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ぶっせん 三宅乱丈
貧乏な仏々専寺の僧侶・雲信が食い扶持稼ぎに仏教の専門学校、「ぶっせん」を作るところから始まるギャグ漫画。
隣の寺、金々腹寺からの間諜として派遣(受験)させられた正助が多分主人公なのだろうが、キャラクター設定が明快でありこのため全員のキャラ立ちがよく、最後になると誰が主人公なのかもはや判読不能である。
単位は修行内容に応じるとし、50単位で悟り=卒業が得られるという設定である。校歌は般若心経。当然のごとく落ちこぼればかりの学生(?)では単位など得られるはずもなく、結局最後まで得られた単位は正助の座禅と校歌(しかし校歌で単位を与えたという描写はない)と卒業制作(寄書きと警策)のみである。キャバレー・ピンクィうさぎや金々腹寺を巻き込みつつぶっせん=仏々専寺の立ち退きに至るまでのおそらく二年程度が描かれる。
これほどまでにディティールを煮詰めたギャグ漫画は他に知らない。それは仏教、およびその宗派に纏わるものに顕著であるが、そういう内容、背景だけではない。いや無論内容的なディティールも絶妙である。雲信と貞奉の一見低レベルな言い争いは、実際の鎌倉仏教と平安仏教の争いをデフォルメされたものに相違ない。「くやしかったら400年早く伝来してみろ」という貞奉の台詞は端的にこれを表している。
こんな内容的なディティールもさることながら、描写のディティールも凄まじく細かい。仏教専門学校にいながらも実はキリスト教徒のままであったりするレオであるとか、マッサージチェアでオナニーを覚える金々腹寺の長男・真であるとか、コマの隅々まで余念なくネタが満たされているのである。
多少なりともの知識があれば絶妙な台詞まわしに笑え、それがなくとも緻密なネタに笑える異常に密度の濃いギャグ漫画であると言えよう。
ちなみにレオのイタリア語監修は現在(2012年)人気の「テルマエ・ロマエ」の作者であるヤマザキマリ氏である。