大河ドラマ「新選組!」のツボ

 

第1回  黒船が来た  

  (第1回から第21回までは、最終回まで視聴した後、DVDを観ながら書いています。)

“江戸時代末期、
 世界に対して門を閉ざしていた日本は
 開国を要求する黒船の来航によって
 大きく揺れ動いていた。

 開国か、攘夷か、
 国は二つに分かれた。

 これは幕末にあって
 大きな時代のうねりの中に
 自ら身を投じていった
 若者たちの物語である。”


大河ドラマ「新選組!」、いよいよ1年間の放送の始まりです!!
オープニングだけでドキドキする。
京を描いた版画と美しい自然を撮った映像、そこへ、駆け抜ける隊士たちを被せた画面がとても
印象的です。
きゃ〜、近藤さんだ!土方さんだ!!総司だっ!!!
テロップの名前に一々反応してしまう。馬鹿ですねぇ。(苦笑)
これから49回、新選組を堪能させていただきます。楽しみです。


さて、始まりは元治元年(1864)4月29日、京の都から。
有名な池田屋事件の、1ヶ月と少し前ですね。
隊士たちを引き連れ、居酒屋に乗り込む新選組副長土方歳三。
「主人はいるか?新選組だ。この店、しばらく借りるぞ。」
うわぁ、うわぁ。この土方さん、なかなか良いかも〜(*^^*) と、この瞬間思いました。
テロップで主要隊士たちの紹介。えっ?土方さんが一番乗りですか?

それにしても、さすが、脚本・三谷幸喜氏。
新選組といえば不逞浪士取締り。1年間の放送の最初にこういうシーンを入れてくるとは、ファンの
ツボを心得ていらっしゃる。(^^)
集まってくる隊士たち、配られるだんだらの羽織、始まる軍議。
探索の報告が入って、いよいよ出陣。夜の町を隊士たちが駆けていく。
うわ〜、まさしく新選組だ!!

そして御用改めの様子をテンポよく描きながら、隊士たち各々の立場と人となりを、これまたさりげ
なく紹介しているんですよね。
一人一人にかける時間は1分に満たないほどなのに、その台詞その行動で、みごとにその人物の
性格が描写されている。後から見直すと余計にそれがわかります。
隊士たちだけではなく、長州藩士桂小五郎、深雪太夫、京都守護職松平容保公、伏見の旅宿寺田屋の女将お登勢、そして土佐脱藩浪士坂本龍馬も。
「江戸におった頃は、よう顔を合わしちょった。」
龍馬の回想に合わせるように、時が10年前に遡っていきます。
なんというみごとなプロローグでしょう。


そして遡ること、10年前。
嘉永7年(1854)1月24日。ここは江戸。

後の新選組局長近藤勇、今は島崎勝太が、なぜか幼馴染み土方歳三の、女の後始末をさせられています。
人に尻拭いをさせておいて、ちゃっかりまた、通りすがりの女にちょっかい出してる歳三。(苦笑)
「叩かせて下さい、一発。」 でも、「あの人は駄目。あんな綺麗な顔、叩けない。」 うっとりしながら
呟く女の言葉に笑ってしまいました。
そして、歳三の代わりに思いきり頬を叩かれる、哀れなかっちゃん。(笑)

「かっちゃんには借りができちまったな。」
「お前ほんと、そろそろ改めないと、いずれ女で身を滅ぼす。」
「わかってるよ。」
「なんか、ないのか?女の尻ばっかり追っかけてないで、こう、生涯かけて打ち込めるものが。」
う〜、かっちゃん、歳三を責めないでやってくれ。かっちゃんは近藤家の養子に入って、試衛館という道場の跡取りの道ができたけど、歳三はいまだ自分の道が掴みかねて、かといって百姓のまま終わる気もなくて、迷いの中にいるんだから。だからやたら、かっちゃんの言葉尻を捉えてからかってみたり、拗ねてぶっきらぼうになったりしているの。
「かっちゃんはいつだって真っ直ぐだな。」
真っ直ぐなかっちゃんと、屈折している歳三。
香取くんも山本くんも、それぞれの性格がとても上手に出せていて、まだ初回なのに息もぴったりです。

勝太と歳三が蕎麦を食べています。
「かっちゃん、とんがらし!」
「お前、かっちゃんって言うな。」
「なんだっけ。忘れちゃったよ。」
「近藤勇だ!」
「馴染まねぇんだよなぁ。」
「もう、決めたんだよ。」
「なんで“いさみ”なんだよ。」
「なにが!」
「普通“いさむ”だろう? “いさみ”ってなんか、“しらみ”みたいでかっこ悪いよ。」
「父上が考えてくれたんだ。」
「わかった。“勇み足”の勇だ。」
この会話が楽しい〜。いかにも、幼馴染みの会話ですね。

そこへ、練兵館の桂小五郎が声をかけてきました。
長州出身の桂は、江戸の蕎麦が口に合わないとボヤくことしきり。
それを聞きながら、ムカムカしてきている歳三の表情がわかりやすい。(苦笑)
「江戸の食いもん、馬鹿にしやがって!」
キレるトシ、最高!!(爆)

二人の分まで蕎麦代を置いていった桂に、奢られる理由はないと、二人は桂を追いかけます。
受け取れ、受け取らないで、押し問答の勝太と桂。
桂の言葉の端々に、身分や道場の格の違いを意識した優越感が滲みます。
これは、歳三でなくても腹立つよなぁ。
「私に渡したことにして、あそこにいる物乞いに恵んでやるといい。」
桂が指差した、莚を被って寝ている男は、小千葉道場の坂本龍馬でした。
埒の明かない二人の遣り取りに、自分がその金で蕎麦を食ってくると仲裁に入る龍馬。
納得しない勝太が、龍馬と相撲で片を付けようとしている間に、桂はさっさとその場を逃げ出します。
この頃から、逃げるのだけは早いのね?(苦笑)

桂の後ろ姿に、蕎麦代を投げつける勝太と、「いつか殺す!」と吐き捨てる歳三。
どんなにムカついても、今は桂に全然敵わない二人。
そんな二人を、「日本人同士、刀振り回してどうするつもりぜ。」と龍馬が諌めます。
桂といい龍馬といい、後の生き方に繋げるような言動をさせているのが上手いですね。
龍馬はさらに、二人を黒船見物に誘います。砲術師範の佐久間象山先生が、浦賀に停泊中の黒船を視察に行くから、そのお供として一緒に行かないかと。
「あれ見たら変わるぜよ、物の見方が。」という龍馬の言葉に、一緒に行く約束をする二人です。

道場に戻った勝太に、後ろから「隙あり!」と1本。打ったのは沖田惣次郎。最初は子役なんですね。道場主で勝太の養父周斎先生に、「百年に一人の逸材」と言われて喜んでいる笑顔が可愛い。
その周斎先生は田中邦衛、そして勝太の養母ふでは野際陽子。二人ともいい味出してます。ふで
さんは、勝太が百姓の出なのが気に入らないらしい。
そして勝太は、惣次郎の姉みつにも後ろから「隙あり!」と1本。でもおみつさんは武家の女性で、
既婚者。こんなにお転婆でいいのかな? 沢口靖子という配役は合っていると思うけど。
(まさかこのおみつさんに、後々泣かされるようになるとは・・・。)

翌朝、勝太と歳三は黒船を見に出かけます。
夜明けの江戸の町がとても綺麗。雄鶏の声、鳥のさえずり、蜆売りの声が町のどこかから聞こえてくる中、かっちゃんとトシが橋を渡って歩いてきます。
「俺は隙を見て黒船に乗り込む。奴らに一矢報いてやるんだ。日本にも気骨のある男がいることを教
 えてやろう。」
「かっちゃんはいつも真っ直ぐだな。面白い!!」
と、意気投合する二人。
待ち合わせの場所で、二人は初めて佐久間象山なる人物と会いました。
「いかつい面構えをしておるな。よし、お前はこれから“鬼瓦”だ。そっちはまたずいぶん色が白い。
 木綿豆腐。わしはな、名付けの名人だ。」
この象山先生、なかなか面白い。
桂は相変わらず、試衛館を「貧乏道場」と紹介したり、二人の格好を「見るからに人足だ」と言ったり。
「いちいち引っ掛かるな。」
歳三がまた、キレそうです。(笑)
尻っ端折りした土方の後ろ姿、ほんとに足が白い〜〜。眩しい〜。(クラクラ) でもこの木綿豆腐、見かけは白くて軟らかそうでいて、かじると歯が折れるかもしれませんよ。>象山先生。

途中、一行は茶店で休憩しています。
「おまん、元百姓かい。」
「はい。あの、今でもこいつは・・・。」
「俺の話はいいよ。」
身分について、あまり屈託の無い勝太に対して、複雑な歳三。
そんな二人に坂本龍馬は、自分も似たようなものだ、郷士の出だと語ります。
「サムライじゃないか、結局。」
呟く歳三に、郷士と上士の違いを説明する龍馬。郷士は上士に刃向かうことは許されず、下駄も履かせてもらえなかった、人として扱ってもらえない、虫けら以下。だから江戸に来た・・・と。
そうなんですよね。長州にしても土佐にしても、幕末の尊攘派の志士たちには、下級武士の出身者が多かったんですよね。
「なりたいがやろ?サムライに。」
と龍馬にずばり言い当てられて、
「別に・・・。」
とふて腐れる歳三。あ〜、かわいい。(爆)
そこへ、「お〜い、鬼瓦。豆腐も来い。」と、二人は象山先生に呼ばれます。

象山先生は二人に、日本はこれからどうなると思うか、と尋ねます。
「日本は、なるようになります!」
と答える勝太。象山先生、爆笑。
突然、日本は・・・などと訊かれて、目を白黒させている二人に、象山先生はとても良いお話をしてくださるのでした。
「人は、生まれてから最初の十年は、己のことだけを考えればよい。そして次の十年は、家族のこと
 を考える。二十歳になってからの十年は、生まれた国のことを考える。そして三十になったら、日本
 のことを考える。四十になったら、世界のことを考える。」
今と時代が違うので、年齢や対象は多少変わってくるでしょうが、現代にも通用する、指針になる話ですよね。さすがは象山先生です。
「今は多摩の田舎のことだけ考えればよろしい。ただし、十年後、日本のことを考えねばならなくなっ
 た時に、正しい判断ができるよう、今から勉強しておくのだ。」
初めて聞く、広い視野に立った話に、歳三は目を丸くし、勝太は瞳を輝かせます。
この時初めて、二人は本当の意味で、自分の将来というものを考えたのでしょうか。
でも二人とも、世界のことを考える年齢までは生きられないのよね。(涙)

いよいよ一行は浦賀にやってきました。
沖合いに浮かぶ、大きな三隻の黒船。煙突からは黒い煙を吐き、象山先生から望遠鏡を借りて覗くと、船の上には見たこともない異人たちがいます。
異人にとって一番大事なものは国旗だと聞いて、
「フラッグを奪う。」
「旗だな。どうやって乗り込む?」
「あそこの岩陰に釣り舟がある。あれを使おう。」
と、一矢報いることを企てる勝太と歳三。活き活きした二人の表情が眩しいです。

釣り舟に乗ろうと二人が浜辺に下りていくと、そこには黒船から捨てられた残飯やら空き瓶やらが
流れ着いていました。
その中に、ワインのコルクの栓を見つける勝太。
「なんに使うのかな?」
「こっちには女の顔が書いてある。」
これ、スタッフさんがこだわって、土方のコルクにはあえて女の顔をもってきたそうですね。(笑)
「戦利品だ。」
嬉しそうに微笑みあう二人。まるで、探検ごっこをしている子供のよう。

一方、丘の上に上って黒船を見つめる、象山先生と桂と龍馬。
龍馬は、
「乗ってみたいにゃ〜。わしもあの船に乗って、世界の海に出たいぜよ。」
と、瞳を輝かせて笑いますが、桂は、
「私は明るい気持ちにはなれません。むしろ暗澹たる思いです。この国の行く末が不安になりまし
 た。」
と、渋い表情で呟きます。
そんな二人の正反対の感想を聞いて、
「面白いのう。人は同じ物を見、違うことを考える。」
と象山先生。先生のこの言葉も好きです。

浜辺からは、いよいよ勝太と歳三が釣り舟に乗って沖へと漕ぎ出しました。
それを見つけて、
「お〜い、おまんら〜!死ぬ気で行けや〜!死ぬ気で〜!!」
と、面白がって煽る龍馬。
しかし、桂は咎め立てするかのように、
「よろしいんですか?」
と、象山先生に訴えます。
「小さい、小さい。」
と答える先生。
何事もポジティブに捉えて楽しんでいる龍馬と、ネガティブに捉えて悩む桂。二人の対比が面白いですね。

黒船から、国家の演奏が聞こえてきました。
国旗が掲揚され、ジョージ・ワシントン誕生日のセレモニーが始まったようです。
「日本はこれから二つに分かれる。闇雲に異国の文物を受け入れようとする者。日本という殻に閉じ
 篭もる者。」
前者には龍馬が映し出され、後者には勝太と歳三が映し出されます。
先生の言葉はまさにこれから日本で起こる、思想の、そして政治的な対立を暗示しているのですね。
「しかし我らがなすべきは、第三の道だ。即ち、速やかに開国し、異国の知識を貪欲に吸収し、国力
 を蓄え、諸外国と互角に渡り合えるようになった後に、奴らに改めて喧嘩を売る。これが真の攘夷
 だ。」

象山先生が桂にありがたい持説を説いてくださっている時に、釣り舟の勝太と歳三は大騒ぎ。
釣り舟の底に穴が開いていて、海水がどんどん入ってきたのでした。
手で掻き出しても埒が明かず、
「もういい!泳いでいく!!」
「よっしゃ!!」
二人は着物を脱ぎ出します。

その時、船から鳴り響く轟音と振動。黒船が祝砲を撃ったのでした。
驚きのあまり、思わず褌一丁で抱き合う勝太と歳三。(爆)
いいのか?天下のNHK大河ドラマで。(@o@)
いい年した男二人が、口をぽかんと開けて裸で抱き合っている図。爆笑。
カメラのアングルが、丘の上からの遠景に切り替わります。沖合いに浮かぶ、勇壮な黒船の姿。
手前の丘の上には、象山先生と桂と龍馬。そしてその真ん中に、小さな釣り舟の上で抱き合って
いる裸の二人。やっぱり笑える。
「なんなんだ、こいつらは。」
お口開きっぱなしの勝太の顔のアップで、第1回終了。
いや〜、可笑しい。この弾けっぷり。(*^o^*)


とりあえず大河ドラマ「新選組!」第1回を見終わって、若き日の近藤勇と土方歳三は、今までの映像や舞台では見られなかった、若い希望と苦悩と強さと優しさに溢れていて、とても新鮮でした。
そして、山本耕史くん演じる土方歳三は、その色気といい、頭のキレといい、屈折した性格といい、
土方ファンの私のイメージにぴったりで、これから先が本当に楽しみになりました。

桂小五郎や坂本龍馬と、近藤勇がお友達。
放送中はこの設定が一部で叩かれたりしましたが、確かに私も最初はびっくりしたけれど、同じ江戸にいれば出会っていた可能性もない訳ではなく、それで物語が膨らんでいくのなら、十分許される範囲の創作だと思うんですよ。

あぁ、次回の予告を見ただけで、わくわくする。来週が待ちきれない。
そう思いながら、あっという間に1年が過ぎたんだったよなぁ。

 

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