さすがにつかれているなぁ〜、と思いながら起き上がる。
タイに来てはや4日目。そして今日がアンダマンの真珠・プーケットにいられる最終日となってしまったのだ。

 今日の予定は今のところ、夜のプーケットファンタシーだけ。ここはプーケットのディズニーランドみたいなものだとのこと。特に行きたくもなかったが、何かアミューズメント的なものに触れておくのも悪くないのでは?とおもい、オーにブッキングしてもらっていたのである。

 「部屋に引きこもっていたいなぁ〜」という怠惰なキモチをエイヤッ!とやっつけ、とりあえずパトンビーチを散策。
通りずぎるミニバイクのけたたましい音と排気ガスの音に、意識が徐々に覚醒されてゆく。

 そして突然、思いたつ。「そうだ、俺はまだ、ビーチというものを満喫してはいない」と。確かにピーピー島は素晴らしいが、それよりももっと秘境、というか穴場的な、ほとんどプライベートビーチにいきたい!と激しく思ってしまったのである。

 で、パトンビーチのトゥクトゥクドライバーたちに「どこかいいとこないか?」とたずねてもなかなか要領を得ないし「ここはいいですぜ、ダンナ」と進めているところに連れて行くと400バーツという。適正な値段かもしれないけれど、バカにされてボラれているかも知れないと考えるとついつい「ノーサンキュー」といってしまう。

 そんなとき一人のタクシードライバーと出会う。シボレーのセダンに乗る彼はサナンといい、年のころは45歳くらい、日本で言えばゴルフ焼けしてあまり仕事は出来ないけれど後輩の面倒見はよくて、といった印象。
まず英語が堪能、ということときちんとした身なり(襟付きのシャツに2タックのズボン)で、『どこか、とっても静かなビーチに連れて行って』とお願いすると「わかった」とうなずき車に促す。ドコに連れて行くの?とたずねるとプーケット空港近くの、本当に金持ちのヴィラの近くだという。ホンマかいな?と思いつつ車に乗る。

 話を聞くとサナンは、某家電メーカーの、タイ駐在員と家族ぐるみで付き合っているらしく日本人にはかなりの理解がある、とのこと。さらにこれから連れて行くところは本当によいところで、お前の好きな時間に迎えに来てやる、とのこと。ビーチに着くまでの小一時間、そんな他愛もないおしゃべりが続く。

 そしてやっと到着したビーチは、お〜これこそ俺が描いていた東南アジアリゾートのビーチ、というくらいイメージにドンピシャだったわけだ。
ビーチチェアは50脚くらいで、俺のほかには誰もいず、白を基調としたバーカウンターと、こじゃれたバンガローがあるのみ。南国特有のパームツリーの間にハンモックがかけられ、そこには現地の人間が帽子を目深にかぶり、うたた寝している。まさにまさに、雪国北海道のおのぼりさんが描く『ビーチ』が目の前にあるのだ。

 好きなビーチチェアを選び、50バーツを支払うと早速、海に入ってみる。
ノロっと濃密な海水は十分暖かく、適度な強さで打ち寄せる波に体を任せていると、これこそ自分が求めていた瞬間だと感じる。
ゆらゆらとまるでくらげのように波間にたゆたいながら、サングラス越しに見上げる空は高くて青い。向こうにうっすらと見える島と、そのまえにはジャンクボート。
う〜、これこそが待ちに待った俺の夏休みなのだ。

 海水で冷えた体は砂浜でぶらぶら散歩することでイッキにローストされる。
ニベアの日焼け止めクリームが気休め程度にしか機能しない状態。う〜ん、帰ったら小麦色だな、会社の人から見たらいやらしいな、とおもいニヤけがとまらない。

 俺一人だった客も、白人のカップルや老夫婦、ヨーロッパ人らしいファミリーなどで適度な賑わい。しかし、昼寝も妨げられないし、本もサクサク読みすすめる。
「あ〜、こんなことなら毎日ココに来るんだったなぁ〜」と思いつつ、楽しい時間はあっちゅ〜まに過ぎる。サナンが迎えに来てくれた頃にはチャンビールを2リットルは飲んでいたためラリパッパだった。

 サナンは、「今度来るときはうちに泊まりなよ」と行ってくれ、文庫本の裏表紙に住所を書いてくれる。このビューティフォーなビーチの近くらしい。
ホテルまで送ってくれた彼と握手を交わし、爆睡。

 と、電話が鳴って眼が覚めた。今日5時に、プーケットファンタシーから迎えの車がくるのだった。そんな時間か?と思い時計を見るとガーん、もう6時半ではないか。いかん、ビーチでのビール痛飲が、、。
でも大丈夫。また違う車に乗せてもらいファンタシーへは40分くらい。

 ここはプーケットのテーマパーク。規模は違えどディズニーランドみたいなもんで、お土産ややゲーセンみたいなものもあるし、夜9時からはショーもある。おまけにぞうさんにも乗れるってんでいまではオプショナルツアーの一番人気らしいのである。

 オー曰く、いままではサイモンキャバレーのオカマショー以外、プーケットにはショーがなかったがさすがに子供には見せられん、ちゅ〜ことで巨費を投じ、1998年にオープンしたとの事。

 そんなファミリー向けの施設だからして、一人で来るのは俺一人らしく、バイキングの夕食を食べたときは死ぬほど寂しかった。

 9時まではゾウを眺めてあっという間。ほんとうに見飽きない動物だな。おしっこはバケツ2杯分くらいの量がイッキに噴出するのをみると、うへ〜とおもいつつ、でもすげぇ〜なぁ〜と見てしまう。

 さてさて、いよいよお待ちかねのショー。おれはゴールデンシートを奮発。しかし、両隣どころかびっちり満員御礼。おそるべし、プーケットファンタシー。
で、どんなショーかというとこれが1時間半、まったく飽きさせない内容。
最初にゾウが5頭ほどステージに上がり、民族舞踊を見たあとはキダムよろしく空中ブランコで蛍光塗料の衣装を身に着けた女のひとがぐるぐる。そして客を巻き込んだマジックショーのあと、短めのミュージカルとダンスで大盛り上がりってカンジだ。
途中でステージに雨を降らせるは、ゾウはステージでおしっこしちゃうわ。東南アジアだからってバカにしていたけれど、レーザーの使い方など演出も完璧。
マジでオススメです。

 あ〜楽しかった。明日はいよいよプーケットを離れ、天使の都、バンコクへ移動する。

モドル
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