4月上旬の撮影の折。西郊の女将さんはこうおっしゃっていました。 「一週間後には工事が始まるので、いいタイミングでしたね」。 私たちはそれを、リフォームするという程度の軽い意味に考えていたのですが… 実際はもっと、大がかりなものでした。
今回の改築にあたっても、全面建て替えするという案もありました。しかし「これだけのものをもう一度建てることは二度とできない」と思われたことがひとつ、もう一つは容積率の問題で、西郊の敷地は建ぺい率60%、容積率200%というのが建築の基準だそうで、これでは三階建て以上のマンションなど建てることはできない。その結果、「できるだけ本来の姿を残して改築する」という結論に至ったそうです。
下宿屋から旅館へ、そして賃貸マンションへ。 まるで建物自体が、現役を引退することを拒み、生き残る道を一生懸命模索しているようにさえ思えてきます。
もともとが荻窪の閑静な住宅街にあり、宿の中に入れば都内とは思えないほどの静けさ。 素泊まりならばビジネスホテル並みの値段で泊まれて、広い畳の部屋でゆっくりできて、風呂上がりに古いラジオやストープに囲まれたロビーで雑誌なんか読んでると、気分はもう別荘地!
本館のほうは今後も旅館として営業を続けるそうですから、ちょっとした宴会や、同窓会にはぴったりの宿ではないかと思います。ご主人も女将さんもきさくな人で、決して敷居の高い場所じゃありませんよ、ホント。