東京湾へ


東京湾に到着した私は、辺りを見回した。

周囲はフェリー乗り場や駐車場ばかりで、どう考えても「ニセひよこ」が生息しているような雰囲気はは感じられない。

「あの本にダマされたのだろうか…」

疑心暗鬼にかられながらも、私はとりあえずエサを仕掛けてみることにした。

銘菓ひよこをワナに仕掛けて、待つこと数十分。

「カサカサッ」

何かが現れたようだ。
私は息を殺し、注意深くワナの仕掛けてある場所を覗いてみた。

「き、来た!」

そこには2匹の「ニセひよこ」がワナに仕掛けてある「銘菓ひよこ」をついばんでいる姿があった。

「ニセひよこは2匹で行動する」
あの本に書いてあった事は本当の事だったらしい。
私はタイミングを見計らってワナの作動スイッチを押した。

バタン!、とワナのフタが閉まり、見事に「ニセひよこ」2匹を捕らえる事に成功した。

私は喜びいさんでワナに近寄り、捕らえた「ニセひよこ」を眺めていた。

「意外に簡単だったな」
私はほくそ笑んだ。

その時、不意に背後に人の気配を感じた。

私が驚いて振り返ると、そこには1人の老人が立っていた。
その老人はおもむろに問いかけて来た。

「君、それを私に1億円で譲ってはくれんかね?」



どう反応すれば良いだろうか?
『誰が譲るものか!このハゲ!』

『譲る譲る、明日の1万より今日の千円』