日本の消費者運動はなぜ活発ではないのか?


  マスコミから日本の消費者運動が衰退している理由を聞かれることも多い。どこの消費者団体も高齢化し、新しい
問題に対応できていない・・・そんな共通認識がある。


  反対に、隣国・韓国では消費者団体が元気で、消費者運動は盛んである。日本との思想の違いを一つ示そう。
  日本の消費者団体は消費者行政を充実させ、消費者苦情処理を行政の責任で行なうように求めてきた。その結
果、国では国民生活センター、自治体では消費生活センターが開設され、消費生活センターの数は全国で530を超え
る。韓国政府は、国の機関である韓国消費者院(旧名:韓国消費者保護院)(1987年設立)に加え、日本のように自治
体に消費生活センターを開設する方針を取ったが、消費者団体は猛反対した。消費者苦情の処理は消費者団体の業
務であるから、それを行政が奪うなと言うのである。韓国政府が、日本の消費生活情報ネットワークシステム・PIO−
NETにならって同様のシステムを作ることもその理由だと主張すると、韓国の消費者団体はそれならば自分達で受け
付けた消費者苦情の情報を政府に提供するからそのコストを税金で負担しろと主張した。
  結局、韓国政府は自体における消費生活センターの設立にあたって消費者団体と協同で運営することとなり、窓口
の担当は消費者団体のメンバーが引受けている。
  また、韓国消費者院には消費者紛争調停委員会があるが、法的権限に裏付けられた調停機能を消費者団体にも
求め、結局、『消費者保護法』(現:『消費者基本法』)を改正し、消費者団体の行なう調停を同法上の「自律消費者紛
争調停委員会」としして位置付けさせることにも成功した。


  国民生活センターが毎年発行している「消費生活年報」に消費者苦情件数のデータがある。かつては、消費者団体
の受付件数も集計し、国民生活センター・消費生活センターでの受付件数とともに掲載されていたが、いつしか消費者
団体分はなくなった。消費者団体に消費者が相談しても消費生活センターを紹介されることも多いらしい。


  このように日本と韓国では消費者団体の政府との付き合い方がかなり違うことも消費者運動の差となって現われて
いるように思う。
  また、韓国の消費者団体の多くがキリスト教団体を母体としたり関係団体であることも消費者運動が活発であること
の理由の一つであるように思う。その積極性は悲劇さえ生んでいる。アフガンでの韓国キリスト教会関係者の拉致事件
について、2007年7月27日付読売新聞は、「積極的布教が裏目」とのタイトルで、 韓国のキリスト教会関係者による海
外での宣教、奉仕活動が、世界トップクラスにあることを伝えている。人口約4800万の韓国にはプロテスタント約900
万人、カトリック約300万人のキリスト教信者がおり、中央日報紙によると、2006年はプロテスタント系教会の約1万66
00人が173か国に宣教で訪れた。規模は米国に次ぎ世界第2位だという。 
  先日、さいたまアリーナで「LOVE SONATA」という韓国キリスト教会主催のコンサートがあり、韓国の友人に誘われ
て行ってみた。韓国から5千人ものキリスト教会関係者が訪日しての日本における布教活動である。韓国教会の影響
力を日本にも広めるためのものかと思ったら、配られた資料には既存の日本の教会リストがあり、そんな意図はないよ
うだった。「日本はすばらし国で、日本人も尊敬できる人々だが、『神さま』がいないのが寂しい」・・・そんな主張であっ
た。韓国のキリスト教パワーはものすごい。
  社会的な弱者や困っている人たちのために連帯し行動するというキリスト教的な姿勢が韓国の消費者運動を担って
いる部分は多いように感じる。


  日本の消費者運動に元気がないことについて、消費者団体がだらしがないからだというような論調を良く見かける。
しかし、それを既存の消費者団体の責任にするのかおかしい。市民に消費者の権利・利益のために活動しようとする
意思と行動力が不足しているから消費者団体が活性化せず、運動が衰退しているのである。日本の消費者一人ひとり
の責任である。


細川幸一

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