安心できない空の旅 ANA機長の写真撮影とJALのシート耐火偽装


  またとんでもない事件が明らかとなった。第一は全日空(ANA)グループの機長が操縦中に写真撮影をしていたとい
う事件であり、第二は、日本航空(JAL)の国内線の新ファーストクラスのシートに耐火性能試験を実施していない部品
が使われていたという問題である。

  2009年1月26日、ANAグループ会社(株式会社エアーニッポンネットワーク)の機長が操縦室よりデジタルカメラを使
用して離着陸時に写真撮影を行っていたことが発覚した。写真が撮られたのは、2008年12月6日の高知発大阪行の
全日空1604便で、高知空港を離陸する直前に、操縦室の機長席で滑走路の写真を1枚撮影したほか、大阪空港へ
の着陸前にも同空港の全景写真を1枚撮っていた。同便を実際に操縦していた男性副操縦士は、機長に注意しなかっ
たという。機長が撮影した写真を、インターネットの交流サイト上に掲載していたことから写真を見た一般の人から全日
空に問い合わせがあり、問題が発覚した。

  この行為は、航空法第73条の3(安全阻害行為の禁止等)に違反するし、運航安全業務に専念する旨を規定してい
る同社社内規程に違反する行為である。以前、私はANAに搭乗した直後に写真撮影しようとして乗務員に注意された
ことがある。搭乗口のドアが閉まるかなり前なのに写真撮影はダメだという。それほど写真撮影は航空機の安全運行
に支障があるのかと、写真撮影を諦めた。顧客にはこのように厳しくルールを適用しておきながら機長が操縦室で離
着陸時に写真撮影をするとはどういうことなのか。しかも決定的に異なるのは、顧客は飛行機に乗っているだけだが、
操縦士はたくさんの命を載せて飛行機を操縦しているのである。その最中にデジカメを取り出し、写真撮影とは驚きで
ある。



  第二の事件は、国土交通省が1月30日に発表したもので、航空機の座席メーカーである小糸工業が、日本航空(J
AL)のボーイング777型機9機の国内線ファーストクラスの座席で使われている部品について、実際に生産しているも
のとは異なる部品で耐火性試験に合格させていたというものである。実際に生産しているものは、国が定めた耐火性
の基準より約1割低いのだという。同省は日航に対し、アルミテープをはるなどの改修を行うよう指示した。
  偽装行われたのは、隣り合う座席の間仕切りに使う炭素繊維「カーボンファイバー強化プラスチック」で、予定してい
た素材が不合格だったが、JALへの納期が迫っていたことから、小糸工業は不合格の状態のまま生産を開始し、小糸
工業は不合格の部材を使って量産を続けた。

  JALは、「1月30日に国内線ファーストクラス座席の一部部品について耐火性試験を実施していない部品が使用され
ていたことが判明いたしましたが、該当する全ての座席に国土交通省による耐空性改善通報に基づく処置を速やかに
実施し、1月31日に改修を終え、運航便への影響は発生いたしておりません。」とHPで述べているが、事件が発覚した
翌日に対策が完了するなど考えられない。あらかじめ事実関係をつかみ、国土交通省、小糸工業とともに措置可能な
日時を探り、その前日に国土交通省が発表したと考えるのが自然であろう。異常状態を公表しながらも未対応のまま
運行を続けたり、運行停止に追い込まれるような事態を避けたと思われる(この点については確証がないので、関係者
から反論、意見があれば掲載します)。「消費者の安全」は二の次ということであろうか。このような偽装がまかり通って
いるのであれば一体どれほどの明らかでない危険性があるのか不安になってくる。


 機材の安全といい、乗務員の意識の低さといい、航空機の安全は大丈夫なのであろうか。






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