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中崎タツヤ


 余白の多さで言えば他に類を見ない漫画である。

線とベタしか無い画風であり、絵も非常に下手な部類と言って差し支えないだろう。

先のあすなひろしでも少し触れたが、こちらはリアルさ(特に躍動感)には欠けるものの、絵の力は相当に在る部類であり、ハッとさせられるシーンなどいくらでもある。

しかし中崎は失礼ながら子供が描いたような漫画である。

絵だけならそこらの小学生の方が余程上手いだろう。


 しかし中崎の場合、ハッとさせられるのは絵ではなく、内容なのである。

その着想と発想はくだらないと切り捨てるに十分なレベルではある。

はっきり言って何の役にも立たないし何の益も無ければ毒も無い。

スッカラカンである。

なのに何故か笑ってしまったり感心してしまうのである。


 わしは彼の漫画、特に「じみへん」は全巻買ってしまっている。

作者の着想と発想が面白過ぎるからだ。

肩の力を必要としない漫画ではある。

見開き2ページ15コマの中には、どうしようもなくくだらない事しか描かれていない。

下ネタであったり、あるあるネタであったり、なんじゃそら的なネタであったり。

しかし脱力だけではない何かがそこにはある。

「あ、明日も頑張るか(笑)」とか思ってたりする。


 わしはここにつかこうへいとの共通点を見る。

いずれも人のどうしようもなさ、くだらなさを描く作家である。

そしていずれも人間が嫌いではなく、むしろ肯定的に捉える作家でもある。

つかこうへいはデフォルメされ過ぎの強烈なキャラクターを描くが、中崎はそこらにいてもおかしくはない、ちょっと変なキャラクターを描く。キャラクターに差異は在れど、言っている事は結局、「人間色々でおもろいやん」なのである。


 要するに、わしはこういう考え方が好きだったりするのである。