事業と屏風は広げすぎると倒れる

〜身の丈の経営こそ社会に貢献できる〜


  「白い恋人」で有名な石屋製菓、赤福餅の製造年月日等の偽装、英会話学校最大手のNOVAの実質上の経営破
たんと、老舗や業界大手の企業不祥事が相次いでいる。最近になって、船場吉兆の食品の賞味期限延ばしや牛肉の
産地偽装まで取りざたされ、この国では偽装は当たり前で、「偽装列島」ではないかと思えるほどである。これでは消
費者は安心して商品やサービスを購入できない。

  これら一連の不祥事に言えることは企業が拡大路線を取り、本来の企業精神や倫理を忘れてしまったことが原因
ではないかと思われる。最近、企業の社会的責任(CSR)が叫ばれているが、何か特別なことをするのではなく、本来
の事業で不正をせず、消費者に喜ばれる商品・サービスを提供することが重要である。

  雑誌「トランヴェール」2007年11月号で群馬法師温泉長寿館の7代目館主岡村健氏が興味深いことを言っている。
湯量以上に宿は大きくなってはいけない。沸いてくる湯にあった身の丈で守っていく。むやみに掘ってもいけな
」というポリシーが長寿館では代々受け継がれてきているのだという。身の丈の経営を通じて顧客に喜ばれることを
社是としてるということであろう。  

  吉兆は創業者の湯木貞一氏が客の好みに合わせた器や季節感の演出などで名門への礎を築いた。1961年に東
京・銀座に進出し、91年には同氏の子どもが独立し、五つの料理経営会社に分化して、グループとして急成長した。そ
の中で、船場吉兆の多角経営は際立っていたという。 積極的な事業展開を進めて、カレーライスの提供や吉兆の冠を
付けた明太子商品を売り出し、大ヒットした。11月16日付読売新聞の関連記事の中で、東京吉兆の湯木俊治取締役は
祖父貞一氏から生前、よく言われた言葉を紹介している。

料理屋とびょうぶは広げすぎると倒れる」 

  料理屋だけではない。事業は広げすぎると倒れるということであろう。「身の丈の経営」こそ企業の社会的責任を果
す経営につながるのでないか。

      細川幸一

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