和歌山県紀ノ川でカヌーの進水式&初沈!

念願のマイカヌー購入!
 マイカヌーが欲しいなあと広告や店をチェックしていて、スポーツタカハシで掘り出し物を見つけた。当時のファルホークのフォールディングカヤック(折り畳みできる船のこと)二人艇である。色は薄いパープル。ライジャケ、パドル2人分セット付だ。

 専門店、量販店を7,8件回って、いろんな所を調べたが、ここの表示価格が一番安い。展示品現品限りだったので交渉し、表示価格よりまだ値引してもらった。関西人の悲しい性ですな。
 本当はカナディアンが欲しかったのだが、団地暮らしのため置いておくスペースがない。それで、ファルトボートにしたのだ。日本の住宅政策を恨みますな。それとも自分の甲斐性無しをか。

紀ノ川で進水式
 当時つきあっていたKと二人で進水式をすることにした。四万十川は遠いし、淀川では悲しいし、と場所は悩んだのだが、結局和歌山県の紀ノ川ですることにした。予定日はゴールデンウィークに決定。

 なぜ紀ノ川にしたかというと、そこそこ水もきれい、GWだと陽射しも熱いので絶対ビールを飲むだろう、車ではイカン、川沿いにJR和歌山線が走っており、帰りやすい、それに私の住んでいた堺の中百舌鳥(なかもず)から南海高野線で1本だからだ。

 橋本をスタート地点とし、夕方までに下れるところまで下るつもりだ。Kは吹田(すいたです。ふきたではありません、念のため)在住だったので、JRを始発に乗って、地下鉄に乗り換えて中百舌鳥まで来る。中百舌鳥到着が6時20分頃なので、南海高野線中百舌鳥を6時半出発、橋本に7時半頃到着した。

 付属のバッグにカヌー、パドル、ライジャケ等、全て詰め込んで計るとなんと約25s!橋本に着いた時点で既に私はフラフラになってしまった。駅から川までがすごく遠く感じる。
 途中コンビニで食料・ビールの買いだしを済ませ、クーラーバッグに詰め込んだ。さすがにこれはKに持ってもらう。

 天気は快晴である。誰もいない河原に着き、カヌーを組立てた。初めて一人で組み立てた時は1時間かかったけど、今回は二人だし、慣れてきたこともあり約30分で組立終了。ぱちぱちぱち。やっと船を水面に浮かべることができる。
 本来なら船首にシャンパンかワインのボトルでも打ち付けて進水式とするのであろうが、フォールディングカヤックではそうもいかない。二人とも汗だくになったので、ビールで乾杯した。
「ばんざ〜い!やったー!」水面に浮かぶ新品の船、初夏の光がまぶしいぜ。

ついにスタート
 二人とも乗り込んで、スタート!順調である。水面を渡ってくる風が心地いい。
 漕いでいるうちに、カナディアンとの違いが見えてきた。フォールディングカヤックの方が水面に近いことに気づく。その分、船内に水が入りやすいことも。
 シングルパドルと違い、ダブルパドルは息が合わないとバウ(前の人)とスターン(後ろの人)のパドルがよくぶつかるということ等々。

 紀ノ川は奈良県に流れを発し、和歌山県を抜けて紀伊水道に注ぎ込んでいる。奈良県側では吉野川と言い、和歌山県に入って紀ノ川と名前を変える。
 奈良県側では国体の会場になるほどのホワイトウォーターで急な瀬もたくさんあるが、和歌山県に入ると一転して穏やかになる。せいぜい2級程度の瀬だ。
 渇水時と増水時の差が激しいのだが、今日は多くもなく、少なくもなく、ちょうど良い水位である。透明度は7,80pってとこですかね。これでも大阪から近いこともあって、鮎釣りは盛んなのである。

 瀬らしい瀬もないこともあって、のんびりと川を下っていく。たまに波をかぶって、キャーキャー笑いながらだ。
 朝が早かったこともあって、昼前にはお腹がなりだした。カヌーでなければ行けない無人島(といっても中州)に上陸し、昼食にする。ふっふっふ、占領したようで気分がよいぞよ。
 使い古しのEPIのガスストーブでお湯を沸かして、カップラーメンとおにぎりを食べた。簡単なメニューだけど、青空の下で食べるご飯は美味しいなあ。なんでだろうな。食後のコーヒーもちゃんと粉からいれたものだ。これまた美味しい。二人で顔を見合わせてにこにこする。

苦痛の堰堤越え
 満ち足りた昼食後、再スタート。この後、今日の唯一の難所と言ってもいい、堰堤越えが待っている。堰堤を説明しても、川で遊んだことがないKにはどうしてもイメージできないらしい。
「それって危ないん?」
「危ないっちゅうねん。死んでしまう場合もあるねんで!」
「そんなん嫌や。」
「俺も嫌やね。」
「どうすんのん?」
「迂回するしかないな。」

 堰堤の流れに巻き込まれては困るので、慎重に近づく。すぐ上流に岸から堤防に上がる階段を発見したので、そこから上陸することにした。
 荷物は着替えが入っている防水バッグぐらいだ。それとパドルをKが持ち、カヌー本体はひろが肩に担ぎ、階段を上っていった。50mくらい下流から再度エントリーする。カヌーをかつぎながらテトラポットを渡るのは至難の業であった。

 無事に堰堤越えも完了し、またまた快調に進んでいく。だんだんと河原が広がりだし、あちこちでお弁当を食べている家族や、バーベキューをしているグループが多くなってきた。
「わー!カヌーや!」子供の歓声が響く。手を振るとみんな一斉に手を振り替えし、平行して走ったりしている。なんかいい光景だなあ。
 バーベキューをしている人たちが、やたら目に付くので焼肉が食べたくなってきた。「帰ったら、焼肉食べに行く?」「行こう、行こう。」今日は適当に切り上げ、焼き肉を食べに行くことにした。

 地形図を見て適当なゴール地点を探しながら、進んでいった。ふと前方を見るとなにやら、細いロープが流れている。ロープにしては、左岸から右岸に向かって横切るようにして流れている。
「ん?なんやろ?」
 近寄ってみると、それはなんとヘビだった。しかも、そのヘビは急に進路を変えてカヌーに向かって泳いできた。
「きゃー!こっちへ来る!」
 ダッシュで漕いでヘビから逃走した。
 ひろはヘビは別に怖くない。見つけたら捕まえて振り回したりするくらいだ。まあ、最近はさすがにしないけど。しかし、この時のヘビは怖かった。何というか、カヌーに乗りこむぞ、というヘビの明確な意思が感じられたのだ。和歌山には安珍清姫の伝説もあるし、川を渡るヘビに遭遇するなんて洒落にならん。

初沈!
 地形図をよく読むと、この先、川の流れとJRがどんどん離れていく。あまりに離れていると駅までが辛いので、名手(なて)というところをゴールにし、この先に架かっている橋のたもとで上陸することにした。

 この頃には、慣れてきた事もあって、カヌーの上で立ち上がって、前方の状況を偵察したりなんかしていた。この時も、橋の手前で上陸できるか、立って目をこらしていた。立ち上がっている間は、バランスを崩すと行けないので、相方は、じっとしているか、最小限だけ、静かにパドリングしなければならない。

 Kには「立つで。」と当然声を掛けていたのだが、かなり長い間立っていたので、船首方向の向きが変わってきたのか、隠れ岩があったのか、Kが漕いだようだ。たぶん。
 たぶん漕いだようだとあやふやなのは、その瞬間、ひろはひっくり返って、後頭部から落水していたからだ。当然カヌーも転覆。Kも水の中である。

 水泳は得意なので、落ち着いてカヌーに縛っていたロープを片手に、パドルを片手に立ってみた。水深は腰ぐらいだ。Kはどこ?と見ると、必死でバタバタしている。
「背が立つよ。」と言うと、
「えっ、そうなん。ほんまや、足が着くわ。」
 妙に可笑しくなって二人で顔を見合わせて爆笑した。Kはかぶっていた帽子は流していたが、パドルはしっかり握っていた。たいしたもんである。
 やっと上陸するとかなり流されて、橋の下流側になっていた。この橋は人も車も全然、通らないので、そこで笑いながらすばやく着替えてしまった。

 これからどうする?と相談した結果、戻って焼肉を食べに行こうと決定!名手の駅までは約1qあり、カヌーをかついで歩くのはむっちゃ苦痛だったなあ。
 結局、中百舌鳥まで帰ってカヌーを干して、そのまま本場の鶴橋まで焼肉を食べに行った。とても美味しく、楽しい充実した一日だった。だから、カヌーの進水式の想い出は焼肉のイメージなのだ。