヴァンパイアにも効果あり
《水浄め(Purify Water)》 D6ダメージを与え、結界をつくる
《火の槍(Firespear)》 炎ダメージ
《混沌拮抗(Counterchaos)》 対混沌呪文は効果あり
《混沌対峙(Face Chaos)》       〃
《混沌妨害(Impede Chaos)》       〃

イオ「なーるほど、いろいろあるんですねぇ」
ピエール「フマクト、イェルマリオ、ブル、カイガー・リートールなんかが効果的でんな」
ギャレット「襲撃する時には、前もって、《水浄め》による聖水をたくさん準備しておくといいな。それと、運よくヴァンパイアを狙撃するチャンスがあったら《炎の矢》が効果的だ。《命中(Sureshot)》と組み合わせると確実だな。もっとも、わたしはそのような卑怯な真似はしないが」
ピエール「護衛のスケルトン対策に《破裂(Disruption)》も必須でっせ」
ギャレット「呪文の他にも、「死」のルーンは必需品だ。何の技能も呪文もない一般人でもヴァンパイアに有効な打撃を与えられるし、ヴァンパイアがアーマーで身を固めていて、こちらから効果的な打撃を与えられないときにも、「死」のルーンは役にたつ」
ピエール「注。2ndでは、「死」のルーンをもつ神のカルトの、入信者以上の者しか「死」のルーンを使えへんのやけど(CT)」
イオ「なーるほどねぇ」

ギャレット「つづいて、いよいよヴァンパイアと格闘戦をする場合、どのように対処すればよいか、だ」
イオ「ふむふむ」
ギャレット「目的にもよるのだが、ヴァンパイアと接近戦闘をするときに気をつけるべきことは2つ。それは、魔睡とMP吸収だ」
イオ「あ、それ知ってます。魔睡は敵を無力化する能力で、MP吸収はその名の通り、接触することでMPを吸いとっちゃう特殊能力でしょ」
ピエール「よう知ってまんなぁ?」
イオ「え? え、えーと、勉強したんですよ、勉強」
ギャレット「そうか、勉強熱心でなかなか見所のあるお嬢さんだ」
イオ「確かに、魔睡は怖いですけど、どうしてMP吸収なんかが?」
ギャレット「フッ、素人はこれだから困る。実際、対峙した場合、怖いのはむしろMP吸収の方なのだよ」
イオ「そうなの?」
ギャレット「魔睡能力は、一般人には確かに脅威だが、私のようにPOWの高い者にとってはさほど脅威ではないのだ。視線さえ合わせなければよく、POW×5で回避できる。それにもし、視線があってしまっても、MP抵抗のチャンスがある。MP吸収は、接触されたら、MP抵抗のチャンスはあるものの、失敗すればD4のMPを吸い取られてしまうだ。そして、MPが3以下になったら神性呪文を奪われ、0になったら気絶してしまう。これには防御呪文もアーマーも効かない。それ故、ヴァンパイアと対決する場合には、下手にMPを大量に消費して魔術で固めると、あっさりとやられてしまう危険性があるのだ」
イオ「へー、そうなんだぁ」
ピエール「それにヴァンパイアは特殊能力だけじゃありまへんで。たいてい長く生きてまっから、技能も高いんですわ」
ギャレット「確かに、それも要注意ではあるが、これはどうしようもないな。接近戦に自信がなければ、ヴァンパイアとは交戦しないことだ」

ギャレット「さて、こちらからの攻撃についてだが、2通りの戦い方がある。対峙したヴァンパイアをどうしても逃がしたくなければ、まず、自分のMPをかなり減らして《亡者滅還》をかけ、MP抵抗を失敗させて、相手を《惑い》状態にする。そして、狙いを定めて頭か胸を攻撃するのだ」
イオ「ひゃー、こんなことされたら、ヴァンパイアは手も足もでないじゃないですか」
ギャレット「いや、残念ながらこの方法にも欠点はある。相手が防御呪文《盾》や《吸収》などを使っていた場合、《亡者滅還》がかからず、しかもMPが低下しているので非常に不利な状況となる。ならば、防御を破るように増幅してかければよいのだが、MP抵抗に成功してしまうと、敵は逃げてしまうので、そのかねあいが難しいな。クリスタルでもあれば話は別だが」
イオ「そっか。よかった。ほっ」
ギャレット「ん? 今、何か言いったかね?」
イオ「い、いいえ、なんでもありませ〜ん。次いってくださ〜い」
ギャレット「《亡者滅還》がないとなると、かなり苦しい。戦闘では技量にもよるが、できれば、頭か胸を狙いたい。さもないと、霧になられて逃げらるからな。また、初めから、逃げられることを前提とするなら、炎や「死」
のルーンで回復できないダメージを与えておくという方法もある」
ピエール「とにかく、対ヴァンパイア戦は《亡者滅還》、これにつきまんな」
イオ「じゃあ、どうしてこの前の時に《亡者滅還》を使わなかったの?」
ギャレット「あの前に、ヴィヴァモートのカルトを壊滅させたのだが、そのときに全部使いきってしまっていたのだ。だが、大丈夫、寺院にいって回復させてきた」
イオ「がーん」
ギャレット「???」
イオ「いくつ?」
ギャレット「時間がなかったので一つしか戻っていないが、ヴァンパイア一体なら一つで十分だ」
イオ「そっか、よかった。(はやく司祭様に報告しなくちゃ)」
ギャレット「ご安心を、このギャレットがヴァンパイアごときに負けるはずがない! はっはっは」
イオ「??」

イオ「なるほど、ヴァンパイアの倒し方はだいたいわかりました」
ギャレット「いやいや、まだ、ヴァンパイア退治でもっとも重要なことを話していない」
イオ「え? それっていったい?」
ギャレット「フッ、それは、ヴァンパイアの棺を見つけることだ」
ピエール「ヴァンパイアを確実に滅ぼしたければ、棺を見つけて、眠っているヴァンパイアを滅ぼすのが一番なんですわ」
ギャレット「そのとおり。ヴァンパイアどもは臆病者なので、私のような勇者をみるとすぐに逃げてしまうのだ。どのように、棺を見つけるかは、ケースバイケースだが、中にヴァンパイアがいる昼間なら、《亡者検知》で知ることができるし、入信者を捕まえて尋問してもいい。なんにせよ、もっとも警備が厳重なところに棺があると考えてよかろう」
ピエール「ヴァンパイアは巧妙に棺を隠しまっからな」
イオ「そっか、だから棺のある場所って平信者には教えてくれなかったんだ」
ギャレット「え? なんのことだ?」
イオ「あ、ははは」

はう とぅ でぃふぇんす ばんぱいあ

ニム「おーい、イオ、何をやっておるのだ。ずいぶんと遅いではないか」
イオ「あ、司祭様」
ニム「おや、こっちの男は誰だ?」
イオ「ギャレットさんです」
ニム「ギャレット? うーむ、どこかで聞いたような」
ピエール「ギャレットはん、気づいてまっか? あの男‥‥」
ギャレット「フッ、ピエール、皆まで言うな。このギャレットにその程度のことがわからぬとでも思ったか」
ピエール「そうでっか、ならいいんでっけど。気をつけなはれ」
ギャレット「ん?‥‥お、おう」
イオ「どうかしました、ギャレットさん?」
ギャレット「いやいや、なんでもない。ところで、お嬢さん、こちらの貧相な身なりをした御人は?」
ニム「貧相だと! わしとて好きでこのような格好をしておるのではないわ! いいか、よく聞け、若造、わしは、ヴァンパイ‥‥」
イオ「わーわーわーわー」
ギャレット「なに! ヴァンパイアだと!」
イオ「い、いえ、ヴァンパイアじゃなくて、‥‥えーと、えーと、ヴァンパイア研究家なんです。ね、そうでしょ、ニムさま」
ニム「はぁ?」
イオ「そうなんです! ね、そうでしょ」
ニム「う、うむ。まさしく、わしはヴァンパイア研究家のニムである」
ギャレット「は、そうでしたか、それは失礼いたした。私はフマクトの剣、ギャレットという者です」
ニム「キャロット?」
ギャレット「ギャレット、です。ん? 前にも同じような‥‥」
イオ「ニムさま、あたしたち、今、ヴァンパイアの倒し方について話してたんです」
ニム「なぬ? ヴァンパイアの倒し方とな。ははは、むだむだ、いくら人間が頑張ってみたところで、ヴァンパイアを倒すなどできるものではない」
イオ「じゃあ、トロウルやエルフにならできるんですか?」
ニム「そいつらにも無理である」
ギャレット「聞き捨てなりませんな、ニム殿。私は何体ものヴァンパイアを葬り去ってきたのだが」
ニム「ははは。そのような輩は真のヴァンパイアではなかったのだ。真のヴァンパイアとは、冷静にして沈着、万全にして完璧なる者達なのですぞ。常に負けないよう完全な準備をしておるのだ」
イオ「へー、そうなんだ」
ニム「よろしい。この偉大なるヴァンパイア研究家、ニム伯爵が、真のヴァンパイアのなんたるかを講釈してやろう」
イオ「わーい、ぱちぱちぱちぱち」

ニム「こほん、まず最初に説明しておくが、ヴァンパイアの行動には、統一理念がある」
イオ「統一理念?」
ニム「そう、それは『自分の存在はなによりも価値がある』」
ギャレット「フッ、ヴァンパイアらしい考え方だな」
ニム「故に、真のヴァンパイアは自らが滅びぬよう、最大限の時間と労力をかけて、万全を尽くすのだ」
イオ「なーるほど」
ニム「ヴァンパイアは圧倒的に強力な力を持っておるが、危険は冒さぬ。獲物は、極力、単独の者を狙うし、地元の権力の注意をひかぬよう、旅人を好んで襲うのだ。そして、相手が悪いと思えば、すぐに退却する知恵も有しておる。バーサーカーのように愚かに戦うことはない。なにしろ、ヴァンパイアの命は非常に高価だからな」
ギャレット「つまりは、臆病者ということだ」
ニム「ふっ、愚かな考えだな。無限に存在し続けられるというのに、死すべき定めの者などのために、危険を冒す必要がどこにあろうか」
イオ「反語ですね、ニム様」
ニム「おお、よくわかったな。偉いぞ、イオ。どこまで話したかな、そうそう、よって、ヴァンパイアが襲撃先で滅ぼされることなどほとんどないのだ」
ギャレット「強い奴を襲うほどの度胸はないからか」
ニム「ふっ、ちがうのだよ、キャロットくん、ヴァンパイアが賢いのだ」
ギャレット「だから、ギャレットだというに」
ニム「問題となるのは、ヴァンパイアの英知と高貴さを理解しない輩が襲撃してきた場合だ。しかし、それにも、ヴァンパイアはさまざまな防御策をたてて備えておるのだよ」
イオ「なるほど」
ニム「要はいかに棺を守るかということになるのだが、ある程度大きなヴィヴァモートの寺院があるなら、たいていはそこにヴァンパイアの棺がある。よって、まずは入信者たちが防衛手段となる。また、寺院には多くのスケルトン、ゾンビたちも護衛の任務についており、これらも襲撃者にとっては大きな障害となろう」
ギャレット「確かに、ヴィヴァモートの寺院には多くのアンデッドが護衛をしているな。しかーし、わたしにかかればそのようなものは何の障害にもならん」
ニム「そのとおり。こんなものはいずれ突破される。そこで、次の対策は、棺のある玄室を発見されないことだ」
イオ「玄室の入り口を隠しておくんですか?」
ニム「ふっ、その程度で満足するのは素人のヴァンパイアである。玄人のヴァンパイアは、もっと巧妙なのだ。よろしい。そうまでいうならいくつかポイントを教えてやろう」
イオ「何もいってませんけど」
ニム「まず、玄室は地下3m以上のところにつくり、玄室と地表の間には石を詰めておくのだ」
イオ「しっつもーん、どうしてですか?」
ニム「まず、地下につくるのは、外観から玄室の存在を知られないため、3mの石の層は《亡者検知(Detect Undead)》に検知されないためである」
イオ「ふむふむ」
ニム「玄室ができたならば、棺を安置して、そこへの入り口は埋めてしまい、小さな通風孔が通じているだけにするのだ」
イオ「そんなことしたら誰も入れないじゃないですか」
ニム「ヴァンパイアならば、霧の状態で出入りできるので大丈夫である。通風孔だが、2つ以上用意しておく方がよい。一つは寺院へ通じ、他の一つは直接外部へ通じるものを準備するのだ。当然通風孔の出口は得意の<物を隠す>技能でカモフラージュしておくことはいうまでもない」
ギャレット「なるほど、たとえ襲撃されても護衛が時間を稼いでいる間に、ヴァンパイアは既に逃げてしまっているということか」
ニム「ちなみに、玄室には、埋めてしまう前に掃除用のアンデッドを1体入れておくのが通だ。また、何体ものヴァンパイアが共有する予定の時は、玄室の床の一部は土をむき出しにしておき、空の棺をいくつか用意しておく。また、通風孔も一掴みの土を入れられるようなやや大きめのものを用意するとよい」
イオ「どうしてですか?」
ニム「ヴァンパイアの棺には、自分が埋葬されたときの土を一掴み入れておかねばならぬ。棺を満たすためのその他の土は床から掘ればよく、このときにも雑用用アンデッドが役にたつのだ」
イオ「へー、奥が深いんですねぇ」
ニム「《隔離(Warding)》があればかけておいてもよいが、その場合、玄室をさらに深くにつくること。《隔離》は棒から上へ3mの効果範囲があり、《魔法検知(Detect Magic)》にかかってしまうからな」
イオ「ふむふむ。そんなお部屋ができれば、とっても安全ですね」
ギャレット「しかし、ニム殿、そのような施設をつくるのはたいへんな労力だと思うが」
ニム「確かにその通りである。が、こと労働力のことだけを考えるなら、ゾンビがおる。人夫としてこれほど適したものはおるまい。とはいうものの、今述べたようにできるのは大きな寺院だけであろうから、状況に応じていかに理想に近づけるかが頭の使いようだな」

イオ「他にはどんなことをしておくんですか?」
ニム「隠れ家の確保である」
イオ「隠れ家?」
ニム「いざというときに逃げる場所だ。いつも眠っている所の他にも、棺を用意しておくのだ。山奥の洞窟の奥などが好まれる場所である。当然アンデッドをいくつか用意して護衛と維持をさせておくのだ」
イオ「ふと、雨宿りに立ち寄った洞窟にアンデッドがいたりしたら、ヴァンパイアの別荘だったりするわけですね」
ニム「偶然そうなることはまずないと思うが、可能性はある。また、隠れ家にしろ、寝室にしろ、洞窟を使うならば、地下河川が通っていないことは確認しておくように。何かの間違いで流水に浸ってしまったら、滅んでしまうからな」
イオ「増水して流されたら悲しいですものね」

ニム「さて、これまでのところで、敵からの襲撃に対してどのような防御策をとればよいか、だいたいおわかりかと思う。しかし、もっとも重要なのは、敵にわれわれの存在を知られないことなのだ。高貴に、そして秘密裡に、これがヴァンパイアのやり方なのだ」
ギャレット「われわれ?」
イオ「は! われわれに知られないように、ってことよ、ね、ね、ね」
ニム「ん? おお、そうそう。われわれに、だ」
ギャレット「そうだったか?」
ニム「どうかね、キャロットくん。これでも、ヴァンパイアが人間に倒されるとお思いかな?」
ギャレット「確かに、用意周到なヴァンパイアには逃げられてしまうだろうが、組織を壊滅させることはできる。そうなれば、飢えてボロを出すだろう。どこまでもヴァンパイアを狩りつづけるのみだ」
ニム「むだだ。あきらめたまえ」
ギャレット「なぜ、貴殿はそれほどまでにヴァンパイアのかたをもつのだ。さてはヴァンパイアの仲間か?」
ニム「ははは、断じて違う。わしはヴァンパイアの、仲間、などではな〜い」
ギャレット「ではなぜ、ヴァンパイアに肩入れするのだ」
ニム「事実だからだよ、キャロットくん」

スケさん「伯爵様〜、こちらですか〜」
イオ「あ、スケさん」
スケさん「伯爵様、こちらにおいででしたか。いつまでたっても帰ってこられないのでどうしたのかと思い、探しに参りました」
ニム「はは、すまなかったな、スケノビッチよ。この蒙昧な輩に講義をしておったのでな」
ギャレット「蒙昧とは失礼な」
スケさん「おや、こちらはフマクトの剣の方じゃありませんか。ヴァンパイアの伯爵様が、どうしてこのような方とご一緒なのですかな? ははぁ、わかりましたぞ、宗教勧誘ですな。いやぁ、さすが、司祭になられる方は違いますなぁ‥‥と。どうしたのですか、みなさん?」
イオ「あちゃー」
ニム「おい」
スケさん「わたくし、なにかまずいことでも?」
ギャレット「なに、ヴァンパイアだと! そうか、そうだったのか、貴様の顔、どこかでみたことがあると思っていたが」
ピエール「気づいてたんとちゃったんでっか!」
ギャレット「俺は過去にはこだわらない主義なのだ」
ピエール「‥‥はぁ」

ギャレット「勝負だ! ヴァンパイア!」
ニム「はっはっは、望むところだ」
イオ「ちょーっとまったぁ!」
ギャレット「ん?」
ニム「どうしたのだ? イオ」
イオ「今ここで、戦われちゃ困るのよ。まだもう一つコーナーがあるんだから。二人の勝負は次のコーナーが終わるまで、お・あ・ず・け」
ギャレット「しかしだな」
ニム「わしは構わんぞ。なんといってもヴァンパイアは心が広いのだ。MP限界もないしな」
ギャレット「む、俺も構わない。フマクトの信者も心は広いからな」
イオ「じゃあ、話は決まりね。お次はQ&Aでーす 」

Q&Aコーナー

イオ「ということで、Q&Aコーナーのはじまりでーす。司会進行は、あたし、イオ。アシスタントはスケさん」
スケさん「どうぞよろしく」
イオ「解説はいつものようにニム伯爵」
ニム「ふむ」
イオ「本日は、ゲストコメンテーターとして、ギャレットさんとその同盟精霊ピエールさんをお招きしております」
ピエール「よろしゅうたのんますわ」
ギャレット「フッ、わたしが華麗なるフマクトの剣、ギャレットだ」
スケさん「ほう、ギャレット殿は鰈がお好きですか、私めも生前は鰈が好きでしてね、よく網焼きにして食べたもので‥‥」
イオ「ぼけているスケさんはほっといて、さっそく参りましょう。まず最初の質問は、ジョンスタウンにお住まいのアニーさんからです」

 ヴァンパイアに血は流れているんですか?

イオ「どうなんですか? 司祭様」
ニム「うーむ、考えたこともなかったな」
ギャレット「ヴァンパイアなどゾンビと同じだ。よって血は流れていない」
ニム「高貴なヴァンパイアをゾンビごときと同じくするとは、なんと非常識な奴だ。これだから学のない奴は困る」
イオ「じゃあ、流れてるんですか?」
ニム「い、いや、それとこれとは話が別でな‥‥」
スケさん「結論からもうしまして流れておりません。その証拠に心臓が動いておりません」
ニム「おお、そういえば、久しく鼓動を感じたことはなかったな」
ギャレット「フッ、やはりゾンビと同じではないか」
イオ「では、次の質問、えーと、これはファーゼストのファザールさんから」

 ヴァンパイアは、ヴァンパイアのFP、MPを奪うことはできるのか

ニム「答えてやろう。FP吸収つまり、血を吸うことは無意味であり、FP吸収はできない。しかし、MP吸収は可能である」
イオ「もう一つあるんですけど」

 ヴァンパイアに対して《魔睡》は可能か?

ニム「むぅ、試みたことはないからのぉ。たぶん可能ではないかと思うのだが」
ギャレット「なんだ、わからないことばかりだな」
ニム「このようなことはめったに起こらぬからいいのだ」
イオ「次の質問、あ、これはよく起こりそうですねぇ。アップランドのディレクティさんから」

 ヴァンパイアのラックチェックはどうなってるんでしょう?

イオ「通常のPOW×5のルールを採用すると、POWを持たないヴァンパイアは成功率0になってしまいますもんね。なお、これがわからないと、ディレクティさんは怖くて表も歩けないそうです」
ニム「そう、これには困りものだな。世の中のヴァンパイアは、みな運が悪いか、というとそうではないからな」
イオ「じゃあ、一律50%にしたらどうですか」
ニム「却下である」
イオ「えー、どうしてぇ」
ニム「50では、POW10相当ではないか。高貴なるヴァンパイアがその程度のはずはない」
ギャレット「でも、POWは0だ」
ニム「えーい、うるさい」
イオ「じゃ、こうしましょう。ヴァンパイアになる前のPOW×5ってことで」
ニム「うむ。それならば許してやろう」
スケさん「あのぉ、スケルトンはどうなるのでしょうか」
ニム「おまえは50でよい」
スケさん「しくしくしくしく」

イオ「お次は、あ、トロウルさんからですね。影の高原のイラムさんの質問です」

 暗黒語、トロウルの言葉。どうして、ヴァンパイア喋る。納得いかない

イオ「だ、そうですけど」
ニム「うむ。暗黒語はヴィヴァモートカルトのカルト言語なのだ。ヴィヴァモートは地界の神。暗黒語を使っても問題あるまい」
イオ「でも、暗黒語って超音波言語なんでしょ、もと人間のヴァンパイアでうまく話せるんですか」
ニム「そこはそれ、うまく改良してあるのだ」
ギャレット「暗黒語を話す奴らにろくな奴はいないということだ」
イオ「はい、次です。えーと、これはドラストールにお住まいの匿名希望のサソリマンさんからです」

 ヴァンパイアになるには最低POW15が必要なんですよね。でも先日、スコーピオンマンのヴァンパイアを見かけたんです。スコーピオンマンでもヴァンパイアになることができるのでしょうか?

イオ「どういうことですか? 司祭様」
ニム「ん? んー、そうだな‥‥」
スケさん「スコーピオンマンのPOWは2D6でございまして、最大でも12なのでございますよ」
イオ「ああ、なぁるほど。じゃあ、どうしてですか? 司祭様」
ニム「んー、だからだな‥‥」
ギャレット「ケイオスフューチャーだな」
イオ「え?」
ギャレット「混沌の諸相で、POWが増大した個体だったのだろう」
ニム「その通りであーる。わかったかね」
イオ「司祭様、何も言ってないじゃないですかぁ」
スケさん「RQ3ではPOW制限がなくなっているのかもしれませんな」
イオ「えーと、次は住所不定のエルセイシウスさんからの質問」

 今の所、知られているヴァンパイアとその住んでいるところを教えてもらいたい

イオ「と、いうことです。ヴァンパイアがどこにいるかなんて、ふつうわかりませんものね」
ニム「よし。では、教えてやろう。まず、ドラゴンパスに住んでいれば誰でも知っている、〔死人使い〕ディレクティ。彼は自ら造り上げたアップランド湿原に居を構えており、数々のアンデッドを創造しておる。 もっとも有名なヴァンパイアだな。ヒーロークエスターだとも言われておる」
ギャレット「今に、わがフマクトカルトが全力をもって叩き潰すであろう」
イオ「でも、英雄戦争では、サーターの味方になるんでしょ。ダックが犠牲になって」
ギャレット「なんと! アーグラスめ、血迷ったか!」
ニム「あとは、彼ほど有名ではないが、最近メジャーになったのは、ゆりかご河の近く、旧陽の天蓋寺院に住み着いている古のヴァンパイア。他にも、サンカウンティ辺境に位置するディスクンド洞窟(Dyskund Caverns)には長き眠りに着いている12体のヴァンパイアがおるし、ドラストールにも多くのヴァンパイアが存在する。また、あまり知られておらぬが、ルナー帝国内には公認のヴィヴァモートカルトが存在しておるはずである」
イオ「へー、結構いるもんなんですねぇ。ところで、ゆりかご河沿いのなんとか塔ってとこにも、ヴァンパイアが住んでるっていう噂をきいたこと、ありますけど」
ニム「ストーンタワーのことか、あれは偽りである。ラウス公が調べたところでは、タスクライダーしかいなかったということだ」
イオ「そうだったんですか。おや、この質問くれた人ってフマクトの剣ですって。どうりでヴァンパイアの居所を知りたがった訳ね」
ニム「おい、そんな奴に教えてどうするのだ!」
ピエール「フマクトの剣やったら、いっちゃん倒し易いんは、旧サンドームのヴァンパイアでんな。他はちょっとやっかい過ぎますわ」
ニム「これ、余計なことを言うでない」

イオ「えーと、つづいては、ヴァンパイアにあこがれる美しく可憐な乙女、イオさんからの質問です」
ニム「却下」
イオ「ああ、ごめんなさい」

 ヴァンパイアに奪われたFPは一日にどのくらい回復するの?

ニム「スケノビッチ、知っておるか?」
スケさん「はぁ、要は一日にどのくらいの血液を回復できるか、ということでございますな。計算してみましょうか。わたくし、専門家ではないので詳しいことはわかりませんが、一日に50tくらいなら大丈夫なのではないでしょうか。人間の平均のFPは21。だいたい400tも血を抜けばふらふらになりますので、これをFP0状態だとすると、一日に回復できるFPは2〜3になりますか。一日にFP/8だけ回復できるとするのが妥当だと思いますな」
イオ「じゃあ、MP10のヴァンパイアを養うには、4〜5人の信者が必要なんですね」
ニム「そうであったのか。ふむふむ」
イオ「年金みたいですね」

イオ「そろそろ、ページの都合もありますので、最後の質問に行きたいと思います。えーと、これも匿名希望、ペンネーム、キューちゃんからの質問です。ヴァンパイアの方ですね」

 ヴァンパイアの目的とはなんでしょう

イオ「えーと、この方、最近ヴァンパイアになられたらしいんですけど、念願だった不老不死が叶なってしまって、生きる目的がみつからないらしくノイローゼ気味なのだそうです」
ギャレット「大丈夫だ。既に死んでいる」
ニム「まったく、最近の若いヴァンパイアはこれだからいかん。わしらの時代は、みな野心を持っておったものだが」
スケさん「しかし、これは、ヴァンパイアなら誰もが経験する病でございますから」
ニム「うむ。そうだな、ならば、教えてやろう。まず、ヴァンパイアの目的だが、これはずばり、存在し続けること。ヴァンパイアとなったからには、なによりよりもまず、滅びないことを第一としなければならん。これを満たした上で、やりたいことをやればよかろう。時間は無限にあるのだ。知識を増やすべく、本を読み漁ってもよいし、日々、生け贄を集めて享楽にふけるのもよい。なんにせよ、なにか大きな目標、夢と言ってもよいかもしれぬが、それを見つけることができたなら、有意義なヴァンパイアライフをエンジョイできることであろう」
イオ「司祭様はなにかあるんですか?」
ニム「ある」
イオ「教えてください」
ニム「うーむ、笑わないと誓うか。誓うなら教えてやろう」
イオ「誓いまーす」
ニム「絶対だな」
イオ「はい」
ニム「コホン、わしの夢はだな、理想郷を築くことであ〜る」
ギャレット「フッ、ハハハハ。ヴァンパイアが理想郷だと、笑わせてくれる」
イオ「キャハハ、にっあわなーい」
ニム「うるさい! ヴィヴァモートの力を借りれば、それも可能なのだ」
イオ「どんなとこなんですか?」
ニム「誰もが働かずして生きてゆくことができる国家である。支配者は貴族たるヴァンパイアであり、労働は軍隊も含めて全て、ゾンビやスケルトンがやってくれるので、民衆は働く必要がない。アンデッドの管理をするだけでよいのだ。税もなく、民衆の義務はふたつだけ。定期的に献血することと、死後アンデッドとなって、子孫のために働くことである」
イオ「えー、ゾンビになるの、やだなぁ」
ニム「ばかもの! 自分の子供達のために働くのだぞ。親なら誰もがしておることではないか。それに、アンデッドとなれば、死後も身内とともに暮らせるし、大切な労働力として大事にされるのだ。年に一度の墓参りもしてもらえぬかわいそうな霊たちが、いったいグローランサ中にどれだけいるか、考えたことはあるか?」
イオ「うるうる、司祭様の言われるとおりです。どうせ死ぬのなら子供達の役に立ちたいです」
ニム「それに、ゾンビやスケルトンになるばかりとは限らぬ。実力が認められれば、ヴァンパイアとなることもできるのだ」
イオ「はぁぁ。すてきですねぇ」
ニム「どうだ、まさに理想郷であろう」
ギャレット「フッ、しょせんは夢に過ぎないな。そのような国、つくろうとしても各国が黙ってはおらぬ」
ニム「果たしてそうかな。ある程度の軍事力を持ってしまえば、たいていの国は太刀打ちできまい。アンデッドの軍隊ほど恐ろしいものはない。モラルは高く、力は強い、命令には絶対服従、疲労せず、兵糧も必要ない。そして、数が減ってしまっても、材料は戦場にごろごろしておるのだ、すぐに補充が効く」
ギャレット「だ、だが、列強は許してはおくまい」
ニム「ルナーならば、すぐに同盟してくれるであろうて」
イオ「司祭様に、そんなに素晴らしい目的があったなんて、あたし、知りませんでした。尊敬し直しました。いつもは、わがままで、偉そうで、でも、危険になるとすぐに逃げるし、弱い者いじめばっかりしてる嫌な奴ですけど、実は崇高な使命を持っておられたのですね」
ニム「おいおい、ぜんぜん誉めてないぞ」
イオ「司祭様、頑張ってください。あたし、応援します!」
ニム「はっはっは、任せておくのだ。そのうち、実現できるであろう」
イオ「え? そのうち、って?」
ニム「そのうちといったら、そのうちである。チャンスが来たときだな」
イオ「えー」
スケさん「ヴァンパイアは不老不死ゆえ、気が長いところがあるのでございますな」

エピローグ

ギャレット「さて、決着をつけようか、ヴァンパイア」
ニム「きさま、キャロットとかいったな、わしをここまで追いつめるとは、たいしたものだ」
ギャレット「俺はギャレットだ! いいかげんに覚えたらどうだ! 全く、頭はゾンビ以下だな」
ニム「な、なんと、この高貴なヴァンパイア、ニム伯爵に向かってなんという暴言。ゆるさぬ。貴様など、わしの敵ではな〜い!」
ギャレット「フッ、それはどうかな。俺は、貴様達が無駄話をしているうちに、MPを減らしておいたのだ。くらえ! ターンアンデッドォォォ!! 惑え、ヴァンパイア」
ニム「ふっ、抵抗しなーい」
ギャレット「は?」
ニム「おお、ターンアンデッドにかかってしまったぁ、逃げなければ、ということで、さらばだ、キャロットくん。ははははははは」
ピエール「逃げていきおった」
ギャレット「おい、そんなんありか」

イオ「あららぁ〜、こうもりになって、いっちゃいましたね」
スケさん「さすがは伯爵様、いつもながら天晴な逃げ方、ヴァンパイアの鑑ですな」
イオ「ヴァンパイアの鏡? おもしろーい」
スケさん「そうでございますか? いやはや、照れますなぁ」
ギャレット「おまえたち、のんきに笑っているが、さっきのヴァンパイアの仲間だろう」
イオ&スケ「え?」
ギャレット「違うのか?」
スケさん「滅相もない。わたしはヴァンパイアとは何の関係もない、ただの薬売りでございます」
ギャレット「スケルトンの薬売りがいるか!」
スケさん「おや、なぜわたくしがスケルトンであることがばれてしまったのでしょう。さては《亡者検知》ですな」
イオ「スケさん、いつヘルメットとったの?」
スケさん「ああ、これは、ここに来たときにとりました。屋内でかぶりものをするのは失礼ですから」
イオ「そのせいだと思うよ」
スケさん「???」
ギャレット「スケルトンである以上、ヴァンパイアの仲間だな」
スケさん「いえいえ、わたくしはただの通りすがりのスケルトンでして、あせあせ」
ギャレット「なんでもいいから、スケルトンは殴ってやる。それに、そっちの娘、この前はよくも騙してくれたな」
イオ「え? 何のこと?」
ギャレット「とぼけても無駄だぞ、もう二度と同じ手はくわん」
イオ「(まずいよ、スケさん、ギャレットさんったら、完全にあたしたちを敵だと思ってる)」
スケさん「(困りましたなぁ)」
ギャレット「さあ、観念しろ」
イオ「(困ったなぁ)は! ここはどこ? あたしはいったい何をしてるのかしら、きょろきょろ、きゃあぁぁぁ、骸骨! そこのかっこいいお兄様、助けてください」
ギャレット「? どうしたというのだ」
イオ「ああ、そうだわ、思い出しました。あたしはヴァンパイアにさらわれて、催眠術をかけられて‥‥、でも、そのあとは思い出せない。あなたさまが、あたくしを救ってくださったのですか?」
ギャレット「よ、よくわからんが、そういうことになるのかな」
イオ「ああ、ありがとうございます。あたくし、幸せでございます。このような、かっこよく素敵な方に助けていただいて」
ギャレット「そ、そうか。そうだろう、そうだろう。さもありなん。お嬢さん、ご安心を、このわたしが来たからにはもう大丈夫です。さあ、わたしのうしろに下がっていてください。今、このギャレットが、あの、おそるべきスケルトンを葬ってさしあげましょう」
スケさん「え? わたくしのことでございますか」
ギャレット「いざ!」
スケさん「ちょっとお待ちください、まだ、準備が整っておらぬのですが」
ギャレット「問答無用! ゆくぞお、だだだだ」
イオ「くす。お馬鹿さん。ほーら、《消沈》、えい」
ギャレット「う、急にスケルトンを倒す自信がなくなってきた。そういえば、スケルトンには貫通しないからなぁ、でも、俺の持っているグレートソードには関係ないような気もするが、でも、やっぱりやだなぁ。よし、しばらく様子をみよう」
イオ「スケさん、今のうちに逃げるわよ」
スケさん「あらほらさっさ」
ピエール「あんさん、どうしたんでっか? スケルトンが逃げまっせ」
ギャレット「あ、二人が逃げて行く。しかし、今から追いかけたのでは追いつかないだろうな、もう3メートルも先にいるからな。しかし、追いかけるだけ追いかけようか。は、人間の方が止まってこちらを振り向いた。だめだ、今の俺にはどうすることもできない。どこかに隠れなければ」
イオ「フフ、フマクトの剣といえどもその程度のものか、口ほどにもない」
ギャレット「がーんがーんがーんがーん、その程度かなどと言われてしまった。やっぱりその程度なのかなぁ、自信ないなぁ」
イオ「きゃ、一度言ってみたかったんだぁ。うーん、快感」
スケさん「ヴァンパイアを目指すのは、こんな人でございます」

イオ「やったね、スケさん、なんとか逃げ切れたみたいだよ」
スケさん「いやはや、一時はどうなることかと思いましたぞ」
イオ「危なかったね」
ニム「おまえたち、無事であったか」
イオ「あ、司祭様」
ニム「よかったよかった、心配しておったのだぞ」
イオ「一番に逃げちゃったくせに」
ニム「まあまあ、過ぎたことは気にするものではない。今回の功績でイオのヴァンパイア昇進が、近づいたのであるからして」
イオ「え、本当ですか、やったー、わーいわーい」
ニム「ということでお茶の支度をしなさい」
イオ「またですかぁ? 走って逃げて来たばかりでふらふらなんですけど」
ニム「ヴァンパイアが一歩遠ざかる、と」
イオ「わかりました、わかりました。はい、どうぞ」
ニム「うむ。ちゅうちゅう。すしゃおにゃにおがわひはふきへはるそ(素直なイオがわしは好きであるぞ)」
イオ「だから、血を吸いながら、喋らないでくださいってば」
イオ「せっかく、ヴィヴァモート様からお教えいただいたのに、この村を去るのは残念ですね」
ニム「やむを得まい。フマクティがうろついている以上、このあたりは危険である」
スケさん「そうですな、また新たな土地を探すといたしますか」
ニム「では、出発するとしよう、ゆくぞ、皆の者!」
イオ&スケ「おー!」
イオ「ところで、司祭様、埋葬された時の土が一掴みあれば、寝床はつくれるんですよね」
ニム「うむ、そうだが」
イオ「この棺の中の土以外持ってないんですか?」
ニム「いや。いっぱい持っておるぞ、ほら」
イオ「じゃあ、どうしてこんなに重い棺をわざわざ運ばなくちゃいけないんですか?」
ニム「ああ、それか、その棺はわしのお気に入りなのだ。どうも、その棺でないとよく眠れなくてな‥‥どうした、イオ」
イオ「‥‥。だったら、自分で運んでください!」

あとがきから抜粋

 内容について少し補足を。
 まず、喋るスケルトン、スケノビッチについてですが、ここでは、ニムの特別な同盟精霊だと考えてください。ただし、スケルトンが同盟精霊となり得るかについてはわかりません。ダメ、ってことになったら、ヴィヴァモートカルトに伝わるマジックアイテムだ、ということにでもしておきましょうか。
 (中略)
 なお、いつものことですけど、本文中で主張していることは、全て登場キャラクターの主張ですので、くれぐれも誤解のないよう。世の中には、バーサーカーな長生きヴァンパイアがいるかもしれない(たぶんいないだろうけど)。
 他にも、魔道におけるヴァンパイアとか、まだまだ、書きたかったことはあるんですけど、ページの都合で割愛。魔道使いの方、ごめんなさーい


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