私は仕事の関係で同行の二人と別れ、ひと足先に帰りの船に乗ることになった。船では同時期に島にいた、Sさんという方と一緒になった。
「もう、島の周りは見なくてもいい?」と船長に聞かれた。
間髪入れずに「いいです」と答え、慌ててSさんの顔色を伺ってしまった。
なぜか早く島を立ち去りたくなっていた。
罪悪感、だったのかもしれない。
カマドで育っていた植物や、あったはずの場所から遠くに運ばれた煉瓦のかたまりや、30号棟の姿が頭に浮かんだ。
それは閉山後の27年も、この島の時間が止まっていなかったことの証拠のように思えた。
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