競争激化で右往左往する教育機関


  近頃、電車の中吊り広告にやたらと大学の宣伝が目立つようになった。日本私立学校振興・共済事業団によると、
平成18年春の入試で定員割れを起こした私立大は550校中222校に上り、全体に占める割合は前年度の25・9%
から40・4%へと大幅に上昇した。定員の5割に満たない大学も20校(3・6%)あった(7月24日付産経新聞)。


  大学だけではない。大阪市の私立大阪学芸高校が平成18年度の大学入試で、受験料など約140万円を負担した
うえ、成績優秀な男子生徒1人に関西の有名4私立大学(関関同立といわれる4校)の延べ計73学部・学科を受けさ
せていたことが報じられた。生徒側には受験料とは別に5万円も贈っていたという。同校はHPで「平成18年度関関同
立144名合格」とPRしたが、合格者数は延べ人数で、半数以上はこの生徒の実績であり、実数は33人だったとい
う。 有名大学への合格数が高校の生徒募集の際のアピールとなる中での情報操作である。この報道以降、他の高校
や私立中学でも同様なことが行なわれていると報じられており、問題は広がるばかりである。大人・教育者がこうした不
正ともとれる行為をしていて、何を子供達に教育するのであろうか。


  7月25日付朝日新聞朝刊の見開き2ページの東北大学100周年記念の記事には驚いた。「企画広告」の扱いで
あり、いくつかの企業が広告料を負担しているらしく、記事の中に企業の広告がある。その一つが何と「家庭教師のトラ
イ」なのである。しかもかなり大きい広告である。国立大学のPRに予備校関連企業が関係していて入学試験の信頼性
は確保できるのであろうか。

  かつて、ディスカウントショップが国内一流家電メーカーの製品を安く販売し始めたとき、家電メーカーは出荷の拒否
等の優越的地位の濫用を行なった。しかし最近では、たくさん売ってくれる小売業の方が立場が強い。ジャパネットた
かたなどは、メーカーとタイアップした独自の家電販売まで行なっている。大学でも受験生を送り込んでくれる予備校と
の関係が密になってきている。受験生対策では、その動向調査や戦略策定に際し、大学が予備校のノウハウを利用し
ているし、入試問題の作成を外注している私立大学は全国で71校で、うち18校はすべての問題を外注していたことが
文科省調査で明らかとなっている。企業に外注した大学が62校、予備校などが11校(一部重複)だが、、企業の多く
は予備校の関連会社だったという。

  そのうちに予備校の受験指導如何で大学の受験生の数が決まるようなことになれば、ますます大学の予備校依存
が強まる。あるいは試験問題の漏洩の可能性も高まるであろう。司法試験で「考査委員」として出題と採点を担当した
植村栄治慶応大法科大学院教授が、事前に学生向けに試験対策の勉強会を開いていた問題も記憶に新しい。問題
が起きる前に公正なルールの策定が必要だ。


細川幸一







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