赤福の表示偽装を考える



 北海道の白い恋人に続いて、伊勢の老舗赤福赤福餅の製造日偽装が明るみに出た。社長の答弁の変化をみる
と過失というより故意に消費者を騙していたとしか思えない。

 大騒ぎになる前の報道各社の取材には、赤福餅は生もので、一切製造日の偽装はしていないと回答していたとい
う。

 しかし、製造後冷凍して保存し、解凍した日を製造日にしていたことが明らかになり大騒ぎになったときは、市場に出
回ったものを回収して冷凍したことはないとしていた。そして、製造後すぐに冷凍すれば解凍した日が製造日になるも
のと認識していたと語った。
 その後、店頭での売れ残りも回収して冷凍していた事実が明らかになると、今度は出荷前の商品と回収した商品がう
まく分別できていなかったためにそういうこともあったようだと述べた。
 更に、回収した赤福餅を餅と餡に分けて、餡の一部は社長の実弟が経営する和菓子屋に販売し、その和菓子屋で
はその餡で和菓子を作っていたことが明らかになると、社長はもったいないからやったのかもしれないと述べた。また、
餅と餡を分ける作業をした部署について同社のHPで説明がされているが、「聴覚障害者が2名もいた」と記述してい
る。一体何のことか? どうも聴覚障害があるから会社の意向を無視して彼らが勝手にやったとでも言いたげである。

 そして、とうとう店頭から回収した赤福餅を冷凍するのではなく、生のままラベルを張り替えて消費期限表示を延ばし
ていたたことも発覚した。

 より悪質だと思うのは、JAS法は原材料名について使用した重量順に表示するよう定めており、本来は「砂糖、小
豆、もち米」としなければならないのに、「小豆、もち米、砂糖」と表示していた点だ。同社のHPでは誤って表示したとし
ているが、誤ってとはどういう意味であろうか? 和菓子の老舗の赤福が知らなかったとは考えられない。

 近年、競争が激化し、労働条件の悪化が叫ばれている。派遣社員の比率も増大している。ワーキングプアなどという
言葉もできた。JR西日本福知山線での列車事故や航空会社でのトラブルをみると、安全性を無視した効率化が先行
し、未熟な労働者がミスを犯すような事例も見られる。規制緩和による市場主義が労働環境を悪化させ、それが商品
やサービスの安全性や質の劣化につながっていることも多いように思う。一方でこうした状況は終身雇用制度を崩壊さ
せ、労働市場に流動性が出ていたことを意味する。そのために企業内で働く労働者が会社に奉仕するということから、
一市民・消費者の目で組織外部に対して情報提供または告発することが容易になってきているといえよう。内部告発者
保護制度等の法的整備もあるが、こうした問題が表面化するのは労働者が会社に対する忠誠心をなくしているからだ
という企業人もいる。

 多くの市民は労働者として働き賃金を得、それを消費者として消費に回して生活している。市場主義の進展はそうし
た市民の労働面、消費者面でどのような影響を受けるのか。労働者の権利と消費者の権利はいかなる関係にあるの
か。赤福問題を契機として考えていかなければならない問題だ。

細川幸一


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