Series of Dreams vol.1 1974~1979
at 大阪厚生年金会館大ホール
久しぶりの厚年である。
10年ほど前は毎日のようにパッソルやアドレスチューンで通った道。
懐かしさに浸るほど体調は思わしくなく、
ライヴ途中の腹痛を不安に思いながらばるぼ69を走らせる。
幸い渋滞もさほどではなく、18:30には車を停めホール前に辿り着いた。
とりあえずあこの首を絞めた後、会場内へ。
キーホルダー、フェイスタオルを買う。
G列15番。 久しぶりの一桁台。
もう少し後ろでもいいから正面がいいのだが←贅沢
BGMはロッキュメント。
16ビートの軽快なSE。
メンバーが出てくる。
そして、甲斐よしひろ登場。
1.吟遊詩人の唄
甲斐さんがギターをかき鳴らし、
他のメンバーが続く。
明るいペシミストというべきか
悲壮な楽天家というべきか。
矛盾的な存在の唄。
これこそが甲斐よしひろという人間なのか。
他人の曲ではあるが、この詩も原点、なのか。
そんな想いは後付けで(笑)、
腹に力の入らないわしは声を喉から絞り出す。
2.カーテン
蘭丸ってこういうのにほんと似合うね。
JAH-RAHのリズムもいい。
躰を横にくねらせる感覚。
単純なピストン運動ではダメなのだよ(爆)
3.きんぽうげ
ギターの音はKAI FIVEのきんぽうげに近いけど全然違う感覚。
蘭丸の微妙にリズムをずらしたギターと
甲斐さんの吐息のマッチングは絶妙。
蘭丸の陰に隠れもしない坂井さんのベースも良い。
4.牙(タスク)
新曲。
間奏の後「Task!」を続ける処、好き。
いっそ松井のテーマ、これにしてくれんかなぁ(笑)
元々そういう目的の曲だけに、
「Task!」は 松井のバットがボールにインパクトするイメージがぴったりなんじゃけど。
5.メモリーグラス
この曲って中性的よね。
主人公が男か女か未だに結論出んのんじゃけど(笑)。
中性的な色気を増す甲斐さんの声に
これまた色気のある蘭丸のギターが被さる。
痛い想いが胸を突く。
曲が終わってもドラムは続く。
6.ダニーボーイに耳をふさいで
そして蘭丸の音が震える。
このコンビネーション、いいね。
もう感じることのない筈の痛みが、目の奥を焼いた。
7.シネマクラブ
前野さんのピアノに他のメンバーが加わり、
うねる三連のリズムに浸るのが判る。
メンバーみんな気持ちよさそう。
気持ちよさそうなメロディとリズムに乗り、
哀しく痛い詩が躰を巡る。
8.感触(タッチ)
あれ? わしにとってこれライヴ初めてじゃったっけ・・・・?
独りになった甲斐さんがMy Name is KAIで唄う。
どうでもいいけど、これ↑って便利な表現(笑)
9.男と女のいる舗道
MCに続いて、「某有名バンドの元ドラマー」の紹介の後
田中一郎松藤さん登場。
黒いスーツがschick(爆)
あれ?五月に観た時から比べて異常に髪が長い・・・・
マーチンを爪弾いてアルペジオ。
いい音にいいハーモニーにいい雰囲気。
自然と眼を閉じてました。
もったいないような気もするけど、
自然に躰が反応したものはしょうがない。
10.東京の一夜
またMCを挟んで。
二人ともClearという表現の似合う声ではないけど、
こうやってハモってると分かち難い何かを感じる。
やっぱ、一心同体だわ(爆)
11.裏切りの街角
メンバー全員が戻り、松藤さんを含めての演奏。
一つ一つの音がはっきりと強いのに、 詩はかくも脆弱。
アンバランスな心地よさ。
12.嵐の季節
蘭丸のギターが唸り、会場が唸る。
耐え忍ぶほど辛い現実に晒されてはいないけど、
ジーンズのポケットを握り締めた。
いつのまにやら去ったはずの松藤さんが前野さんの後ろにいた。
13.氷のくちびる
後方から白いライト。
甲斐さんだけでなく、蘭丸と坂井さんの動きが大きい。
そしてヘビィな三人の音。
松藤さんはリコーダー。
波のうねりが躰を捉える。
14.ポップコーンをほおばって
氷とポップコーンのコンビ、考えてみりゃわしゃ初めてじゃわい♪♪
と今更ながらに想うものの最中は声を張り上げるのみ。
うねりは更に大きくなって躰を走る。
視線を漂わせながらうねりに任せた。
15.翼あるもの
メッケン前後でこの曲のベースは全然違うと思うんじゃけど、
メッケンに負けず劣らず坂井さんのベースがいい。
挑発的というか、攻撃的というか。
ベースの音に蘭丸のギターが絡むグルーヴ感。
体表から出ることを忘れていた汗が一気に噴き出す。
16.HERO
個人的意見じゃけど、この一番の前に間があるヴァージョンがわしは好きじゃね。
リズムが躰を動かし、 声が骨を震わせ、 ギターが皮膚を痺れさせる。
この状態でニットを着たままのアメリカかぶれはやはり信用ならん(爆)
E1.マドモアゼルブルース
この歌詞にこの音にこの声。
理屈で考えると全然マッチしないような気がするのはわしだけかね。
それがまた型にはめたようにきっちり形になって観え、聴こえる妙。
E2.ちんぴら
Beatnik tour 2001でのアレンジと基本は同じ。
なのにドラムとギターが違えばもう別の曲。
不思議じゃね、感覚というものは。
しかしこの曲の切なさ、30過ぎてから沁みてくるのは何故かね。
E3.安奈
インターバルの後、松藤さんを含めて。
季節のずれをとやかく言うけどわしゃ全然気にしてないもんね。
唄という、ライヴという作品世界を体感するだけの話。
ま、わしゃどぉせ季節感ない格好じゃけね(笑)
それにしても沁みいる歌詩よ。
甲斐さんはいつもより情感豊かな気がした。
E4.牙(タスク)
祝松井三冠王(爆)
最初に演った時よりも全体の動きは増していた。
10/10が待ち遠しいね。
E5.最後の夜汽車
さて、オーラスは・・・・ おぉっ!
この蘭丸のギターは絶品。
音が皮膚の隙間から躰に捻り入ってくる。
切なさが沁みる。
この曲、正直聴きたくない事が多いんだけど。
無力感に打ちひしがれてる時はね。
そんな時だったら、おそらく崩れてたかもしれない。
また、いつの間にか眼を閉じていた。
1.吟遊詩人の唄
2.カーテン
3.きんぽうげ
4.牙(タスク)
5.メモリーグラス
6.ダニーボーイに耳をふさいで
7.シネマクラブ
8.感触(タッチ)
9.男と女のいる舗道
10.東京の一夜
11.裏切りの街角
12.嵐の季節
13.氷のくちびる
14.ポップコーンをほおばって
15.翼あるもの
16.HERO
E1.マドモアゼルブルース
E2.ちんぴら
E3.安奈
E4.牙(タスク)
E5.最後の夜汽車
史上最悪の体調で臨んだライヴだったが、
いつも通りの最高のライヴでした。
よりバンドらしくなったメンバーの音に甲斐さんの声。
そこから作り出されるグルーヴに身を任せ、
爽快感を感じつつ体調のこともいつか忘れてしまうほどだった。
ここ数年、古い曲はアルバムに程近いアレンジで 演奏される傾向が高い。
第一期ソロのリアレンジかましまくりからは隔世の感さえ漂う。
今回は特に曲の紹介無しでもイントロだけでその曲と
判断可能なものがその大半である。
感触(タッチ)や男と女のいる舗道はあの形なので判りにくい部分はあるが、
他に強いアレンジが加わっているのは HERO、ちんぴらの二曲のみである。
しかしながらHEROはBeatnik tourを除いた最近のライヴでの
アレンジに少々手を加えた程度のものであり、
ちんぴらはBeatnik tourでのアレンジとほぼ同じであるから、
総じてみれば判らない曲はない、と言い切れよう。
これには客に対するサービス的な意味合い、
出だしからきっちり唄えるという利点もあろうが、
MC中に言った言葉、シンガーとしての甲斐、 作家としての甲斐を
客観的に見直すという意味合いの方がやはり強いだろう。
自ら唄うことで自らを見直すという発想も凄いが
それをやってのけるのが甲斐よしひろである。
次回ツアーを楽しみにしたい。
ライヴ〜ツーリングで多少疲れておりますよってお許しを。
では、続きです。
74〜79という期間、
つまりらいむらいとからMy Generationまで、
この間に創られた曲限定(牙(タスク)を除いて)というライヴ、
それが今回のコンセプトである。
その期間の間、ライヴの定番曲といわれるものが幾多創られた。
その代表的なものは、ほとんど全て、今回演奏されている。
マドモアゼルブルース、ちんぴらを除き
全てライヴアルバムに収録されている曲で今回のライヴが
構成されていることは上記リストを見ればお判りだろう。
氷〜ポップコーンというパターンは定番中の定番であるし、
シネマ・クラブはアルバム「100万$ナイト」での演奏と
同じようにピアノソロから始まっている。
それぞれについては各人ご検討願いたいが、
(まあ要するに一つ一つ言ってたらめんどくさいので(爆))
わしの言いたいことはお解りいただけるだろう。
先程わしは一つ二つ引っかけを記しておいたがお気づきだろうか。
また、定番曲、と言われて既にお気づきの方、
ライヴの最中に74〜79なのに何故、と思われた方ももちろんいるだろう。
ライヴの定番曲しかも74〜79という期間、
そうなれば当然あるべき曲が無いとは思えないだろうか。
わしはライヴが終わった瞬間に思った。
「LADY」と「100万$ナイト」を演らなかったな、と。
この時期の甲斐バンドを直接知るものではないが、
この二曲が定番曲でありしかもライヴのエンディング近く、
またはオーラスに唄われてきた曲であることは説明を待つものではない。
ここに逆説的な理由はありはしないか。
わしは、あると思う。
リストの曲達とこの二曲を対比していただきたい。
極大雑把に言い切ってしまえば、
「LADY」「100万$ナイト」ともに、
主人公は絶望的状況にある。
ただし前者はそこで雄々しく「船を出す」と叫び、
後者は絶望に打ちひしがれ慟哭するという違いはあるが。
いずれにしろ絶望的状況に激情を晒している姿に相違はない。
となると、リストの曲達はどうだろう。
どんなイメージをお持ちだろうか。
わしは、脆弱、ひ弱、そんな言葉が全ての曲に該当すると思う。
打ちひしがれても慟哭までは至らず、
そっと涙を一筋流しそうなイメージではないか。
肩を丸めて街角を歩いてそうなイメージではないか。
「翼」と「HERO」はどうだ、そんな声も聞こえてきそうだが、
わしはこの二曲も同様であると思う。
「翼あるもの」では独りで迷い、佇む姿が描写されており、
「HERO」でも痩せっぽちの俺、である。
ただし脆弱ひ弱それだけではない。
曲目、吟遊詩人の唄の処でも書いたが、
明るいペシミストまたは悲壮な楽天家とでも言うべき、
ひ弱ながら歩を進めようという曲達ばかり、である。
寂しさ心細さを胸の内に抱えながら、
もっと強い哀しみや絶望に苛まされながら、
強がって無理矢理な笑顔を晒すような、
それ自体矛盾とも言える存在の唄達。
一言で表現できる言葉がここに浮かび上がる。
「少年」である。
少年の世代、という意味ではない。
その精神面における「少年」である。
作家である甲斐よしひろ本人は当然の如く
この殆どの曲を書く頃には成人していたが、
ここに表現されたものは全て少年的精神性を露わにしている。
即ち、このSeries of Dreams vol.1で表現されたものは、
「少年」甲斐よしひろであったのではないか。
従ってこのシリーズを続けるにあたり、
様々な「甲斐よしひろ」が表れることになる訳だ。
次回のシリーズでは如何なる「甲斐」が表れるのか。
そのまま「青年」なのか。
もっと行って「中年/壮年」なのか。
はたまた「少女」なのか。 ←ないって
ツアーの発表を心待ちにしたい。