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新白河原人 守村大


 右の写真にもちゃんと使っている、大人になってから読んだ漫画の中でも大好きな「あいしてる」の作者が守村大である。

中年を過ぎ、己の体型を見て一念発起したらしいのだが、要するに都会での「ベンリな」生活を捨て、田舎、というよりむしろ山中そのものでの生活を記す日記的なエッセイである。

 山の購入から地ならし、ログハウスの建造、サウナの敷設、山中での自給自足の生活、そんなものが記されている。
田舎育ちのわしですら、当然あっちの文化であるログハウスなぞほとんど見た事が無い。地元辺りにログハウス仕立ての喫茶店があったぐらいか。まあ、生活する場所ではなく商用のログハウスしか見た事が無いわけだ。それを自分の生活の場、仕事の場として自力で建てようと思いつくのもすごいが、彼はほとんど独りで作り上げてしまう。材木の購入から基礎、土台、材木の下準備・・・と順を追って記述される。


 まあわしも頭が悪いなあと思うのだが、素直に憧れてしまうし、こういう家に住んでもみたい。


 そう思わせる文章力、構成力がやはりこの作家には付随している。「あいしてる」の頃から生身の人間を描こうとして来た作家であるが、この場合には自分という生身の人間を、まさしく等身大に描いている。葛藤しつつ鶏をしめ食す件など、完全に己の身の丈を曝け出してしまう。そこに在るのは守村大という生身の、尚且つ愛すべき人間なのである。このような人間の描き方は守村大が最高だと昔から思って来たが、ここでもやはり、そうなのである。そういう描き方ができるからわしはこの作家が好きなのであり、彼の作品が大好きなのである。


 挿絵はもちろん彼が描いているのだが、その絵の中に山中生活の過程と彼自身を凝縮して描いてしまう。本文と相まって、彼と彼の生活への憧憬がふつふつと沸き上ってくるのである。


 ちょっと疲れた時に数ページめくってみれば良い。

何とも言えず穏やか且つ晴れやかな気持ちで次のページをめくる事だろう。

現在モーニング誌では漫画に形を変え継続されているようである。

それについてはまたここで書きたい。